機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー

 

世紀を超えて

第8話 軍施設襲撃計画

 

 

 

 

アキトとラピスが独立派の拠点にたどり着いておよそ一月。

・・・そろそろ連合軍の再侵攻に備えなければならない時期に差し掛かっていた。  

が、戦力の違いは如何ともしがたい。

・・・エステバリスは確かにこの時代なら一騎当千の戦力であろう。

ただ…この時代にはまだエネルギーウェーブを発生させる技術が存在しない。  

現在は、内臓バッテリーの続く限りしか戦闘を続行し続けられないのである。  

・・・それでは数で押してくるであろう連合軍には、到底勝ち目が無かった。  

 

・・・。  

 

ここは、独立派、第1班の拠点…その会議室である。  

 

「現在のボク等の置かれている状況をまとめてみました。」

 

会議室のホワイトボードにある情報が書き連ねられていく。  

 

「戦闘可能…20人ちょっと・・・か。」  

「ナツメさん。…いえ、草壁代表。

 連合軍がまた来るまでには怪我の治療が終わる者があと二〜三十人加わるはずです。」  

「…いずれにしても、たいした差は無い。

 …一個艦隊を退けたんだ。敵は最低でも2個艦隊で来るだろう。」  

「うむ…我も同意見だ。このままでは我等はともかく。」  

「アタシ達はともかく、戦えない人達が危険・・・か。」  

「はい、閣下。」  

 

・・・そこに、ここまで無言のままでいたアキトが口を出した。  

 

「・・・一般人は何人くらいいるんだ?…随分多いような気がするんだが。」  

 

アムが直ぐ答える。  

 

「はい、アキトさん。ええと現在この街には2千人程の人達が居ます。」  

「・・・戦闘要員は50名しか居ないのにか?」  

「以前はもっと沢山居たんです。…最初は確か…5千人位居たはずです。」  

「…独立派は合計で100万人近く居たんだ…最初はな。」  

「でも、月でその8割がやられて・・・。」  

「その後、我等がここにやって来てからさらに半分にまで減っていった。…あっという間にな。」  

「アタシ達の1班には精鋭の…

 軍隊経験者なんかが集められていたから相手の目を引き付ける役目を担っていたの。」  

「先代の閣下は実に勇敢であった。

 何時でも自らが前線に赴かれ、兵達の指揮を盛り上げておいでだった。」  

「…多少、強引な手法も使っていたが…な。」  

 

…。  

 

「月臣 弦悟郎!貴様…閣下を愚弄するか!?」  

「当然だ!…部下を使い捨ての駒としてしか扱えん男だった!

 ・・・あの指揮ぶりは確かに相手に損害を与えるには最良だ

 ・・・だがな、そのせいで一体何人死んだと思っている!」  

「戦争とはそう言うものよ。」  

「黙れ北方!…もう少し考えれば、死ななくて良い命が沢山有った筈だ。」  

 

・・・。  

 

申し訳なさそうにナツメが口を開く。  

 

「…まあ、そうだよね。父さん、強引だったから・・・。」  

「…済まん。ナツメ、お前の父親だったな。」  

 

・・・。  

 

その後・・・会議はたいした進展も無くお開きとなった。  

 

「・・・結局、何にも決まりませんでしたね、アキトさん。」  

 

残念そうにアムが答える。  

 

「仕方ないさ。特にこう言う議題は皆の命が掛かっているからね。」  

 

アキトはそう答える。  

 

「ボクの司会進行が悪かったんでしょうか?…やっぱり。」  

「・・・まさか…始めてだとは思えない出来だったよ。」  

 

…アキトは嬉しかった。最初出会った時、彼女は国から見捨てられた事に悲観し、

なにか投げやりな所が見うけられた…

が、この一月…彼女は自分に出来る事を探そうと何にでもチャレンジしていた。  

 

・・・その結果、なんでも出来る人物だと判明。

その余りの多才ぶりに、自分でも驚いているようだったが…。  

 

…ただ…料理だけは何故かユリカ級にヘタクソだった・・・。  

 

・・・。  

 

「で、アキトさんの意見を聞きたいですね?」  

「俺のか?」  

「はい。ボク達だけでは埒があかないですから。」  

 

