俺たちはグラビティブラストの破壊力を見て、呆気にとられていた。
エステバリスでの戦いってなんだったんだと思うくらいすごい威力だ…。
これだけの威力があるんだから何か欠点はあるかもしれないが、とんでもない…。
過去二回の出撃の時、苦労してなんとか破壊したチューリップが…いともあっさりと崩壊した。
しかも木星トカゲの機動兵器が寄り付く前に…こんな一方的に…。
「すっげ……」
「うっそ……」
そろいもそろって息をのんで、この光景に愕然としている。
マエノさんちの子供たちですら、はしゃぐこともできずにいる。
この戦艦が量産されれば、木星トカゲも怖くはない。
…姉妹艦のナデシコで火星まで行くのは夢じゃないな、これなら。
しかし…。
「…もっと早く出してくれりゃ、よかったのに…」
俺はそう思わずにはいられなかった。
色々都合はあったんだろうけど…。
この船が早くあったら、俺パイロット始めなくてもよかったんだろうなぁ。
それでもトラウマがなくならなきゃ、結局同じなんだろうどさ…。
はぁ。
「おお!」
「…これなら、なんとか…」
僕は幹部連中と一緒に、ユーチャリスの戦闘風景を見て胸をなでおろしていた。
本当にPMCマルスがかかわるとホシノ君効果のおかげで、どんな会社よりも兵器の宣伝がしやすい。
何しろテレビ局と仲良しなもんだから、毎回戦闘中継がある。
メディアも世間も完全に味方だ。
ホシノ君、この世界では本当に便利な奴に育ったよね。
グラビティブラスト一発でここまでの威力があると、これで全世界に広まったはずだ。
そのほかのトラブルはあるかもしれないが、ひとまずネルガルの危機は半減するだろう。
この威力を見て、ネルガルをつぶそうなんて思う連中、そうはいないだろうからね。
……ただ、過去の再現はあり得るだろうね。接収騒ぎとか。
あの時は上層部の意向が強く出ていて、正義感の強いミスマル提督すらも逆らえなかった。
もっともミスマル提督はユリカ君を艦長にできる条件だったらという打算もあったろうけどね。
今回は先んじて手は打ったけど、どうなるやら。
「…ほ、やってくれたね」
「「「「「ほっ……」」」」」
午後の株式市場では株価を盛り返して終えられることだろう。
もちろんバッシングが消えるわけじゃないから、覚悟は必要なんだけど。
…ルリ君、早く助けを求めてくれないかな?
やっぱり、この時期のグラビティブラストって必殺兵器だよな。
実況解説のアナウンサーも、スタジオ中のスタッフもあんぐり口を開けて固まってる。
これ、ほとんど放送事故じゃないか?
……そういえば、ナデシコという戦艦が世間で話題になったのは結構後のほうだったよな。
戦闘の光景がどうしてもある程度は流出するとはいえ、規制はされてて、
確か横須賀ドックで寄港反対デモが起こったのが一番民間で目立った出来事だった。
連合軍も出し抜かれまくったこともあって、身内の恥を広めたくなかったとかで、
そして噂が過熱して初めてデモが起こった。
『あんな威力があるものを積んだ戦艦を寄港させるなんて何を考えてるんだ』…と。
まあとばっちり受けるの考えたら分かる。
連合軍が接収したがるのも、もっと分かる。
……ほんとーに大変なんだよな、グラビティブラストなしの戦い。
俺たちもそれは二回の戦闘で思い知ってたところだから、
ナデシコのみんなもびっくりしてるだろうなー。
「………こ、これはすごい」
「チューリップとバッタがいとも簡単に…」
ようやくアナウンサーの人が再起動して、コメントを残してくれた。
…なんていうか、これ、やっぱ連合軍黙ってないんじゃないか?
いくら俺たちに負い目があっても、無茶する将校が出てくるとか……。
思い当たることがあるんだよな、今回も。
手は打ってあるし、たぶん大丈夫だろう。
命令なしに動くタイプじゃないだろうし…。
「えーと、すごいですよね」
……俺もコメンテーターって慣れてないから月並みな言葉しか出てこない。
両親は科学者…いや今は違うっちゃ違うんだけどさ。
だけど俺ってテンカワアキトとしての過去では高校中退、
ホシノアキトとしては通信の学校で中卒だからなー。
こういう時は学のなさが辛いよ。
とほほ、戦い終わったら夜間の高校でも通おうかな。
「えーそれでは、早速ですが、
PMCマルス所有のユーチャリスから、
ヒーローインタビューを実施させていただきます。
よろしいですか?」
「あ、はい。
通信、お願いします」
俺がADの人にお願いすると、画面が切り替わって、
ユーチャリスのブリッジが映りこむ。
『とにかく…この艦はいただくわよ!』
なにっ!?
ムネタケが、もうブリッジを…!?
ムネタケはユリちゃんにレーザーブラスターを突きつけて、
静かににやついていた。
「ゆ、ユリちゃん!!」
『あ、アキトさん。
ユーチャリス勝ちました。
ぶい』
「あ、おめでとう。
…じゃなくて!!
い、いやそれはわかってるけども!!」
ムネタケに抱えられながらも小さくブイサインをするユリちゃん。
…いやそれどころじゃないでしょ!?
冷静すぎるよ!?
『私は大丈夫です。
…ムネタケ提督、全国放送ですけどいいんですか?』
……何気にメグミちゃんがいい仕事してるよね。
この状況のまま通信繋げちゃうんだから…。
ムネタケ、どーするんだよお前…。
このままじゃ拿捕しようにも、連合軍は知らぬ存ぜぬを通すだけだぞ。
いや、想定してなかったわけじゃないんだけどさ…。
さすが私…。
孤軍奮闘ながら、華麗にブリッジを制圧できたわ。
一番静かで気の弱そうなオペレーター娘ならあっさり人質にとれるって判断、大正解。
抵抗もなく、後ろをとることができた。
…さあ、これからよ!
「提督…こんな強い船、民間企業が持ってちゃいけない。
連合軍の一方面軍の7隻以上の戦闘能力を持っているのは確実。
いつ反旗を翻すかわからないでしょう?
…これは地球の、そして連合軍の存在意義の危機…そう思いません?」
…平行線ね。
フクベ提督はこのPMCマルスをそれなりに信用しているようだけど…。
道徳を守って戦ってなんとかなるなら私だってそうするわよ。
でもそんな理屈で死んだ人が何人いるわけ?戦争ってそういうものじゃない?
…ん?
小脇に抱えたオペレーター娘が何か震えて…恐怖?
ざまないわ、こんな事態には慣れてるわけないんだから。
連合軍の特殊部隊との戦いでもこのオペレーター娘は後ろにさがってたものね。
少しは安心させてやらないと、かえって足手まといになりかねないわね。
「…ふふ、おとなしくしてれば怪我もしないでいられ──」
…!?
オペレーター娘、何してるのかと思ったら、端末いじってるじゃない!?
「あ、すみません。
話が長かったんで、一応遺書は書いておかないとって」
銃を突き付けられながら遺書をのんびり書いてるなんて…。
……変な律義さを出すんじゃないわよ!!
「ゆ、ユリちゃん!
死んだらダメだよっ!!」
「分かってます。
私も死にたくありません。
もっとアキトさんといっぱい時間を過ごしたいですし。
でも、最悪に備えるのが戦いに備える者の務めです。
…ま、私の命と引き換えだったら連合軍にユーチャリスを渡しても、
アカツキさんも、お父さんも許してくれると思いますし…。
アキトさんと相談してからですけど」
艦長は小娘らしくうろたえているけど、オペレーター娘の方は私の話をしっかり聞いている…けど、
肝が据わりすぎて…人質になっているって認識がないわけ!?
「…あんたなんなのよ!?
なんでそんな冷静で居られるのよ!!」
「……信じてますから」
このオペレーター娘、私をじっと見て…な、何のつもりよ!?
誰を信じてるっていうの!?ホシノアキトを!?
それとも何かあるっていうの!?
「と、とにかく…この艦はいただくわよ!」
い、いえいいわ。
好都合じゃない。
この娘もユーチャリスを渡すつもりはあるみたいだし。
作戦が成功する方が最優先よ。
『ゆ、ユリちゃん!!』
!?
もうホシノアキトが連絡してきたの!?
で、でも都合がいいじゃない。
さあ、最愛の妻を人質を取られて、泣いて懇願しなさい!
ユーチャリスと引き換えに返してほしいってね!!
「あ、アキトさん。
ユーチャリス勝ちました。
ぶい」
『あ、おめでとう。
…じゃなくて!!
い、いやそれはわかってるけども!!』
…ホシノアキトはちゃんとうろたえているけど、
この小娘、ブイサインまでして…。
どこまで人をなめ腐った態度をとるつもりよ!?
「私は大丈夫です。
…ムネタケ提督、全国放送ですけどいいんですか?」
オペレーター娘の言葉に、私はホシノアキトが映っているウインドウをよく見た。
……て、テレビ局のスタジオじゃない!?
って…ことは…私のこの姿も全国…いえ、全世界に!?
ま、まずいわよ!?
ユーチャリスを奪う算段も、私が勝手に始めたことなんだから…。
こ、これが外部に知れるってことは、成功しようがしまいが、
犯罪行為がバレるってことじゃないの!?
「…提督、引っ込めるなら今のうちですよ。
訓練のフリとか言えばいいんですから」
オペレーター娘がカメラから顔を背けて、私にだけ聞こえるくらい小さく言った。
…情けをかけるつもり!?
