機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー

 

世紀を超えて

第15話 運命の女神の残酷さ

 

 

 

 

荒野を疾走する巨人と、キャタピラを轟かせてそれを追撃する戦車。

暫くすると、巨人がバックジャンプで戦車の後ろに着き攻守交代する。

 

…宿命(?)の兄弟対決は、このように一進一退を繰り返し、なかなか決着がつかない様だった・・・。

 

「流石…一筋縄ではいかないか!」

 

白鳥がコクピット内で呟いた。…だが、彼を責めるのは酷と言う物だろう。

元来IFS無しでは動かせないエステバリスを改造し、マニュアルで動かしているのだ。

本来の動きが出来るはずも無い。

 

だが、戦車からの言葉はと言うと

 

「お前…やるようになったな…。」

 

と言う、お褒めの言葉だったりする。

 

「俺相手にこれだけ粘れれば大した物だ…だが!」

 

ズドォーーン!!

 

ヤマダの戦車の主砲が火を吹く!…マーズガンガーの肩に当たった!!

だが、大して損傷したようには見えない。

 

「…確かに大した腕だが…兄さん。その大砲でこれの装甲を貫く事は…。」

 

「出来ないってか?」

 

ニヤリとする山田。

 

ドサ・・・

 

…ワイヤードフィスト(と、言うか鉄球)が地面に落ちる。

 

「な!?」

 

…片腕が動かない!

 

「まだまだだな。…今回は最後の数発だけを徹甲弾にしておいたんだよ!」

 

「…それで外側の損傷が少ないのか!」

 

「ったく、手間取らせやがって。…さ、蹴りをつけるぞ?」

 

!?白鳥が上を見上げた…。

 

「だが、時間稼ぎにはなった様だな。」

 

「何ぃ!?」

 

・・・空中を近づく機体がある。…その色は、漆黒。

 

「…テンカワさん。すいません…自分は損傷が酷い為、帰還します。」

 

そう言うと、撤退する白鳥。

 

「あ、待てコラ逃げるな!

 

ヤマダがキュラキュラと追うが、アキトの機体が立ちふさがる。

 

「もう、残ったのはお前だけだ。…諦めて帰れ」

 

「ふ…ふざけるなぁーーー!」

 

この場合、初対面の相手にここまで言ってしまうアキトの方が悪いような気がするのだが…。

 

「俺が・・・ヤマダだあぁぁぁぁぁ!!!

 

…子孫とは正反対に自分の苗字に誇りを持っているらしく、名を叫びながら砲塔をアキトに向けるヤマダ!

 

ガシッ!…ドオォァアアアン!!

 

…勝負は一瞬だった。…アキトは身を低く構えると砲身をひん曲げた。

生き場を失った砲弾は車両内で暴発…砲塔部分が丸ごと吹っ飛んだのだ。

 

「…ゴホ…やるじゃねえか…だがな…俺以外にも・・・・・・。」

 

キュラキュラ・・・

 

なんか、悪の組織のヘボ幹部のような捨て台詞を残し、逃げ出すヤマダ。

シャシー部分しか残っていない戦車が物の哀れを誘う…。

 

 

・・・数時間後

 

…ヤマダがキャンプに辿りついた。まさかの敗戦に慌てふためく連合軍将兵達だが、ヤマダ自身は・・・。

 

「ふん!最初だから手加減してやったんだよ!」

 

おお、強気だ

 

「…ヤマダさん。…戦車隊100両の内95両失っておいて何言ってるんですか!?(怒)」

 

カズミ・レイナード准尉のキツイお言葉である。

 

「それより、歩兵隊がまったく戻ってこないのが気になりますね。」

 

アオイ・マスミ中尉である。

 

…ホントならヤマダ達が圧倒的な火力を見せつけた後で、彼女が降伏勧告をすると言う流れになっていた。

 

今、討伐艦隊の司令官であるムネタケ提督は連合軍基地での何時終わるとも知れない歓迎パーティーに出席している。

提督は出世しか考えていない。…無理にでも殲滅させようとするだろう。

…降伏させると言う選択肢は今しか選べないのだ…。

 

「でもマスミ…どうするの?…この状態じゃ降伏なんてするとは思えないけど、それでも行くの?」

 

「うん。…最低でもナツメとコンタクトは取れるはずだし。」

 

彼女達と草壁 夏芽は幼馴染であった。

…かつての友人同士が敵味方に分かれて戦う。

悲劇とはこの事だろう…。

 

…そして、アオイ中尉はアキト達の元へと向かったのである。

 

 

 

…その頃。

 

ここはキャンプへと帰還する途中のある戦車の中。

この丘を越えればキャンプが見えてくる。

この戦車は最後の最後まで生き残り粘っていたのだが、ヤマダの敗走を見て撤退を開始。

…エンジン系統のトラブルもあって帰りつくのが大幅に遅れてはいたが、なんとかここまで帰り付いていたのだった。

 

キュラキュラ…キュラキュラ…。

 

「…やれやれ、どうにかここまで帰りつけたましたか。」

 

青年が口を開いた。…金髪で、かなりの美男子である。

だが、そんな彼の容姿とは正反対に彼の戦車は酷い状態だった。

 

砲身は折れ曲がり、機銃の照準機は紛失。

装甲のあちこちに穴が空き、ひびが入り、彼の顔が外からでも確認できる。

計器類は故障し、エンジン音は安定していない。

…時折エンストを起こし、もはや修復など不可能である。

 

そんな状態の車両を騙し騙し使い、ここまで帰り着いた彼の技能は賞賛させるべき物であろう。

 

「…キャンプ…聞こえますか?…エドワード少尉であります。」

 

なんとか生きていた通信機で味方に連絡を取る。

 

「あ、はい!…エドワード少尉、ご無事でしたか!?」

 

…通信が繋がった事に安堵する少尉。

 

「…レイナード准尉かい?…ああ、私はね…車のほうは駄目だ。」

 

「そんなに酷いんですか!?」

 

「ああ、横からでも外がよく見えるよ。」

 

「…そ、そんなに…。」

 

だが、事実は事実。…大穴が空いていてよく見えるのだった。

そんな大穴を眺めつつ、通信を続ける。

 

「エンジンが持てば、今日中には帰れるはずで…」

 

…。

 

「どうしました?少尉?…少尉!?」

 

ギロ・・・

 

謎の爬虫類(のような男)が戦車の穴からこちらを覗き込んでいる…。

 

ガヴァァッ!!

