『時の流れに』アフターストーリー

彼が不死身な理由(後編)

 

 

 

 

 

 

木星と地球、この両者で行われた不毛な戦争は一人の英雄の活躍によって終結を迎えた。

 

 

 

 

……其の名は、テンカワ・アキト。またの名を『漆黒の戦神』…。

 

これは、異世界へ逃亡を企てていたテンカワ・アキトが、某同盟により捕獲された頃の話である。

 

…世界がバリア衛星の落下事件(中編参照)で騒がしくなってきたその頃、某同盟は勝利の祝杯をあげていた。

 

「皆さん、長い戦いでした。」

 

ルリがスピーチを始めたようだ。

 

「アキトさんは私達の内の誰かを選ぶなんて事は出来ないくらいに優しい人ですから、今までの事は水に流しましょう。」

 

「・・・何故なら、」

 

ここまでで、一旦話を区切ったルリは、頬を赤く染め、熱いため息をつく。

 

「アキトさんは私達の元へ帰ってきてくれましたから!」

 

わあああぁぁぁぁぁ・・・

 

あちこちから歓声が上がる。

 

…しかし、帰って来たと言うより・・・

連れ戻された…の方が正しいような気がする…。(滝汗)

まあ、面と向かって彼女達にそれを言える奴は居ないだろうが。

 

…。

 

外には機動兵器の残骸らしき物が山積みにされているのが非常に気になる。

 

…ブローディアは無事なようだ。

 

機体の中でで、今までずっと自閉モードを強いられてきたディアをブロスが宥めているのを除けば・・・だが。

 

…では、当のアキトは・・・?

 

ひゅうぅるるるるる・・・

 

「は…はは…カズシさん…それに…あ、珍しい…ムネタケ提督…そっちいっていいでスかぁ?」

 

ここはピースランド内にある、合同結婚式特設会場

風の中、アキトは精神崩壊の危機に直面していた。

…いや、完全に壊れている。

普段ならもう少しマトモなのだが、今回ばかりは勝手が違う。

最近、壊れかける時はメティちゃんと会話しているのが普通なのだが、今回、アキトの前に現れたメティちゃんは…。

 

ウエディングドレス姿だった・・・。

 

…これがアキトの崩壊を助長したのは疑う余地がない。

…異世界で出会った、辺りの『同志達』も心配そうだ。

…全員十字架に磔にされてはいるが…。

 

これで結婚式やろうって言うんだから…なんというか、まあ…。

 

…。

 

ともかく、こうした理由で、某同盟が完全に沈黙している時、世界に大いなる異変が起きようとしていたのである…。

 

・・・。

 

ネルガル本部(半壊)

 

壁の一部が人型に破れたネルガル会長室。

 

…完全に狂気に取り付かれた少年に大の大人二人が怯えていた…。

 

ピ…ピ…ピピ…。

 

「入金…と…これでよろしいか…と。」

 

「…。」

 

プロスペクタ−が何やらコンピュータを弄っていた様だ。

 

…別人モード全開のハーリーがコクリと頷く。

 

…ま、忘れてたあんた等が悪いよ。アカツキさん達?

 

…あの山崎の元で、1年も実験されてりゃ性格も変わるって…。

 

「…で、さ、ハーリー君は…今後どうする気なのかな?」

 

…ピポ…パ…。

 

突然ハーリーが何処かに電話をかけ始めた。

 

「おーい…ハーリー?」

 

アカツキは、自室の電話を勝手に使われてムッと来たがあえて言わなかった。

 

ガチャ

 

「あ、そちらピースランド王宮ですか?マキビと言います。…ええ、ルリ姫の昔の知りあいでして…はい、お願いします。」

 

 

…。

 

 

「マキビ君。貴方…ルリさんに電話してどうするつもりですか?」

 

プロスの疑問。

 

「ルリさんがきっちり謝ってくれるなら許します。でも…。」

 

「「でも?」」

 

…体感気温が5℃ほど下がった。

 

「誤魔化す様なら…許しません!」

 

彼にしてはカッコつけてるつもりなのかも知れない。

 

だが…。

 

「…ルリ君は助かるみたいだね?」

 

「はい、会長。…出来ればこちらもそれで許していただければ安く済んだんですけどね…。」

 

…どうやら、(当然)ハーリーがやり込められると思ったようだ。

 

だが…。

 

「…はい!?」

 

…。

 

『ですから、姫様はマキビ様と言う方はご存知無いと…では、今度はアポイントメントを取ってからお願いします…。』

 

ガチャ…。(気まずい空気)

 

この件に対する大人達のコメント

 

(ルリ君…そりゃあないんじゃ無いかい?)

 

(…大変な惨劇が始まりますな。…お見舞金は幾らかかりますかねぇ?

 

 

・・・。

 

 

「う・・・」

 

…ハーリーの肩が震えている…。

 

最悪を想定していても、ここまでとは思うまい…。

 

 

「ヴワァアアアアァァァァン!!!!」

 

…。

 

グワァッ!!!!

 

泣き声の刹那、アカツキ達は衝撃波に襲われる!

