機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー

 

世紀を超えて

第24話 その名は・・・

 

 

 

 

 

…沈黙…それが空間を支配していた…。

 

…ナゼ…コレガココニアル?

 

疑問…答えの出ない疑問。

アキトは自問自答を繰り返す…。

 

…。

 

ガチャ

 

「…気が付いたようだな。」

 

…全身包帯のミイラ男と化した月臣が部屋に入ってきた。

もしかして…ばれた?

 

「その傷は…大丈夫なのか!?」

 

相手の方を心配するアキト。

 

「(汗)…ああ、『菊』の修復は完了。…そらっ!」

 

ヒュン…ピキーン!

 

刀を一閃!…そして、逆光で光らせる!

 

「…おい、月臣…光の鈍いところが

 

「言うな…。(泣)」

 

…完全修復とは、いかなかった様だが…。

 

・・・。

 

「しかし…無事で何よりだ。」

 

「まあ・・・な。」

 

「もしお前が死んでいたら、俺は女性陣に殺されてた所だ。

 

「お前のせいじゃないだろうに。」

 

「…。(滝汗)」

 

…知らぬが花と言う事も有る。

 

「…しかし、テンカワ…。」

 

「なんだ?」

 

「お前がバイザーを外した所を初めて見たぞ。」

 

「!?」

 

…アキトは顔に手を当てる。

…確かに…無い。

 

だが、見えている。

更に…。

頬に当たる風の感触…。

窓から射し込む太陽光の暖かさ…。

そして…階下の喧騒も…。

 

(感覚が…戻った!?)

 

・・・。

 

事は、アキトが瀕死の状態で運び込まれた、その日に遡る。

 

「アキト…アキト…。」

 

…返事が無い。

ラピスの呼び声にも関わらず。

 

「あ…アキトさん…何か…何か言って下さい!」

 

アムの叫びにも、反応する事は無かった。

 

そして、ナツメは…。

 

「月臣君…貴方はアタシのとても良い友人です…でも、」

 

「…。(滝汗)」

 

「…アキトを傷つけた罪は重いわよ?(にっこり)」

 

「ま、待ってくれナツメ!(泣)」

 

「駄目。…ぽちっとな(爆)」

 

「…うわあああああああっ!!!」

 

…合掌。

 

・・・。

 

…アキトの病室…

 

「…ラピスちゃん…アキトさんの容態はかなり悪いです。」

 

「何とかならないノ?」

 

…アムが暫く考え込む。

 

「アキトさんの回復を妨げている物があります。」

 

「!」

 

「…アキトさんの体内に多数存在するナノマシン…。」

 

「アレが?」

 

「一つ一つは尋常ではないくらい優秀ですけど…。」

 

「…ケド?」

 

「お互いに邪魔しあってるんですよ。」

 

「エ?」

 

…アムの説明はこんな風だった。

ナノマシンAは体を作り変えようとする。

ナノマシンBは体を修復しようとする。

ナノマシンCは外敵を処理する。

…と、言う効果を持つ物とする。

 

『A』がアキトを作り変えようとするが、その横ではそれを破損個所と判断した

『B』が元の状態にするべく、修復作業を開始する。

更に、『B』に作業を邪魔された『A』は…『C』に異物排除を求め…。

攻撃を受けた『B』は『C』に対し、敵対行動を取った『A』を攻撃する様に命令。

どちらも正規の命令なので、『C』は両方を攻撃。

最後には、修復途中で放って置かれたままのアキトの細胞が残る。

 

そして…修復途中の細胞は正常に働かない。

…故にアキトは感覚が上手く働かない。

 

・・・。

 

「じゃ、アキトの体では何時もナノマシンが戦争してるノ?」

 

「…まあ、そんな感じです。」

 

「…じゃあ、アキトを助ける方法は無いノ?」

 

…暫しの沈黙。

 

「一つだけ…良い方法が有ります。」

 

「何ナノ?」

 

「統御用のナノマシンを作って、アキトさんに投与すれば良いんです。」

 

「じゃあ、作ろうヨ。」

 

「…ただ…。」

 

「ただ?」

 

「貴方の持っている、出所不明の技術が必要になると思いますが…。」

 

沈黙…

 

「…何処まで知ってるノ…?」

 

「伊達に貴方達と繋がっている訳じゃないです。…精神障壁の厚いアキトさんならともかく。」

 

「…。」

 