アキトは暫く考えていたが・・・。  

 

「そうだな…取りあえずは武器と弾薬を確保したいな…。ここに有る武器はどのくらいだ?」  

「え…えーと。」  

「アキト、マシンガンが十数丁、弾は3000発ちょっと。

 …あとライフルで使えるのが2〜3丁ぐらい。…それと手榴弾がアッタヨ。」  

 

・・・。  

 

少し絶句した後で・・・。  

 

「ホントか…ラピス。」  

「…ちなみに、手榴弾の殆どは、しけって居て使えないヨ。」  

「…そんなに消耗していたなんて。…最初はこの十倍は有った筈。」  

 

…ホントにそれだけの戦力で地球全体を敵に回したのなら、それはそれで大した物と言えるかもしれない。  

 

「…急いだ方が良いかもな…いや、急ごう。」  

「は、はい!ナツメさんに相談してきます…。」  

「俺は月臣にでも武器の有りそうな場所を聞いてこよう。」  

 

そう言ってアキトはラピスと共に歩いていった・・・。  

 

・・・。  

 

「で、俺のところに来た訳か・・・。」  

「ああ、このままだとどうにもならない。

 …怪我人の復帰を期待しても50人そこそこしか居ない上に、銃器が全員に行き渡らないのは問題だと思うが?」

「…俺には刀が有ればいいが・・・。」  

「お前はそれで良いかもしれないがな…月臣、戦えない連中をお前・・・一人で守れるのか?」  

「・・・無理だな・・・だが、だからと言って如何にもならない。

 ・・・今でもそのような軍需物資を取り扱う施設は専門の警備兵がしっかりとガードしている・・・。」  

 

・・・。  

 

「けど・・・そこなら良いものが沢山手に入るわ。」  

「「ナツメ?」」  

「アキトさん、月臣さん。・・・作戦が決まりました。」  

 

多少、驚きながら  

 

 

「早いな・・・。」  

 

と答えるアキト。  

 

「・・・即断即決!アタシもやる時はやるわ。」  

 

そう言うナツメに  

 

「「俺達の意見はどうなる?」」  

 

呆れかえるアキトと月臣。

・・・それを遮って話し出すアム。  

 

「・・・では、作戦を説明します。」  

 

・・・。  

 

「今回の作戦は少数精鋭による、奇襲攻撃です。

 ・・・目標はここから1000kmほど離れたところに有る『連合軍・陸戦兵器研究所』です!」  

「馬鹿な・・・よりによってあの軍事機密の宝庫、ここいらで一番警備が厚い研究所とは名ばかりの

 難攻不落を誇るあの要塞をか!?」  

 

叫ぶ月臣。  

 

「それで・・・警備はどの程度の物だ?」  

 

アキトは冷静そのもの。  

 

「えー。現在は2個師団2千名の警備兵と戦車数十台。あとヘリコプターが何台か有るはずです。」  

 

・・・研究所なのか?そこ。  

 

「あと、迎撃用の対空砲が幾つかとミサイル発射台がある・・・前に攻めたとき、攻撃隊のおよそ半分を失ったわ。

 ・・・レーダーも優秀よ。」  

 

ナツメさん・・・それ・・・異常です。  

 

「そこは一体、何の研究をしているんだ?・・・その警備、異常過ぎる。」  

「・・・その名の通り、陸戦用の兵器全般だ。…あそこを奪えればパワーバランスが変わる。」  

「で、父さんたちは戦ったけど惨敗。で…あそこの事は諦めてたの。」  

 

・・・。  

 

「そんな所を今更襲ってどうする。」  

「アキトさん。レーダーです…あそこがある限りボク達の動きはほぼ筒抜けなんですよ。

 注意しないと、ここも見つかっちゃいます。」  

「…成る程。少数でレーダーを破壊し、武器庫を襲って弾薬を手に入れた後、そのまま離脱するのか。」  

「違うわ。」  

「では、爆破でもするのか?」  

「それも違う。」  

「…アキト。あそこは一筋縄ではどうにもならない。…恐らくお前のロボットを使うつもりだろう。」  

「ブー、残念…月臣君。今回はアレは使わないわ。」  

「…では、如何するつもりだ?」  

「コホン…今回はアタシが自ら指揮を取ります。

 潜入メンバーは私のほかに、アキト、タックン、月臣君。後…アムちゃんです。」  

 

・・・。  

 

「…正気か?ナツメ。たった5人で何をする気だ!?」  

「基地を占拠します。(きっぱり)」  

「な…2千人だぞ!相手は…第一…アムをどうして連れていくんだ?

