おはこんばんちわ。
どうも、ルリです。
なんかあのアーパー爆弾娘、アクアのせいで映画を一本取ることになっちゃいました。
…って思ってたらなんかしらないけど三本分とってたみたいね。
大スペクタクルだかファンタジーだかメルヘンだか、
よくわかんない感じに盛りだくさんになっちゃったそうだけど。
まーアキト兄さんがいろんな意味でメソメソしながら撮った作品だから、
みんなで見よー。
それじゃ、カウントダウン。
よーい、ドン。
──俺たちは、あと何年戦うんだろう。
果たして戦いが終わるまでに生きていられるんだろうか。
戦いの発端も分からぬ、戦争が十年は続いていた。
俺が子供のころにこの国、ダイヤモンドランドは機械の獣たちに蹂躙された。
俺たちは親を奪われ、親の仇を討つために、生きるために戦うために鍛え上げられ…。
友達はことごとく死んでいき…勝ち目を感じられなくなった。
だが、俺たちの前に一つの『希望』が現れた。
『甲冑騎士』という、人間の秘めた力…魔力を媒介に動く、機械人形。
俺たち『百合の騎士団』は、鍛え上げられた剣術武術をそのまま巨大な甲冑騎士に振るわせた。
機械の獣たちはこれまでの苦労が嘘のように、まるで赤子の手をひねるように…。
連戦連勝を重ね、次第に未来への展望が開け始めた…。
訓練場の中で、剣術の稽古をしている者たちが居る。
彼ら、そこに居るもののほとんどは『彼女ら』だった。
不思議なことに…いや不思議ではなくこれは必然だった。
十年以上続く戦争で、最初に男たちが駆り出され、次に女たち、
世代が変わって少年たち、最後にこの少女たちが戦い始めた。
男性は全滅こそしていないが、その数はだいぶ減っていた。
結果として人口の比率は大幅に偏り、
ほとんど若者しか生き残らず、しかもその大半は女性だった。
「…より取り見取り」
「何やってんだ、バカ」
その数少ない男性が品定めするように訓練をのぞき見していたが、
同じく同僚に殴られて、それでもヘラヘラしていた。
「けどよう、もう戦いも終わるって頃だからよ。
終わったらあとは産めよ増やせよ地に満ちよっていうだろ」
「生き残ってから言え。
…俺たちの分の甲冑騎士があるかどうかわからねえんだぞ」
「そいつぁおっかねえな。
砲兵に回されちゃ、命がいくつあってもたりゃしねぇ」
「…世間話もいいけどボケっとしてると死ぬよ?」
ぼやいていた男二人は、後ろから近付いてきた黒髪の少年に敬礼した。
男二人は明らかに少年より年上だが、立ち振る舞いや気迫から格の違いが明らかだった。
二人に気を引き締めるように目線でも警告をすると二人を無視するように前に歩いて行った。
「地龍君!
剣の相手を頼むよ!」
「はい!アキト兵長!」
地龍は高い観客席から飛び降りると、長剣を受け取ってアキトの前に立った。
「アキト兵長と地龍副兵長がまたやるんだ!」
「今度は副兵長勝てるかな!?」
「いや、そりゃないでしょ」
「あはは、確かに勝てる気してないや」
「弱気になっちゃ困るよ、地龍君」
アキトは両手に短剣を持つと、地龍と向き合い…やがて戦い始めた。
「はっ!」
手数で押す地龍に対し、短剣でありながらもアキトは軽々と受けて見せる。
そしてほとんどの太刀筋を受けるのではなく、回避してしまっている。
「ちぃっ!
相変わらずかすりもしないなんて!」
「そらっ!」
アキトは地龍の懐に飛び込んで肘を打つ。
地龍はみぞおちを直撃され、悶絶する。
「かはっ!?」
「勝負、ありだね」
地龍を抑え込んで首筋に短剣を近づけて、勝ちを宣言した。
二人の戦いを見ていた少女たちはいっせいに沸き立った。
地龍はアキトにかろうじて起こされてむせ込んだ。
「けほっ…。
な、殴るのは止めてほしいんですけど、兵長」
「剣でやったら死んじゃうよ」
「そ、そうじゃなくて…」
地龍の抗議を今一つ理解していないのか、アキトは意に介していない様子だった。
すると、二人の前に、女性が二人現れた。
「アキト、お疲れ様。
相変わらず強いね」
「アキトさん、地龍さん。
お疲れ様です。
…アキトさん、あんまり副兵長をいじめないであげてください。
青あざが絶えないって相談されてるんですから」
「ユリカ、それにユリちゃん。
あ、うん。
今度から鎧くらいはつけるようにするから」
「そこじゃないよ」「そこじゃないです」
みんなに笑われてアキトは頬を掻いた。
気を付ける点が違ったようだが、どこを気遣うべきだったかは想像できなかった。
「それじゃ、みんな聞いて」
ユリカは顔立ちを引き締めると、胸を張って全員に呼びかけた。
先ほどまでの和やかな雰囲気が嘘のように訓練場内に緊張感が漂う。
「…いよいよ、最後の戦いが近づいてる。
甲冑騎士の量産も順調。
この調子だったら、ちょっとやそっとじゃ負けない!
だからそろそろ休んだりして英気を養ったりもしてほしいの。
みんなには明日と明後日は休養を申し付けます!
もちろん半日ずつ、半舷休息だけどね!
半分警戒、半分お休み!
訓練はその間禁止!
分かった?」
「敵はただの機械なんだから、遠慮することないよ!!
ぜーーーんぶ壊しちゃお!
でも、誰も死んじゃダメだからね!!」
ユリカの激励が終わると、訓練場に居た兵士たちはすべて解散していった。
そして、ユリカはアキトに近づいていく。
「…アキト、ちょっといい?」
「あ、ああ」
アキトとユリカは二人で城の中庭に消えていった。
地龍も、頭を掻きながら出て行った。
それと入れ替わるように、小さな女の子が訓練場に現れた。
一人取り残され、立ち尽くすユリの背中に抱き着いた。
「…ユリ姉さん!!」
「ルリ…姫。
…だめじゃないですか、こんなところでそう呼んでは」
「いいじゃないですか、
ほとんど団員のみんなにはバレてます」
「バレててもダメです。
…いいですか、ルリ。
私は補欠にすぎないんです。
あなたの身に、もしもなにかあった時の…」
ユリがかがんで秘密が漏れぬように小さくつぶやくように話すのを見て、
ルリは年相応に拗ねたように目線をそらした。
「…そんなこと言っちゃ嫌です」
「もうっ。
…せめてお城の方に行きましょう」
「…はいっ」
二人は城の中に入ると、
ユリも少しリラックスしたように話し始めた。
「もうすぐ平和が来るって考えると、さすがに嬉しいです」
「ユリ姉さんは私ぐらいのころからずっと…」
「大丈夫、私達にとって、戦ってるのが日常ですから。
…でも、本当は昔見た物語みたいに、恋して、遊んで…。
楽しい生活をしてみたいって思ってるの」
「…そういえば、アキト兄さんの事はいいんですか。
ユリ姉さん、ホントは…」
ルリの言葉にユリは歩みを止めた。
そして深い悩みを感じさせる表情を見せてうつむいた。
「…想いあってる二人を、止められませんよ」
「でも、ユリ姉さんはいつもそうやって我慢して…。
せめて気持ちだけでも伝えないと、そのままじゃ…」
「ううん、良いの。
…こんな風に終わる恋なんてたくさんあるもの。
それで終わったら、また少し大人になって…。
自分にふさわしい道が、きっと見つかるんだから」
「…はい」
ルリは、ユリの悲しい笑顔にうなずくことしかできなかった。
アキトとユリカは戦いが終わった後の事を話していた。
ただただ、今まで戦いしかなかった人生が終わったらどうなるのか。
二人は想像もつかないと空を見つめながら、穏やかな時間を過ごしている。
「ね、アキトは…戦いが無くなったら、どうしたい?」
「…言っても笑わないか?」
「アキトの事、笑うわけないよ。
…言ってみて」
「小さな頃から戦ってきたけど…。
戦いばかりの毎日に、いつも笑顔をくれた人、居るだろ?」
「え?」
アキトは太陽を見つめて、目を細めた。
「──コックさんになりたいんだ。
剣をふるうんじゃなくて、包丁を握る…。
みんなの笑顔を作る、コックさんに…」
「ふふっ」
「あ、笑わないっていったろ」
「ううん、笑うよ。
素敵な夢だもん。
…アキトに笑顔にしてもらっちゃった」
ユリカはすっと立ち上がると、アキトの頬を手でつかむ。
「…必ず生きて帰ろ?