ここまでやったのに引っ込めたら…それこそ私は…!
私は反逆者の汚名を着ようとも、木星トカゲに勝つつもりなのよ!
「ッ…なめんじゃないわよ…」
「あなたのお父さんも…悲しみますよ」
「余計なお世話だっていってるのよ!!」
「そう、ですか」
オペレーター娘があきれたようにうなだれると、
ドアの開閉の圧搾音と、人の足音が多数聞こえてきた。
こ、これは!?
「な、な、な……」
これは、連合軍の特殊部隊!?
なんでユーチャリスに乗り込んでいるのよ!?
「なんであんた達が!?
め、命令よ!
さっさと帰んなさい!!」
「おあいにく、あなたより上級の将校からの命令です。
…それにPMCマルスには借りがあります。
返すには持ってこいのシチュエーションですから、
将校の命令がなくたってお断りしますよ」
私の命令よりも、PMCマルスへの借り!?
ま、まさかこの部隊は、ホシノアキトが殺さずに捕らえた連中!?
「…私達がいかに素人集団とはいっても、
アキトさんとナオさんがいない状態で何にも対策しないわけないじゃないですか?」
「きぃっ!
お黙りなさいっ!」
下調べが甘かったとでもいうの!?
だけど、コネで連合軍の特殊部隊を動かすなんて公私混同もいいところじゃないの!
「隊長さん、撃ってもらえますか?」
「あ、ええ…。
それは構いませんが、
この位置関係で撃つとムネタケ副提督の銃の暴発が…」
「だいじょぶです。
この人、最初っからセーフティ外してませんから」
な!?こ、このオペレーター娘、
素人の癖に、私がセーフティを外してなかったのを見抜いていたの!?
「あ、なら遠慮なく」
「ま、待ちな──」
「ほ、なんとか無事に終わったね」
「全く、一時はどうなるかと思ったわよ」
私と眼上はアキトの背負ったモニター越しに、ユーチャリスの無事を確認した。
キノコ提督、前の世界では軍からの命令でナデシコを拿捕しようとしたそうだけど、
アキトとみんなで、このあたりの作戦を立てた。
意図的にユーチャリス内にスキを作って、キノコ提督が一人でも動くか試し、
もし動くならお願いしておいた連合軍の特殊部隊さんたちに手伝ってもらう。
もっとも、キノコ提督は手違いで本当にユリを撃ったりしたらどんなことになるか分かってるから、
必然的にセーフティを『かけたまま』にせざるを得ない。
ユリも、実際にちゃんと自分で確認してたからとぼけていられたんだろうけどね。
で、そこまで読んで準備してはおいたけど、
本当に動いちゃったもんだから、アキトは結構泡を食ってたんだよね。
アキトっては自分でなんでもしようとするからこういう時焦っちゃうよね。
『ユーチャリス内の非常時訓練、終わりました。
迫真の演技とともにゴム弾を昏倒する覚悟で受けてくれた、
犯人役を演じてくれた連合軍のムネタケ副提督に拍手をお願いします』
「おおー!
戦闘の直後に非常訓練とは、まさに武道の残心の心構え!
PMCマルスは本当にしっかりしてますね、アキトさん」
「え、ええ。
みんな頑張ってくれてます…」
アキト、冷や汗がだらだらしてるね。
ま、この程度まだまだ序の口。
私だってこんなことでユリに死なれちゃ困るもん。
こういうのでアキトの隣を手に入れるなんて、プライドが許さないんだから。
アキトの意思で浮気をしてくれなきゃ意味ないもん。
そう、この連合軍の特殊部隊を呼び出した名目は、『訓練』。
いくら策として連合軍を呼ぶとしても、
コネで呼ぶわけにもいかない。さすがにそれは無理。
でも、『ユーチャリスを使った訓練』の名目なら呼んでも多少は融通してもらえる。
連合軍に協力するユーチャリスの構図が取れるから。
実際、犯人役も連合軍のキノコ提督になるからなんの問題もない。
PMCマルス襲撃事件以降、連合軍特殊部隊への世間の風当たりは強かった。
いくらアキトが許しても、PMCマルスの全員を殺そうと動いた事実は変わらないもんね。
で、ユーチャリスで訓練…のふりをすることで、
『特殊部隊の人たちはPMCマルスを助ける意思のある人たち』って分かる映像が手に入る。
もちろんちゃんと見てる人からすればフェイクにしか見えないけど、
世間の風当たりはだいぶ緩和されてくれるんだよね。
ま、キノコ提督のほうは訓練とはいえ悪役をやってたってことで、
それなりにヒール扱いだろうけど、それくらいは勘弁してよね。
私は連合軍の人の銃から放たれた銃声が聞こえて眼を一瞬背けたけど…。
ムネタケ提督は、額に大きなたんこぶを作りながらも生きていた。
良かった…ゴム弾だったんだ…。
「ユーチャリス内の非常時訓練、終わりました。
迫真の演技とともにゴム弾を昏倒する覚悟で受けてくれたムネタケ副提督に拍手をお願いします」
「なぁんだ、訓練だったの。
びっくりしちゃった」
「……生きた心地がしませんでしたよう」
なんだそっか、訓練だったんだ。
ムネタケ提督も連合軍特殊部隊の人に介抱され、医務室に向かった。
フクベ提督とユリちゃんも付き添って…。
………でも、本当に訓練だった?
ムネタケ提督もフクベ提督も、本気で言い合ってたと思うし、
演技にしては大げさだったよね。
それに抜き打ちだったとしても私くらいには言ってくれてもいい気がする。
……もしかしなくてもこれって拿捕を予期してて、
みんなを心配させたくなくて訓練って言ったのかな。
うーん…。
『…あのーミスマルユリカさん?
ユーチャリスの初出撃でしたが、いかがでしたか?』
「艦長、何難しい顔してるのよ、
インタビューを求められてるわよ」
「ほへっ!?
す、すみません!!」
う、うん。
気にはなるけど後でいいや!
ユリちゃんもちゃんと答えてくれるもんね!
「…はぁ」
「そう気を落とすな、ムネタケ。
彼らも訓練だと誤魔化して穏便に済ませてくれたんだ。
お前がそう落ち込んでいたら、あれが演技だったと思ってもらえんぞ」
ムネタケは額に大きなたんこぶを作って、氷嚢で冷やしながら落ちこんでいた。
昼の出撃から8時間ほど経過して、ムネタケはようやく目を覚ました。
頭を冷やすというのが文字通りな状況だったがそんなジョークを言ってやるのもかわいそうだな。
先ほどのユリ君が遺書を書いていると言っていた一幕は、連合軍特殊部隊の呼び出しをしていたらしい。
ゴム弾を喰らって意識を失ったムネタケに付き添って、医務室にユリ君と移動した時に種明かしされた。
しかし…あえて叛意を翻す可能性のある人間をあぶり出すためにあえて戦闘要員を減らし、
伏兵で奇襲をかけて制圧し返す作戦とは、なんとも豪胆な。
あのミスマルの娘だけのことはあるな。
ユリ君は、ムネタケに私の自室で療養扱いの謹慎を申し付けた。
罰したり通報したりはしないのでおとなしくしてほしい、ということらしい。
「……そうは言いますが、提督。
全部読まれていた上に情けをかけられては、
とてものうのうとしてられません…。
私の覚悟はなんだったのよ…」
「今回は自分の人生を賭けるタイミングじゃなかっただけだ。
戦いの選び方を間違えるな。
彼らは敵じゃないだろう」
「うう…」
「お前も提督なら提督らしく、規範をしっかり守ることだ。
部外者とやり取りするならなおのことだ。
今後は協力者相手に立場や上下関係を持ち出すのはやめるんだ。
いいな?」
「はい…」
ムネタケもさすがに虚勢を張っている余裕がなくなってしまったんだろう、素直にうなずいた。
多分に私怨や自分の功績を残したいという気持ちはあったろうが、
やり方は非道だったとはいえ、ムネタケは連合軍や地球のことをそれなりに考えていたのは事実だ。
ユリ君もその気持ちをちゃんとくみ取ってくれているようだ。
そうでなければ正面から逮捕していただろうし、訓練などと外部に言ったりはしないだろう。
彼女がムネタケをかばった理由は分からないが、単に情けをかけただけとは考えられん。
「提督、お待たせしました」
「サダアキ、久しぶりね」
「パパ!?」
「参謀!!なぜここに…」
「不肖の息子が、ご迷惑をおかけしたってなれば、
来ないわけにはいかないでしょう」
おっと…これはなんとも意外なことに。
ユリ君だろう、あのムネタケ参謀を呼び寄せるとは。
ミスマル提督とムネタケ参謀は旧知の仲だ。
直接連絡してくれるように頼んだんだろう。
しかもすでに時刻は22時を回っている。
…かなり無理をしてここに来てくれたようだ。
「こんなところまでくることないわよ、パパ!
私が悪いんだから…」
ムネタケは参謀の一喝に肩を縮めた。
偉大な親に比べて無能な自分を責めている節がある割に、
急に極端なことをし始めるのはなんともな。
しかしその偉大な親に直接顔を出されてはどうしようもないというわけだな。
「サダアキ、確かに成人したからには子供の罪は本人が背負うべきだ。
だが世間はそうは思わない。
軍に居ればなおさらのことだ。
分かるだろう?
