機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー
世紀を超えて
第16話 災禍・呼び覚まし者
突然バギーが中央塔の前に止まった!
…月臣が駆け込んで来る!…背中には血みどろの肉隗を乗せて…。
「大変だ!!」
「どうしたの!?・・・え!?」
「北方がやられた!!」
「…ウ…ググ…。」
…背中の肉隗が呻き声をあげた…。
・・・。
下半身を失い、息も絶え絶えの北方。
…不死身の男と名高かったこの男の敗北は、独立派メンバー全員に暗い影を落としていた…。
「…ウ…グ…。」
呻き声のみが部屋に響く…。
「月臣君?…どうして?」
あのナツメが泣き出しそうだ…。
「分からん…だが…相手は連合軍では無かったと思う。」
月臣は驚くべきことを言う。
「なんですって・・・?」
「…アレは敵味方の区別無く襲いかかっていたからな。」
「アレ?」
「恐らくは…古代の遺物。」
「古代の遺物だと!?」
アキトが突然声をあげた…当然だろう。
何故なら、ここで古代の遺跡の技術が流出でもしたら、えらい事になる。
「ああ、そうだテンカワ。…あの化け物は随分古そうに見えたしな。」
・・・その時の話は続く…。
数時間前・ある丘の上…。
「く…来るなぁーーーっ!!」
連合軍、エドワード少尉は始めての実戦で、教本にも載っていない奇怪な敵との戦闘を余儀なくされていた。
ドッ…ドッ…カチッ…カチカチ
「…何で…鉄砲が効かないんですか!?」
銃も効果の無い敵に次第に追い詰められる少尉。
…弾切れのハンドガンを捨て、操縦桿を握る。
そして、敵を振り落とすべく、ダッシュをかけた!
グォン!…キュラキュラ…!!
「…ま…まだ居る!?」
ニヤリ
…相手が笑ったように見えた…爬虫類じみた嫌な笑いだ。
「ウ…うわぁああああああっ!!」
我武者羅に砲塔を回し、振り落とそうとする!
ドスッ…
落ちた!
ドン!ドドドドドーーーーン!!
即座に主砲を撃つ!…弾が無くなるまで…!!
遥か彼方まで…飛んでいく北方…。
「はあ…はあ…た、助かったァ…あ…アアアア!?」
土煙を上げ、迫ってくる!
…戦車砲の直撃を受けたにも関わらず服が焦げただけと言うのは、異常以外の何物でもない…。
「ひ…ひぃいいいいいいっ!!」
そんな怪物から必死に逃げながら、少尉はある噂を思い出す。
先輩から聞いた話はこんな内容だった…。
『数年前な…軍の研究所から逃げ出した実験体が居たそうだ。
…ギャンブルで借金作って、そのカタに親子共々送られて来たそうなんだが…。』
『軍では…体中の筋肉と言う筋肉を人工の強化筋肉に置き換えて、ゲリラ戦に特化した兵士を作ろうとしていたらしい…。』
『…で、強化した後、オリに閉じ込めて居たそうなんだが、強化された筋肉を存分に使って、オリを破って逃走した…。』
『…でな、その後…行方不明なんだが…。』
『…この火星に居るらしいぜ…。』
『見た奴が…居るそうだ…。』
『…爬虫類じみたオッサンには気を付けろよ?』
『お前…食われるぜ!』
…以上。
…少尉は怖くなった…。
(…噂の化け物…私は…食われてしまうのだろうか!?)
…逃げる…逃げる…何処までも…。
だが…。
「しまった…崖ですか!」
追い詰められてしまった!
「ここまで逃げ切るとは見事なり。・・・だが…未熟!(ニヤリ)」
舌なめずりしながら近づいてくる敵。
「く…来るな…来るな…ウワァァァァアアっ!」
既に主砲の弾薬は無い!
エドワード少尉は手近な場所に有った手榴弾を投げつける!
ヒョイ!
パシ
「ふ…こんな物で我が止められるとでも?」
ボン!
…手榴弾を手で受け止めるとそのまま爆発させる!
…でも無事。
ヒョイ!!
更にもう一発!