「…貴方の記憶…一部だけですが読ませていただきました。」

 

「…。(汗)」

 

 

「…何で、アキトさんとお風呂

 …一緒に入ってるんですか!!?」

 

 

…決定的な部分は読まれていないようだ。(汗)

 

コテッ…と、こけるラピス。

 

「まあ、良いでしょう。後でボクも頼んでみます。

 

何気にヤバイぞ…アキト(爆)。

 

「ま、設計図は出来てるんです。…見て頂けますか?」

 

「りょ−かい…なノ。」

 

・・・。

 

そして数時間後…山崎の病室。

彼は、先日までのエステ量産設備の立ち上げで数ヶ月もの間…不眠不休で働いていた為に栄養失調でぶっ倒れていた。

 

「…凄いや…ほんとぉに・・・グウ・・・。」

 

…何の夢を見ているやら…。(汗)

 

バタム!!

 

そこに押し入る少女が二人!

ずかずかと上がり込むと、問答無用でアンプルを山崎の首に突き立てる!

 

プシュ!

 

…ぽいっ……何かを枕元に置いたが?

 

すたすた…バタム!

…出ていった。

 

 

また、数時間後。

 

ドッゴーン!!

 

…吹き飛ぶ壁!弾ける窓!…運悪く近くを通りかかった白鳥が宙を舞う!

先ほど置いていった爆弾が爆発したのだ!

 

…。

 

「ゲホゲホ…なんだよぉ?一体。」

 

…山崎…何故生きてる?

 

「ふっふっふ…ボクの計算通り。」

 

「(一応)医療用最新ナノマシン…実験成功だネ!」

 

…お前等…一応自分等も人体実験の犠牲者だろ?

 

「『江戸の敵を長崎で取る』って諺も有りますし…。」

 

「それに…山崎だから良いノ…ね!皆。」

 

それに答える様にここに住む全てのお子様達は…。

 

「「「おーっ!!」」」

 

子孫の悪行の所為で不幸になる、山崎孝文(独身)。

 

…普通は逆なんだけどね…。(汗)

しかし、子供に舐められてるなァ…。(同情)

 

・・・。

 

「…で、新型ナノマシンの実験に僕を?」

 

「うん、アキトを助けるノ。」

 

「心配しないで下さい。ボクが作ったんですから。」

 

…何の心配なんだか…。

 

「ま、これでアキトさんのナノマシンは全て正常に作動するはずです。」

 

「感覚は元に戻るノ…?」

 

「ええ。」

 

「そっ…か…。」

 

「寂しいんですか?」

 

「………う…ウン。」

 

そこにナツメが乱入。

 

「…そんな事で変わってしまう程、貴方達の関係は浅くは無いでしょ?」

 

「…当然だヨ!」

 

「じゃ、大丈夫だよ。…所でアキトの具合はそんなに悪かったの?」

 

「はい。…でも大丈夫。」

 

「統御用ナノマシンは今晩中には出来るヨ♪」

 

「そっか…じゃ、アキトの具合が良くなったらさ…。」

 

「「はい?」」

 

「パーティーでもしよっか?…皆でさ!」

 

そんな風に言うナツメの目は限りなく穏やかだった。

 

「でも…戦争中ですよ?」

 

「…非常自体…なノ。」

 

流石に心配するアムとラピス。

 

「そ・れ・が、大丈夫なのよ!」

 

「「へ?」」

 

…そしてその日の夜、アキトに統御用ナノマシンが投与された。

 

・・・。

 

時系列はアキトが目覚めた日に戻る。

 

…格納庫・兼、兵器生産プラント…

 

…山崎が忙しく働いている。

 

「…ナノマシン…か。便利な物だね。」

 

すたっ…。

 

5m程の垂直ジャンプを見せる山崎。

 

…うち込まれたナノマシンは意外な副作用を見せていた。

 

肉体が…不必要なほどに強化されていたのだ。

 

…前回、アキトが見せた力もこれと似たような原理。

マッド山崎(子孫)に打たれた試作型ナノマシンは、それを統御する物を得て、本来の性能を発揮。

中には体内の養分をエネルギー源として、ディストーションフィールドを発生させる物まで存在したのだ。

…そして、それは今も自己進化を続けている…。

 

 

 

・・・。

 

 

因みに…山崎(子孫)ハイパー化フラグ…ON。

 

・・・。

 

…その日の夜…

 

アキトの全快を祝い、ささやかな宴が開かれようとしている。

…最も、殆どの参加者は主賓のアキトが登場していないのに飲み食いを始めていたが…。

…まあ、普段はあんまり良いものを食べられないから…。

 

・・・。

 

和気藹々と宴は進む…アキトはまだ来ないけど。

そして…一箇所だけ殺気を放つ場所が存在した…。

 

「…ボクが…アキトさんの席の横に座りたくちゃ悪いですか?」

 

「そんな事は言ってないけど。…でもラピスちゃんの席はどうするの?」

 

…ナツメさん…自分のは決定事項ですか?

