カグヤの屋敷の使用人達が屋敷の入り口に勢揃いしている
そして 入り口の前に停められたリムジンから1人の男が降りてくる
「「「「「旦那様、お帰りなさいませ」」」」」
「うむ」
この男の名はサカキ・オニキリマル
数年前他界した父からアスカインダストリを受け継いだ現・会長
そして カグヤの父でもある
「旦那様、お鞄を」
「ああ」
ミヤオカが恭しく前に出てサカキの鞄を持つ
「カグヤはどうした? 出迎えに来てないようだが・・・」
「お嬢様は・・・看病を・・・」
「看病? イヌのアレクサンダーか? あいつも年だからなぁ」
「いえ、今日も暖炉の前で寝そべっております」
「ならば ネコのレオナルドか? 胃腸が弱いとは聞いていたが」
「レオナルドはいたって健康でございます」
「まさか 馬のクレオパトラか! カグヤのヤツ落馬とかしたのではなかろうな!?」
「そんな事は ございません クレオパトラは今日も 元気に部屋を駆け回っております」
「だったら なんだ オウムのランスロットか? イグアナのハイレディンか? ハムスターのナポレオンか?
象のメルカトールか? 白熊のマホメッドか? ユニコーンのエーディンか? プテラノドンのトリスタンか?」
「いえ、違います お嬢様は・・・」
「なんだ他のペットか? それとも、またどこぞから 妙なモノでも拾ってきたのか!?」
「ですから テンカワ アキト殿を」
ピタっと足をとめて 振り返るサカキ
「テンカワアキト? また妙な名前を付けたものだな」
「何を仰いますか 火星に住んでいた頃 隣に住んでいたテンカワご夫妻の息子さんですよ
ケガをなさっておいででしたので カグヤお嬢様は一時も離れる事無く看病を続けております」
やっと 思い出したのかサカキはポンと手を叩き
「おうおう 覚えているぞ、そうか カグヤが拾ってきたのは 馬の骨か
ってなにいぃぃぃぃぃぃぃッ!!」
サカキの年のわりに元気なシャウトが屋敷中に響き渡った
機動戦艦ナデシコ if
case3.カグヤ・オニキリマル
後編
「諸君、緊急事態だ・・・」
何故か薄暗い部屋に集められた 使用人の代表者達
サカキは一番奥の席に座って腕を組んでいる
「旦那様 急に何を?」
「早く席につかんか!」
「は、はい!」
サカキに怒鳴られ 全員それぞれの席につく
「で・・・カグヤの看病は どれだけ続いているのだ?」
「はぁ・・・もう2ヶ月近くになります おかげでアキト殿も完治に向かわれております」
「馬の骨の事など どうでもいい!」
サカキはドンとテーブル叩いた 相当頭にきているらしい
「なんとしてでも カグヤと馬の骨を引き離すのだ!
カグヤにはアスカインダストリを継ぐに相応しい男と結婚してもらわねば困る」
「あたしゃ お断りしますよ」
そう言って席を立ったのはヨツハ
「なんだと、私に逆らうのか?」
「アスカインダストリが火星を撤退する時に 孤児だったアキトの坊やを見捨てたのは旦那様じゃないですか
あの時、どれだけカグヤお嬢様がお嘆きになられたか ご存知でないでしょう?
