機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー
世紀を超えて
第17話 2つの歴史・交わる時
…火星極冠…この時代には誰も気に留める事が無かった場所。
そして、
100年後に起こる戦争の最大の焦点となる場所。
そこに、ある一団が辿りついた…。
…生命反応は無い。…あるのは動力反応のみ。
物言わぬ無人兵器とそれに守られたコンピュータ。
…一面の銀世界の中、あるバッタが、氷を溶かし始めた。
・・・。
暫くして、氷は無くなり、代わりにフィールドが行く手を阻む。
…別のバッタ(改造)がフィールドランサーの要領で、フィールドを切り裂いていく。
バッタの神輿に乗せられたオモイカネ・ダッシュがゆっくりと降下して…。
残ったジョロ達がそれに続く。
最後のジョロが大きな氷塊でその穴をふさいだ後、跡形も無く自爆した…。
…その後、ここはまた静かな銀世界に戻った…。
…だが、その地下深くでは…?
・・・。(暫しの時が流れる)
黙々と進められる作業…そして…。
『遺跡ユニットとの融合完了』
『全システム完全掌握』
『…システム・オールグリーン』
…周りでは慌しく作業が進む。
そんな中、ダッシュは…。
『遺跡との融合に成功。…続いて要塞化作業に移行…。』
無人兵器に新たなる命令を下していた…。
何をしようと言うのだろう。…答えが出るのはまだまだ先の話…。
・・・一方、連合軍キャンプ。
凄まじく不穏な空気が場を支配していた・・・。
何故だかとても慌しい…。
最初に口を開いたのは、カズミ・レイナード准尉だ。
「エドワード少尉…貴方…サイテーです。」
次はアオイ・マスミ中尉。
「…この子、何処から連れてきたんです?」
…確かにエドワードは少女を一人連れていた…。
「ふっ…お前もなかなかやるじゃねえか!」
ヤマダ・タロウ大尉がそれで締めくくる。
「待ってください、私は…そんな意味じゃ無いんです!」
エドワード・ファー・ハーテッド少尉…。
また、のっけから大ピンチだった…。(苦笑)
…。
「…つまり、その古代遺跡に居たって言うんですか?」
…カズミ・ヤマダ・エドの3人は暫く話し込んでいた。マスミはミスマル中佐に交渉の失敗を報告する為、基地へと向かう。
因みに謎の少女はその横で、まだボーッとしている。
「はい。私は謎の生物に襲われ、そこに逃げ込んだのです。」
「で、最深部でその子を見つけた…て、訳か。」
「…脱出した後、後ろを見ると敵は追ってきませんでした。」
「でも、少尉はその後の事…知ってます?」
「…え?知りません。…帰るのも一苦労でしたから。」
「…すげえ事になったんだぜ?」
「その洞窟の中から大きなロボットが現れたの。」
…場面はその時へと飛ぶ…。
「…何奴?」
北方が戦闘態勢を取る。…獲物が逃げていくがこの際仕方ない。(苦笑)
ヴヴ・・・ン・・・
だが、目の前にある「ソレ」は今まで戦った事の無い…いや、出会った事もないような代物だったのだ…。
…勿論、自軍にも人型の巨大兵器は存在する…。が、ソレの大きさはアキト達の乗るエステの倍ほどもあるだろうか?
土偶にも似たそれが何なのか…それを論じている場合ではなかった。
相手は間違い無く、こちらを敵だと思っている…!
「…先手…必勝!」
北方はそれだけ言うと、即座に巨大土偶に突っ込んだ!
タン!…タタン…スタッ!!
…グワシャッ!!!
速攻で相手の巨体を上り、その顔めがけて、拳を突き出す!
「ふ…未熟!」
…無人兵器相手にそりゃ無いだろう…な台詞だが…。
その拳は、土偶の片目を潰していた…。
…やっぱ人間じゃない…。(汗)
が…相手も甘くは無かった!
突如、額から発射されたビームが北方に襲いかかる!!
「ぐぅっ!!」
のけぞる北方…自分の片手が無くなっている事に気づく!
即座に物陰に退避する!
「我もまた…未熟。」
そしてそのまま脱出を図った!(ヲイ)
・・・。
その頃、戦場に取り残された友軍を救うべく、連合軍の機動1個小隊がこの現場に向かっていた。
・・・。
「…エドワード少尉の戦車を発見しました。…地下に落ちたようです。」
「乗っている気配は…無いですね。」
「…しかし、落盤に巻き込まれるとは不運だよなぁ。」
お気楽な兵士達。
…因みにエドは、その頃、別な場所から既に脱出済みだったりする。
・・・。
「ん?」
「如何した?」
「…あれ…何だ?」
「え?」
・・・。
ビョン!!…ズザァァァァッ!
…突然地下から何かが飛び出してきた!!