 

「…良いよ、二人で横に座ってヨ。」

 

「「ラピスちゃん!?」」

 

…ぽふ

 

…そして、自分はアキトの席に座るラピス。

 

にやり

 

状況がわからず、暫く固まっていた二人だが…急に気づく!

 

(…膝ですか!?)

(抜かったぁ!!)

 

…問題は無い訳ではないが…まあ、おおむね今日は平和だった…。

 

・・・。

 

…因みに、それをドアの隙間から覗いていたアキトは…。

 

たったった・・・(汗)

 

…あ、逃げた。

 

・・・。

 

そして…アキトは白鳥の部屋に逃げ込んでいた…。

 

「妻がパーティーで騒いでるんで暇だったんです。」

 

そう言って、匿ってくれた白鳥にアキトは大変感謝したと言う。

…白鳥自身は大怪我で動けない為、パーティーには不参加だが。

 

ま、…昼間の爆発に巻き込まれて無事だっただけでも儲け物だったろう。

 

『ゲキガン…パーンチ!!』

 

ビデオからは、何時ものフレーズが聞こえていた。

 

「…ゲキガンガーか。」

 

「お気に召しませんか?…じゃ、秘蔵のを…。」

 

ごそごそ・・・

 

「ゲキガン以外に何か持ってたのか?」

 

「…ええ。…持ってない部分が多かったんで皆には見せてません。」

 

「何でだ?…皆、娯楽には飢えてるだろうに。」

 

「…足りないんじゃ、ストレスが溜まりますよ。」

 

…事実、あちこちの班でダビングして持って行くものの、

13話が無いのが問題になる事が少なくないようだ。

(13話…後に幻と言われる回である)

 

「お、これこれ…じゃ、お願いします。」

 

「所で…これは?」

 

「…ゲキガンガーの劇中劇には元ネタがありましてね…。」

 

「ほお?」

 

「20世紀末のアニメをそのまま挿入してあるんです。」

 

「へぇ…初耳だな。」

 

「実はゲキガン自体、そのアニメの劇中劇だったんです。」

 

「…なんだそりゃ?」

 

「多分…スタッフの遊び心では?…深い意味なんて無いと思いますよ。」

 

「…ふうん。」

 

「…テンカワさんなら、絶対知ってますよ。」

 

「そんな昔のアニメを知ってる訳ないって…。」

 

「コスプレまでしてる癖に?」

 

「…何時の話だよ。」

 

「まったく…素直じゃないですね…お、始まりますよ!」

 

・・・。

 

そして…物語が始まる…。

 

そう、それは・・・。

 

 

『思い込んだら一直線』

『いっそ地球に見切りをつけて信じてみた木星の正義…』

『でも、それは私達の正義ではなかった』

『熱血、友情、努力、人の数だけ正義は有った…。』

 

 

 

(…る…ルリちゃん!?)

 

『ユーゲットバーニン!君らしく誇らしくー』

 

(な…何なんだよ!…これは!!)

 

「いやあ…この前の回で殺されるキャラが自分にあんまり似てたもんで、

 思わずこの辺りの巻だけ買っちゃったんですよ…。」

 

(何で…こんなもんが…有るんだ!?)

 

アキトの魂の叫びを…聞きつけてくれる者は居ただろうか?