あたしゃ お嬢様を泣かせるような命令は死んでも聞けませんね では失礼します」
ヨツハは言いたい事だけ言って 部屋を出て行ってしまった
その頃、カグヤとアキトは
「はい、アキト様 あ〜ん」
「カグヤちゃん もうギブスも取れたし 1人で食べれるよ」
「いけません、骨折は治りかけが肝心なのですから」
それは 風邪だ
「そ、そうかなぁ?」
しかし、煮え切らないアキト カグヤはここで実力行使に出る
「もう、仕方ありませんわね・・・でわ いつも通り口移しでッ!」
「うわぁ〜〜〜〜〜!!」
ちなみに ギブスがとれたのは25日前の事だ
部屋に集まったメンバーの非難の視線がサカキに突き刺さる
いたたまれなくなったサカキは矛先をミヤオカに変える
「ぐ・・・ミヤオカ!」
「私も聞けませんな この皺腹 かっさばけと言われるなら かっさばきましょう
しかし、お嬢様がお嘆きになられるような命令は聞けません」
「貴様もか・・・」
他の者達も サカキに冷たい視線を向けている
考えてみれば ミヤオカやヨツハのような 火星に住んでいた頃の使用人はほとんどいない
地球に来てから雇った者と火星にいた頃もこの地球の屋敷に残っていた者が大半だ
そして その新しい使用人達にとっての主人は実質 カグヤなのだ
地球の屋敷に残ってた古株の使用人にとっての主人は先代
ミヤオカ、ヨツハの両名がカグヤについてしまったら サカキの味方をする者はいない
ビジネスにおいては 会長としてその敏腕ぶりを知らしめているサカキも
家庭においては「うだつの上がらないお父さん」にすぎないのだ
サカキとミヤオカの間で火花が散った
一方、カグヤとアキトは
「アキト様、リハビリの時間ですわ」
「ああ、そうだね」
歩く練習をはじめるアキト
長い間 ギブスをつけたままの生活のせいか
ギブスをはずした直後は歩くことすらままならなかったが
「お上手ですわ アキト様」
「いや、もう手を借りなくても歩けるって」
その時、カグヤの目が光った
蹴りゃ!
「うわっ!」
突如バランスを崩したアキトはカグヤの方に倒れ込む
「あん☆ アキト様ったらダイタンですのね」
「カ、カグヤちゃん、今 足ひっかけなかった?」
「気のせいですわ」
「そう・・・」
医者曰く アキトの足はマラソンを完走できるぐらいに回復してるとの事
サカキとミヤオカの睨み合いは続く
「ミヤオカ・・・貴様をクビにしてもいいんだぞ」
「旦那様は 去年のお嬢様のお誕生日にこの屋敷と屋敷に関するすべての権利を
プレゼントなされたと記憶しておりますが・・・?」
「ぐ・・・」
「私をクビにできるのは お嬢様だけです」
サカキの負け
こうして 緊急に開かれた秘密会議はサカキの完全敗北をもって幕を閉じた
カグヤとアキト再び
アキトの服をひっぺがしながら 実に楽しそうなカグヤ
「さぁ、アキト様 清潔にしておかないと 治るケガも治りませんわ」
「いや、カグヤちゃん お風呂ぐらい自分1人で入れるから・・・」
その言葉を聞いたカグヤは急に涙を浮かべ
「そんな! もうカグヤは必要ないと言うんですか!?」
「いや、そうじゃなくて・・・」
しかし、カグヤは耳を貸さずに泣き崩れ
しかも悲劇のヒロインちっくに アキトの足にすがりついた
「うぅ、アキト様 カグヤを捨てないでください カグヤはカグヤは・・・」
「だから、カグヤちゃん・・・」
そして 1分も経たぬうちにカグヤはやおらすくっと立ち上がり
「アキト様、お風呂に入るのにカグヤだけ服を着ているのは不公平ですわねでは!」
今度は自分の服に手をかける
「わあぁ! カグヤちゃん はやまらないで!!」
その頃 扉の前でメイド達は・・・
部屋の中の喧騒が丸聞こえで部屋に入る事もできず塩の柱と化していた
そして、唯一人 ヒミツの会議室に残されたサカキは受話器を片手に
「・・・私だ、彼女を呼び出せ エマージェンシーだ」
また諦めてなかった
その会議室の扉の前で聞き耳をたてるミヤオカとヨツハ
「・・・まだ、諦めてないみたいだね 旦那様は」