だから…お祈りの…」
ユリカは目を閉じると、キスをしようとした。
だが、アキトは…。
「待ってくれ、ユリカ。
…その先はすべてが終わってからにしよう。
大丈夫だよ、必ず俺が守る」
「…約束だよ」
ユリカは寂しそうにアキトの頬から手を放す。
そして振り返った。
「アキトばっかり背負わないでよね!
私だってアキトを守るんだから!」
「──ああ」
アキトは歩いて去っていくユリカを見送った。
その手の中には、小箱に入った婚約指輪があった。
「…意気地なしかな、俺は」
言い出せなかった自分に、キスをできなかった自分に、アキトはただ呆れていた。
鉄工所では、全員がその熱量に汗を流していた。
職人たちが巨大な甲冑をしたて、魔導士たちが出来上がった甲冑騎士に呪術をかけ、
次々と甲冑騎士を完成していった…。
「シーラ工場長」
「あ、眼上導師」
「彼の…ホシノ兵長の専用甲冑騎士はできた?」
「え、ええ。
…できたはいいんですけど、本当にこれを?」
「もちろん。
…裏切者の設計した甲冑騎士は危険だと言いたいでしょ?
大丈夫、仮にも一時はホシノ兵長を育てた人の作ったものですもの。
最後の作品にそこまで危険なものはいれていないはずよ」
「だといいんですけど…。
何しろこの甲冑期の最高峰…『龍王騎士』の心臓部はブラックボックスです。
…通常の甲冑騎士は人の生命力と魔力を増幅して動くのに、
この『龍王騎士』は何を増幅するのか分からないんです」
二人は通常の甲冑騎士より一回り以上大きな、真っ白い甲冑騎士、『龍王騎士』を見上げた。
鈍重そうに見えるその巨大な騎士を心強そうに見ている眼上。
「これほどまでに強力な甲冑騎士を必要とするとは思えないけど、
ホシノ兵長という最強の兵士が乗り込めば敵なしよ。
…戦いを終わらせるにはふさわしいわ」
「そうですね…敵はあまりにも多いですから。
この騎士の持つ結界がなけりゃあっという間におっちんじゃいます。
もっとも、魔力がなくなっちゃえば、
この龍王騎士でさえでくの坊になっちゃうけど」
「それこそ心配無用よ、ホシノ兵長のもつ魔力は桁違いなのよ?
何しろ…あ、これはオフレコよね」
「今更隠すことでもないんじゃ?
味方は大体知ってますし…」
「公然の秘密でも、
堂々と世間話に出すわけにはいかないのよね」
「ま、そうですね」
二人はアキトの戦いぶりを想像してニヤッと笑った。
樹齢千年を超える大樹のごとく巨大なコンピューターを目の前に、
体のほとんどが機械化された男がたたずんでいた。
その前には骸骨が二人分横たわっている。
「また祈っているのか、D」
「…ああ。
奇妙なものだな。
呪術魔術のたぐいを捨てたとなったら急に信心深くなってくる。
仮にも創造主だからな」
「止めはしないが、神機の期限を損ねるなよ」
ジェイは巨木のごときコンピューターを仰いでDを注意した。
Dはただ、感傷を振り払うがごとく目を開けると、ジェイに向き合った。
「どうした、ジェイ」
ジェイはDの目の前に一つのクリスタルを差し出した。
赤色が点滅しており、何かを伝えようとしているように見える。
「奴らはトラップにかかったらしい。
…総攻撃を仕掛けるぞ」
「ああ。
あれは諸刃の剣だが…神機の計算通りであれば、奴らは自滅する。
…もっとも、設定しているデータ通りになってるかは怪しいが」
「人を数千年も見つめてきた機械だ。
信用には足るんじゃないか?」
「そうだな。
そこまで見つめてきたなら、間違うはずもないか。
愚かしい人類(おれたち)には似合いの最後かもしれんな」
「ほう…人類抹殺の目標達成は間近ってところだな」
「カエンか」
カエンは手に炎を宿していたが、握ってもみ消すと二人を見つめた。
「…この神機が、導師夫婦を呼び出し、
挙句に俺たちを選び、さらい、改造して…D、お前が首領になってから何年だ?」
「…まだ三年も経っていない。
背負う必要もないような戦いだが…。
俺たちの、生まれて初めて背負った『役割』だ。
必ず果たして見せる…。
この機械帝国アイアンリザードが目指すものは、破滅だけとしてもな。
俺たち五人…いや、七人だけの帝国が人類を滅ぼす」
「……すでに人類の九割は死に絶えたってのにな。
もう十分だって思うが…」
「バカ言ってんじゃねぇよ、ジェイ。
こんなところで日和るなんて、臆病通り越してマヌケだぜ。
…あのみじめな想いを、もう一度しろってのかよ」
ジェイは首を小さく振った。
カエンはそれを見ると小さく笑った。
「焼き尽くしてやろうじゃねぇか、
人の作りだした神機と、
人のクソッタレた部分が生み出した俺たちで…。
全兵士が王城の前に整列していた。
全員直立不動の体制を維持して、ただ一点を見つめていた。
アキト兵長が、白く、しかし軽そうに見える鎧を身に着けて立っている。
そして息を大きく吸って、声を上げた。
兵士たちは散開すると、城を囲うように並んでいた百に近い甲冑騎士に次々に乗り込んだ。
それを見送るようにアキトは見つめながら、隣に立つユリカに話しかけた。
「…大言壮語もいいところだな。
今までの戦いでは、誰も死ななかった試しがないっていうのに」
「でも、みんなにも死ねない理由が出来たよ。
アキトの涙は国で一番美しいけど、誰も見たがらないって評判なんだから」
「何だよそれ。
色んな意味で不本意だな。
…でもそう思ってくれるなら、それでいいか」
「今日は誰も泣かずに済めばいいね」
「…ああ。
じゃあな、行ってくる」
「うん、またね」
アキトはユリカのそばから離れると、自ら龍王騎士に乗り込んだ。
ゆっくりと装甲扉が閉じ、真っ暗闇になった中で小さくつぶやいた。
「ああ…そうだ。
もうすぐ終わるんだ。
この…なんでやってるのかも分からないのに、何でもかんでも無くす…。
誰が相手なのかも分からないような不毛な戦いも…」
だが、その直後。
アキトの目の前には本来映り込むべき、甲冑騎士の視点から見える風景ではなく…。
赤黒い、空間に魔法陣が漂う、あまりにも不気味で逃れられない封印を施されているような場所だった。
「な、なんだ!?
