機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー

 

世紀を超えて

第6話 少女の秘密

 

 

 

 

・・・あの、廃棄シャトル集積所での一件から数日後。アキト達は独立派のメンバーの元へ向かっていた。

連合軍の艦隊は引き上げたようなので、気楽な旅だ。  

 

 

「・・・じゃあさ、アキトとラピスちゃんって、親子って訳じゃ無いんだ。」  

そう言う少女は『クサカベ ナツメ』・・・苗字から想像するに、あのクサカベ中将の祖先筋なんだろうが、

そんな事を微塵も感じさせない明るさを持っている。  

 

「凄いです。・・・まだ20代前半なんでしょう?・・・やっぱりアキトさんって優しいんですね・・・.」  

胸元のペンダントを弄りながら、こう言う少女は色素欠乏症で・・・

アキトにとって妹同然の(向こうにとってはそれ以上なのだが)少女に良く似ていた…

が、それも当然だろう。彼女の名は『アメジスト・フォン・ピースランド』と言い、

ピースランドの王族(現在勘当中)なのだ。

 

自分の事をボクと呼ぶ…ちなみに愛称はアム。長い銀髪が美しい…。  

 

「別にそんな訳じゃない。…そう言えば、アムちゃんはどうしてアメジストって名前なんだ?」

・・・我等が女難王アキトである。  

少女が答える。  

「!あ、はい。

 このペンダントなんですが、(アタフタ)これの中にお守りとしてアメジストが入ってるんです。(オタオタ)

 …ボクは体が弱くて…それで…母が誕生石をお守りとして・・・。」  

…なにか、様子がおかしい。  

「どうかしたのかい?・・・俺で良ければ相談に乗るけど・・・?(ニコ)」  

…出た!伝家の宝刀アキトスマイル!!

…今まで数々の女をたぶらかし・・・もとい虜にしてきた対女性用超必殺技だ!  

 

「(真っ赤)あ、あの…ボク、その」  

キョロキョロと辺りを見まわす。

…どうやら人には聞かれたく無いらしい。  

 

(これは、何か大変なわけが有りそうだ)  

 

そう思ったアキトは彼女を連れ出すことにした。

少女を抱きかかえると、  

「すぐ戻る。」  

とだけ言って、バギーから飛び降りた。  

「…ち、ちょっと!アキト、追いつけるの!?」  

「ああ!直ぐに戻る、心配するな!」  

…ロングヘアーの男、『ツキオミ・ゲンゴロウ』(自分の名前が大嫌い)がそこに割ってはいる。  

「テンカワ。…追いつけるか。」  

アキトはそれに答えず走り出し、ずっと前方の岩山の間に隠れた。  

 

…。  

 

「化け物・・・アタシ、バギーより足の早い奴、後一人しか知らない…。」  

「・・・一人居れば十分だ。」  

…もっともな意見である。  

 

・・・。  

 

・・・その頃アキト達は  

「ここなら誰にも聞かれないよ。…言いずらいんだろう?」  

うつむいた少女は、真っ赤になって  

「あ、アキトさんって結構大胆なんですね・・・。」  

それに対してアキトは  

「・・・何がだい?」  

 

 

 

・・・。(謎の空白の時)  

 

 

 

(・・・それ以上に鈍感…ですか、これは手ごわそうです。)  

 

そんな空気に気づきもしないアキトは早速本題を切り出す。  

「で、アムちゃんの名前の由来は・・・?」  

…。  

ファサ…。  

 

 

少女は長い髪を掻き揚げた・・・。額に紫の宝石が埋まっている・・・!  

