機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー
世紀を超えて
第10話 惨劇の赤い絨毯
戦闘開始から数時間・・・アキト達は中央施設の正門前に立っていた。
無論、玄関にはシャッターが降ろされ…
その奥には沢山の兵士達が臨戦態勢で待ち構えているのは想像に難くない。
それでも・・・引けない。それがアキト達の置かれている状況である。
・・・。
「ところで…ここを、どう突破しましょうか?」
白鳥の疑問。
「・・・と、言うよりも…裏口を探した方が良いのではないのか?」
それに対する月臣の返答。
「裏口なんて有りません。」
アムからのにべもない返事。
「そうね、ここには物資搬入用の倉庫出入り口が有るけど…そこって同時に戦車の格納庫なのよね・・・。」
ナツメの補足。
・・・。
つまり、ここから進入するしか無い。
「とにかく・・・アキトとタックンが頑張ってくれてる間にここを何とかしましょ!」
そう言うと、ナツメはおもむろに懐から手榴弾を取り出した。
ヒョイ・・・。
・・・。
ドゴーーン!!
・・・。
シャッターはびくともしない・・・。
「あ、はははははははは・・・。あー、参ったね・・・。」
苦笑いをしながら後ろを振り向くナツメ・・・。
そこでは・・・。
・・・。
ダダッ!
兵士が放った機関銃の弾幕をぬってアキトが走り寄る!
そして、そのまま兵士の首を掴むと敵集団に向かって放り投げた!
ダダダダダ・・・ドサッ!
味方の機関銃弾に蜂の巣にされて地面に落ちる!
・・・。
「き、貴様!」
怒り狂った兵士の一人が、手に持った軍用ナイフでアキトに切りかかるが…。
サッ…グサッ!
片腕で軽くいなされた上、そのナイフはアキトの後ろの兵士にふかぶかと突き刺さっていた・・・。
その直後、味方のナイフで崩れ落ちた後ろの兵士を尻目に、
アキトは切りかかってきた兵士の鳩尾に拳を叩きつける!
…その威力は凄まじく、兵士は文字通り吹っ飛ばされた。
!・・・ササッ…ドオー−−ーン!!
「もう、味方の事もお構いなしか・・・!…あれは!」
…ガチャ、スッ…ダダダダ…!
アキトが何か感じ取り、条件反射で屈むと、頭の上数センチをバズーカの弾が飛んでいく…
巻き添えを食らい、兵士が数名吹き飛んだ!
…ふと、視界に入った機関銃を地面から拾い上げ、アキトは振り向きざまに掃射した・・・!
・・・。
そして、最後のバズーカ兵を片付けると、アキトは回収した装備品を持って、皆と合流した。
・・・この間、30秒。
その身には返り血すら殆ど付いておらず・・・。
その戦いは・・・まさに『神業』であった。
・・・。
同じ時、北方も十数人の兵士と戦闘を開始していた。
距離をとって射撃を加える狙撃兵に向かって猛然と突進していく北方・・・。
「うわーー!く、来るなー−−!」
ドッ・・・ドッ・・・!
ライフルを撃ち抵抗するが・・・北方の重厚な筋肉にはまるで効いていない。
…て言うか、どう言う鍛え方したらライフルを跳ね返せるんだ?(ブルブル)
グ、ググ・・・グシャ・・・。
頭を握りつぶされ、絶命する兵士。
運悪く北方と戦ったこの部隊は、純粋な警備員であり、他のものは拳銃しか持っていなかった・・・。
それでも、銃の照準を合わせ、撃つ!
ボスッ…。
・・・効いちゃいねぇ!(汗)
恐怖の余り、そのまま全員逃げ出すものの、北方は追いかけてくる!
ボゴォッ!・・・グシャ!・・・ガシッ…ググ…グ…グシャァ!
最初に追いつかれた兵士が払った腕でなぎ倒される!
足がもつれ、転んだ者の頭部が踏み潰される!