こ、こんな機能はないはずだぞ…!!」
『…俺を呼んだか?』
「なっ!?」
アキトは突如現れた黒龍の姿に驚いた。
この黒龍はアキトをいとも簡単に飲み込めるほど大きく、そして凶暴に見えた。
「呼んでなんかいない!
お、俺をこの空間から出せッ!」
『ずいぶんないいようだな…。
だが俺はお前自身でもあるんだがな…?』
「何だと!?」
『思い出せ…お前がなぜ戦い続けてきたのか…。
お前を戦いに駆り立てたのはいったいなんだったのだ?』
「何って…俺は、両親を殺されてその仇を討つために…」
『本当か…?
お前はどこかで自分で自分の記憶を封じたんじゃないか?
よーーーく思い出してみろ…』
アキトは幼いながら戦い始めたころを思い出し…違和感に気づいた。
(あの時、両親を殺したのは機械の獣ではなかった…。
では両親を殺したのは誰か。
数年前まで自分を育てていた自分の、育ての両親だ!
───当時、俺は両親を惨殺され、怒り狂って逆襲した。
当然、子供の腕力ではかなわず、叩きのめされて、
床に這いつくばってうめいていたんだ…今になって思い出した)
「あなた、なぜ今更こんな小童を?
確かに王家の血筋を引くものですが、魔力以外に特筆すべき点などは…」
「黒龍の呪いを施すのさ。
この怒りと憎しみが肥料になり、黒龍は大きく育つだろうよ。
そして小僧の育った黒龍を目覚めさせるためのカギを別に作って…。
二つが触れ合った時、目覚めるように仕組んでおいて、
不意に国の中で暴れさせてやれば、どうなる?」
「おほほ、あなたは本当に賢いですね。
もっとも、ずる賢いというべきなんでしょうがね」
「そう言うことだ…。
──よく聞けよ、小僧。
お前は本当は王子になるはずだったんだよ。
…だがなんでこんなところに落とされたか分かるか?」
(──やめろ。
それ以上言うな。
言われたら俺は…)
「今の王妃──イセリナには姉が居たんだ。
だがその姉は病弱で、一粒種の王子を生んでこの世を去った。
…イセリナの姉…プルミエールはどうしたと思う?
妹に後を託して、お前を王家に正式に迎えてもらおうとしたのさ。
その時…お前を取り上げたのは、俺たちだ。
…俺たちはお前を、適当な赤子の死体とすり替えて、
プルミエールに縁のある、元家来に預けた。
お前がお父さんお母さんだと真剣に思ってたのは、
ただの代理の親だったんだよ。
覚えがあるだろ?
妙に大事に育てられ、その特異な髪の色でいじめられても大事にされてたんだからな?」
その時、アキトの心に黒いものが芽生えた。
何を考えるでも、何を思うでもなく。
ただ心に闇が芽生えた。
アキトは闇を取り払うことができなかった。
「俺たちはイセリナには手紙の前半部分だけを渡した。
…王の事を頼みます、と書かれてる部分だけをな。
後半のお前の事を書いてある部分の手紙は捨てた。
…そしてこうして、育ったお前を刈り取りに来たんだよ」
電撃のような魔法を受け、アキトは悶えた。
命に危険があるようにすら見える、強いけいれんを起こしている。
「こんなつらい思い出は消し去りたいだろ?
それにまだガキだ…一人じゃ生きられまい。
…記憶を封印して、いい子にしてやるよ。
ついでにちゃんと自分のガキくらいには可愛がってやる。
それで…最後は……」
(そうだ、そうして俺は…。
だったら…。
俺は、こんな奴らの言いなりになんか──)
『言いなりになるんじゃないさ。
お前は復讐するんだよ、俺と一緒に…。
無責任にお前をもてあそんだ王族と…この世界すべてに。
善人面して自分たちに不利益になるお前の存在を捨てた。
お前が何者か分かっててそばに置いて、お前を兵士として使いつぶした。
そんなあいつらを殺したいと考えてる』
(違う、俺はそんなことを望んでいない!
俺が望んでいるのは平和な未来で、俺の身分なんてどうでも──)
『ははは、笑わせるな。
俺はお前が心の底で何を考えてるか…分かってるんだぞ?
何しろ…俺はお前の一部だ。
お前の自我の影で育った、双子だ。
…なあ、王族のやつらはどうしてお前に龍王騎士を与えたと思う?
敵に寝返った奴の設計した、何が入っているか分からないような甲冑騎士を。
お前を生贄にして敵を滅ぼせる絶対的な力を欲しがったのさ。
アキトは事の真偽を考える間もなく、絶叫した。
アキトの瞳が、黒く濁り、深く赤い血の涙を流して…。
絶叫とともに、血の涙は結晶化して、真っ黒い兜を構成していった。
そしてアキトの意識は急速に眠りにつき…身体も力尽きるように気絶した。
『もはや憎悪に自我を失ったか…。
国一番の騎士と言えどこんなものだ。
もっとも、意識の底では育ての両親を殺された憎悪は常に募り…。
仇とともに暮らした年数の長さが、
俺を取り返しもつかないほどの力を持った怪物に育ててくれたんだ。
もうお前は目覚めることもないだろう。
だが…。
「ぐ…う…」
アキトはうめいているが、完全に意識を失っており、もはや動ける状態ではなかった。
この赤い空間に居た黒龍はアキトの体を包み込み、姿を消した。
そして現実世界のアキトの体を支配して、ニヤリと笑った。
すべてを手に入れたかのような、不気味な余裕と自信に満ちた醜い笑顔で。
ルリはテラスから甲冑騎士が行き来する様子を見つめていた。
その瞳には不安とともに期待の色を帯びていた。
「お父様、この戦いが終わったら…。
本当に平和がくるんですか?」
「案ずるなルリよ。
甲冑騎士は無敵だ。
それにアキト兵長の龍王騎士は、
計算上では通常の甲冑騎士の十倍以上の力を発揮する。
まさに一騎当千だ」
自信をもってプレミア国王は答えた。
通常の甲冑騎士一台あたりでも、その威力は生身の騎士千人分と言われており、
龍王騎士はその十倍以上であると考えれば、その自信の根拠としては十分だった。
「そうです、ルリ。
アキト兵長はこの国をきっと救ってくれます。
信じて待つんです」
「はい。
それと…お父様、お母様、お願いがあります。
ユリ姉さんのことです。
戦いが終われば、私の立場も変わります。
…ユリ姉さんの出生を、公表してください。
私はあの人と姉妹として堂々と振る舞いたいんです」
「だが、ルリ…お前は王位継承権が第二位に落ちるんだぞ?
分かってるのか?」
「王位継承権なんて気にしません」
「…あなたの意向は尊重するわ。
確かにユリはこの人の娘です。
この人の過ちとはいえ、子は子ですもの。
でも、ルリ。
考えても見なさい?
もしもユリが王位につくことになれば、
アキト兵長の夢は失われます。
…戦後の配属希望を出してもらいましたが、騎士団は辞めたいそうです。
それでもいいんですか?」
ルリは困ったようにうつむいた。
ルリの考えを実行すれば、ユリが王族に入り、
血のつながりのあるユリカも国防から離れられなくなる。
当然アキトもそれに巻き込まれる。
そうなってはアキトの夢を奪うことになる。
それがユリの本意ではないと分かってはいるが、
一生最愛の姉を、人前で慕ってはいけないという枷を抱くことになる。
ルリは歯噛みしながらも、小さく頷いた。
「ユリは言いましたね?