穏便に済ませてもらったからこそ、私たちはしっかり話し合うべきだ。
…こういう時だからこそ、私が来ないといけなかったのだ。
……ユリさん、本当にありがとう。
そして申し訳なかった」
「いえ、大丈夫です。
こういう事態は予測していたんです。
頭を上げて下さい、参謀」
「…感謝に堪えない。
サダアキ、お前もちゃんと謝れ」
「…すまなかったわ、ホシノユリ」
「おい、もう少し言いようがあるだろう」
……何というか、これは子供の万引きを謝る親のように見えてしまうな。
いかんいかん、そういうレベルの話ではないな。
歳も大幅に高いしな。
…いや、人間状況によっては何歳になっても犯罪に手を染めることはある。
直せるうちに、子供扱いしてでも修正すべきだろう。
とはいえ時間はかかるだろうが…。
「かまいません。
それにムネタケ提督の場合、
参謀をお呼びするのが一番堪えると思ってましたし、
これで仕返しはすでに済んでます。
…少し席を外します、参謀。
叱るなり、なだめるなりお願いします。
それと私のお願いした件も、一緒に話し合ってください」
「何から何まで申し訳ない」
「む、では私たちは席をはずそう。
参謀、あとは頼んだ。
このポットに紅茶が入っている。
ぜひ飲んでくれ」
「ええ、ありがとうございます、提督」
ユリ君は、面目丸つぶれ状態のムネタケをこれ以上は責めるつもりはないようだ。
実に人間が出来ているな…若さに見合わん。
彼女はいろいろと苦労したようだな…家族そろって大変な目にあったのがよくわかる。
ホシノ家を取り巻くゴシップ、そして当事者から語られるただならぬ経歴…。
この程度はトラブルにすら入らないとでも言ってくれそうだ。
…しかしそれにしてもユリ君は、
ムネタケ親子の事をよく知っているような気がするな。
ミスマルから聞いているにしても、ここまでしてくれるとは…。
いや、気にしなくてもいいだろう。
これから起こることはムネタケのためにもなることだ。
親の後を追いかけて軍人になったはいいが、上司に恵まれずに良くない苦労をして屈折した。
私の下についた時にはだいぶ追い詰められていたが、私ではついにそれをほぐせなんだ。
火星と地球に隔てて数年…親子で顔を合わせる機会すら少なくなり、
成果を得ることもできず、語ることを失ったムネタケが、立ち直るための…。
…恐らくは最後のチャンスだ。
階級的にも年齢的にも、もう後がない。
自信をここで取り戻せなければ、ムネタケはすべて失うことになるだろう。
…軍人としての地位や親ではなく、ついに自分をなくしてしまうだろう…。
参謀、頼んだぞ…。
……もう、これ以上ないくらいボコボコだわ。
オペ…ホシノユリがパパにチクッたのを恨みたいけど、
情けをかけてこの程度で済ませてくれたというのもあるし、
そんな気力もなくなっちゃったわ…。
パパは叱りはしてくれたけど…すぐに私をなだめにかかった。
ずっと叱り続けてくれたほうがずっとマシだったって思うわ…。
…軍に居る以上、筒抜けだとは分かっていたけど、
私が軍の内部でうまく立ち回れなくてゴマをすって何とかしようとしたことや、
副官として無理な作戦を通そうとして評価を何度も下げたり…。
そういうところで無理をしてきたことをパパは知っていた。
だけどそこまでして頑張っている私の手前、止めることもできなかったと、
それが今回の事件の引き金になってしまったのだと、パパは謝った。
…私が全部悪いのに、親だからって背負おうとしてくれている。
パパの顔に泥をぬるようなことをしたっていうのに…。
ホント、中学生が突っ張って万引きしたときみたいじゃないの、これじゃ。
本当…私、バカじゃない…。
そう考えたら急に、頭が冴えてきた。
手前の強力な船に目がくらんで自分のしでかしたことの愚かさが見えてきた。
私も現金なものよね。
小娘に先回りされて鼻っ柱をへし折られて、
最も尊敬する人になだめられたら、
急に冷静になってきちゃうんだもの。
例えば…。
ユーチャリスを奪ったとして、それを本当にうまく使える?
エステバリスの扱い一つ、まだ連合軍はうまくできてないのに。
優れた武器だって、使い方を誤れば宝の持ち腐れ。
使い方を良く分かってるPMCマルスに協力して、
ちゃんとノウハウを教えてもらった方がいいに決まってるじゃないの…。
ネルガルとの関係だって、最悪になるわ。
ナデシコの次の艦、ナデシコシリーズの3隻は連合軍にわたることが決定している。
ネルガルもPMCマルスも連合軍に協力してくれているじゃない、そもそもの話…。
拿捕に成功して連合軍にユーチャリスを引き込んだとしても、
パパは怒ったんじゃないかしら。
…そりゃそうよね。
自分の都合で、しかも私個人の独断でそんなことしちゃ最低よね。
……それなのに、私を逮捕もせずにかばってくれる相手に、
私は、何を一人で突っ張って、悪事を働いて…。
うう、情けなすぎる、バカすぎるわ…。
パパにお説教されなきゃこんな単純なことに気が付けないなんて…。
…いいえ、本当の私はもっとバカだわ、きっと。
ここまで完膚なきまでに制圧され返さなかったら、
私はきっとパパにお説教されても突っ張ってたかもしれない。
火星での惨敗はそれほどまでに私の心をむしばんでいたんだわ。
協力して、最善の手を打つという選択肢すら、見えなくなるほど…。
出世とか手柄とか言ってたって、こんなことじゃチャンスがあってもとりこぼすわ。
PMCマルスが許してくれるなら、まだやり直すチャンスがあるってことじゃない。
……今はちゃんと自分を立て直すことからだわ。
慌てる乞食は貰いが少ないっていうじゃないの。
落ち着くのよ、私…。
・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。
そのあと、私はパパに精神的な加療が必要なことをアドバイスされた。
私はプレッシャーに決して強い方ではなく、
そうじゃなくても…昔から思い込みがもともと激しいのと、
火星での惨敗で過労とストレスでノイローゼになっているのが明らかで、
お前の能力が半減以下になっているって冷静に言われた。
……私は自分で虚勢を張ってたのは分かっていた。
でも、実戦とあの火星での地獄を味わった私は、
心根や覚悟はそれなりに強いつもりでいた。
気持ちを奮い立たせるには声を張り上げて強がるしかないと思ってた。
だけどそうじゃなかったわけよね…。
自覚はなかったけど、相当に病んでいたってことよね。
友人はいても別の艦に居たし、そばにいたのはフクベ提督だけだったし、
孤立していたのは確かで…フクベ提督のアドバイスすら聞いている余裕がなかったわよね。
…はぁ、自分の情けないところばっかり気づいて、嫌になるわよ。
「サダアキ、私は精神科医や心療内科じゃない。
問診を受けるまで専門的なところは何とも言えないが、
軍人はトラウマやPTSDを抱えたままやっていけるほど楽な仕事じゃないだろう」
「…うん」
素人判断で動いちゃいけないわよね、確かに。
私、自分の思想や認識の歪みが見えなくなるほど参ってたってことよね。
いい歳したおっさんが弱気になってるのは見苦しいからって……なんで強がっちゃったのかしら。
戦艦の中という閉鎖空間にあっては、そんなことに気づく余裕がなかったのもある。
カウンセリングを受けるのは評判、評価の面で致命傷になりかねなかったのもある。
そのせいで休む事や精神的な不安に対して考えることに拒否感を抱くようになっていた。
…怪我してるのに動くやつはいないわよね。普通。
何やってんだかって感じ…。
「今は提督としての責務は一度忘れろ。
時間をすべて精神的な治療と休養…。
そして兵法の勉強のし直しに充てるんだ。
お前は確かに士官学校でも上位に入れるほどは成績が良くなかったが、
決して平均以下に甘んじたこともなかったろう。
やり方次第だ」
「でも…」
…正直、もう自信がない。
あんまりにも情けない自分に気が付いてきたし…。
あんな小娘に情けをかけられたばかりじゃなく、
いろんなことに先回りされて、心配までされてるってことに気が付いてしまったんだから。
こうして励ましてもらってるのも、慰めくらいにしか思えてこない。
ちょっとやそっとでどうにかなるとは思えないわ。
「デモもストもない。
PMCマルスに出向している時間を無駄にするな。
ナデシコが本格的に動くまで三か月半と少し、あるな?
これはお前に与えられた最後のモラトリアムなんだ。
しっかり休んで、頭を楽にして自分の可能性を切り開け。
…それにお前がダメになっても、一生食べるのに困らないくらいの遺産は残してある。
すぐに死ぬとかどうということはないし、軍人をやめても何とかなる。
仮にお前が軍人をやめて、何か道楽に没頭しても責めるつもりはない。
確かにそうなってしまっては世間的にはみじめで、辛いかもしれん。
だが、ダメになると決まったわけでもない。
後ろ盾があるんだから、自分を追い込むんじゃない。
まだチャンスはあるだろう」
「……」
あんな若い子ばかりの職場で?
…無理じゃないかしらね。なじめるとは思えないわ。
でも、パパの言うことのほうが正しいわよね…どう考えても。
確かに、私の実力じゃどうやっても出世して連合軍を変えることも…。
それどころか戦友の仇を討つのもできっこないわ。
だから焦ってユーチャリスを手に入れようとしてしまったんだし…。
最後のチャンスにかけてみるっていうのはあるんだろうけど、
でもこの先にチャンスなんて…。
「…それに、ユリさんから頼まれてることがある」
「え?」
「12月からはホシノアキトとホシノユリはナデシコに乗るので、
条件さえ整ったらだが、戻るまで、
お前にユーチャリスを任せたいそうだ」
「…………!?
正気なの!?