そして、隊長らしき男は…さば折りを掛けられ、体を真っ二つにされた…。
それを見て、残った兵士が逃げていくのを見た後、北方は皆に合流した。
この間、僅かに1分。
その身は全身返り血で赤く染まり・・・。
その行動は・・・まさに『悪魔の所業』であった・・・。
・・・。
「大丈夫か?」
アキトが辿りついた。
「うん。そっちは?」
ナツメが心配そうに言う。
「こっちは大丈夫だ。…が、ここで足止めを食らっている場合じゃないな。」
アキトが後ろを見ると、北方が戦車相手に戦っていた。
そこでアキトは持ってきた装備を渡すと、シャッターの前に立つ・・・。
「待ってください!アキトさん…その中には敵兵士が待機してます!」
アムが叫ぶ。
「・・・開けた途端にやられる…か。」
アキトが躊躇する・・・。
だが、その間にも、敵の増援が次々とやって来る。
・・・。
「…テンカワ。いちかばちかで試したい事が有る。」
月臣だ・・・。
「シャッターは俺に任せろ。…開き次第内部に突入…敵を殲滅する。…お前は突入の準備を。」
「何をする気だ?」
「…まあ、見ていろ。」
そう言って、シャッターの前に立つ月臣。
「まさか・・・完成していたのか、弦悟郎・・・。」
「その通りだ、五十六。・・・長年の修行の成果だ、見て驚け!」
そう言うと、居合抜きの構えを取る月臣・・・まさか。(汗)
ダッ! チャキーーーーン・・・ザンッ!、ザザザン!・・・ズバー−−ッ!
・・・スタッ。
・・・。
飛びあがり、シャッター全体を切りまくる。そして、着地。
・・・そのまま、ゆっくりと刀を鞘に戻す・・・。
チ…ン
・・・何も起こらない。
ス…チン
もう一回。
…何も起こらない。(汗)
…ッチン!カッチン!…ガチ!・ガチ!・・・
何回も出し入れしてみる・・・何も起こらない・・・。(大汗)
・・・。(気まずい空気)
ヒュゥ−−−と冷たい風が通り過ぎた・・・ような気がした。
シャッターの前で立ち尽くす月臣・・・その表情は見えない。
「月臣くん・・・失敗?」
「…シャッターの傷は確認できますが。」
…女性陣の目が冷たい・・・。
その横では白鳥が無表情にバッグから大型の銃を取り出していた・・・。
ぷ・・・く・・・はは・・・
?シャッター内部から忍び笑いが・・・。
どうやらモニターされていたらしい・・・。
・・・。
・・・アキトが構えた!?…その口元には僅かな笑みを浮かべている・・・。
ド・・・ン! ガラガラグシャァァッ・・・!
その刹那、月臣がシャッターに拳を叩きつける!
ついた傷どおりに崩れ落ちるシャッター!
その中をアキトと月臣が突き進む!敵は完全に油断していた!
アキトは手始めに大型の機関砲を構えていた兵士を蹴り飛ばすとその銃口を兵士達に向けた!
・・・崩れ落ちる兵士たち!
月臣は?・・・居た!
アキトに遅れる事、数秒!・・・手近の敵を居合抜きで片付けると即座に横っ飛び!
・・・今まで居た場所に機関砲が撃ち込まれる!
飛んだ先の兵士を肘鉄で気絶させると、そのままその兵士を盾にして突進!
味方を撃つのを躊躇する兵士達を尻目に天井のスプリンクラーめがけて煙幕手榴弾を投げつける!
・・・降り注ぐ水が敵の視界を遮ったのを確認すると、刀を納め距離をとる。
ザザザッ!・・・ズバァーーーーッ!
そして敵陣を駆け抜けると、スタッとしゃがみ込む。
チ・・・ン
そして、先ほどのように刀を鞘に収めるが・・・。
ドサァ・・・ゴロゴロ・・・
…走ってきた間に居た兵士の首が胴から離れ、床に落ちた・・・。
…先ほどの失敗は意図的に行われたものだったのだ・・・。
・・・。
「調子に乗るな!反乱分子め!!」
隊長らしい男がそう叫び、手に持つ機関銃の銃口を入り口付近のアムとナツメに向けた
「くっ!・・・間に合わない!!」
助けに行くアキトだが、いかんせん距離が有りすぎる!
「ふははははははっ!死ね!死ねぇい!」
そして、その指が機関銃のトリガーに掛かる・・・
が、
「ゲキガンビーム!!」
白鳥が叫び、肩に担いだ大型の銃を放つ!
・・・レーザー砲だ!
ビー−−−−−−−−−−−−!