血筋などきっかけに過ぎないと。
もしあなたと肉親でなくてもきっと同じように愛したと。
一緒にいられる今を大切にしたいと」
「はい…」
ルリはしょぼくれながらも、辛うじて前を向いていた。
王は振り向いてルリの涙をぬぐった。
「いつか話せる日が来る。
今はすまんが辛抱してくれ、ルリ」
「…分かっています。
どのみちユリ姉さんは国政をにたずさわりたくないとも言ってましたし。
代わりに私が国を背負って見せます」
「よく言った、お前ならこの国を立て直せる。
私の代では間に合わないだろうからな」
「…この国を守るのが、私達王族の生きる道ですから」
ルリは甲冑騎士が整列している姿をじっとみて、小さくうなずいた。
しかし、直後に見えた光景に目を疑った。
彼らが驚愕と、畏怖の感情を抱いたのと同時に、兵士たちはさらに怯えていた。
真っ白なはずの龍王騎士が、黒いオーラを纏っており、
その機体の色すらも黒く染まりつつあった。
兵士たちはあまりに禍々しい光景に、この世の終わりを見ているかのような表情を浮かべていた。
悪魔にとりつかれたとしか思えない、龍王騎士。
これから起こる出来事が想像できたのか、彼らも怯えながら剣を構えた。
いや、怯えていたから剣を構えた。
誰もが慕う、剣技は世界一の、ホシノアキトという最高の騎士。
彼に剣を向けたいというものは誰もいない。
だが、剣を向けたくないと思う相手ですら、
剣を向けなければ押しつぶされるほどの圧力を受けていた。
『みんなっ!!
私がアキトを止める!
みんなは敵に向かって!!』
『し、しかしユリカ団長!!』
『ユリカさん!』
『ユリちゃん、私の代わりに指揮が取れるのはユリちゃんだけだよ!
……アキトがどうかしちゃったら、私が止めなきゃ!!』
『ふ……笑わせるな、ユリカ。
俺を止めるだと?』
その場にいたすべての人間が凍り付いた。
あまりに冷たい、そして邪悪な声。
暖かで、ほがらかなホシノアキトのいつもの姿とまるで違う。
同じ人間から発せられた言葉とはとても思えないほどの違いを見せつけられ、
操縦魔玉を握るユリカの手に、より一層力が入った。
『この『黒龍王鬼』を止められるとでも思ってるのか?
龍王騎士でも通常の甲冑騎士の10倍以上の威力だが。
もはや20倍を超えるほどの力の差がある…。
…その団長専用甲冑騎士程度では太刀打ちできまい』
『ユリちゃん…行って!
アキトがみんなを攻撃し始めたら、誰が敵を倒すの!?
足止めにしかならないかもしれないけど、やってみる!』
『だ、ダメです!
せめて私も…』
『今ここで行かなかったら…私はユリちゃんを一生恨むよ!
私一人と国全体、比べるまでもないでしょ!
甲冑騎士が全機、空に舞った。
そして次々に雲霞のごとく空を埋め尽くす機械の獣たちに立ち向かった。
『アキト…いえ、あなたはアキトじゃない!
誰!?何の目的で!?』
『アキトじゃない…だと?
違うな、俺は紛れもなくホシノアキトだ。
もっとも…表に出てなかった影の部分だがな。
この龍王騎士のある仕掛けのおかげで出てこられた。
まあ…紛らわしいだろう。
お前がそういうなら『黒龍』とでも名乗っておこうか』
『あ、アキトはどうしたの!?』
『普段のいい子ちゃんの方は眠っているさ。
だが、苦しいだろうなぁ。
憎しみと悲しみに感情を燃やして、
文字通りこの黒龍王鬼の燃料になってもらってる』
『彼女はプレミア国王との婚姻を控えていたが…。
その前の死んだ旦那との子供を身ごもっていた。
プレミア国王はそれでもかまわないと婚約したが、
その子を出産したのと同時にプルミエールは死んだ!
子供も流産したとされたが、生きていたんだよ!
そしてホシノアキトのには育ての両親が、実はもう一組居た…。
その育ての両親に俺を預け、ある程度育ったところで憎しみの種を植え付けるために殺し、
『そ、れは…』
ユリカは何も否定できなかった。
だが、アキトが今、消え去ろうとしているかもしれない恐怖に震えても居た。
心が凍って身動きが取れなくなりそうなのを必死に抑えて、黒龍に対峙していた。
『まあ…そんなことは今となってはどうでもいい。
本当はアイアンリザードの攻撃に合わせて俺が覚醒し、
共闘する予定だったが…気が変わった。
『そんなことはさせない…私の命に代えても…!
ユリカの団長専用甲冑騎士は白いオーラを纏った。
迫る黒龍王鬼の禍々しいオーラをある程度押し返す様子を見せる。
『ほう?
お前もさすがに団長と言われるだけのことはあるようだな。
覚悟が魔力を増幅させたようだが…。
それでもせいぜい通常の甲冑騎士七台ぶんと言ったところか。
──三倍の力の違いと、ホシノアキトの剣技。
ユリカはただ、ひたすらに黒龍王鬼に突っ込んでいった…!
勝てるかどうかも、いや、おそらく勝てはしないだろう戦いに挑んだ。
意を決して出撃した兵士たちだったが、既に戦闘は混乱していた。
しかも先ほどのホシノアキトの変容を目にして、士気はガタ落ちだった。
その動きは訓練で鍛えたものと異なり、精彩さを欠くひどいものだった。
「みんな、なんとか持ちこたえて!
アキトさんとユリカさんなしじゃ押し切れない!!
全機、まずは生き残るのが最優先です!
この場は深追いをせず、
単独行動を避けて生きることだけを考えてっ!」
『『『りょ、了解です!!』』』
「くっ…やっぱり私じゃ…ッ!」
ユリは歯噛みした。
まだかろうじて死傷者こそ出していないが、
魔力切れで後退せざるを得ない状態に追い込まれているものが多数いた。
一台の甲冑騎士を担いで撤退させる場合、三台の甲冑騎士を必要とする。
その往復と精神的な動揺が、甲冑騎士を操るのに必要な魔力を著しく消耗させていた。
ユリはユリカと比べて個としての剣技は互角だが、指揮経験の差が出ている。
この場を持たせるだけで精いっぱいだと考えていた。
しかも、アキトが闇に囚われてしまったことを一番案じているのはユリだった。
当然と言えば当然だった。
(あの闇に飲まれたアキトさんとユリカさんがもし激突したとすれば…。
ユリカさんが死ぬのは明白です。
どんなに持たせても10分は持たないでしょう…。
…アキトさんを支配した闇の正体が敵だとしたら、次に狙うのは王族…。
ユリカさんとルリを同時に失うなんて、
しかも奪ったのがアキトさんだなんて、
私には耐えられない…!
この国そのものも持たない!
ユリカさんが倒れたとしても、
ルリは自分の身を守ることはできるかもしれないけど、
どれだけ持つか…。
…でも。
ユリカさんが万が一にも、龍王騎士の破壊に成功したとして。
ユリカさんがアキトさんを殺してしまう…。
ユリカさんといえどその罪に耐えきれるほど強くはないのに…!
私は…どうしたら!!)