この船のジャックを企てた私に?
精神的に余裕がないどころかノイローゼ気味の私に、この船を任せるっていうの?!
それこそ私のしたことってなんなのよ!?
棚から牡丹餅が落ちてくるのを待ってりゃいいのに、
自分で取ろうとして落としそうになってたっての!?
ふざけすぎでしょ!?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよパパ!!
展開が急すぎるわよ!?」
「まあ落ち着け。
そもそもお前は、ユーチャリス班の提督に仮編成だが決まってただろう」
……。
私はポケットに入れていた仮の編成表を見た。
………たしかにナデシコ班はフクベ提督で、私はユーチャリス班。
ってことは…ユーチャリスの提督になる可能性が最初からあったわけよね…。
船のスペックばかりに目が行っていてこんなことにも気が付かなかったの!?
バ、バカすぎるわ………。
「それに条件がそろえば、と言っているだろう。
そろわなかったら別の提督に話を持っていくだけだ」
「…その条件って?」
「心療内科への通院と治療を続けること、
軍のシミュレーターに準じたシミュレーターゲームでミスマルユリカに一勝すること、
最後にPMCマルスのメンバーにそれなりに気に入られること、
この三つだ」
……二つは可能性はまあいいとしても、最後が難関ね。
心療内科は普通に通えばいいし、ストレスが無くなればそれなりに回復も間に合うわ。
士官学校で無敗、教官やそこらの将校を震えさせる実力の天才・ミスマルユリカといえど、若輩者。
癖を見抜ければ、対戦回数が増えれば勝ち目はゼロじゃなくなる。
私だって実戦経験がないわけでなし、軍の在籍期間がだてに重なってないんだから。
でも人望のなさが致命的なのよね…。
私ってば上司はともかく部下への受けが悪いのよ、ゴマすってるから。
対等の相手だったらなおのこと。私の無能さにあきれてしまうし。
でも、これ以上のチャンスって二度と来ないわよね…。
……自分で気づかないようにしてきたけど、
連合軍も余裕がないし、艦、そして艦隊を預かれる可能性って低いわよね、今からじゃ。
さらに今すぐに艦を任されても、普通の艦じゃ運が良くても死なないだけ。
成果が上がらず艦をつぶすかもしれない。
…それどころか木星トカゲとの戦争中に戦艦を預かれなければ、
戦後の軍縮のせいで僻地の仕事すらなくなってしまうかもしれない。
事実上、ラストチャンスじゃない…。
とはいえどんなにいい時期でもユーチャリス以上の艦を預かる機会なんてまずないし、
それにユーチャリスは連合軍からすでに羨望のまなざしで見られているはず…。
性能的に私でもかなりの戦果を挙げられるのは間違いないわ。
期間限定でも、その間で上がった手柄は艦長として得られるわけよね。
…理想的な展開じゃない!
情けでもなんでも、受けるしか選択肢はないじゃないの。
…あ、シミュレーターゲームって、たぶんミスマル提督に勧められたことのある、アレよね。
『ラインハルトの野望』
士官学校入る前にちょっとだけやって飽きちゃったけど…今、思い出すと、
あれって確かに軍のシミュレーターに準じたゲームだったわ。
ひょっとしたら兵法の勉強にはピッタリかもしれない。
何しろ今の私には勉強のとっかかりがないわけだし、指針もない。
それどころか戦艦の運営まで任されたこともないものね。
軍の船に乗ってないから、上司に半端に命令されたり書類業務がない…。
ユーチャリスに乗って提督として艦の運営をもう一度考え直すことだって…。
…人間関係だけはちょっと自信ないけど、いいことづくめじゃない。
あとは…。
「…パパ、その条件だけでいいのね?」
「ああ。
ユーチャリスを任せる件はすべてこの条件でいい。
ただし、ユーチャリスを任せた後は、
スタッフを戦闘で死なせないこと、
軍にユーチャリスを又貸ししないこと、
対人戦闘は避けること、
の三つが追加されるそうだ」
…なるほど。
あくまでPMCマルスの動きに準ずるってことね。
生っちょろいやり方で、手間はたくさんあるし…。
簡単じゃないけど、やってみるしかないわ。
やってやろうじゃない。
「…挑んでみるわ、パパ」
「…サダアキ、少し肩の力を抜け。
お前は昔は真面目さだけが取り柄だって思っていたようだが、
決して無能じゃない。
協力してもらえるようになれれば、
周りが見えるようになってくれば、それなりにやれるはずだ。
出世にこだわらなくていい。
私に気兼ねするな」
「…うん」
…そうね、虚勢張っててもなんも変わらなかったし。
今は私自信、本当に無能じゃないかだけを確認するためだけでも、頑張ってみるしかない。
上に立ちたいと思ってるくせに人望がなかったら何にもならないし…。
出世にこだわってペコペコしても、結局体よく利用されるかもしれないし。
…そうよ、選球眼が育たなきゃしょうがないわよ。
人も、情勢も、戦況も、何もかも見抜く力がなければ、実力があろうと持ち腐れ。
出世したいからって、いいなりになっていたって相手が振り向てくれるかは分からないし。
「少しはサボるのを覚えろ。
今は余裕ある生活のほうが大事だ。
精神的なものはすぐには治らん」
「……うん。
今は戦果を得るために無理をする時期じゃないものね」
「そうだ。
ここまでの十数年で、見過ごしたものをゆっくりと見つめるんだ」
…そうよね、力んでまた過労気味になったらそれこそ元の木阿弥だもの。
リラックス…リラックス…手柄だの出世だのは後回し。
一度しっかり休んで、自分を立て直し、それから自分のやれることを見つけていくのよ。
出世を目指すにしてもなんにしてもそっちの方が明らかに近道だしね…。
「最後になるが、
ユーチャリスに乗船したあと、連合軍からも色々と頼まれるだろうが、
もし何か不公平なことを言い出されたら私の名前を出していい。
民間人と協力しているんだからな。
それでも無理を言ったりするような連中に容赦はしなくていい。
PMCマルスには『すべての出撃・命令に拒否権がある』というのも明記されている。
お前もそのルールに合わせて動いてみるんだ。
その方がいろいろ学ぶことも多いだろう。
業務内容は近いとはいえ、民間企業で働く経験なんてなかなかないしな。
いい経験になるだろうからな」
…それもそうかもね。
ふざけた連中だとは思うけど、あったかい性格してるみたいだし…。
命令が命よりも重い、張り詰めた軍よりはよっぽどいいかもね。
それもそれでアリ?
なんて思い始めてるわ。
……なんか急にほぐれた気がするわ、いろいろと。
私、あんなことをしでかした癖に、たくさんの重要なことを手に入れたわよ。
…これも、人からみたらふざけた『コネ』だろうけど、もうそんなことはどうでもいいわ。
…もしかしてここまで計算づくなの?
だとしたら…おっそろしい娘だわ、ホシノユリ…。
いえ、あの子だけとは思えない。さすがにそこまでは分かるはずないわ。
恐らく…色々と協力者がいるわよ、これは。
…ま、いいでしょ。
味方になってくれるみたいだし、この船のお気楽さを見習ってみるわ。
その後、パパを見送ってから、改めてフクベ提督とユリに謝った。
二人とも、相談事があったら話してほしいと静かに許してくれた。
……本当、感謝してもしきれないわ。
さて、今日はもう遅いし自室に戻って寝ましょ…。
心身ともに健康を取り戻さないとね。
…俺とユリちゃん、ユリカ義姉さん、そしてラピスはこたつを囲んでいた。
今は8月なんで、当然暑いわけだけど…無理にエアコンをフル稼働させてこたつを囲んでいる。
なんで?と問うと、ラピスは、
「家族っぽいから早い段階でやってみたかった」
と答えた。
……ラピス、家族や家庭にあこがれてたもんな。
ユリカ義姉さんもニコニコしてみかんをむいている。夏みかんだけど。
しかし、ミスマル家の姉妹勢ぞろい…ちょっと圧巻だな。
ユリカという人間はキャラが強すぎて、一人でも三人分ぐらいやかましいからな。
それにユリカ義姉さんの隣に座るユリちゃんの嬉しそうな顔…本当にかわいい。俺も嬉しい。
ラピスは顔立ちがそんなにミスマル家寄りじゃないけど、並んでみると意外と妹っぽく見える。
ルリちゃんもここに入る予定だけど、うまく戻ってこれてからの話だ。
俺と並ぶと本当に兄妹っぽいから、なんかうまく家族になってきた感じがするな。改めて。
なんだか、昔と違ったあったかさがある。
ユリちゃんもユリカと姉妹だっていうのが嬉しいように、
俺も血縁はないんだけどルリちゃんと兄妹っていうのが嬉しいんだろうな。
いい感じに関係が結びついてて、すごい安心感がある。
……あとはテンカワか。
この間、ユリカ義姉さんとデートしたって話があって、複雑だが、嬉しかった。
ナデシコに乗る前にそこまで関係が深いってことは、あともう一息なのかもしれん。
…ま、結婚前に手を出すのは無理かもしれんけど。
昔の自分のことだし、よく分かってるよ。
で、なんでこんな感じで集まってるかっていうと…。
ルリちゃんの事で『家族会議』をするべきってユリカ義姉さんの考えだ。
色々俺も話したいことがあったからちょうどよかったんだけど…。
今回のムネタケの事件についても話したかったらしい。
…まぁ、今更だけどユリカを義姉さんって呼ぶの、
まだ慣れてないけど意外と落ち着くんだよな。
心の底には辛い気持ちもあるけど、やっぱり放っておけないんだな、俺は。
…で。
「…ユリちゃん、本当にそこまでしないといけなかったの?」
「はい。
ラピスとアカツキさんと、みんなで話し合いました。
お父さんにも話は通してあります。
ムネタケ参謀をこんなに早く呼べたのもお父さんのおかげで」
「アキトがそんなこと言っちゃだめだよ!
