機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー
世紀を超えて
第28話 和平への道
「これで…終わりだっ!」
ドッ……ガーーーン!!
敵の旗艦が爆発する…。
それに伴い、残った数隻は白旗を揚げた。
…こちら側の損害は皆無。
この戦いは、艦隊戦としては小規模な物であったが、
この世界における、ディストーションフィールドのデビュー戦でもあった。
…それが、いかなる変化をもたらすのか、知る者はいない…。
・・・。
皐月…ブリッジ
アキトは戦闘後、ナツメに呼ばれてここに来ていた。
「呼んだか?」
「ご苦労様…でさ、このまま月まで向かうんだけど…どう思う?」
「どう思う…と、言われてもな…。」
「ほら、アキト達だけじゃない…元からの独立派じゃないのって。」
…つまり、客観的に見れる相手に相談したいという訳だ。
「…ここまで来たんだ…今更火星に帰る気は無いんだろ?」
「うん…でも焦って罠にでも掛かったら目も当てられないしね…。」
確かにナツメは焦っているようだった。
…無理も無いが。
「こちらとしては、帰ってくれると嬉しいんですけど…。」
マスミ嬢…金網の中から、ある種の懇願…。
…泣きが入っている様に見えるのは気のせいだろうか?
「そう言われてもね…やっぱ、皆それじゃあ納得しないと思うから。」
「…じゃあ聞くなよ。」
「…そう言えばそうね…。」
…そうこうしてる間にも、艦隊は月軌道上まで辿り着いていた…。
・・・。
「…月が…。」
…アムがぽつりと漏らす。
月面のあちこちからは、戦闘が続いている事を示すように爆発が続いていた。
…だが、それは…。
「…綺麗…。」
…遠目には、まるで花火のようであったと言う…。
・・・。
(和平実現の為には…先ずこの戦闘を止めないとな…。)
アキトは眼下の爆発を見て、そう…考えていた。
戦争は、確実に不幸な人間を増やしていく…。
間違いなく、死者の数は『史実』を上回るだろう…。
…戦争の火種を消さない限り戦いは続く。
…ならば、その火種を消してやればいい…。
そんな…アキトの思いは届くのだろうか?
・・・。
所変わって、連合軍月面基地。
…数隻の戦艦がそこから飛び立っていった…。
「…行ったか…。」
「はっ。」
…飛び立った艦隊には、月面基地のお偉方の残りが乗っていた。
既に大半の将官は地球に帰還していたのだが、
残った連中も、戦線の悪化に伴い、自らの身の安泰の為に引き上げたのだ。
…無論、ただで帰る訳にも行かず、留守居部隊長の大佐には、
「援軍要請の為、本部に掛け合ってくる。」
とか、
「現状を報告しなくてはならん。」
等と、言い訳に近いような理由付けをしていたが…。
…要は死にたくないだけだ。(断言)
・・・。
もっとも、大佐たち…即ち、居残り部隊の方はせいせいしていた。
「見せしめに一人処刑せよ…!」
「…なんとかしたまえ!」
「責任は取るのだね?」
「善慮する…では困るのだよ。」
…この、将官達の台詞の中に、建設的な意見が一つでもあっただろうか?
いや、無い。
…。
「…さて、そういう訳で俺が現在の責任者となった訳だが…。」
会議の始まりは、大佐のそんな台詞だった。
…後ろの黒板には、第一次緊急防衛会議と書かれている。
「…皆の屈託の無い意見を聞きたい。」
…すっと、ミスマル中佐が手を上げる。
「…現在の戦力では、全地区を奪還するのは不可能かと。」
「戦線の縮小だな?」
ガタッ!
…ヤマダが突然立ちあがった!
「…そりゃ駄目だぜ!」
「何故だ?…大尉。」
「大佐…んな事したら、全部の責任を押し付けられちまうぜ!?」
「俺の首一つで地球圏が救われるなら…安い買い物じゃないか?」
「反対ですな…貴方が居なくなったら連合のモラルを正す者が居なくなる。」
「…そうだ!あのお偉方に面と向かって批判が出来るのは大佐だけだぜ!?」
「…お陰で嫌われているがね。」
…そこまで言って、ミスマル中佐とヤマダ大尉は、はっと気づく。
「まさか…。」
「…上の連中め…卑怯臭い真似しやがって!!」
・・・。
「そうだ、例えいかなる終わり方でも…俺は罷免されるだろう…。」
…ガタッと音を立て、大佐は立ちあがる。
「…だから、俺は最善を尽くすのみだ!」
…そして、窓の外を見る。
…皐月を中心とした独立派の艦隊が、
月に残った独立派によって、占領された港に入港して来るのが解る。
「…後は連中に話の解る奴が居るかどうかだな…。」
…ぼそっ…と呟く大佐。
その表情には苦悩の跡が見える…。
そして、仮眠を取ると言って、部屋から出ていった…。
・・・。
「黒帝…。」
「どうしたのかね…ヤマダ大尉?」
残されたミスマル中佐とヤマダ大尉の二人。
…突然…ヤマダが固まる…指差されたその先には…、
「あの…黒い機体は!?」
「…間違いねぇ…黒帝だ。」
「…私は話で聞いただけなのだが…強いらしいな?」
「ああ中佐。その通りですよ…ありゃ化け物だ…。」
「ふむ…大佐と比べたら?」
「恐らく僅差で大佐の勝ち・・・だと思いてぇな。」
「…そこまでの怪物が大佐以外にも居たとはな。」
「例の生体兵器みたいなもんですかね?」
「北方辰彦か…。」
「奴はおっ死んだみたいですがね。」
…そこまで言って、中佐はふと気づく。
(大佐は和平を考えているが、相手はどう考えている?)