「そのようじゃの、さて どうしたもんか」
「なんだい、お嬢様を裏切るってのかい?」
ヨツハの非難の視線が突き刺さる
「そんなつもりはない、ただ あまり旦那様を怒らせるのもな・・・」
「そういや 旦那様は誰を呼び出したんだろう?」
「さぁのぅ・・・」
その翌日、屋敷を1人の女性が訪ねてきた
「叔父様に呼ばれたのですが・・・」
「おや、エマちゃんじゃないか久しぶりだねぇ」
屋敷を訪ねてきたのは カグヤの幼なじみのエマ・ホウショウだった
カグヤとは火星に住んでいた頃からの付き合いで アキトの幼なじみでもある
「カグヤ様どうかしたんですか? 最近 屋敷に閉じこもりっ放しと聞いていますが」
「いや、それがねぇ 聞いとくれよ」
当然 ヨツハやミヤオカとも面識があり ヨツハは迷うことなく玄関を通した
叔父様、つまりはサカキに呼ばれたというのが気になると言えば気になるが・・・
その頃のカグヤとアキトは
「アキト様、おはようございます 今日はずいぶんとゆっくりですのね」
「いや、3時間ぐらい前から起きてたんだけどさ」
何故かアキトの手足はカグヤのそれによって ガッチリ ホールドされていた
「いやですわ アキト様ったら ずっと私の寝顔を見てたんですね?
カグヤは恥ずかしいですわ・・・」
「いや、そうじゃなくて・・・そろそろ 放してくれないかな?」
まだ、ホールドされていた
「・・・来たか エマ君」
何故かエマが通されたのは例の会議室
「あ。あのっ 何が御用でしょうか?」
その異様な雰囲気にビビるエマ、無理もない
「うむ、めでたい話だ」
「はぁ」
間違っても この部屋はめでたい雰囲気ではない
「君に縁談がある」
「は?」
「テンカワ アキトを覚えているかね?」
「アキトさんですか? そりゃ覚えてますよ」
「彼が見合い相手だ」
「ちょ、ちょっとまってください!」
「どうした? 何か問題があるかね?」
「大有りです!」
昨日の夜 急に呼び出されたかと思えば いきなり縁談を持ちかけられるとは夢にも思ってなかった
エマの混乱は頂点に達したが 彼女にとっての幸運は助け舟がすぐ近くにあった事だ
「旦那様! ホウショウ様に相談も無しに何を考えているんですか!?」
「ぐ、ヨツハ・・・お前には関係ない話だ」
「人様の娘を勝手にお見合いさせないでください! エマちゃん こっちへ来なさい」
ヨツハはエマの手を引いて会議室を出て行ってしまった
残された父1人
「フッ・・・確かに焦っていたようだな、まずはホウショウ君に話を通さねばな」
今度はエマの父に電話をかける
まだ、諦めてなかった
会議室を出たヨツハとエマ
「あの、カグヤ様 どうかしたんですか?」
「いや、それは・・・」
「ここ2ヶ月 連合本部の方にも顔を出してないそうじゃないですか」
「・・・しょうがないねぇ まぁ 巻き込まれちまったんだから エマちゃんにも説明しないといけないか」
「お願いします」
そして カグヤとアキト
コンコン
ドアがノックされる
「あら、ヨツハかしら?」
正解、半分は
ヨツハ以外にもう1人
「エマじゃない、ひさしぶりね!」
「「ひさしぶりね」じゃありません! 2ヶ月も音沙汰無しで どうしてたんですか!?」
「エマ、ケガ人がいるのよ 静かになさい」
「え?」
エマが部屋の奥の方に目をやると そこには懐かしい幼なじみの姿が
「アキトさん!?」
「エマちゃん? エマちゃんじゃないか 久しぶりだなぁ」
考えてみればここは カグヤの部屋ではない
エマは状況を分析し、ひとつの結論に至った
「なるほど・・・」
「何が?」
振り返るとそこにはニコニコ顔のカグヤ
エマは ハタ迷惑な親子喧嘩にどっぷりと浸かっている自分に気付き
ただただ 運命を呪い涙するのだった
その頃、1人 会議室に取り残されたサカキは
「ホウショウ君、そこをなんとかならんかね?」
『いくら会長のご命令でも そればかりは聞けません』
「しかしだな」
『いきなり縁談など 無茶過ぎます!