ユリを葛藤させたのはどの結果も大切な人を失う、明るくない未来予想図だった。
ユリがこの場でユリカに加勢したところで、今度は全軍が崩壊する可能性がある。
現在、奮闘している地龍の駆る隊長専用甲冑騎士も逃げる味方の援護で身動きは取れない。
どうあっても、ユリカに援軍を寄越すことはできなかった。
そして仮にアキトが正気だったとしたらユリカと同じく、
戦えない自分に代わって前線に出ろと言っただろう。
ユリは幾重にも重い重圧を背負わされて、己の実力を発揮できぬまま、
雲霞のような機械の獣たちに立ち向かうことしかできなかった。
真っ黒な黒龍王鬼の振るう、光を吸収するようなさらに黒く深い闇をたたえた剣は、
ユリカの乗る専用甲冑騎士の剣を揺るがせていた。
状況は完全に防戦一方で、しかも黒龍がユリカを弄んでいるという方が正しい。
ユリカは焦っていた。
黒龍は、いつでも一太刀で自分を殺すことが出来る。
にもかかわらず、自分をいたぶって楽しむためだけにこんなに加減している。
(地力が違い過ぎる…!)
元々の実力も、甲冑騎士の性能も、かけ離れている。
ユリたちの戦闘が収束するのには、どうあっても一時間以上はかかり、
そしてかろうじて持ちこたえたところで、加勢に来れるはずがない。
ユリカはそう推測しており、事実、そうなっていた。
──ユリカは自分の死が、それもアキトの手で起こることを確信していた。
(どうして!?アキトがどうしてこんな目に遭ってるの!?
私は…どうしたら…!!)
……ぁ」
「アキト!?」
黒龍王鬼の動きが止まり、突然悶え始めたアキト。
その様子を見て、ユリカもまた、戸惑って動きを止めた。
「ゆ…りか…何してる…早く…攻撃しろ…ッ!」
「アキト、意識を取り戻したの!?」
「だが…もう持たん…!
早く俺ごと…ぐ…黒龍王鬼を斬れ…」
アキトはうろたえるユリカに檄を飛ばした。
ユリカも自分の中の葛藤を飲み込んで、アキトの願いをかなえるために、
自分の全魔力を剣に込めて、剣を振りかぶった!!
一時的に黒龍がアキトの体をうばいかえすが、
すぐにアキトが身体を奪い返して、黒龍王鬼のコントロールをさせないようにブロックした。
「…黒龍。
お前は俺のもう一つの姿なんだな…?
だったら…俺の望む通り、俺と心中してもらうぞ!
アキトとユリカの間に、ルリの声が割って入ってきた。
通信用の宝玉から聞こえてきた声に、二人は驚いて止まった。
『る、ルリ姫…!
だが、このままじゃ!』
『私の魔力で龍王騎士を一時的に停止させることはできます!
対策を考える時間くらいは稼げるはずですっ!』
ルリ姫は玉座の宝玉に触れると、身体に神秘的な光を宿らせ、
それを通じて、一時的に黒龍王鬼の色は、元の真っ白い龍王騎士に戻っていった。
『ユリカ団長!
今のうちにアキト兵長をッ!!』
『あ、ありがとうございます!
ルリ姫ッ!』
『アキト兵長はこの国の希望です!
こんなところで死なせてはなりません!
私もあまり長時間は持ちません、急いで!』
ユリカは甲冑騎士を近づけると、急いで龍王騎士に近づいて、
装甲扉を開くと、アキトを抱き起してなんとか脱出した。
『アキト、大丈夫!?
い、意識を失っちゃったの!?』
『ユリカ団長、黒龍王鬼から離れればまずは大丈夫のはずです!
急いでその場から離れて下さい!』
『は、はいっ!』
龍王騎士は完全に機能を停止して、膝をついたまま動かなくなった。
ユリカはアキトを城の衛兵に預けると、
かなりダメージの深い自分の専用甲冑騎士に乗り込んで戦線に復帰した。
『みんな!
ルリ姫の力で何とかアキトは助かったよ!!
今は意識を失ってるけど、無事なの!
何とか敵を押し返して、体勢を立て直そうっ!』
『よ、よかった!!』
『『『『『はっ!お任せ下さいっ!!』』』』』
ユリと兵士たちは安堵した。
アキトが戦線に戻れないという事実は重かったものの、
それ以上にアキトが敵になる可能性がなくなって、かろうじて希望が見えてきた。
その後、誰一人として死者を出すこともなく彼らは生き延びた。
だが、気がかりだったのは機械の獣たちも、ほどほどに様子を見るように帰っていったことだ。
普段は撃滅する勢いで立ち向かってくるはずなのに、
まるで自分たちと同じように体勢を立て直すために帰っていったかのようにすら見えていた。
Ⅾ、カエン、イン、ジェイ、エルの五人はモニターで機械の獣たちの数と状態を確認している。
エルは眉間にしわを寄せてあまりに大きな損害が出ていることにため息を吐いた。
「…思ったより黒龍の仕掛けは大したことなかったわけね。
ホシノアキトを行動不能にすることこそできたけど、
こちらの戦力のほうが損害が大きいわよ」
「この程度は計算通りだろぉ?
表面上はうまくいかなかったが、第二陣があいつらを滅ぼすのには十分な仕込みだと思うぜ」
「それはそうだが、その仕込みがうまくいっているかどうか…」
カエンはニッと笑うと、一台の端末を見せた。
「いや、大成功だ。
あいつらも精神的なダメージを負うだろう。
深夜を狙って、第二陣を仕掛ければこちらの勝ちだ。
第二陣がそのまま奴らを滅ぼせればそれでよし、
そうでなくてもほぼ全滅の大損害は間違いないだろう。
…その時は俺達が直々に手を下してやるまでだぜ」
カエンは言いながら押し殺すように含み笑いをした。
そう、彼らの攻撃はまだ終わってはいない。
引き返してきた機械の獣たちと同じ量の戦力が、まだ残されていた。
そして…。
すでに時刻は午前一時を回っていたが、医師は一心不乱にアキトを診察していた。
その表情は優れなかった。
「まだ意識が戻らないんですか?」
「え、ええ…こんなことは初めてです。
外傷は全くありませんし、魔力の量も安定しています。
この眠りが精神的な不安によるものであれば、もう少しうなされていいはずですし…」
ユリカとユリがアキトを見守っているがアキトは寝息を立てているだけだった。
それが規則的で正しい呼吸だったらまだ良かったのだが、
あまりに深く、小さく、静かすぎる呼吸をしており、心拍音もゆっくり静かすぎる音を刻んでいる。
「こ、こんなまるで死んでいるかのような眠り方は初めてみました…」
「そんな…」
「アキトさん…」
かろうじて助かったアキト、そして兵士たちの甲冑騎士も損傷こそ激しいが全機帰還している。
これでひとまず一安心…と思ったところで、アキトの脈がない、と騒ぎになった。
結果的にはそれは焦りによる誤診ではあったが、生命を維持しているとはいいがたい状況に変わりはない。
「──アキト兵長は、
死んだも同然の状態にされてしまったようです」
「「えっ!?」」
二人はイセリア王妃の発言に驚いた。
明らかに無事な様子で帰ってきたアキトだけに、その言葉が信じられない様子だった。
「王妃様、なぜアキトさんは…」
「…ユリカ団長の言っていた、黒龍のせいです。
黒龍は最後の最後で苦し紛れにアキト兵長を道連れにしようとしたようです。
アキト兵長が龍王騎士から連れ出される前にその魂だを幽閉したのです。