…そして、敵の事を調べねばと考えたのだった。
…。
数日後…ヤマダの部屋にミスマル中佐が駆け込んで来た。
「大尉…大変な事が解った!!」
「な…中佐!?」
…そんな中佐が持ってきた情報とは…。
「…大佐と黒帝のDNAが良く似てるぅー?」
「しっ!…なんと6,25%が一致するのだ!!」
・・・。
「…6%ぐらいで…良く似てるみたいだけどよ…。」
「あのな…黒帝は遺伝子的に大佐の玄孫と言っても過言では無いのだよ!」
以前、数時間だけ捕まっていた時にデータを取られていたらしい。
…あの爆発したヘリから良くデータを持ち出せたものだが…。
「…大佐には子供も居ねぇはずですがね…。」
…ヤマダは相手にもしていない。
業を煮やした中佐は…。
「この前地球に送還された、七瀬君の事を忘れたか!?」
…因みに七瀬は『敵対勢力に所属していた』と言う理由で、
地球に送られていた。
恐らくラボに戻され検査と調査をした後に、再度『教育』されるのだろう。
…無論、普通の『教育』ではないが…。
・・・。
「はあ、どっかのラボに居たって聞いてますがね。」
「…つまり、軍では非合法な実験もしてると言う訳だ。」
「それが、どうかしたんで?」
「私が推測するに…恐らく黒帝は…。」
「…黒帝は…?」
「大佐のクローン人間だ!!」
…(謎の沈黙)
「ぶははは…幾らなんでもそりゃ無いでしょう!」
「…大尉…だが、これを聞いたら考えも変わるぞ?」
「ほー?」
…ある種の確信を持って、熱弁を振るう中佐…。(汗)
そして、30分後…。
「…じゃあ、奴には戸籍もなーんも無い…と?」
「うむ…居たと言う証拠が一つも無い。」
「名前も分からないのに調べられるんで?」
「…登録されている中で、あのデータに合う人間は居なかったのだよ…。」
「…確かに怪しいけどよ…。」
「以前マスミ君が文書を届けた時、黒帝は少女を一人連れていたと言う。」
…そこで中佐は少し悲しげに目を伏せる。
彼とマスミは従兄弟同士である…捕まっているのが気がかりなのだ。
「…それ、意味有るのか…?」
「…その子は金色の目をしていたとか…。」
「ああ…なんかのニュースで見たような気が…。」
「うむ、金色の瞳は遺伝子改造された証だという。」
…。
「…だとすると、厄介だな…。」
「私は、大佐のように立派な人格者であれば良いと期待しているがね。」
…この話は二人だけの秘密とされ、結局他の者の耳に入る事は無かった。
だが、この会話は後に大きな意味を持つこととなる…。
続く
−−−その頃、最前線−−−
独立派の兵士達がボソボソと話している。
「火星に行ってた連中が帰ってきたみたいだ…。」
「ねぇ…こくていはきてるの?」
「ああ、勿論だ…これで勝ちは決まりだな!」
…既に彼らの脳裏には、
独立を果たした後の月が映っているのかも知れない…。
・・・。
…彼らが今戦っているのは、
ついこの間までショッピングモールだった場所だ…。
道端に転がり、焼け焦げているヌイグルミがものの哀れを誘う…。
…それがバカ殿様で無ければ、もっと良かったのだが…。(爆)
・・・。
一方の連合軍側はと言うと…。
「…黒帝が!?」
「ああ、一個艦隊を叩き潰してここに辿りついたらしいぜ…。」
「…ひぇ…こわッ!」
「…ここもボチボチ危ないな…。」
連合軍が戦線を急速に縮小するのはそれから間もなくであった…。
::::後書き::::
BA−2です。
28話は如何でしたか?
…既に生きる伝説と化しつつあるアキトの運命は?
…和平の行方は!?
…そして、なんか勘違いしてる2人は!?
…こんなのでも喜んでいただければ幸いです。
応援宜しくお願いします!
では!
代理人の感想
バカ殿様って・・・・
今までのシリアスな緊張が一発で吹き飛んでしまいましたがな(笑)
この状況でどう真面目な感想を書けとゆーのだ。
前回書いた「連合軍=地球連邦軍」説ですが、そうすると「月=サイド3」と言う事になりますな(笑)
ナツメ達火星独立派はアクシズかデラーズ・フリートか(いっそオールズモビル=火星独立ジオン軍かも)
草壁父がギレン、後を継いだナツメがハマーン、そうするとアキトはやはりシャア(笑)?
ロリコンという一点に絞れば五十六でもいいんですが、
女癖の悪さとアフターケアの不備(笑)を考えるとやはりアキトでしょう。
ちなみにアム=ララァ、ラピス=ミネバ、マスミを落したらナナイ(笑)。
管理人の感想
BA-2さんからの連載投稿です!!
いや、既に歩く走る踊る伝説でしょ、このアキトは(笑)
しかし、意外な場所からアキトの存在を疑う証拠が出てきましたね。
ラピスの金色の瞳が、さらに説得力を・・・・
って、そう言えば瑠璃ちゃんはどうしたんだ、瑠璃ちゃんは?(苦笑)
もしかして、あのままグラシス家に嫁入りか?
・・・サラとアリサの先祖に、瑠璃ちゃん(汗)
あ、なんか一瞬納得してしまった(爆笑)
ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!
次の投稿を楽しみに待ってますね!!
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