それよりも先日お渡しした書類には目を通していただけましたか?』
「書類? ネルガルが戦艦を造っているというアレか?」
『ええ、どうもネルガルは その戦艦を軍とは無関係に独自に運用するつもりらしいのです』
「しかし、スキャパレリだったか? あれの成功率は世辞にも高いとは・・・」
ここでサカキは またひとつの策を思いついた
「ホウショウ君すまなかったな 例の件はこちらで対処しておこう」
『は、はい? わかりました 失礼致します』
ホウショウは疑問符を頭に浮かべながらも電話を切る
そして サカキは企業の裏を思わせる邪悪な笑みを浮かべるのだった
「え? サカキのおじさんが俺を?」
「はい、すぐにでもお会いしたいとの事です」
こうしてアキトはミヤオカにサカキの元に連れて行かれた
カグヤも一緒に行こうとしたが それは止められた
サカキにキツク言われていたらしい
残されたカグヤはエマから話を聞き出す事にする
「で、ホントなの? エマとアキト様が縁談なんて・・・」
「いえ、叔父様の思いつきらしくて 実現するとは考えられないのですが」
実際、エマの父に断られた
「でも、そういう話をされた事は事実でしょ?」
「どうも叔父様はカグヤ様とアキトさんを引き離そうとしているようですね」
「アキトさんが戻ってきたら 今後の事を相談しなきゃいけませんわ
結納、そして挙式まで 邪魔させる訳にはいかないもの・・・」
いつ間にやらカグヤの手には結婚式場のパンフレットが握られていた
恐るべし カグヤ
しかし、アキトは戻ってこなかった
「アキト様が ネルガルの新造戦艦の調査に!?」
「はい、旦那様に ご両親の死には裏がありネルガルが関わっていると言われて・・・」
なんと アキトはサカキにそそのかされ
ネルガルの新造戦艦に潜入する事になってしまっていたのだ
「ミ・ヤ・オ・カぁ〜! 貴方はアキト様と一緒にいながら何をやっていたの!?
このままじゃ アキト様がいつ戻ってくるかわからないじゃないのッ!!」
カグヤはその細い両腕でミヤオカを吊るし上げる スゴイ力だ
「いえ、私もお止めしたのですが アキト様の決心は固く・・・」
「カグヤ様、おちついて おちついてください!」
エマが必死にカグヤをミヤオカから引き離す
「カグヤ様、ネルガルの新造戦艦には あの主席卒業者のミスマル ユリカさんが
艦長としてスカウトされたらしいですから大丈夫ですよ きっと無事に帰ってきますって」
そこまで言ってエマはハッとなる
今のセリフはジャストミートだ
「ユリカさんですってぇ〜〜〜?」
カグヤの怒りの琴線に
しかし、カグヤはそのまま暴れるまでもなくスクッと立ち上がり
「ペット達の世話を頼みます」
「は?」
ミヤオカの問いに答える事もなくカグヤはスタスタと歩き出す
「私は着替えます、ミヤオカ 退室なさい」
「は、ハッ・・・」
ミヤオカは慌てて退室する
「あの、カグヤ様?」
「エマ、あなたも準備なさい」
エマの顔がひきつる
「あの・・・何のですか?」
ゆっくりとカグヤが振り返る
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・の効果音が欲しいところだ
「とぉっても いいコトよ♪」
エマはポツリと呟いた 「ドウセ逃ゲラレナイノダ」と
同時に誰を巻き込んでやろうかと
自分の頭の中で友人リストを検索しはじめたのだった
「まったく こんな素人に戦艦をまかせるからいけないのよ!?