 …確かにスナイパーとしては優秀だが、生きて帰れんぞ。」  

 

・・・。  

 

・・・アキトは気づいた  

 

「…成る程、目標はメインコンピュータルームか。」  

「そう…アキト、正解。」  

「接近さえ出来れば、ボクがハードディスクとメモリを書き換えられます。

 …警備システムを掌握できれば、こちらの勝ちです。」  

 

・・・。  

 

そこに北方が入ってくる  

 

「ですが閣下。…例え占拠しても、敵がやってきたら直ぐに奪還されてしまうのでは?」  

「…確かに格好の的だ。」  

 

月臣もこれには同意見のようだ。  

 

「けどさ、あそこには軍事用の設備が沢山あるよ。

 …武器製造プラントも。長期戦を想定しているのか、食料や日用品を作るプラントだって有る。

 …危険を侵してでも手に入れる価値はあると思うけど?」  

「・・・。」  

 

そこにラピスが入る。  

「それに、ハッキングしてみたらあそこには浄水施設が有るヨ。」  

 

本当は、自分がシステムに介入すれば良いとラピスは思うが、アキトに止められていた。

曰く、出来るだけ能力を隠せ…との事。戦闘能力のないラピスに対するアキトの心遣いだった。  

 

・・・。  

 

「・・・!」  

 

それはさておき、その言葉は鶴の一声だった。  

何故なら独立派は浄水設備を持たず、今まで雨水を溜めて生活してきたのだ。  

・・・当然、衛生状態は日増しに悪化し、子供や年寄りから順にバタバタと倒れてきていた・・・。      

 

「じゃ、アキトのアレを使わない訳も解ったね?・・・施設はなるべく無傷で手に入れたいの。」  

「…解った。」

 

と、月臣。  

 

「我は構いませぬ…閣下。」

 

北方である。  

そして・・・。  

 

「良いだろう。…飲み水の確保は重大な問題だ。」

 

アキト…立つ。  

 

「アキトさん、ボク…アキトさんの足手まといにならないように頑張ります!

 ・・・でも危ないときは助けてくださいね。」

 

アムである。…皆には何かないのか?  

 

・・・。  

 

「では!出発は明日、早朝6:00!各自、遅れない様にね!」  

 

・・・そしてナツメが締める。      

 

・・・。      

 

そして、翌朝  

 

「アキト兄ちゃん!…頑張れよ!」

「月臣さん…ご無事で。」

「ヘビ男、死んできて!」

「ナツメさん!どうかご用心を!!」

「アメジスト…死なないでね…。」  

 

ワァワァワァ・・・。  

 

独立派の声援に見送られ、アキト達は出発した。

・・・この独立派の第1班には子供の比率が高い。

他の班が潜んでいる場所が、石油の採掘基地だったり、開発中の鉱山だったりするので、

健康の事を考えての事だ。  

 

・・・数日前の事。  

 

「ねえ、アキト兄ちゃん。」  

 

子供の一人がアキトに尋ねる。…4〜5歳だろうか?  

 

「なんだい?」  

「どうすれば、今すぐ連合軍の兵隊をやっつけられる?」  

「!・・・何でだい?・・・今すぐじゃなくても・・・いずれは。」  

「駄目だい!・・・とうちゃんが…やられたんだ!カタキ…討ちたいんだ。」  

 

(何てことだ!…こんな小さい子供まで・・・。)  

 

アキトは愕然としたが、これは仕方ない事かもしれない・・・。  

 

「…なあ、敵討ちしたって、とうちゃんは帰ってこないぞ・・・。」  

「うん。でも・・・とうちゃんの仇を取るって兄ちゃんが言って、

 連合軍の兵隊を3人もやっつけたって言ってたんだ…なんか…嬉しかった…。だから。」  

 