「そ、それは!?」  

たじろぐアキト。  

「・・・父様は40を過ぎても子宝に恵まれず、ボクが生まれたとき大変ガッカリなされたそうなんです…。」  

…。  

「けど、その直ぐ後…数日後に第2婦人が男の子を出産しました…。」  

…。  

「…ふふ、ボクの事なんかそっちのけで大々的に後継ぎとして世間に発表した上、

 母様にボクを処分せよって命じたらしいんです。…後継者問題がこじれるといけないから…って。」  

…。  

「…でも、母様には正妻としての意地が有りました。

 …あろうことか研究所に命じてボクに遺伝子改造を施した上、脳内に小型コンピュータを埋め込んだんです。

 …副作用で色素が抜けちゃって、こんな風になっちゃいましたが。」  

「なんだってそんな事を…。」  

「…ご存知無いですか?…数年前にテレビで天才少女って騒がれてましたが、あれ…ボクです。」  

「母様は、そうやってボクを世界的に有名にした上で、ピースランドの姫だってマスコミに発表したんです。」

「・・・成る程。そうすれば、マスコミが勝手に騒ぎ立ててくれる。…国王は自分の娘だと認めざるを得ない…。」  

「はい。そしてボクは王宮に入りました…でも、母様は甘かったんです。」  

…。  

「母様はボクを足がかりに国での発言力を高めようとしていました…。が。」  

そう言い、アムは人差し指をすっとアキトに向けると…ヒョイと上にあげた。  

「・・・殺されたのか。」  

少女は頷く  

「はい。…それからは国のマスコット扱いでした。天才王女って…。」  

そこまでいうと少女の目に涙が浮かぶ…。  

「けど、父様はボクが邪魔だったみたいですね。

 …何度か…厳重なはずの警護の隙を見計らって暗殺者が来ましたから。」  

そう言うと…そっと額の宝石を小突く。  

「…この額のアメジストは脳とコンピュータに直結している入出力端子…

 コンピュータに近づけるとデータを書きかえられるんです。」  

 

ポタ…。  

 

「…警備システムを掌握した後で侵入者を見つけると…。」  

 

…ポタ…ポタ…と涙をこぼしながらも話は続く・・・。  

 

「…いつも必ず…1度父様の寝室に入っていくんです…。」  

 

 

・・・。  

 

 

…生まれた時が悪かったのであろうか?…はたまた王族という環境ゆえか…

この少女はとんでもない運命を背負わされているようだった。  

…。  

「ところでアキトさん・・・。」  

「…ああ、誰にも言わないよ。」  

…。  

「…いえ、…ボクも恥を忍んで自分の生い立ちを話しました。

 ・・・質問があります。・・・アキトさんも、…一つで良いからきちんと答えてください!」  

 

 

・・・正直、アキトは焦った。

・・・エステバリスの事。

・・・自分の過去・・・言えない事が多すぎた。  

だが、自分の事をここまで語られたのに、嘘をつく訳にはいかなかった…。  

 

・・・。  

 

…だが、アムの質問はアキトの想像を超えていた。  

 

…。  

 

「・・・ルリさん…ってどなたですか?」  

 

・・・。  

 

「は?」  

 

ゴゴ…ゴゴゴゴ…

 

「あ、いえ、最初会ったときボクと間違えた方です。」  

 

「ああ、ルリちゃんの事か・・・。」  

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

 

ずいっ・・・。(顔を近づける)

 

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

 

「一体誰なんです!?(激怒)」  

 

ズガゴゴガゴゴゴゴガゴゴゴギャゴゴゴゴゴゴゴゴゴバゴゴゴゴゴゴゴ・・・  

 

「・・・い、妹だよ。(真っ青)」

 

ゴ…ピタ。  

 

 

・・・。(沈黙の時間)  

 

 

「本当ですか・・・?」  

「…。(コクコク)」  

「…なら、良いんですが。」  

…アキトは、先ほどから思っていた事を聞いてみる。…冷や汗かきながら。  

「なあ、アムちゃん。君は、どうして俺にかまう…俺達は、この間出会ったばかりのはずだが・・・?」  

 

沈黙・・・。  

 

・・・。  

 

「アキトさんは・・・ボクと同じ匂いがします。」  

ふいに少女が口を開いた  

「俺が…?」  

怪訝そうなアキト  

「はい・・・ボクには分かります。アキトさん・・・。」  

そう言うと、アムはアキトに近づき近くの小さな岩に飛び乗ると、そっ…とアキトのバイザーを外し、

その白魚のような手をアキトの顔に滑らせた。  

「…アキトさんはどんな改造をされたんですか?」  

 