私だってすっごーい嫌なんだから!!」
こういう判断が俺は苦手だからいいんだけど、
俺のいないところで重要な話されるのってちょっと傷つく。
ちなみに…ユーチャリスの貸与について、
ラピスが憤慨しつつも、了承したのには理由がある。
ナデシコとユーチャリスが仮に火星に行くとして、
火星に行くまでの間、地球ががら空きになってしまう。
グラビティブラスト搭載艦が一機もないと相当に不利だ。
かといって相転移エンジンはそうそう作れない。
さらにナデシコ以降のナデシコシリーズの出航にはまだ時間がかかり、
その間は戦死者、被害者が増えてしまう。
それに俺がナデシコとともに地球を離れると発表されるとパニックを起こす可能性が高い。
だがグラビティブラストを持った船が一隻でも地球にあれば、話は別だ。
一隻あるだけで状況が大きく好転する。
前の世界のナデシコほど嫌われてないこともあって、
不当に扱われたり外されたりしないからな。
火星に行く際、テンカワを影武者にするのも考えたが…。
やっぱりあいつも火星に行きたいって言ってたし。
そうなるとユーチャリスを地上に置いておかないと、
大幅な地球内での戦力減、そして世間への心象が悪すぎる、ということだ。
だが…。
「でも大丈夫なの?
ユーチャリスを連合軍に…PMCマルスのスタッフごと貸し出すなんて」
「アキトさん、そうは言いますけど、
アキトさんとナデシコが地球から離れたら不安がられますよ。
…それだったら、いっそユーチャリスだけでも置いていかないと」
「いや、それは分かるけど…。
火星航路で戦力的なところが不安なんだけど…」
「…確かにユーチャリスを地球に残すのは戦力面で不安にはなりますが…。
もし火星で大群に待ち伏せされていたらナデシコとユーチャリスの二隻程度じゃ話になりません。
…ナデシコ専用のYユニットの準備があるそうですし、
分散するくらいなら相転移砲を装備していった方が生存率は高いです。
敵の準備がわかりませんし、逃げ切れる保証はありませんが、
逃げるとなったら二隻だとかえって不利になりかねません」
「そう言えばそだね。
足の速さが違う船が並ぶのって、
結構お互い気にしなきゃいけなくなるし、
意外とマイナスが多いんだよね」
…そうか、そういう考え方もあるか。
それに前回の世界ではナデシコ専用じゃなくて、
無理矢理シャクヤク用Yユニットを接続した形だったから、
ウリバタケさんが改修しつづけてくれたとはいえ少し性能が落ちていた。
専用Yユニットであればさらに性能が上がるだろう。
「でもびっくりしちゃった。
ユーチャリスだってあんなに強いのに、ナデシコってまだ強くなるんだ」
「そうだよユリカ。
ユーチャリスとナデシコは相転移エンジンを二基積んでる。
だからグラビティブラストは威力が一緒だけど、
サイズ的にユーチャリスはかなりちっちゃいから、
ユーチャリスはナデシコの四基の核パルスエンジンが半分の、二基しか積めない。
ま、船体が軽い分だけ最大船速は1.5倍だけどね。
で、ナデシコはその巨大さでYユニットでさらに相転移エンジンを二基積めるの。
単純に倍の威力のグラビティブラストとディストーションフィールドを使えるんだよ」
「ほへ~~~~~~!!」
…ちょっと相転移砲のワードは出しちゃったけど、その辺の話はギリギリまでしない方がいいだろうな。
あれは論理さえ追いつけば相転移エンジンを持ってる艦ならいくらでもできちゃうし…。
木星の船が先んじて撃とうとしたときに相殺するために撃つくらいにしないと、
グラビティブラストどころじゃない威力を目の当りにしたら、連合軍は眼の色変えて来るのが明らかだ。
「そうはいうけどオペレーターが足らないんじゃないの?
俺たちが全員火星に行っちゃうと…」
「忘れてませんか、アキトさん。
マシンチャイルドはもう一人いるんですよ」
「へっくちょ!」
「ハーリー、風邪かしらね?」
「んーん、だいじょぶ」
……いや、6歳の子を引きずってくるのはちょっとかわいそうだろうけど。
ま、まあいいか…ルリちゃんとラピスの手前、こんなこと言えないしな。
その後、今回のユーチャリスジャックについて、
ユリカ義姉さんはユリちゃんを叱った。
もっと備えることが出来た、ということも含めてだ。
「…ごめんなさい、ユリカさん。
黙っておくべきじゃなかったですね」
「そうだよ!
ダメだよ、ユリちゃん!
アキト君もだよ。
ちゃんとユリカお姉さんに相談してね。
放っておくと二人ともすぐ危なっかしいことするんだから」
……こればっかりはちょっと反省だな。
詳しく説明する余裕があんまりなかったのはあるとしても、一声かけるべきだったろうな。
「ユリカって、
正直すぎてバレそうだし、顔に出るからじゃない?」
……否定できんがな。
まあ、なんていうかDNAのせいか本当に姉妹らしくやり取りできててよかった。
ユリカ義姉さんに対して、ラピスはいい印象を持ってなさそうだったんだが…。
辛辣ではあるけど、仲が悪いって感じじゃないからな。
しかし…。
「ムネタケ提督に…。
ユーチャリスを任せて大丈夫だと思うのかい、ユリちゃん」
…色々と追い込まれていたのは分かるが、ガイを撃った件も、
Xバリスを作るようにウリバタケさんに一方的に命令した件も、あんまりいい印象がない。
ただ、俺も火星の後継者に中途半端に味覚だけ奪われたり、アカツキの協力がなかったら、
あんな感じになっていたかもしれないとも思うから…ちょっと同情しているところもある。
複雑だが、かといって本人の心までは俺たちで何とかできるとは思えないし…。
ただ、ユリちゃんは前の世界…の未来で、
ムネタケ参謀がムネタケ提督と最後の最後まで、
二人きりで話す機会が得られなかったことを悔やんでいたと話されたことがあったらしい。
俺とユリカを失ったお義父さんの話もそうだけど…やはり親にとって子を失うというのは耐えがたいんだろう。
……ムネタケ提督が本当に俺たちと手を結んでくれるかはわからないが、
ユリちゃんも何とかしたいって気持ちがあるんだろうな。
「でも大丈夫じゃない?
何てったって弱み握ってるわけだし」
……ラピス、お前性格悪くなったか?
ユリちゃんも弱みを握るの込みで一芝居うったんだろうけどさ。
「ま、それもありますけど、
一番堪える方法でお灸をすえましたし、ひとまずナデシコの火星行きまで様子見です。
その期間でダメそうなら別の提督に話を持っていきます。
お父さんにもムネタケ参謀にも、よさそうな提督を選定してもらってますし。
さしあたってはこの間チューリップに特攻させて轟沈したパンジーの艦長が第二候補です。
PMCマルスに協力的になってくれる提督をしっかり選ばないと大変なことになります。
でも…私、どちらかというとアキトさんが抜けた後に、
スタッフが言うことを聞いてくれるかどうかのほうが不安です」
…う。
そりゃそうだよな…。
今回のスタッフ募集は、俺目当てで集まるのに、肝心の俺が何ヶ月か抜けるんだから。
い、いや…さつきちゃん達が頑張ってくれる…そう信じるしかない。
俺の事情を知らないファンの子たちばっかりで構成されたユーチャリス…。
ま、また週刊誌に叩かれるぞ…『ホシノアキト、ハーレム艦を作る?!』とか…。
…憂鬱だなぁ、とほほ。
「そういえば、ルリちゃんはだいじょうぶかなぁ」
「大丈夫ですよ、しっかりしてますから」
「だけど、なんかひどいことになってるでしょ?」
テレビに目を向けると、そこにはルリちゃんがいろんな人にプレゼントをもらってる姿が見える。
時差があるから、あっちはまだ夕方なんだよな。
プレゼントが山のように積まれているが、
ルリちゃんはあからさまにすっごい嫌そうな顔だ。
好意があろうとなかろうと、知らない人からものをもらうってあんまり嬉しくないんだ!
知らない人についていっちゃいけない、知らない人からものをもらっちゃいけないって、
子供でも知ってることだもんね!!