「何だ…。」
「あ・・・あ・・・あ・・・。」
「?」
「出たあぁぁぁぁぁっ!!」
連合軍兵士の一人が逃げ出した!…どうやら知っていたらしい。
だが、
だだだだだだだ・・・。
…北方の方も走り去っていく…。
「…なんなんだ、一体?」
程なく疑問は解消する。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
「ひぃ!何だよ…何なんだよ!?」
出てきたのは巨大な化け物…。
「あ…キャンプ…キャンプ…大変だ!!」
…訳が解らない連合の兵士には、キャンプに通信を入れるのが精一杯だった。
・・・。
「…また、何か訳のわかんない物が出たみたいです…。」
呆れながら、そう言うしかないカズミ。
…そして、この通信の後、キャンプから大量の増援が出ていった…。
・・・。
月臣は帰りの遅い北方を迎えにバギーで荒野を突っ走っていた。
…北方には本人には内緒で、発信機が付けられている。(通称、猫の鈴)
…だが、数時間をかけて辿りついた月臣が見た物は…。
「グオッ!」
ドサッ…ズザザザザザザザ・・・
「き・・・北方!?」
胸部のグラビティーブラストの直撃を受け、半身を失った北方と…。
辺り一面に広がる戦車の残骸や連合軍兵士の亡骸だった…。
取りあえず北方を回収し、その場を離れようとする月臣。
そんな彼に声が掛かる。
「おい…月臣よぉ…ここまでする事はねぇんじゃないか?」
ヤマダだ…どうやら救援要請を受け、戦場にとんぼ返りしたらしい。
「…なに?」
身に覚えが無い為、声を荒げる月臣。
ヤマダは暫くじっと睨みつけていたが…。
「どうやら、本当にお前の所の物じゃ無いみたいだな…。」
「何がだ。」
「あれだ…あれ。」
クイクイと指指した方向には…。
「あれは…何だ?」
大きな化け物が戦車と戦っていた。
ドグォワーーーーン!!
また1台がスクラップと化す…。
「…何が何だか訳が解らん。」
「そりゃこっちの台詞だぜ。」
…そして、ヤマダは残存部隊をまとめて撤退し、
月臣は北方を回収し、引き上げた。
解った事は一つだけ…。
少なくとも、あれはどちらの陣営にも属していないと言う事。
・・・。
…マスミはその時、交渉からの帰り道。
非武装の小型ジェット機で、キャンプへと向かっていた。
そこで給油し、基地まで行こうとしていたのだ。
…突然何かとすれ違う。
「…爆撃機?」
…爆撃機の編隊が飛んでいく。
だが、独立派の元へではない。
研究所の迎撃システムは優秀なので、全て打ち落とされるのは目に見えているからだ。
…それくらいはキノコにも解る論理だった。
・・・。
「…目標発見…爆撃開始。」
「ラジャー!」
…閃光…爆音…。
巨大土偶は爆撃を受け、地下へと沈んだ…。
大量の戦車の残骸と兵士の遺体を道連れに…。
・・・。
…地中深く…土偶の目から光が消えた。
…ダメージの所為ではない。
…侵入者の消滅を確認したからだ。
…そして、そこはまた静かな場所に戻る。
…アキト達の元に、北方の事が知らされていたその頃の話である。
・・・。
話は連合軍キャンプでの3人の会話に戻る。
今までの話を聞いていたエドが質問を発する。
「では、あの化け物は独立派の物ではないと?」
ヤマダが答える。
「ああ、そうみたいだな。」
「…火星には古代の遺跡が有るって…まさか本当だったなんて。」
カズミは驚いている。
・・・。
!!