パシ…クルッ…ヒョイ!
今度は受け止めるや否や、後ろを振り向き、更に遠くに投げる!
…ポン…。
遠くで爆発したようだ…。
「まったく…無駄なあガッ!!」
ゴッツーーーーン・・・。
使い込まれたスコップが、凄い勢いで正面から突き刺さる!
振り向きざまにこれは痛い!…と、言うか普通なら死んでる。
「…これでどうだ!?」
…駄目なようだ…まだ近づいてくる!
「…武器…武器…無い…無い…!!」
とうとうネタ切れのご様子。…その間にも敵は近づいてくる!!
「我が結社のラボにて我々の大儀の礎になるのだ…!」(滝汗)
…因みに北方は大きな倉庫一つを占拠して自分の部屋にしている…。
無論、関係者以外立ち入り禁止(近づく物は殆ど居ない)
…時折中から呻き声が上がる。(ヲイ)
が、…皆(必死に)幻聴だと思い込むようにしている…。
まあ、はっきり言って其処だけ別な空気に支配されている…。(汗)
・・・。
「寄るなあぁあああぁあああっっ!!」
ま、当然の反応だろう。…偶然手に取った『何か』で殴りかかる!
ゴワォン…!!
・・・。
…なんか…のた打ち回ってますよ…北方さん…。
少尉がはっとして手元を覗き込むと…。
へこんだ消火器
しかも何故か『悪霊退散』の札が…。(特に意味はない)
「・・・?」
何でこんな物が効果が有るのだろうかと思いつつ、撤退の準備に入る。
…因みに消火器の件は才能があったと思われる。(何の?)
勢いよく戦車のアクセルを踏む!
・・・。(謎の空白の時)
…気が付くと、少尉は地下に居た…。
「…なんて事だ。」
上を見上げる少尉…どうやら地盤が弱かったのか、戦車の重みで、地下の空洞に落ちてしまったらしい…。
ギョロリ
…少尉は穴の奥へと走り去った…錯乱していた所為か、消火器を抱えて…。
スタ・・・
その後を追う、爬虫類じみた男…。
…これが世界の運命を変えると…この時、誰が予想できたろうか…。
・・・。
数十分後…エドワードは洞窟の最深部に居た…。
「ここは…何でしょう?」
…そこは、明らかに人工的な空間だった。
あちこちが、僅かに光っている・・・。
…中央に、大きなカプセルが有る…。
「…これは…人間!?…コールドスリープ装置!?」
…ペタペタ…
好奇心に煽られ、少尉はあちこち触っていた。
ヴ…ン。
…起動音。
そして…突然、声?が!!
『…私はもう持ちません…この子をおね…ガぃ・・・』
「な…?」
プシュ・・・。
突然、カプセルが開いた…。
中には虚ろな目をした少女が一人…。
「…。」
様子がおかしい…。
「あ、あの…君?」
…唖然としていると、今まで光っていた部分から光がゆっくりと消えていく。
…エドワードは理解した。
「…エネルギー切れか。」
恐らく、残り少ないエネルギーをこの少女の生命維持に全て回していたのだろう…。
「…あ…。」
…少女が気づいた。
「…気が付いたかな?」
「あ…ここ…何処…でしょうか?…私…は?」
…エネルギー不足の元でのコールドスリープの後遺症か、少女は記憶を失っているようだった。
「ああ、無理しなくて良い。」
そう言うと、少女に関する手がかりを探すべく、辺りをあさり始める…。
…だが、数分後。
「・・・見つけたぞ。」
北方、登場!
「!…く…こんな時に!」
襲いかかる北方!!
「!…そうだ!!」
…免疫でも出来たのか、少尉は何か閃いたようだ。
ズボ…
北方の口に、自分の腕ごとホースの先を突っ込む!
ぶしゅゅうううううううう・・・!!!
…そして、そのまま噴射!!
全身の穴と言う穴から白い粉を吹きだす北方。
…ゴホゴホ言ってる北方を尻目にエドワードは来た方角へ逃げ出した!