「ルリちゃんって…やっぱりアキト君の妹だよねぇ。
……血がつながってないってホントなの?」
「……はい」
……つながってない、とは思う。
未来のルリちゃんも『電子の妖精』ってあだ名で、
珍しく世間でも有名な艦長だったし、そういう素質はあったんだろうな。
俺もホシノアキトとして外に出た時間はほとんどそんな感じだったし…。
俺たちはたまたまそういう星の下に生まれてしまっただけなのかもしれないけど。
ホシノだけに。
一晩明けて、父と話をしようかと思った矢先、
父も母も公務が入ってしまい、私は放っておかれてしまいました。
そのあと、代わる代わるプレゼントを持った人たちが私の部屋に訪れて…。
ぬいぐるみだのなんだの…ピースランド製で品質はそこそこ、でも外国のヒット品の真似ばかりです。
はぁ。
日が落ちて、ようやく食事をとって…マナーはそれなりに教えられながら何とかこなしましたが、
こんな食べ方じゃ味わう暇がありません。
慣れるまで結構かかりそうです。
はぁ。
そして私は与えられた自室で従者の人に渡された王城専用の小型端末を使って、
昨日のユーチャリスの初戦闘の記録映像を見ながらまたため息を吐きました。
スペック上、これくらいの事は朝飯前とは知ってはいましたが、
世間の沸き立ち方も想像できます。
はぁ。
…で、なんでわざわざ自分の端末を使わずに王城専用端末なんてものを使っているかというと、
自分の端末は取り上げられていないんですが、ここは電波も入らなければ自由に使えるネットもないみたいです。
母の教育方針で、
『子供は子供用の、外部情報は見られないようにカスタムされた端末』
だけを見られるようになっているみたいです。
毎朝、新聞に準じた情報をまとめたPDFを閲覧したり、動画を見たりは出来ますが、
ネットに直通させて情報の発信はどうやってもできないみたい。
設定をちょっといじるだけでは突破できなさそうですね…。
そもそもネットにつながってないのでは仕方ありません。
ハックしようにも機材がないと私も手が出せなさそうです。
ずいぶんしっかり子供を見てくれてますこと。
新聞も悪影響が出そうなところだけはカットしてるみたいですし。
実際、PMCマルス関係の情報はしっかりみれますが、
アキト兄さん関係のゴシップは見れないようになってます。
……まー不健康な内容ばっかりですし、私もちょっととばっちり受けてる立場ですし。
そりゃそう、弟たちに見せたらすごい悪影響よね。
本当は…あんな欲がなくてとぼけた人ってなかなかいないのに…。
…はぁ、芸能人の妹って大変。
…この部屋、テレビすらもありません。
どんだけ清浄な環境で子供を育てたいんですか?
私の現状は何か直接的な束縛や、学校などの案内や家庭教師がいるなどの、
家庭的なことは特にされず…かといって外出する許可も貰えていません。
…頭が腐っちゃいそう。
…なんかないかな。
学習アプリ…駄目ね、この程度じゃ頭の体操にもならない。
文学作品…古すぎて頭に入ってこない。
観劇の動画……ちょっと趣味じゃないな、映画くらいないの?
ゲームの一つもないんじゃ、いろいろダメよね。
弟たちは人数がいるから仲良く遊んでるんでしょうけど…。
…ま、こんなじゃスレた私とは遊ばせたくないでしょ。
……はぁ。
やっぱり完全に籠の鳥じゃない…。
アキト兄さんたちに助けを出そうにもこんな状態じゃ…。
私、もしかしなくてもとんでもないところに飛び込んじゃった?
………勘弁して。
公務を終え、プレミア国王と王女は夜遅くに戻ってきた。
「あの、あなた…。
ちょっとルリを甘やかしすぎではありませんか?」
「何を言っとる!
あの子は恵まれない環境に居ながら、
自分がピースランドの姫だと自分で調べあげて、
私たちに助けを求めてくれたのだぞ!!
今甘やかさないでいつ甘やかすんだ!?」
プレミア国王は、むっとした顔で王女を見つめた。
しかし、王女は翌日話すという約束を破ったことを責めた。
「仕方ないじゃないか、あの子の事で外に出ていたんだから。
あの子だってそれくらいは分かってくれるはずだ」
「それもなんですが、あの子、ちょっと嫌がってますわ。
PMCマルスを出る時の様子もマスコミの映像で確認しましたけど、
むしろかなり名残惜しい感じでしたし…。
少なくともあの人たちはルリにひどい生活をさせたりはしていないと思いますよ」
「っ!!
「…やり方がよくない気がすると申しているんです。
部下に貢物を持たせて、愛されるお姫様と思わせようだなんて。
あなたって昔っからそういうところありますよ。
私の時だって、私はあなたの人柄を好きだと言っているのに、
プレゼントばかり大量に贈って…」
「……はぁ、知りませんよ。
ルリは確かに、育ちは恵まれない子だったかもしれません。
けど、あんなに仲のよさそうな子と別れを惜しむ姿を見たら、
少なくとも人並みに温かく接してくれる人が居たことは分かります。
あなたにはそれが分からないんですか?
…それでも私はあなたを想っています。
あなたはこの国をしっかり守ってくれる、頼れる賢い方です。
私を愛してくれています。ちゃんとわかっています。
でも、ルリはそうは思ってくれないかもしれませんよ。
一度ちゃんと話を聞いてあげても…」
「あーーー話にならんな。
あの年ごろのころ、お前は何か欲しいとねだったことが一回もないのか?
たくさんあるだろう?
一度もプレゼントをもらったこともないような子が、
何かをねだることなんてできるわけがない。
まずは自分が何かを欲しがっても問題がない立場だと分からなければならんだろう」
「…はぁ、分かりました。
あの子を理解するには時間が必要なようですね」
「そうだな…時間があれば解決することだ」
(もっとも…あの調子じゃ、ルリは私たちにその時間をくれないかもしれない…。
そんなことになったら、私は…)
それから二日が経過した。
アキトが一週間限定で芸能界に戻り、様々な活躍をして、
ついに佐世保に帰ってきた。
この期間、アキト、私、眼上三人そろって、一日五時間睡眠くらいしか取れなかった。
食事すら、食品系のCM撮影で食べることでフォローした。
…さすがに私も疲れちゃった。
私たちは会長室で反省会をしていた。
…アキトも、ちょこちょこ芸能界に出るようにしないと反動で出ずっぱりになりそうだから、
週に一度くらいは芸能人デーを設けて各テレビ局にでてあげるようにしようという結論になった。
でも、今回最も驚いたのは…。
「…まさか、一週間でPMCマルスの初期費用と同じくらい稼いじゃうとは思わなかったよ…」
「いっぱい仕事したもんね…」
「アキト君、芸能人収入ランキングぶっちぎりの一位になっちゃうわよ」
…いろんな心配はあったんだけど、全部解決しそうなくらいアキトの収入が大きくなっていた。
CM撮影をハシゴしまくり、モデルの仕事、テレビ番組も生放送…。
比較的短時間で完了できるものだけに絞って、仕事を受けまくった。
さすがにアキトはもう史上類を見ないレベルの『時の人』だもんね。すごいよ。
CMのギャラも一本一億円はざらにあるし、PMCマルスの資金不足と聞いて、
わずか一週間の間しか来てくれないってことで、
各事務所は『なんとかウチに出てもらおう』って、
もうみんなオークション状態で勝手に値を釣り上げてる状態になってる。
たった七日でギャラは五十億円超え、この期間のほとんどの芸能界のギャラを奪ってしまったとも言われてて…。
業界内ではこれを『炎の七日間』と呼んだんだって。
テレビ局のお偉いさんは露骨なことするよね。
大御所芸能人にも目をつけられてないか心配になっちゃうよ。
ま、新スタッフの給料も、弾薬の心配もしなくてよさそうだからよかったけど。
「ユーチャリスが動けるようになったんで、エステバリスもある程度被弾や消耗が減るだろうし、
弾薬自体も減らなくなるし。
これからはPMCマルスのお仕事もぼろもーけ♪ぼろもーけ♪」
「…ラピス、楽しそうだよな」
「えへへっ、経営たーのしっ♪
今のところはアキトがいる限りどうやっても勝っちゃう戦いだけど、
いくら稼いでおいても足りるってことはないからできるだけやらないとね」
「ラピスちゃん、本当に経営者向けよね」
アキトと仕事できるって、楽しいよ本当。
エリナとおそろいの会長秘書だし。えへへ。
「そうだ、ルリちゃんからなにか連絡来てる?」
「んーん。
なんか全く連絡がこないところを見ると、端末を奪われちゃったかもね」
「ええっ!?
それじゃ、ピースランドはルリちゃんを手放す気がないってことか!?」
「まーそんなの想定内だよ。
あ、まだアキトには話してなかったけど、もう下準備はしてあるの。
もう、そろそろ限界かもだから連絡が…」
「ほら、来たよ」
私のルリとおそろいの瑠璃色のペンダントが小さく鳴った。
私はにこっと笑ってそれを取り出した。
……はぁ、三日も経つのにまったく父と母と会話できません。
色々文句の一つも言ってやろうと思ってきたのに、そもそもこんな放置って…。
こんなことなら最初に手ひどく言ってあげるべきでした。
それにプレゼントの数々を一応全部開けてみましたけど、
お菓子、ぬいぐるみ、子供用化粧品、ドレス…たまに貴金属の類まで。
確かに私くらいの女の子だったらそれなりに喜ぶかもしれませんけど、
どれもこれも私の趣味ではありません。
…とはいえまったく使わないとそれはそれで申し訳ないんで、
ベットにぬいぐるみを並べてみたり、ドレスを着て姿見の前に立ってみたり、
化粧をしてみたりしますが…。
……寂しい。
やっぱりどんなに物があろうと、一人では楽しくありません。
ユリ姉さんに会いたい。
アキト兄さんの作ったご飯が食べたい。
ユリカさんとラピスと、もっとお話ししたい。
PMCマルスに遊びに行ったのはほんの少しだったけど…。
あの時間、本当に幸せだった…。
どうして…。
「どうして私はこんなところに…」
「失礼します、ルリ姫」
「…どうしたんですか?」
ノックに応じると私の世話をしてくれている従者の人が現れ、
やや時代がかった衣装で、丁寧ね礼をしてくれました。
「いえ今夜、国王がダンスパーティに招待したいと」
「…行きたくありません」
「ルリ姫、まだ怒っていらっしゃるんですか…?」
「私は!