…そして敵の隊長は、レーザー砲に貫かれ、絶命した・・・。
・・・。
そして・・・アキト達以外に動いているものは居なくなった。
「・・・これで終わりか?」
「恐らくは・・・だが、奥にはまだ大勢居るだろうな・・・。」
アキトと月臣が言った。
「ですが、一つ疑問があります。」
アムである。
「・・・何だ?」
「…白鳥さん。レーザー砲なんて持ってるんなら、最初から使って欲しかったんですけど・・・。」
一同、ジロリと白鳥を見る・・・。
「あ、皆さん。これはエネルギー消費が激しいんで無駄遣いできなかったんですよ・・・。」
…取りあえず納得する一同。
・・・追いついた北方と共に、奥に向け出発する・・・。
「おい、五十六。」
「なんだ。弦悟郎。」
「…本当は、ここぞと言う所で格好付ける為に取っておいたんだろう?」
「…ははは、何の事だ?」
どんなに誤魔化しても…分かる人には分かるようだ・・・。
・・・。
「これです。」
アムが言う。…どうやらメインコンピュータルームに辿りついたようだ。
アキトが側に居るが、後の四人は陽動の為、所長室と倉庫に向かっている。
「では、始めます・・・。」
そう言うと、アムは額に掛かった髪を掻き揚げ、その額をメインコンピュータに近づけた・・・。
・・・アムの赤い目が金色に染まる・・・。
ヴ・・・ヴィーン・・・ガガガガガ・・・。
暫くの間、コンピュータが異常な音を立てていたが、アムがスッと離れると通常の動作に戻った・・・。
・・・以前とまったく変わらないように見える・・・。
「・・・終わりました。コンピュータの管理者と使用者をボクにして、敵と味方の識別を入れ替えました・・・
後で、細かい調整をしないといけませんが、取りあえず施設はもうこちらの物です。」
「そうか、すると・・・。」
「はい、警備システムが兵士達に襲いかかってくれるはずです。…暫く待てば勝手に逃げていくはずです。」
「じゃあ、暫く・・・。」
「待機ですね。」
・・・。
そして、数時間後。
「そろそろ良い筈です…アキトさん。行きましょう。」
アムはそう言うとナツメ達との合流場所に向かおうとする。
「・・・待って、まだ敵が居るかもしれない。…俺が向こうを見てくるよ。」
「はい・・・アキトさん、気をつけてください。」
そして、アキトはコンピュータルームの扉を開いた・・・。
・・・。
アキトが戻ってくる・・・。
「あ、アキトさん。どうでし」
ガッ・・・バタ…。
アムは、アキトの手刀で気絶した・・・。
そのままアムを抱き上げるアキト。
・・・。
チャプ・・・チャプ・・・。
アキトはアムを抱え、赤い道を歩いていた・・・。
「これを、見せるわけには・・・いかないよな・・・。」
アキトの周りには無数の死体が折り重なるように倒れている・・・。
・・・どれも機関砲で蜂の巣にされていた。
辺りは赤一色で染まり、
その血溜まりは厚く・・・
まるで・・・
真っ赤な・・・絨毯のようだった・・・。
・・・逃げる暇など…
・・・無かったらしい。
続く
−−−その頃−−−
「司令は?」
「・・・駄目なようです。」
「・・・そうか。」
…脱出した兵士達は近くの基地に向かっていた。 その数・・・数十人程度。
・・・。
犠牲者を出さない為の作戦だった。
・・・逃げてくれると・・・思っていた。
アムはそう思ったからこそ、ナツメにこの作戦を提案したのだ・・・。
だが、優秀な警備システムは、『敵』の逃亡を許さなかったのである・・・。
逃げ出した者は、アキト達の侵入路を逆走したに過ぎない。
・・・味方にとっての完勝は、敵にとっての完敗。
味方に被害が無かったからと言って、喜んでは居られない。
故意か偶然かは問題ではない。
・・・何をされたか、何が起こったか…。
・・・その日、地球にはこんな通信が入った。
『反乱軍が研究施設を強襲。…関係者はほぼ全員死亡』
情報が一部抜けてはいるが・・・事実ではあった・・・。
::::後書き::::
BA‐2です。
戦闘アクションを書いていたつもりだったんですが・・・。
・・・まいったなあ。・・・暗い。
ですが、物語上重要なエピソードなんで書かないといけなかったんです。
こんな駄文ですが、宜しければ応援お願いします。
管理人の感想
BA-2さんからの連載投稿です!!
凄い戦いですね〜
何よりタツヒコさんの強い事!!
弾丸を通さない筋肉って?
・・・君は、某シテ○ハンターの海坊主か!!(解ります?)
それにしても、アキトの気配りにより大量虐殺の現場をミ見ずに済んだアムちゃん。
この事を知った時、どんな事を思うのでしょうか?
ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!
次の投稿を楽しみに待ってますね!!
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