「じゃあ…この子は!?」
「ああ、多分な!」
「古代人の生き残りだと言うんですか!?」
「「そのとおり!」」
・・・。
…少女の正体はともかく、彼女の処遇を暫く3人で話し合う。
1…ありのままに報告する。
…没。ムネタケが余計な野心を持つ可能性有り。(笑)
2…黙っておく。
…没。…ばれた時どうなるか…。(汗)
3…普通の迷子と同じに扱う。
…没!…火星にいる子供は独立派とみなされる。
・・・。
「…駄目だ、良い案が浮かばねぇ。」
「無力さを感じますね…。」
ヤマダ・エドの二人が無力さを嘆いたその時、
「密航者扱いはどうです?」
カズミがそう提案した。
「…カズミ准尉。密航…とは?」
「そうだぜ?…船が無きゃ密航は出来ねえ。」
にっこりと笑い、先を続けるカズミ。
「…もうじき、大佐が増援を引きつれてこの火星にやってきます。」
…。
「あ、口裏を合わせてもらうんですか!」
「…すげえ事考えるな…。(汗)」
「大佐には、私からこっそり通信入れておきますから。」
「へっ…通信士の職権濫用ここに極まれり…か?」
「…まあ、人助けですし…。」
…取りあえず、少女の処遇は決まった(?)。
少女の元へと行くエドワード少尉。
「もう大丈夫です。ただ…貴方は暫く隠れていて貰わなくてはなりません。」
…ここまで言って、名前も知らないのに気づく。
「…名前が無いと不便ですね。」
…少女が口を開いた…。
「星野…瑠璃。」
「え?」
「私の…名前…です。」
未だ…目覚めぬ頭だが、少女は自分の名前だけは思い出したようだ。
続く
ーー−−その頃、アキト達は?−−−−
その頃…アキト達は医務室に集まっていた。
ベッドの上に横たわるのは、今までココとはまったく無縁だった男、北方。
「…駄目です。」
医療機械を睨んでいたアムからの報告はそれだけだった。
…即ち、助からないと言う事。
それを聞いた北方は、かえって落ち着いた様子でナツメに語り掛ける。
「閣下。…申し訳御座いませぬ。」
「…タックン…何言ってるのよ…。」
大粒の涙をこぼしながらナツメはそれに応じる。
何だかんだで、一番辛いのはナツメなのだろうから…。
「我の代わりは南雲に頼みたいところだが…。」
「駄目よ。南雲さんは第3班…採掘基地を預かる身だもの。」
・・・。
「閣下ならばそう言われると思いました。」
「え?」
「既に娘を呼んで有ります。…本来は戦力の増強の為でしたが…。」
「…そんな、七瀬ちゃんを?」
「本来ならば、南雲の元で子育てに専念して欲しかったのですが…。」
「旦那さんと引き離すなんて…怨まれるわよ、タックン(汗)」
「ふっ…それが我が定めかと。(苦笑)」
…室内には時計の秒針の音だけが響く…。
…ふと、辺りを見ると・・・全員が固まっていた。(笑)
・・・。
ガチャ…。
20歳そこそこの女性が入室してきた。
ナツメを見つけると突然敬礼をする。
「南雲七瀬(なぐも ななせ)…部下数名と共に到着しました…。」
冷たそうな印象を受けるが、髪をショートにした凄い美人だ!
…唖然とする一同。
「おい…月臣…。(脂汗)」
「テンカワ…俺も何が何だか…。(真っ青)」
「七瀬さんが…あの…北方の…冗談がキツイです。(滝汗)」
・・・。
そんな中、ナツメは普段どおりだった。(笑)
「七瀬ちゃん!…良かった、タックンまだ無事だよ!」
「…では、この度持参した物資の内訳を…。」
「ち、ちょっと?(汗)」
クイ…
北方がナツメの袖を残った腕で掴んだ。
「か、閣下…眼鏡を…ゴホッ。」
「あ、そうだった。」
そう言うと、ナツメは七瀬のポケットをあさり、眼鏡を見つける。
そして…そのまま、七瀬にかけてやる。
すると…。
・・・キョロ…キョロ。
まるで催眠術から覚めたようなリアクションを取る七瀬。
「…父さん!…大丈夫!?」
そして、北方にすがりつく。…一同、放心。
「グ…七瀬…お前には…苦労ばかり…かけたな…。」
「…それはそうだけど…気にしないで、父さん…。」
なんか、マトモな事を言ってる北方。(汗)
「で、最後に…孫の…顔を…。」
・・・。
「ゴメンナサイ…連れてきませんでした。」
・・・。
「なぁっ?」
・・・。
「だって・・・。」
「父さん。」
「存在事態が教育に悪いし…。」
・・・(ガーーーン)。
「・・・・・・ぐふっ。」
ぴーーーーーーーーーーーーーーーっ!
「あ・・・心音停止…北方辰彦さん…亡くなられました…。(汗)」
…それが、北方の最後だった…。
::::後書き::::
BA‐2です。連載17話、如何でしたか?
…時間が行ったり来たりでわかりずらかったかも知れません…反省。
本日のオリキャラは『南雲七瀬』さん。
北方の娘で南雲の先祖の嫁。…眼鏡の有る無しで性格が変わる…。
我ながらとんでもないキャラを作ってしまった…。
あ、北辰・南雲の組合わせは、両者、夜天光に乗ってたので…ね。
そうそう…題名ですが、これの意味が解るなら、BA‐2のやろうとしている事が解るはずです。
100年前への逆行に続く、BA‐2の暴挙第2段!…こんな事やってホントに良いのだろうか?
…では…こんなもので良ければ応援よろしくお願いします。
では!
管理人の感想
BA-2さんからの連載投稿です!!
北方・・・
まさか、かれが一番に戦線離脱をするとは。
一体誰が予想できたでしょうか?
それに美人の娘もいるし(爆)
・・・嫁さんはどうした、北方?
いくら君でも一人では子供は生めんだろう?(爆笑)
う〜ん、最後まで謎に包まれた男だったな・・・
ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!
次の投稿を楽しみに待ってますね!!
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