こんな所で死にたくないわよッ!! なんで アタシが・・・」
艦橋でわめき散らすキノコ1枚、いや1本、いや1人・・・か?
ただいま 木星トカゲ襲撃の真っ最中
当然ブリッジクルーは 丁重にこれを無視していた
いや、若干約一名 アキトの名を連呼してトリップする某・艦長
こちらもブリッジクルーは丁重に無視していた
現在、本職パイロットでもない青年が自分達のためにオトリとなっているのだ
彼等は能力は一流と集められたスタッフ
ここでその真価を発揮しなければ いつ発揮すると言うのか
「ほらそこ、さっさとしなさい! アタシが死んだらどうするのよ!?」
まだわめくキノコ、ブリッジクルーは無視
いや、1人 キノコのわめきに返事を返した者がいた
「だったら ナデシコを降りればいいのよ」
ブリッジに女性2人を連れて入ってきたのは 言わずと知れたカグヤ
真っ先に反応を示したのはキノコ
「ん? 何よアンタは?」
「連合宇宙軍士官 カグヤ・オニキリマルですわ」
それを聞いたキノコは表情を不気味に輝かせ
「援軍? 援軍なのね!?」
と感極まってカグヤに抱きつこうとしたが
げし
カグヤの連れの正拳突きを受けてはじき飛ばされた
「ありがとう カオル」
「いーっていーって、お友達が困ってるの見捨てるの武士道に反するし
ああいう変態を捨て置いてちゃ カオル・ムラサメの名が泣くわ♪」
上機嫌なカオルの後ろで 罪悪感に苛むエマ
どうも エマがカオルを巻き込んだらしい
本職パイロットでもない青年、つまりはアキトは
「大丈夫かい あんた」
「え?・・・あ、木星トカゲは?」
木星トカゲに囲まれて窮地に陥っていたところを連合軍の空戦フレームに助けられていた
「あなたは・・・?」
「リサコ・タカチホ・・・元パイロットよ
ほら、さっさと逃げるよ こんな数 まともに相手してられないでしょ」
「わ、わかった 急ごう!」
先程までの苦戦ぶりはどこへやら
2人は木星トカゲを撃破しながら合流ポイントへと向かう
「艦長、ナデシコ浮上しました! 残存する敵 すべて射程内に入ってます!!」
オペレーターの言葉にこっちの世界に戻ってくるユリカ
「ああ、これが私とアキトの再会を祝う祝砲なのね〜
目標、敵ぜーんぶ、グラビティブラスト・・・」
瞬間、カグヤの目がキランと光った
「グラビティブラスト、撃てーーーッ!!」
「了解、グラビティブラスト発射します」
放たれる黒い閃光
次々と木星トカゲ達が圧壊していく
「「「!?」」」
違和感を感じ振り返るブリッジクルー
そこにはユリカを押しのけ グラビティブラスト発射を命じたカグヤの姿が
「うぅ、ヒドいよ〜・・・あれ、カグヤちゃん?」
涙目で振り返ったユリカはそこに懐かしい人物を見つける
すぐに思い出したのは なんて事はない
つい先程 同時期の知り合いである王子様と再会したからだ
「お久しぶりですわね ユリカさん」
「うわぁ 久しぶり〜〜! ねぇねぇ聞いてよ カグヤちゃん
さっきねアキトが私のピンチに駆けつけてくれたの!
やっぱり2人は運命の赤い糸で結ばれているのね〜♪」
満面笑みのユリカに対して カグヤの方は・・・言わずもがな
長年の付き合いであるエマは 青い顔をしてカオルを連れて5歩程下がる
しかし、ここに空気を読めないキノコ1枚、いや1本、いや1人・・・かなぁ?