…人間というのは身体と…心、つまり魂で構成されています。
アキト兵長は今、体は魂のないがらんどうで、
龍王騎士の中に閉じ込められて、もがき苦しんでいるんです」
「「そ、そんなっ!!」」
「…私と国王とルリとで龍王騎士を見てきました。
やはり、あの中にアキト兵長が居ます。
二人分の魂も確認されています。
…かといって龍王騎士を解体したらその二つの魂がどうなってしまうか。
ヴァルハラに旅立ってしまうくらいなら、まだ救いがあるのですが…。
人間ではなく、機械として死亡したとなると、
ヴァルハラにたどり着けないかもしれません…。
…ルリも自分のせいだと気落ちして部屋に篭ってしまいました」
「ひ…ひどい…ひどすぎるよ…」
「ぐず…どうにかできないんですか、王妃様…」
絶望的な状況に、二人は泣き崩れてしまうが、
それでもアキトを助けようと必死に頭を悩ませていた。
「…一度、アキト兵長の身体を龍王騎士に戻すくらいしか方法がありません。
そうすれば黒龍もアキト兵長の身体に戻りますから、一緒に体に戻れます。
…しかしそうなると…」
「…結局、
戻ったところでアキトを殺すくらいしか方法がないって、ことですよね…」
「…そうなりますね」
場に、重苦しい空気が漂った。
あの場で死なないで済んだだけで、結局アキトを殺さなければならない。
その重圧に、彼らには耐えきれなかった。
機械の獣たちは倒しきれていない。
撤退した数がもう一度迫ってきただけでも対応しきれるかは怪しい。
こんな状況でアキトが死ねばどうなるか。
兵士たちも国も絶望し、勝てる戦いも勝てなくなる。
そしてユリカとユリはどれだけ傷ついてしまうかわからない。
彼らは希望が閉ざされようとしているのが分かった…。
「…私たちの王族のせいです。
裏切り者のあの二人の残したものを信じたばかりに…。
それどころか、姉様の子供をこんな目に遭わせたなんて…。
私はなんてことを…」
「王妃様、あなたのせいでは…」
「いえ、もっと早く気づくべきでした…。
あの髪の色、王族だけがもつ特異なまでの魔力量、
プルミエール姉様によく似た顔立ち、あふれる才能…。
もしかしたら血縁があるんじゃないかって思いながらも…。
私は結論にはたどり着けなかったんです。
…怖かっただけかもしれません。
ユリ、あなたが王の隠し子であると知った時にも私は…。
自分の醜い感情を押さえるので精一杯で、
姉様にも隠し子がいたらって、思ったら…」
「…王妃様、あなたは何も悪くありません。
国王の過ちだったかもしれませんが、
私は生まれて来なければよかったなんて思ってませんし…。
王族として認めてほしいなんて、一度も考えた事ありません。
私にとっては王族の血縁者であることよりも…。
ユリカさんという素晴らしい姉と、
ルリというかわいい妹の間に居られることが、
一番誇らしいことなんです」
「ユリ、あなたは…高潔な人ね。
人を憎むより愛することを選ぶことができるんだから…」
「そんなこと…ないです…。
アキトさんが…死ぬことすら不自由にされている今…。
私はアキトさんを苦しめている相手が憎くて憎くて…。
殺してもきっと足りないって、思ってます」
「ユリちゃん…」
ユリカは心配そうにユリを見つめた。
そして、ユリカは頷いた。
「ユリちゃん、あのね…。
お願いがあるの」
「なん、ですか」
「…敵の次の一手は必ず奇襲を仕掛けてくるよ。
黒龍のしたことが最初から折り込み済みだったとしたら、
私たちの総崩れを狙って、もう一度仕掛けてくる。
絶対に」
「えっ!?」
「それも今すぐにでも。
疲れが抜けきらないうちに。
…ほどほどで帰ったのはこの時間を狙うためのはずだよ」
「ど、どうしたら!?」
「大丈夫」
ユリカはユリを抱きしめると、ただ頭を撫ぜた。
子供をあやすかのように、優しく…。
「ユリ、カさん…?」
「大丈夫、この国は滅びないよ。
「ったく、寝る暇もないなんてね!!」
地龍は野戦食料をかじると、自分の甲冑騎士の状態を見た。
この専用甲冑騎士は損傷が少なかったため、一部装甲を取り替えるだけで十分な状態になった。
副兵長としてアキトに次ぐ実力を持っており、先ほどの戦いでも唯一飛ぶ鳥を落とす勢いで撃墜数を稼いだ。
他の兵の甲冑騎士が並ぶ一番前に立って、先陣を切れるように構える地龍の専用甲冑騎士。
だがその先にある、龍王騎士が見えて、地龍は冷や汗をかいた。
「!?
兵長と団長が龍王騎士に乗り込んだ!?
どういうつもりだ!?」
『ユリちゃん、地龍君!
私たちにもしものことがあったら、後をお願い!』
「後って…何をするつもりです!?」
兵士たちの悲鳴じみた叫びがこだました。
だがユリカはそのまま続けた。
『王妃様の見立てだと…。
黒龍っていう取り付いてる魂と、アキトの魂がそれぞれ一つずつあるんだって。
ってことは二人は同時に乗っ取れないから、私が乗り込んで抑え込むしかないの!
うまくいったら、私が黒龍を押さえてる間に、龍王騎士を使って、
アキトが敵をやっつけられるかも…』
『かもって…不確実なことを!
心中でもするつもりですか!?』
『どっちみち今は龍王騎士がなかったらみんな死んじゃうんだよ!!
こっちは動かせる甲冑騎士が半分もないんだから!!』
兵士たちは息をのんだ。
この不安定な最強の甲冑騎士がうまく動かなければ、どのみち全滅することになる。
しかしこの出撃でユリカとアキトが同時に失われる可能性も高い。
それどころか龍王騎士はまた黒龍にとりつかれて黒龍王鬼になり、
反転して自分たちを襲ってくるかもしれないのだ。
だからこそ、
「もし反転して来たら全員で止めろ。
そうでなければ二人で敵を倒せるだけ倒して死ぬ」
と、暗にユリカは言っているのだ。
誰もそれを止めるすべもなければ、代案を持ち合わせている者はいなかった。
悲壮な覚悟を抱いて、ユリカは龍王騎士に乗り込んだ。
──直後、龍王騎士は黒龍王鬼に逆戻りして、黒龍はアキトの身体にとりついた!
「バカめッ!!
せっかくホシノアキトが自分の魂を消滅させてでもと覚悟したってのに、
愚かなことをしたな!!
魂だけだったら身体がないから魔力が使えないからな…!
だからこそお前が体を持ってきてくれたのは好都合なんだよぉ!!」
「バカにしないでよ!
そっちだって身動き取れないでしょ!!」
ユリカはアキトの手足を縛りつけて席に座らせている。
「はんっ!
女のお前を抑え込むくらい、ワケないんだよぉ!!
ううっ!?
や、やめろユリカ!!
俺の事を気にしてる場合か!?」
「アキトこそ、バカ!!
キスもまだなのに、勝手に死のうとして!!
そうじゃなくたってこの状況で龍王騎士が出なかったらみんな死んじゃうでしょ!!
だったら一か八か、やるしかないよ!!」
「し、しかし…」
「いいから!
アキト、ごめんだけど席にがんじがらめにするよ!!
確かに私じゃアキトほどはうまく使えないけど、
アキトと黒龍の二人分の魔力が使えれば何とかなるでしょ!!」
「ユリカ、お前!?
黒龍…のっ?!
ば、バカじゃねーのか!?