恐らく…その3人の兵隊の仇を討つと誓っている者も居るだろう・・・。復讐は増殖する・・・。鼠算式に・・・。  

 

・・・。  

 

バギーに乗りこむアキト。  

 

(…怨みはどちらにも生まれる…か。

 …この際だ…俺は、せめて自分の目に見えるものだけでも守ろう…それが、ただの自己満足だとしても…だ。)  

 

アキトは行く。・・・自分の視界に映る物を守る為に。

例え…それが、視界の外の人間の不幸を意味していても・・・。

…もう、ここに関わりすぎた。…逃げる事など…出来なかった…。  

 

続く。  

 

−−−その頃・街の一角−−−  

 

地下深く…独立派の子供達が集まっている・・・。  

 

「すげ−な。アキト兄ちゃんのロボットだぜ。」  

「ボクも乗ってみたいな・・・。」  

「あー、あたしもー!」  

「これで地球の悪者達をギッタンギッタンにするんだぜ!」  

「でもこのロボットさん!…どうして真っ黒なのかしら?」  

「うーん、惜しいよね…悪役っぽい。」  

 

・・・この『黒』の意味する事を子供達は知らない…。  

 

「ほらほら…危ないよ。さ、行った行った。」  

 

山崎だ。…整備をしていたらしい。  

 

「山ちゃん!…これに乗っけてくれない?」  

「駄目駄目。…第一アキト君以外の人が乗っても動かないんだよ…これ。」  

「おー!専用機!!」

「かっくいー!」  

「選ばれし者・・・アキト兄ちゃんって…勇者様?」

「かっこいいしね!」  

「…さあねぇ?でも…僕としてはこれをもう一つ作って見たいんだよね。」  

「おお!なんか凄いな。」

「量産機だ!」  

「ま、解析できたところだけだと、空までは飛べないと思うけどね。」  

「…でも、アキトの兄さんしか動かせないんでしょ?」  

「うん。だから、操縦桿をつけてさ・・・。」  

「すごいすごい!」

「やまちゃん…おねがいね。」  

「ははは、任せなさ−い!」  

 

・・・ピンポンパンポーン…子供達お待ちかね、今週の巡回アニメがやってきました・・・

見る子は大ホールまで来てくださーい。  

 

「あ!来た!」  

「急げ!」  

「ゲキガンだ!」  

 

どどどどどどどどど・・・。  

子供達はあっという間に消えた・・・。  

 

ヒュウー−−−−−−−−。  

 

「僕って…何?」  

 

山崎・・・なんか、哀れだな。      

 

…因みに巡回アニメとは、  

逃亡者であるが為に何の娯楽のない独立派の子供達を元気付けようと思ったある人物が、

根性で持ち出した自分の趣味のアニメビデオを持って、独立派の全拠点を1週間かけて回っている・・・。  

その為に、必然的に週1回放送状態の…文字通り巡回するアニメ番組である。

 

…だって、ビデオデッキも1つしかないし・・・。  

 

・・・そう、木連の『宗教』たるゲキガンガーは、ある一人物の趣味で広められたのであった

・・・因みに1巻だけ無くしてしまい、それが『幻の回』と呼ばれる事になるのであった…。  

 

::::後書き::::  

 

BA‐2です。

前回暴走したんで少し真面目に(シリアスに)書きました。…多少ギャグも有りますが。

さて、とうとう次は戦闘シ−ンです。…うまく書けるかな?

応援していただけると光栄です。

今回から月臣なんかは漢字で書くことにしました…だって北方とキタカタじゃ響きが違いすぎなんで。

…ま、あまり気にしないで下さい。

では!また。

 

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの連載投稿です!!

なんだか比較するのも躊躇われる戦力差ですね〜

確かに、アキトの操るエステバリスがあれば、基地の攻略は簡単なのでしょうが・・・

人間、飲み水は大切ですからね。

・・・沸騰殺菌をして飲まなかったんだろうか?

ま、レーダーの察知される事を恐れて、火が使えなかったとか?

・・・じゃあ料理はどうするんだろう?

軍用レーションでも食べてたのかな?

どちらにしろ、子供達には劣悪な環境ですよね。

アキトの施設攻略を祈りましょう!!

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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