 

腕を伸ばしてきた!…少尉は後ろに下がって避けるが、腕が涼しい。

掴まれたらしい…分厚い軍服が腕から片方持っていかれていた。

腕自体が無事なのは幸運としか言い様が無い。

 

…最も、コイツに出会ったのが既に最大クラスの不幸なのだが…。

 

「ウワ…うわあぁぁぁぁぁっっっ!!

 

バキュ・・・ン!!

 

拳銃の音が狭い戦車内に響く!

 

ボス・・・

 

効いていない…。

 

「…ちょ…如何したんですか!?…返事してください!」

 

通信機が五月蝿い。だが、構っていられなかった!

 

グォアァッ!!…ゴォォォン!

 

腕が伸ばされる…運悪く通信機が破壊された!

 

ふっふっふ…さあ…」

 

(…何なんですか…これは!?)

 

…初陣からとんでもない敵に当たってしまった事に気づいていないのは果たして幸か不幸か…。

 

エドワード・ファー・ハーテッド少尉。

 

のっけから大ピンチであった。(爆笑)

 

 

続く

 

−−− 一方 −−−

 

時期的にはエド少尉が北方と遭遇してから数時間後。

 

アキト達の元にアオイ中尉が訪れた。

 

「久しぶり…ナツメ。」

 

「…心配かけたみたいね、マスミ。」

 

敵同士にも関わらず、マスミとナツメの両者は友好的だった。

 

「…アメジスト姫?」

 

「はい。ボクがアムです。」

 

…中尉は頭をひねる。

 

「…貴方はここに捕らわれてるはずでは?」

 

「…まあ、対外的にはそうなってます。」

 

「はあ…。」

 

…マスミさん、冷や汗。…実は彼女らはアムの救出も任務のうちなのだ。

 

「…にしても、負け戦の後でこんな物持ってくる?(笑)」

 

呆れながら、ゴミ箱に降伏勧告状を投げ捨てるナツメ。

 

「あはは…まあ、そっちが如何してるか知りたくてね。(苦笑)」

 

・・・暫し、歓談。

 

「…じゃ、行きます。…元気そうで安心したよ。」

 

マスミが帰っていく。

 

「…ナツメさん。」

 

「アムちゃん。どうかした?」

 

「戦争の事、結局何も話さなかったんですね。」

 

…ナツメは寂しそうにすると

 

「…マスミは所詮一仕官に過ぎない。」

 

「…。」

 

「…ムネタケは残酷な男よ。」

 

「はい。」

 

「話すだけ無駄って事。…進展があってもマスミが疑われるだけだし。」

 

「…。」

 

悲しそうに黙り込むアムを気遣ったか、ナツメは笑って言った。

 

「…私達は親友だよ?例え敵同士であろうとも。…この友情はそんな事で壊れるほどヤワな物じゃない。」

 

…迷いの無い、台詞だった。

 

・・・。

 

アオイ中尉が中央塔から出てきた。…違和感を感じ、降り返る。

 

(あれは?)

 

…屋上からこちらを見下ろす黒い影。

 

「…ブラック…カイ…ザー…?」

 

…マスミはナツメとの話の中でよく出てきていた青年の名を思い出した。

 

「……テンカワ…アキト…さん。」

 

黒い影は語らない。…下から見上げるそれは、あらゆる侵略からこの地を守る守護神のようにも見えたと彼女は後に言う。

…怖くなって逃げるようにその場を後にした…。

 

一方のアキト。

 

「ウソだ。」

 

…はい?

 

「…何でユリカがここに居る?」

 

…そう、彼女はユリカにそっくりだった。…その所為で固まるアキト。

 

「違うと思うヨ。」

 

…ラピスである。

 

「だって…胸無いもん。」

 

…合掌。

 

…それでも固まったままのアキト。

そんなアキトを正気に戻したのは、五月蝿いブレーキ音だった。

 

キキィーーー!!

 

突然バギーが中央塔の前に止まった!

…月臣が駆け込んで来る!…背中には血みどろの肉隗を乗せて…。

 

「大変だ!!」

 

「どうしたの!?・・・え!?」

 

「北方がやられた!!」

 

「…ウ…ググ…。」

 

…背中の肉隗が呻き声をあげた…。

 

 

::::後書き::::

 

BA‐2です!

新キャラ、エドワード少尉登場!

そして、アオイ中尉の意外な容姿が判明!

(ジュンとユリカの家は縁続きらしいんでこう言うのも有りかと…。)

極めつけは、あろう事か北方の敗北!

…しかもこれ、前々から決まっていた事です。

…詳細は次の話の中で語られるかと…。

では!出来れば応援よろしくお願いします!

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの連載投稿です!!

サラとアリサのご先祖さま登場(笑)

う〜ん、さり気無く、こんなところでリンクをしているとは(爆)

それにしても、留まるところをしらない北方の暴挙・・・

と、思っていたらやられてるやん、コイツ(爆笑)

意外にも、ハーテッドは強かったのか?

と言うか、北方を倒せたら常人レベルを超えてるだろうな(苦笑)

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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