 

そして…

 

・・・その、アニメの名は…『機動戦艦ナデシコ』…。

 

続く

 

 

−−−崩れた遺跡−−−

 

かつて…北方が致命傷を負った…崩落した遺跡に連合軍が訪れていた。

 

「どちらの物でもない…巨大土偶ねぇ…。」

 

そう言うのは、長い黒髪が魅力的な女性士官だった。

 

「アスカ…どう思う?」

 

大佐だ…片腕を吊っているものの、元気そうにしている。

 

「…存在する以上、否定するわけにはいきませんわ、大佐。」

 

「…なあ…。」

 

「これで決まりです…帰ったら人型機動兵器の開発に掛かろうと思います。」

 

「……存在するなら…作れるはず…か?」

 

「ええ。独立派…反乱軍にも存在していますし。」

 

「…確かに、独立派に火星を明渡す事が決まった以上…。」

 

「私達は、帰るほか無いですからね。」

 

地球側は遂に火星を捨てる事にした様だ。

 

…大佐が女の髪を手櫛で梳いてやる。

 

…。

 

「なあ…女としての幸せを手にする気は…無いか?」

 

…。

 

「ふふ…私はそれ程欲張るつもりは無いですわ。」

 

「…だが、」

 

「それとも貴方が貰ってくれるのですか?」

 

「!…俺は!!」

 

「…お嫌でしょう?…こんな機械狂となんて。」

 

…。

 

「さ…戻りましょうか。」

 

「…いや、後少し…ここにいる。」

 

「…そうですか…では、お先に。」

 

そして、自らの名を冠する明日香インダストリーの社長令嬢でもある

『アスカ・オニキリマル』中佐は、車内に戻った。

 

残された大佐は…

 

「結局…アイツは機械が恋人なんだな…。」

 

ヒュン!

 

…風を切る音…。

 

そして…大佐が車内に戻る。

…そして…火星の大地には、捨てられた箱が一つ。

 

…箱の隙間から…指輪が物寂しい光を、ただ黙って放っていた…。

 

・・・。

 

その時…地下。

 

「…駄目です。もう、使い物になりません。」

 

…破壊された装置を目の前に、この場所で眠っていた少女が嘆息する。

 

「駄目なのかい?」

 

エドワード・ファー・ハーテッド少尉が心配そうに声を掛けた。

 

「はい…ですが、この際です。…やれる事はやっておきます。」

 

「やれる事?」

 

「…ごめんなさい…言えないんです。」

 

「…ふう、まあ良いさ…。」

 

「すいません。(…信じて貰えるとは思わないですし…。)

 

…。

 

「所で、これからどうする気なんだい?」

 

「…解りません。」

 

…。

 

「私は…連合軍…は、火星からの完全撤退が決まった。」

 

「…。」

 

「君には二つの選択肢が有る。」

 

1・このまま連合軍と一緒に火星を出る。

2・独立派に合流する。

 

「ふぅ…どちらにしても、引き取り手が無いですからね…。」

 

少女は苦笑した。

 

「…じゃ、決まりだね。」

 

「え?」

 

「行き先が決まるまで…暫くは私の家で暮らすと良い。」

 

「…でも、」

 

「…心配は要らないさ、家は結構な名家だしね。」

 

「…ご迷惑では?」

 

「両親は女の子を欲しがっていたし…ちょうど良いよ。」

 

「…じゃあ、暫くお世話になります。」

 

「はい、宜しく。」

 

・・・。

 

「じゃ、行こうか?」

 

「はい。(もう一人の私…私は…一緒の時を過ごせそうも有りません)

 

「…でも、星野瑠璃…じゃ、私の国では拙いな…。」

 

「そうなんですか?(でも…戦いの準備だけはしておきますね)

 

「何か、考えないとね。」

 

「お願いします。(…卑弥呼様…貴方の意思は…必ず…守ります)

 

「所で…記憶…戻ったのかい?」

 

「はい…。(例え、運命の時に…私が滅びていたとしても…)

 

…『星野瑠璃』が、『ルーシー・ハーテッド』として西欧方面軍の名門、

ハーテッド家に引き取られるのは、これより半年後の事であった…。

 

::::後書き::::

 

BA−2です。

 

…さて…ようやくここまで来れた…って所ですかね?

…掟破りですよね…。

 

でも今更、斬新なの…って言ったら、こうでもしないと…。

 

…さて…我ながら凄まじい伏線の量にあきれ果てております。

今回だけでも何個の伏線を張ったやら…。

 

…もしかしたら忘れているのも有るかも…。

 

…とにかく、こんな駄文でも応援していただけると嬉しいです!

 

では!

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの連載投稿です!!

そこら中に伏線の山が(笑)

山崎の子孫って、どうなるんだろう?

・・・それ以前に、嫁さんって誰?(爆)

何だかアキトのご先祖様はハートブレイクしてるし。

何故かナデシコのTVアニメがあるし(苦笑)

 

う〜ん、これから先はどうなるんでしょうか?

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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