…ぼんやりしながらも、それに付いていく少女。
・・・数分後。
エドワードは少女の手を引きながら、追っての爬虫類モドキから逃げつづけていた。
迫り来る悪鬼から記憶喪失の少女を守りきる・・・。
男だったら、間違い無く燃えるシチュエーションだ!!
…彼は幸いにも、敵の主な目的が自分だとは気づいていない…。
!…傾斜の浅い坂を見つけた…其処まで行ければここから出られる!!
最も、北方から逃げられるかは分からないが・・・。
「人の執念…見せてもらった。…だが!!」
そんな事を言いながら、遂に北方の手が少尉を捉えた!!
「…捕まるわけには行かない!」
少尉は消火器を投げつけた!
ガン!…ゴン、ゴロゴロ・・・。
…今回は弾かれてしまった!
「未熟者が…。」
北方はそう言い、舌なめずりをする。
…だが、消火器は…また奇跡を起こす!(爆笑)
ゴゴゴ・・・
「…ぬ…何事?」
いち早く北方が異変に気づいた!
先ほど消火器が当たった壁は脆くなっていたらしく、崩れ落ちた。
そして、その中には・・・。
ヴ・・・ン
「な・・・あれは一体・・・?」
その壁の中には、巨大な土偶。
しかも、その目の色は友好的とは言えない光を放っていた・・・!
…さっきの消火器の当たった衝撃で目覚めたらしい…。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・。
…三千万年前よりこの地に眠りつづけていた物が、
目覚めるはずの無かった物が、
目覚めてしまった…。
…歴史は書き換えられる…ほんの些細な出来事で。
続く
−−−地球と火星の中間地点−−−
…一組の男女がいる。
ここは連合軍の増援艦隊旗艦・艦長の私室。
まどろみの中から男が目覚める…。
「アスカ…起きているか?」
「…はい、起きておりますわ…大佐。」
…男は起き出して、窓から宇宙を見た…。
「…先遣部隊は苦戦しているようだな。」
…女は頷く。
「あの提督では仕方有りませんわ。」
「…火星に行けば、あの男の元で戦う事になる。…良いのか?」
「敵方の戦闘兵器は人型だと言うじゃ無いですか。」
「…アレを試すには絶好の相手か…。」
また女は頷いた。
「お父様の会社…まだ出来たばかりで実績は有りませんが…。」
「…ヴァンツァー…幻の兵器…か。」
「アレが歴史の表舞台に立てれば、一気に業界トップに立てる可能性すらありますわ…。」
「…俺は、あんな物を蘇らせて良かったのか?」
「…問題なのは、ニューロン・デバイスのみです。」
「…明日香インダストリーは兵器メーカーにでもなる気なのか?」
「今は…力を蓄えなくては…ね。そうでしょう?」
「…そうか…もう良い。」
そんな会話に飽き飽きした大佐は女に背を向けた…。
(お前は俺より機械の方が大事なのか!?)
そんな思いを胸に…。
・・・。
さて…独立派の台頭に頭を痛めた連合軍首脳は、密かに軍事費を増額し、戦争に備えていたのである。
技術仕官でもある、テンカワ・リューマ大佐。
…今回は、敵ロボット兵器の捕獲を目的とする増援艦隊を率いていた…。
…。
プシュン…。
ドアが開く。伝令が入ってきた。
「テンカワ大佐…オニキリマル中佐。」
「何だ。」
「会議のお時間ですが…。」
「解りました。すぐ行きます。」
「はっ!」
プシュン…。
…アキトは…自分の先祖と出会う事となる。
::::後書き::::
15、16話と急転直下に話が進みました。
…伏線てんこもりです(使えもしないくせに)
あ、ヴァンツァーとはフロントミッションシリーズのアレです。
カグヤの先祖も登場。
更に謎の少女も!(カンの良い方には正体が解るでしょうが…。)
では、こんな物で良ければ応援よろしくお願いします!
管理人の感想
BA-2さんからの連載投稿です!!
凄いですね〜
いや、最早この一言しか出ません。
・・・まさか、古代火星人とはアレだったとは。
今後、どのような展開になるのでしょうか?
そして、北方の運命は如何に!!
ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!
次の投稿を楽しみに待ってますね!!
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