 

…遂にハーリーは音速の壁を超えたのだ!!(ヲイ)

 

これこそ、最新型ハーリーダッシュ!!…その名も、

 

 

ジェノサイド・スタンピード!!!

 

 

最高速ではマッハ50にも達する、その超音速走行は衝撃波を生み出し、

走り去った後方の土地を根こそぎ破壊しながら突き進む!

 

既にあちこちが壊滅状態だ!

 

最初の被害…日本が沈没。(一部除く)

 

…。

 

現在の被害…シンガポールが島国になりました。

 

…。

 

現在の被害…中国とインドの間に海峡が出来ました。

 

…。

 

現在の被害…世界の火薬庫、バルカン半島が消滅。

 

…。

 

…あ、つまずいた…おお、飛ぶなあ…。

 

…海を石の水切りの要領で飛んでいくよ…。(笑)

 

現在の被害…南アメリカに墜落。巨大クレーターを形成

 

…挙句に宇宙人と間違えられる。

 

(全部ギャグなので怒らないで下さい)

 

 

 

 

…そして…数日後。

 

「ふーん、僕が錯乱してる間にすごい事があったみたいだね。」

 

…ハーリーは巡りめぐって、現在南アフリカのホテルにいた。

 

テレビが先日までの大事件を取り扱っている。

 

『先日、メキシコで見つかったと言う、宇宙人についての話題です。』

 

「…そんなのいる訳ないのに。」

 

…。

 

『続いては先日からお伝えしている衛星落下事故の続報です。』

 

「あれ?直前で燃え尽きると思ったんだけどな?

 

頭をひねるハーリー。

 

「あ、途中で落下コースを変えたから…。」

 

…。

 

『…速報です!先日、世界中を襲った大異変を捉えた映像を入手しました!』

 

「…何かあったのかな?」

 

・・・。

 

『これこそ《200年遅れの恐怖の大王》です!!』

 

「僕?」

 

映像には自分が映っていた…ハーリーは固まる。

 

「どうしようどうしよう…そうだ、ルリさんに相談しよう!!

 

・・・。

 

先日の怒りもすっかり忘れ、ルリに相談する為に一路ピースランドに向かうハーリー。

 

但し、全力疾走で。(爆)

 

…アフリカの大地を破壊しつつ、ハ−リーは行く…。(ヲイ)

 

 

一方その頃…。

 

「まったく…ハーリー君は仕方ないですね。」

 

自分のした事をすっかり忘れているルリちゃん。

 

「ハーリー…何がしたいんだろうね?…この忙しい時期に。」

 

「明日はルリちゃんの16歳の誕生日なのにね。プンプン!」

 

ラピスもユリカもご機嫌斜めだ。

 

「あらぁ?艦長ぉ…明後日は結婚式…の間違いじゃないの?」

 

ミナトさんがルリの衣装合わせを手伝いながら言う。

 

「あはは、バレました?」

 

「艦長は解り易いから…。」

 

…。

 

「…そう、有難う。それじゃあ、お大事にね。

 

ガチャ…。

 

エリナが電話をしていた。…相手はアカツキかプロスだろう。

 

「…彼の暴挙の原因が分かったわ。」

 

ワラワラと集まってくる女性陣。

 

…。

 

「ル…ルリちゃんへの復讐!?」

 

「な…なんでよりによってルリルリなの?」

 

…一方、固まるルリちゃん。

 

「あ…すっかり忘れてました…。」

 

それで済む問題では無くなってるような…。(汗)

 

「後、数時間でここに来るわ。」

 

「…ルリ、どうするの?」

 

ラピスの質問が飛ぶ。

 

「…可哀想ですが、私の幸せの為です。…イネスさん。」

 

「なにかしら?」

 

でも用意して下さい。」

 

「何でも良いの?」

 

「出来るだけ毒性の強い奴を。(キラーン)」

 

「ふふ、分かったわ。(ニヤ)」

 

…酷い…。

 

…。

 

「無駄だな。」

 

北斗が現れた!…とんでもない台詞をのたまいつつ…。

 

「何でですか…私がハーリー君に殺されても良いと言うんですか!?…もし、そうなったら…。」

 

「アキトの正妻は私がもらうからね♪」

 

「ラ…ラピス!?」

 

ザワザワザワザワ・・・

 

「な、何なんですか皆さん!…なに騒いでるんですか!?」

 

ざわざわざわ・・・・・・

 

「…ち、ちょっと…。」

 

全員、アキトの正妻…と言う言葉に惑わされているようだ。

 

「ほ、北斗さん!…如何してくれるんですか!…無責任な事言って!!」

 

「いや、飛厘からの通信で…アイツ、フィールドを張れる様なんでな。」

 

「な…。」

 

ルリ、唖然。

 

「超小型の相転移エンジンを山崎に付けられたらしい。」

 

「…。」

 

「注射針なんか通さないだろう。」

 

…。

 

「でも、北斗さんなら!」

 

ルリの言葉に首を振る北斗。

 

「枝織が五月蝿くてな…済まん。」

 

「じゃあ、如何すれば良いんですか!?」

 

「…さあ?俺には解らん。」

 

…。

 

そして…数時間後…。

 

「はあ、はあ…ようやくピースランドが見えてきたぞ。」

 

ハーリーが遂にやって来た!