この土壇場で…ホシノアキトの本来の魔力と憎しみの力を燃料にして、
「ぴんぽーん♪
この龍王騎士、ちょうどいい感じにテスト用の席があって二人座れちゃうし。
だから、アキト…色々、辛かったかもしれないけど、
まず敵をやっつけちゃうから、あとでもっかいゴメンねするから…ね?」
「頭おかしいんじゃねえぇか!?
うぐ…。
い、いや、そういうことなら、任せた…。
ユリカ、俺が情けないばっかりに…」
「だからぁ!そういうのはなしだよ!!
ぜーんぶやっつけて!
二人で戻るんだから!!
ねっ!!」
「ぐ……なんて奴だよ!?
お前、育ちが育ちなら世界一の悪党にでもなってんじゃねぇか!?
うごっ…。
…諦めろ、黒龍。
こうなったユリカは誰にも止められん。
だが…笑っちゃうな、ユリカ。
こんな危険な黒龍を出し抜いて、逆に利用しちゃうなんてさ」
「えっへっへ~、天才でしょ?」
「…いや、真剣に呆れてるぞ、俺は」
「ひっどーい!
あ、敵が来る!
アキト、歯を食いしばってないと舌をかんじゃうよ!!」
黒龍の叫びもむなしく…。
黒龍王鬼は雲霞のごとき敵の群れに突撃していった。
「……ユリカさん、ず、ずるがしこい…」
「…団長って、ああいうの得意なの?」
ユリは毒気を抜かれたように自分の甲冑騎士の中で脱力した…。
D達は唖然としてモニターを見つめていた。
黒龍王鬼は一方的に機械の獣たちを蹴散らしていた。
国の内側からすべてを破壊しつくすために、またホシノアキトの力を利用するために準備された、
黒龍王鬼は…逆に自分たちの計画を壊すために利用されていた。
前回の襲撃より五割増の数をそろえたはずの機械の獣たちは、
すでに七割程度が失われていた。
両手に持っている実体のない伸縮自在の強力なエネルギーの剣が、
すべての機械の獣たちを撃滅しようとしていた。
「嘘だろ…」
「全滅したら再生産には半年はかかるぞ…今すぐにでも引かせるべきだ、カエン」
「じょ、冗談だろ!?
あいつらもまだうまく黒龍王鬼を扱えないはずだ、
ならまだ攻めれば!!」
「…ダメだ。
俺達の残りの寿命は一年もないんだぞ。
再起を図るためにも、奴らを呼び戻すんだ」
「く…」
カエンはそれ以上は何も言わなかった。
そして全員の意思が揃ったところで、機械の獣たちに撤退するように命令を出した。
ユリはぽつりとつぶやいた。
「敵が、引き始めた…!」
待機していた全甲冑騎士、そして控えていた工員までもがすべて歓声を上げた。
雲霞のごとく空を覆いつくしていた機械の獣たちは、撤退し始め、
森林地帯には残骸が数多く転がっていた。
そして…。
「ユリカさん!アキトさん!」
二人を乗せたまがまがしい黒龍王鬼が、工場に戻ってきた。
しかし、龍王騎士のすさまじい性能をさらに倍まで引き出した黒龍王鬼…。
その姿に畏怖を感じながらも、全員が近づこうとした、が…。
ユリカの叫びに全員が硬直した。
そう、戦いはまだ終わってはいない。
黒龍は、いまだにアキトをとらえており、
降りてしまえばアキトは再び黒龍王鬼に魂を囚われてしまう。
それを解決する方法が、全くない。
さらに…。
『うぐぅっ…う、うう…』
『ユリカさん!?』
『く、く、く…ユリカ、お前の言った通りだ。
俺はホシノアキトとともに育った双子のような存在だが…一体になってるわけじゃない。
常に後ろに隠れて、機会をうかがっていただけだ…。
アキトからユリカに乗り移るのはかなり骨だったが…。
この通り、縛り付けられたアキトを人質にできる状態で、
『敗軍の将は潔くってなぁ。
お前たちはこの時点で負けなんだよぉ。
兵長と団長はすでに俺の手の中だ…しかもこっちには黒龍王鬼がある。
威力は見たとおりだ。
お前らが束になってかかっても、五分と持つまい。
俺の靴を舐めて跪けば命だけは助けてやってもいいぞ?
まあ…アイアンリザードを滅ぼした後は、
管理しやすいように、相当数を間引くつもりだがな。
そして俺は次々に体を乗り換えて永遠に生きながらえるわけさ…。
アキトが悲痛な叫び声をあげる中、
ユリカの身体を乗っ取った黒龍はケタケタと笑った。
『悔しいかぁ?
自分が命を懸けて守りたかった娘が、
国を亡ぼす存在になり果てるのは、悔しいだろぉなぁ~~~?
ホシノアキト、お前の中は居心地が良かったし、憎しみの炎も心地よかった。
だが、もう用済みだし、女の身体ってのも一度味わってみたかったから…。
な、な、な…』
だがその直後、その場にいた全員が目を、耳を疑った。
ユリカは、自分の持っていた剣を肺に突き立てていたのだ。
『げ、げほっ!?
な、何しやがる、このアマ!
ぐ、ぐああ…時間がなくて…の、乗り移れん…い、しきが…』
黒龍の魂は、ユリカから抜け出ていった。
黒龍はあくまで間借りしている存在にすぎないため、
本体のユリカの身体の力が弱ると、強制的に出ていくしかなかった。
またアキトの身体に移るのも力不足で、黒龍王鬼の中にしがみつくのが精一杯だった。
──だが、ユリカも致命傷を負ってしまっていた。
『けほっ…ご、ごめ…ん…。
こんな方法しか思いつかなかったの…』
アキトは自分のうかつさを呪った。
黒龍王鬼を利用する時の明るい顔に、不安を感じていなかった。
ユリカなら、この絶望的な状況でも何とかしてくれるかもしれない…。
そんな希望を、アキトは抱いてしまっていた。
そして見事、実際にこの戦力的不利をひっくり返して勝ってしまった。
だが、戦いはともかく、アキトと黒龍を切り分ける方法はさすがに思いつくことが出来なかった。
『あ、アキト…早くここから出ないと…。
また取りつかれちゃうよ…けふっ…』
ユリカは自分に突き立てた剣を使ってアキトの拘束を解くと、
アキトは急いで龍王騎士を飛び出た。
「い、医者を!!
まだ助かるかもしれない!!」
「む、りだよ…。
ちゃんと死ねるように力いっぱい刺しちゃったもん…。
ゆ、りちゃん…こっち、きて…」
「ゆ、ユリカさんっ!!」
「団長…そんな…」
「嘘…」
ユリは、ユリカに近付いて手を取った。
そして今にも掻き消えそうな声を聞き取ろうとした。
兵士たちは全員、絶句して崩れ落ちていた。
軍を指揮する能力は誰にも負けず、生身での機械の獣たちとの闘いでも、
勝率、生存率の高い戦い方を編み出す、兵法の天才のユリカを失う。
それはアキトを失う絶望とは別の絶望を彼らに抱かせた。
「俺の命を助けるためにこんなことを…。
俺のせいで死ぬなんて…」
「だ…め…アキトはこの国の希望だよ…?
ぜ……ぜったい死んじゃダメなの…」
「ば、バカ…!
お前が死んだら、俺は…おれは…!」
「アキ…トのせいじゃない…。
でも……悔しいな…アキトと、もう一緒に居られないや…。
だから、お願い…ユリちゃんと…私の分まで……生きて…」
「わ、私じゃユリカさんの代わりは務まりません!