「ちょっとあんた! 何の権限があって・・・援軍じゃないの!?」
そのセリフは最後まで続かなかった
「ムネタケ サダアキ あなたに逮捕礼状が出ています!」
「な・・・なんですって!?」
カグヤの持つ書類は確かに逮捕礼状
「ちょっと貸しなさい! ・・・・・・・・・駐車違反ん!?」
礼状を奪い取って読んで仰天
そこに並べられていた罪状は駐車違反を筆頭にそれこそくだらないものばかりだった
「ちょっと 離しなさいよ! アタシを誰だと思ってるの!?」
そのままキノコ1枚、いや1本、いや1人・・・じゃないだろ
ともかくムネタケは連合軍に連れられて出荷されていった
返品は不可だ
そしてカグヤでブリッジクルーの方に振り返り
「今日から こちらに副提督として就任いたします カグヤ・オニキリマルです
私のフィアンセであるアキト様ともども よろしくお願いしますわ♪」
いけしゃあしゃあと言い切った
すると黙っていないのが若干約1名
「何言ってるのカグヤちゃん アキトは私の王子様なのよ!」
そしてはじまる アライグマVSレッサーパンダ
「ただいま 戻りましたーってあれ?」
最悪のタイミングでブリッジに入ってきたアキト
リサコは自分が危険地帯に足を踏み入れた事を悟り 大きなため息をついた
「アキト様!」
「アキトぉ!」
「え? え? 何?」
これが序曲
彼の行く末は これからもトラブルが尽きる事はないだろう
その頃 オニキリマル邸では
「あ、あの・・・旦那様、ネルガルを買収など 流石に無茶では?」
「無茶ではない、やるんだ! こうなれば手段は選ばん
ネルガルから ナデシコのデータを奪い ナデシコ以上の戦艦を造るのだ
ナデシコからカグヤを奪い返してやるッ!!」
例の会議室でカグヤ家出の報を聞き サカキはすぐさま次の手を目論んでいた
ミヤオカもヨツハも 流石にこのサカキのノリには逆らえない
「いえ、ですから・・・」
「そうだな 戦艦の名は『カグヤ』がいい! 婿殿とともに新婚旅行にでもいかせよう
次の誕生日プレゼントはこれで決まりだ! ハーハッハッハッハッ!!」
「婿殿? それは・・・?」
「テンカワ アキトに決まっているではないか!」
「旦那様、それでは・・・」
「覚えておけミヤオカ! 火星の時もそうだったように
引き際を見極めているからこそ 今のアスカインダストリィがあるのだよ!!」
「はい!」
盛り上がる2人を他所にヨツハは
「アキトの坊やもエラい人に見込まれたもんだねぇ」
的確に今の状況を見抜いていた
そう、彼はトラブルの女神に愛された男なのだから
・・・誰が女神かはともかくとして
終わります
あとがき
まずはお詫び
半年もの長い間お待たせして本当に申し訳ありませんでした
これもすべて 北辰と草壁とそれらに毒された私の脳みそのせいです
このifシリーズは
「アキトが本来とは別の場所にジャンプアウトしナデシコに乗り込むまで」
これに尽きますので 毎回 同じような話にならないようにするのに苦労します
今回はどうだったでしょう? 読者の反応が楽しみなような怖いような・・・
もうひとつ気になった事
どうして私の書く父親は
皆そろって親バカになるんでしょう?
代理人の感想
親バカのほうが書いてて楽しいからでは?
読者としては読んでて楽しければOKですが(笑)。
まあ、娘は娘で壊れているので釣り合いは取れているかと(爆)
それにしても「アライグマVSレッサーパンダ」の表現の的確な事(笑)!
これで親同士もライバル(「サリーパパ対外ン道親父」?)だったら更に面白いんですが。
後ひとつ、
ユニコーンのエーディンか? プテラノドンのトリスタンか?
どこから拾ってきた、そんな物(笑)。
管理人の感想
はははは、私の書く親(爺さん)も親馬鹿ですよ(苦笑)
まあ、愛情表現は人それぞれですしね〜
・・・行き過ぎると、本人にはただの迷惑ですが(汗)
その本人もアレですからね(爆)
まさに、この親にしてこの子有り(苦笑)