…私は……」
…何度言っても、伝わらない気がする。
でも…だめ、ちゃんと言わなきゃ…。
言わなかったら、きっとわかってもらえない。
話すことも、きっと…。
「…私は父と母と、ただ話がしたいだけなんです。
プレゼントがほしいんじゃないんです…。
お願いです、30分でいいです。
時間を下さい」
「…ではダンスパーティーで」
「それではダメなんです。
親子が言葉を交わすには、人前では言えないことが…」
「…あまり困らせないで下さい。
ダンスパーティーに来ていただけないと、国王の面目が」
……仕方ありませんね。
親のせいで我慢させられるのは慣れてます。
これを通過しないと話してもらうのも無理そうですし…。
「…はぁ。
わかりました」
「では早速、着付けを」
私のそばに女性の従者たちが集まり、着替えをさせようとしました。
しかし…。
「ルリ姫、せっかくのダンスパーティーですよ?
そのような貧相な宝石をつけていては…」
私がラピスからもらった、瑠璃のペンダントをそっと外そうとしたのを見て、
つい大声をあげてしまいました。
従者の人は驚くと手を引っ込めました。
…従者の人はひれ伏して私に詫びました。
そこまでしなくても…いえ、もしかしたら…。
……そう…なんですか…そういうことですか。
もし私がこの場でこの人を許さなければ、
もしダンスパーティーに行くのを断れば、
この人達は従者の仕事を失って、この国に居られなくなる…。
きっと従者の人たちにも別の人生がある…私のような子供を持った人もいるかもしれない。
誰だって、きっとそうです。
自分と自分の大切な人を守るために我慢しなきゃいけない場面がたくさんあるのに…。
……言い過ぎてしまいましたね。
「…すみません、オーバーでした。
大丈夫です。改めてくれればかまいません。
私こそ怒鳴ってしまってごめんなさい」
「いっ、いえ!
滅相もございません!
ルリ姫、お顔をお上げください!!」
「くすっ。
じゃ、おあいこですね。
なかったことにしましょう」
「は、はぁ…」
従者の人たちの着付けを受けて…私は、しばらく待っているように言われました。
また今時ありえないくらい非効率に馬車などを引いてくるつもりでしょうけど…。
…はぁ、本当に疲れます。
この立ち位置、そしてなかなか顔を出さない父と母に、
もう、うんざりしてしまいました。
……しばらく、距離を置きたいです。
でも、どうしたら?
アキト兄さんたちと連絡を取ろうにも、なにも…。
それにうかつに外部に連絡を取ろうとしたら、
この城に勤める人たちの人生を狂わせてしまいそうです。
…どうすればいいんですか、もう。
「…ラピス」
私はラピスからもらったペンダントを握りしめて、ラピスの名前を呼びました。
…今の私には、これくらいしかできません。
心細いです。寂しいです。
『おっと、ようやく私を呼んでくれたね、ルリ!』
!?
ぺ、ペンダントからラピスの声が!?
「ラピス!?
ど、どうやって!?」
『こ~んなこともあろうかとってやつ!
ウリバタケにお願いして作った特製ペンダントだよ!
ルリがこのペンダントを握りしめて私を呼んでくれたらつながる無線機なの!
対人レーダーがついててルリが一人になってる時じゃないとつながらないし、
予想通り私を呼んでくれたの、うれしかったよ!
えへへ!』
…ラピス、あなたは本当に怖い子です。
人をしっかり見れる、とんでもない策士です。
でも助かります。
とりあえず外部と連絡を取るのに、周りの人に迷惑をかけずに済みそうです。
『しかも通信衛星から直に通信するタイプだから地球上のどこだってつながるの!
すごいでしょ!』
「ええ、本当にありがとう。
ラピスはすごい子ですね」
『えっへん!』
『る、ルリちゃん、大丈夫!?』
「あ、アキト兄さん!
お願いです、ちょっと困ったことになってしまって…」
…私は簡潔に事情を話しました。
父たちは私を放ったらかしにして話してくれないくせに、
部屋に閉じ込めてプレゼント攻撃をしている状態で、ほとんど一人きりで三日間過ごしたと。
今からでもここから逃げたいです、と伝えました。
『オッケー!
ルリ、必ず私達が外に出してあげるよ!』
「ごめんなさい、ラピス。アキト兄さん。
こんな目に遭うなんて思ってなかったから…」
『う、ううん。
助けに行くのは大丈夫、何とかするよ』
アキト兄さん、こういう時に情けない話し方するんですけど、
実際に行動するときはすごいですから、安心します。
『ルリ、ダンスパーティーに行ってみるといいよ。
きっと驚くことが起こるんだから』
…は?
もう何か仕込んだんですか?
根回し早すぎです、ラピス。
『…ら、ラピス?
お前なんかとんでもないこと仕組んでないか?』
『ひーみつっ!
計画を見てからのお楽しみだよ!』
……ふふ、なんか楽しそうな悪だくみしてますね。
じゃ、私もおとなしくダンスパーティーに出かけましょうか。
『おっと、ルリからコールすることもあるだろうから、
ペンダントの通話方法を伝えておくね。
あ、電池は体温で充電する仕組みになってるから、
ずっとつけてれば一日三時間くらいは余裕で話せるよ。
さっきの要領で握りしめて私かアキトの名前を呼べばそれぞれ通話がつながるから。
で、切る時は二回以上トントン指で宝石部分をたたけば通話が切れるよ』
「…何から何まで本当にありがとう。
外に出たらパフェをおごりますよ」
『やったぁ!』
ふふ、パフェくらいじゃ割に合わないでしょうに。
でもパフェを食べながらのんびりお話ししたり…。
今から楽しみになっちゃいます。
『じゃ、またねルリ。
楽しみにしててよ』
「ええ、また後で」
…通話を切ると、従者の人が私を迎えに来ました。
いいタイミングですね。
「…ルリ姫、急にご機嫌になりましたね」
「ええ、考えてみればダンスパーティーなんて初めてです。
ちょっとは乗り気になりました」
「それはよかった」
従者の人は、それなりに子供らしいと思ってくれたのかほっとしてくれました。
…いけませんね、ちょっと悪い笑いがこぼれちゃってるみたいです。
でも、本当に楽しみです。
あのラピスの事ですから、とんでもない爆弾を用意しているはずです。
……父、母。ごめんなさい。
でも年頃の娘を三日も放置はちょっとやりすぎです。
30分くらい割いてくれるだけで良かったのに。
ちょっと手痛い仕返し、させてもらいますよ。
「な、な、なんだこれ!?
ほ、本当にこんなことするのか!?」
「もっちろん!
やるからには徹底的に、不敵に、楽しくお祭りをやらなきゃ!」
い、いや…お祭りをする必要は全くないだろ?
ラピスに渡された、ルリちゃん救出作戦のシナリオ…。
これはアカツキと一緒に考えた作戦ってことだが…。
……ラピスはリアリストだと思ってたけど、意外と夢見がちな子だったのか?
作戦内容自体は、結構巧妙ですごいんだけど…。
その構成内容がひどい。いや本当にひどい。
「いいじゃない、アキト君。
後始末のことも考えた作戦なんだから」
「そ、それはそうですけど……。
って、もしかして眼上さんも一枚噛んでます?」
「もちろん。
私だけじゃないわよ。
各テレビ局も総動員でおっかけしに行くんだから。
あ、ユリさんも了承済みよ。
それにここで引き下がったらルリちゃんにも嫌われちゃうわよ」
……四面楚歌だこれ!?
ユリちゃんにうなずかれるとどうしようもないじゃないか!?
「それにね、
ここんところずっと徹夜でウリバタケもシーラ班長も作戦に必要な機材を作ってくれてるの。
アカツキもこの服をあの戦闘服と同じ素材で作ってくれてるそうだから。
今夜にはまたユーチャリスに乗って現地入りするよ。
あ、ついでに3つのチューリップをやっつけるよ」
「そっちがついでなのか!?」
「いーじゃない。がっぽり稼げるし。
仕事もプライベートも充実させられるし、いいことづくめだよ」
……予定の組み方がうまいよなーラピスは。
だが本当にこんなこっぱずかしいことをする羽目になるとは。
会長の癖に頭脳労働がまるっきりできないのが仇になってるよな…。
…うう、今からだって逃げたいぞ。
勘弁してくれ…。
格納庫の一角で、ウリバタケとシーラが何やら作っている。
その怪しい笑いと叫び声に、周りの整備員たちはドン引きしていた。
「…うわぁ」
「……ヒロシゲにいちゃん、とめなくていいの?」
「…とめらんないだろ、あれは」
ナオも警備のためにPMCマルス内部をうろついていたので見ている。
マエノもシーラを見ていたが、なぜかマエノの弟も一緒に居る。
「マエノ、お前なんで家族連れなんだよ」
「いやー…。
実はこの間、海外から両親が戻ったんすけど…。
両親に黙ってIFS入れてパイロットやったり、
この間の襲撃事件で右腕を失ったりしたもんだから、
『親に黙ってなにしてんだーーー!』ってめちゃくちゃ怒られて、
でも弟と妹たちが、
『無責任にヒロシゲ兄さんに任せて海外で仕事三昧の癖にーーー!』って反論して、
すごい大ゲンカしちゃって全員で家から出てったんすよ…」
「だぁって、ヒロシゲ兄ちゃん悪くないじゃん。
がんばったじゃん!」
「そうなんだけどよー。
でもだからってそろってPMCマルスに家出することないだろーよ。
俺とシーラはちゃんと謝るつもりだったのに…」
「「夏休みだからいいの!」」
「「いいの!」」
マエノ家、弟、妹が四人そろって声を上げた。
「ははは、はぁ…」
「…マエノ、お前も大変だな」
「…アキトほどじゃないからいっす」
「何杯目だよ!?