お願いです……治療を受けて下さい…」
「もう…そんなこと言っちゃダメだよ…。
後悔しちゃうもん…。
それに、ユリちゃんがいるから私は…安心して…逝けるんだから…」
ルリも、ユリカに駆け寄った。
ふさぎこんでいたが、敵の撃退に成功したと聞いて、駆けつけてきた。
「死ぬなんて許しません…ッ!
死んじゃったらダメです!嫌です!
「ルリ、姫、まで…。
こんなところで、そんなこと言っちゃダメですよ…。
確かに私…ユリちゃんを挟んで姉妹みたいになれるかなって思ってたけど…。
でも、嬉しいな…。
こんなにかわいい妹が…いるなんて…」
「嬉しいなら、生きて…お願いです…。
あなたが居なかったらみんな、どうすればいいか…」
「大丈夫…。
敵は…あと半年は攻めてこれないよ…。
どんな優れた生産力があっても、間に合いっこないから…。
戦力を、立て直せば絶対、負けないから…ごぷ…」
ユリカの声がさらにか細くなる。
段々と肺の中に血がたまり、呼吸が浅くなってきた。
すでに顔には死相が出始めていた。
アキトは小さな箱を取り出すと、婚約するために準備しておいた指輪を見せた。
「あ…」
「だから、あきらめるなよ、ユリカ」
「…わぁ、うれしい、なぁ…」
アキトがユリカの左手の薬指に指輪をはめると、
ユリカはじっとその指輪を見つめた。
「な、戦いが終わったらなんてもう言わないから…。
傷が治ったら、すぐ結婚式を挙げよう。
だから…」
「…アキト」
ユリカは涙を浮かべて、アキトの瞳を見つめた。
その顔が笑顔だったのが、アキトはせめての救いだと思った。
だが…。
「ごめん、ね」
ユリカの謝罪の言葉に、アキトは自分が宙に放り出されたような感覚を覚えた。
もう、ユリカは助からないと確信を持っている。
実際、致命傷でどうやっても助かりようがないと誰から見ても明らかだった。
そして、自分の左手の薬指から指輪を抜き取ると、
自分のそばにいたユリの左手の薬指に指輪をはめた。
「ユリカ、さん…?
な、に…してるんです…」
「…ユリちゃん、私の代わりに、アキトを…。
幸せにしてあげて…」
「な、何言ってるんですか!?
受け取れません、こんな…こんな…!」
「ユリちゃん、指輪貰ってもヴァルハラには持ってけないよ…。
それに、ひゅぅ…けほ…んぐ…アキトの心までもっていかせるつもり…?
ダメ。それだけは、ダメなの…。
アキトは生きて幸せになるんだよ…。
ユリちゃんと、ふたりで…。
私の…分まで…。
アキトがヴァルハラにも行けなくなるかもって話してた時…。
わかっちゃった…ユリちゃんは私と同じくらいアキトが好きだったんだって…。
げほ…だから…お願い…。
私が、かなえられなかった夢を…必ず…」
「バカ、死ぬなって…だから…」
「約束して、お願い…これじゃ死んでも死にきれないよ…」
意識がもうろうとしてきたのか、ユリカはもうどこを見ているのか分からなくなり始めている。
ユリカのこぼれる涙を見て、アキトは耐えきれず、叫んだ。
「うん…ありがとう…。
ユリ、ちゃんは?」
「うぐ…私にアキトさんを奪わせるんですか…?」
「そんなこといっちゃ…げほっ、うげほっ…う…ぅ…」
ユリカがせき込んで意識を今にも失い、息絶えそうになっているのを見て、
ユリは意を決して答えた。
「あぃ…ぁと…」
言葉を発することも、もはやできなくなりつつあり、
あと数秒で…もうユリカが息絶える、その時。
アキトはユリカの唇に口付けようと近づけた。
だが、ユリカは。
目線でダメだと制止して、ただ、小さく微笑んで。
もう、あなたはユリちゃんの旦那さまだよ、と言いたげに。
自分がキスをしたかった感情を押し殺して。
ただただ、アキトと妹に託した約束を守るようにして。
それでも、後悔を感じさせない、幸せそうな顔で…。
───そっぽを向いて、息絶えた。
「ゆ…り……か…。
ユリは声を発することができなかった。
ユリカは最後の最後まで、自分のためではなく誰かのために戦った。
国のため、愛するアキトのため、愛した妹たちのため、仲間の兵士たちのため。
最後に受け取ることを許されるであろう、最愛の人の手向けすらも断って、逝った。
その事実が、ユリを責め立てた。
ルリも同じ気持ちで泣き崩れていた。
そして彼らを見つめていた兵士たち全員も…。
アキトは叫ぶことしかできなかった。
ただ言葉もなく涙を流す彼らの代わりに叫び続けた。
その慟哭はどこまでも深く…。
己の弱さを嘆くがごとく。
ただただ、夜が明けるまで続いた。
〇作者あとがき
どうもこんばんわ、武説草です。
外伝ということでこんな話になっちゃいました。
ジャイアントロボの外伝くらいかけ離れてる気がするけど気にしない!!
ダンバインと進撃の巨人がごっちゃになってるっぽいけど気にしない!!
次回も色々あるけど気にしない!
気にしない体操~(気にすると書けなくなる体操)。
でも読み返すとちょっと映画っぽくならなかったのは反省。
なんていうか一時間の単発ドラマっぽい?
ってなわけで次回へ~~~~~~~~!!
〇代理人様への返信
>アクアが超有能w
>テレビだとただの変人だったのにw
数か月、映画のためにちゃんと人と話して物事を進めるようになったら妙にレベルアップ。
…でも実はその立役者が同行してたテツヤなんだよなぁ。
テツヤ、適当に手伝うと思いきや、意外と親切に教えてた説。
>>映画許諾
>みんなビンボが悪いんや。
>いや悪いのは割とアキトくんですがw
一回当たりの出撃費用、損害出なかったら割引制度、
色々やってたらこういう時にお金が足りなくなるっていう。
企業の資金内部留保は危険ではあるけど、こういう会社はいくらあっても足らねぇ…。
……ちなみにホシノアキト君のお小遣いは二万円です。
「俺、忙しすぎてあんま使わないから…」
※芸能活動中の食事代はかなりかかるのと、経費計算もしやすいので、
すべてPMCマルスの法人クレジットカード使用だそうです。
>>落ち目の会長
>前の世界ではアカツキがそのポジだったのにw
あちらの世界ではクリムゾンが躍進したので、当然ネルガルが躍進すると、
クリムゾンは過剰に落ち込む…とはいえ細かい原因が本人にもあるわけですね。
…ブラック企業は潰れろ(ボソッ
~次回予告~
…ホシノルリです。
あの、作者?頭大丈夫?
そろそろ連載一年くらい続いてるのに、こんなヘンテコな外伝をあと二本も書くわけ?
さすがに読者もついていけないわよ?
そもそも本編に関係なさそうな気がするけど。
ま、いいけど…。
今回はPMCマルスのメンバーが中心だったけど、
次回はそれなりにナデシコっぽくなったりして?
書いてたら長くなるのがお約束!もうちっと文章勉強しようね!な作者が贈る、
そんなんありか系ナデシコ二次創作、
をみんなで見よー…あーあ。
感想代理人プロフィール
戻る
代理人の感想
・・・学生の自主製作映画かこれはwww
脚本アクアじゃねえだろうなw
※この感想フォームは感想掲示板への直通投稿フォームです。メールフォームではありませんのでご注意下さい。