アキトの顔に大量のナノマシンが浮かび上がり、緑の光を放つ…。  

「…やっぱり、貴方も…。」  

そう言ってバイザーをアキトの顔に戻す。  

「…どうして分かった。」  

多少の凄みを利かせてアキトが聞く。  

「・・・ボクの額の宝石は脳内コンピュータの入出力端子だと申し上げたはずです。

 …レーダー代わりでもあるんですよ?」  

アキト、呆然…。  

「・・・あ、そうそう。」  

たたたたたたっ・・・。  

アムはアキトから離れた…。  

《アキトさん?聞こえますか…?》  

「何ぃ!?」  

アムの口は動いていない…。

《貴方のナノマシンのデータを記憶しました。》  

そして近づいてきて  

「これからは何時でもお話できますね。(ぽっ)」  

 

ゴワー−−−ン・・・。  

 

・・・アキト、放心。  

 

・・・。  

 

アキト達は皆の元に戻ってきていた。  

「…ねえ、ゲン…ツキオミ君。アキト、帰ってきてからおかしくない?」  

「じきに元に戻る。」  

「…そっか。…そうだよね。」  

後ろの座席ではアキトの膝の上を巡りラピスとアムが無言の戦いを繰り広げている・・・。  

当のアキトは未だ放心中である・・・。  

 

…。  

 

《私はアキトの目…アキトの耳…アキトの膝は私のモノ》  

《ケチな事言わないで下さい。ボクもアキトに座りたいですね…。》  

《…駄目》  

《何でですか!》  

バチバチ・・・。  

目から火花まで散っている・・・。  

…どうやら、アキトを通してラピスともリンクされてしまったようだ。  

…アキト、危うし。(何故?)  

 

いずれにせよ、アキトには守りたいものがまた一つ増えたようだ…。

…だが、これでアキトは本格的にこの時代に関わる事となる…。  

・・・歴史はもう戻らない・・・。  

 

続く  

 

 

−−− 一方 −−−  

 

「な、なんか後ろ、怖い…。」  

「気のせい…だ…。」  

 

・・・。  

 

「あ、そうだ。帰ったらアキト達の歓迎会を兼ねてアキトに『あの人』と手合わせしてもらおうよ。」  

「…やめた方が良い。」  

「何でよ…ツキオミ君。アタシ、良い手だと思ったんだけど?」  

「・・・。」  

「何よ。」  

「あの二人が戦ったら…恐らくどちらか死ぬぞ。良いのか…ナツメ?」  

「…あ、そうか。じゃ、駄目。…ゲンゴロウ君、あったまいいー!」  

 

…。  

 

「ぉ俺をその名で呼ぶなァァァァァァァアアアア!!」  

 

・・・。  

 

野郎が夕日に吼えていた・・・。  

 

 

::::後書き::::  

BA‐2です。連載第6話です!

…如何です?オリキャラの中で1番のお気に入り、アムちゃんのお話です。  

今回、アキトが戦う意味って希薄でしたよね…ツキオミの事だって、北辰の祖先が居ないなら…と言うか、

木連の祖先を全滅させるつもりなら見殺しにしたかも知れませんし、

なんか…行きがかり上そうなった…と言うままではいけないなと思い、

今回アキトに新たな『守るべきもの』を設定しました。

…その都合上、アムちゃんには辛い人生を設定してしまいましたが・・・

ま、いずれルリちゃんと修羅場を展開してもらうつもりなんで・・・。  

 

では、よろしければ応援お願いします!

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの連載投稿です!!

なんだか、凄い展開になってきましたね〜

それにしても、アムちゃん・・・可愛いですね〜

BA-2さん入魂のオリキャラとみました!!

さてさて、今後はどんな活躍を見せてくれるのでしょうか?

 

でもBenの一番のお気に入りはゲンゴロウさん(爆)

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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