いい加減にしないと死ぬぞ!?」
……PMCマルスは、今日もにぎやかだった。
私は舞踏会会場に入ると、大きな拍手とともに迎えられました。
貧相と言われたペンダントも、別段気にしていないようです。
父は満足そうに私を見つめています。
…離れた、高い場所に設けられた王座に座って。
母は、そんな父を横目で見ています。
…母、ちょっとあきれてます?
・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。
父の長い長い演説が続き、私がうんざりしていると、
よく見るとみんなもあんまり楽しそうじゃないのが分かります。
父、喜んでくれるのは嬉しいです、純粋に。
でも相手の顔を見てあげましょうよ。
相手が何を思っているか、相手のために何ができるか…。
それを分かってこその国王じゃないですか。
いつも生活を支えてあげてるのは分かります。
だけどそれだけじゃダメなんです。
それを理由にふんぞり返っちゃダメなんです。
少なくとも…アキト兄さんみたいに、
一緒に戦いたいって思える人でいる方がいいんです。
…いえ、そこまではちょっと望みすぎですか、さすがに。
理想は理想、ベストになれる人のほうが少ないです。
この辺に折り合いをつけるのが大人でしょうかね…。
「それでは、ルリ姫、一言…」
「…えっと」
…何を言えっていうんですか。
私はこの国を歩いたこともなければ、まともに話したことすらありません。
国王はニコニコしながら私を見ています。
……まさか『助けてくれてありがとう』って言葉を期待しているんですか?
ちょっと困りますよ…取り繕うのはできますけど、そんなのは…。
「何をうろたえておる、我々の前で失礼ではないかッ!!」
突如入ってきた、従者の人が大声で入ってきました。
息を切らして…どうしたんでしょう?
「し、しかしこれを!!」
従者の人が父の下に駆け寄ると、何か…手紙?を手渡しました。
…直後、父は顔を真っ赤にして激昂しました。
どうしたんでしょう、こんなに怒るなんて…。
あ、なんか…一機のドローンが入ってきました。
この城、国境沿いは最新機器で防御していますが、
外で警備が厳しい分だけ、内部は人力警護で甘いんですよね。
開きっぱなしの窓から侵入してきたそれは、
何か手紙をばらまき始めました。
…私の手元にも、その手紙が。
……えーと。
!?
なんて辛辣で過激な文章!?
ラピスの言っていた通り驚く出来事が起こりました。
あのドローンは、ラピスの仕込みでしょうけど、
まさかこんな大胆でキザな予告状を送ってくるなんて…。
…とはいえ、アキト兄さんやユリ姉さんがこんな予告状を書くわけがありません。
ラピスか、ラピスに頼まれた誰かの作品でしょう。
…あ、父が地団駄を踏むように手紙を踏みつけています。
いい気味です。
私の話を聞かなかったせいで、一方的に面目をつぶされるなんて、
プレミア国王ほどの地位になれば、こんなことはなかなかありません。
プライドがズタズタでしょうね。
「今すぐに警備を固めろ!!」
「し、しかし国王、来るのは三日後ですよ?」
「分かっておる!
忍び込む隙間がないように準備しろ!!
二度とルリを誰かの手に渡すな!!」
…父、手紙の内容ちゃんと読みました?
相手はあなたの行動が原因だって言ってるんですよ?
せめて私のほうを見てくれてもいいんじゃないですか?
おーい。やっほー。
…駄目ですね。
しかし、この誘拐の予告状…大胆な癖に、巧妙ですね。
予告者の名前を書いておかないのが特に巧妙です。
私はマシンチャイルドの数少ない成功例です。
裏の世界では詳しい能力こそ広まってはいませんが、
体をいじられているとされていると知られてます。
そして表の世界では『世界一の王子様』アキト兄さんの妹として有名。
それに加えて今はピースランドのお姫様ですし。
だから狙う人が多いのは国王も知っています。
と、言うことはこの予告状を外部に知らせるわけにはいきません。
便乗して乗り込んでくる敵が増える可能性がありますから。
…しかし、そうなると今度は外部の協力者を募れなくなります。
情報を外部にばらさないために、自分の身内だけで対応せざるを得なくなります。
しかもピースランドは入国が楽です。
入国に当たっては収入を増やす目的で入国審査が楽です。
ピースランドは戦時下にあっても一日の来場者数が平均10万人前後のテーマパーク国です。
各国の身分証明書の提示、写真撮影と金属探知機検査、
手荷物検査のみでパスポート不要で入れてしまいます。
危険でなければ通さなければいけない規則です。
そうなると入国者をすべて厳密にはチェックはできません。
かといってピースランドの運営を一日休むという選択肢はとれないですよね?
この国で経済が完全に一日止まる打撃は、結構痛いはずです。
何しろギャンブルありで、動く額がけた違いですから。
信用にも関わることですし。
…ま、それでも無理してでも一日止めて私とちゃんと話をしてくれるような人だったら、
面目つぶれるような事態にはならなかったんだろうけど。
名前を具体的に書かなかったことで、
ここまで有利な状況が作れてしまっています。
本当に策士ですね。
もちろん私の戸籍上の兄であるアキト兄さんは容疑者その1です。
当然入国すればマークされるでしょうけど、
うまくかいくぐる方法をユリ姉さんかラピスが思いついているんでしょう。
……ホントにとんでもない爆弾を持ってきましたよね、ラピス。
・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。
その後、父になんとか話す時間を作ってもらおうと懇願しましたが、
誘拐騒ぎの最中に何を言っているんだと怒られました。
…父、そういうところですよ。
心配してくれてるのはいいんです。
普通にうれしいです。
でも話くらい聞いてください。
私を誘拐させない自信があるんでしょうけど、
もしアキト兄さん以外の人に誘拐されて、死ぬようなことがあったらどうするんですか?
こういう時に話さなかったら、それこそ後悔しますよ?
…はぁ。
とはいえ、もう決着してるようなものです。
冷静さを欠いたまま、人を動かしたってうまくいきっこありません。
相手の姿が見えないから、疑心暗鬼になってますし、集中力も欠いてます。
父だけじゃありません。
部下たちの動きもかなり戦々恐々としています。
動きは機敏ではありますが、硬いです。
…父は自覚はないようですが、元々かなり圧力をかけて人を動かしています。
そうでないと私に怒られたくらいでひれ伏したりはしません。
プレッシャーがすごすぎてみんな力が発揮できてないみたいですよ?
ホント…バカ。
ムネタケ、ありとあらゆる方法でボッコボコ。
変に若い子に説教されるよりずっと堪える、
いい歳して大失敗して親を呼ばれるという事態に追い込まれます。
一度、軍人という立場を忘れることを命じられるが、果たして?
そして同じくルリちゃんは、親に気遣ってもらえず…な展開です。
プレミア国王も予想外の角度から襲い来る敵にうろたえる事態に。
果たしてラピスの立てた作戦とは!?
ついでに戦うナデシコクルー&PMCマルスのユーチャリス一行の活躍は?!
ってな具合で次回へ~~~~~~~~ッ!!
気持ちを前面に出せないために、
半分くらい自業自得なところはあれど、
努力に対して結果が見合わない彼に幸あれ。
本当にユリカに出会わず、ナデシコに乗ってなかったら、
ムネタケコースの可能性もありえたんでしょうねぇ。
……いや、劇場版の動きを見るにそっちの方が意外とうまくいった…のか?
ああ、なんかこの状態を表現する言葉が思いつかなかったんですが、
こじらせている、っていうのが最適解な気がしますね。
自分の正義に酔って、現状も未来も計算できないまま、
色々事態をおかしくしているっていう。
同時に、精神病こじらせているという点もあったように思い、
ランボー1でのランボーの追い込まれ方に近いものをちょっと感じたので、
今回はこういう風に書いてみました。
出世できない焦りや強迫観念に追い込まれてしまっていて自分の眼をつぶすことでしか、
軍の腐敗と自分の無能から眼を背けられなかったんでしょうねー。
そんなわけでムネタケ、とりあえず仕切り直しです。
こんにちは、ルリです。
ピースランドにうんざりしていたら、大変なことになってきました。
それでアキト兄さんはまた、なんか変な人気を獲得しそうなことになってますね。
神出鬼没の怪盗紳士だなんて、
…もしかしてこれもラピスの作戦なんですか?
はぁ…ラピスもこういうの好きなんですね、意外です。
ま、ユリ姉さんも面白がってるみたいだしアキト兄さんには、
今回は『世界一の王子様』じゃなくて『世紀末の魔術師』を演じてもらいましょう。
え?犯罪スレスレだけどいいのかって?
いいんじゃないですか?
真似ばかりの国にはお似合いです、おふざけで負けてもらいましょう。
何しろこの世にひとつだけ『微笑んで許される悪がある』そうですから。
ルパン三世とかキャッツアイとか怪盗きらめきマンとかまじっく快斗とかペルソナ5とか、
怪盗ものがやたらに好きな作者が贈る、
アキト達が世間を引きずり回す系ナデシコ二次創作、
を、よ…。
……よ、よろしくニャン?
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代理人の感想
あー、1のランボーかあ。
結構近い感じがしますね。
トラウマと現状への不満がないまぜになったようなあれで。
そしてルリちゃんの両親が子供との触れあい方がわからなくておかしくも切ない。
まあさすがに三日間放置ってのは自業自得と思いますが。
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