 

「ハーリー君、久しぶりです…。」

 

ルリが現れた。…出迎えに来たようだ!

 

「ルリさん!…お話が…!!」

 

手で制するルリ。

 

「ハーリー君。私をさぞかし怨んでいるでしょう…。」

 

「ルリさん?」

 

「実は、あの後直ぐに貴方が北辰に殺されたと言う情報が入ってきまして。」

 

「なんですって!?」

 

見え透いたウソを直ぐ信じるハーリー。

 

(良いですね…これなら最終作戦を実行する必要は無さそうです。)

 

ルリはハーリーを宥めるべく、最後の駄目押しを敢行する!

 

「私はハーリー君の事を忘れた事は1度も有りません!」

 

…?

 

『ですから、姫様はマキビ様と言う方はご存知無いと…では、今度はアポイントメントを取ってからお願いします…。』

 

…ハーリーの脳裏にこの台詞が浮かぶ!

 

ザッパーン!!

 

ハーリーの心の中に大波が!

 

「…ルリさん?」

 

「はい?」

 

にこやかな顔で応対するルリ。(汗)

 

「ルリさんの・・・」

 

・・・。

 

「…大ウソつきぃっ!!」

 

…(珍しく)ルリちゃん…墓穴を掘る!

 

…ゴゴゴゴゴゴゴ

 

ハーリーらしからぬ擬音を立てて近寄ってきた!

 

「え?…ハーリー君?」

 

「…完全に忘れてたのは知ってますよ…。」

 

冷や汗をかくルリ。

 

「あ…そうなんですか?」

 

「はい。」

 

「…じゃあ、これ。」

 

手紙のような物を差し出すルリ。

 

「何ですか…?」

 

「私の16歳誕生パーティーの招待状です。」

 

・・・。

 

「え…?僕に?」

 

怒りを忘れ、大喜びではしゃぐハーリー。(爆笑)

 

「ええ、それでですね…。」

 

「はい?」

 

「苦しいんで…フィールド解いて下さい。」

 

「ああ、はい。」

 

ブゥゥン・・・プス

 

…ぷす?

 

バタッ…と倒れるハーリー。

 

「ふう、何とか捕獲完了ね。」

 

白衣…イネスさんだ。

 

「ええ、一時はどうなる事かと。」

 

「…で、これ如何するの?」

 

「…ハーリー君の相転移エンジンの封印お願いします。」

 

「後は?」

 

「その招待状、一応正規の物なんで明日までに。」

 

「ふうん・・・。」

 

「ハーリー君が明日まで生きていたら…ですけど。」

 

おーい、ルリちゃん…そりゃ酷いんじゃないかい?(汗)

 

…そして、ハーリーはイネスに引きずられていった…。

 

・・・。

 

 

 

次の日、ルリ姫の誕生パーティー会場。

 

小声でルリとイネスが話し込んでいる。

 

「イネスさん…そう言えばハーリー君の方はどうなりました?」

 

「…封印はしたわ。…でも、生命の危機には発動するでしょうね。」

 

「生きてるんですか?」

 

「…色々試したんだけど…。」

 

「…そう言えばあそこに居ますね。」

 

「え?何で歩けるの…いえ、生きてるのかしら。…興味深いわ。」

 

首を傾げる二人を尻目にハーリーはすこぶる元気だった…。

 

「あんなのじゃあ、山崎ラボには及ばないよ。」

 

…だそうである。

 

イネスにまで投薬(改造)されたハーリーに(人としての)明日はあるのか?

 

 

…。

 

 

数分後…ハーリーはルリのドレス姿に見とれていた。

 

…国王とルリが話し込んでいる。(Byハーリー列伝)

 

「おお、ルリ。立派になったのう・・・。」

 

「はい、父。…ところで、アキトさんとの事でご相談が・・・。」

 

「ム…まあ良い。なんだね?ルリよ。」

 

・・・。

 

そんな会話を耳にしたハーリーは、

 

(…このままじゃまずい!…テンカワさんの毒牙に掛かる前にルリさんを助け出す方法・・・何か無いか?)

 

・・・そこに通りかかる北斗。…ハーリーの脳みそに良い考えが浮かんだ。

 

「北斗さん!」

 

「ん?」

 

「僕を…僕を弟子にしてください!!」

 

・・・。

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

会場は一時騒然となった・・・。

 

…この時既に、アキトとルリ(達)の結婚式は明日に迫っていたのだが、ハーリーはそれを知らない。

 

・・・。

 

数十分後。ハーリーは北斗に連れられて移動した…。

 

ヒュルルルルルル・・・

 

「ここは…どこでしょうか?」

 

「雪山だ。」

 

北斗のテキトーな説明。

 

「…みれば解りますよ。」

 

「お前はここで基礎体力を付けて貰う…生きて山を降りるんだ。」

 

「成る程。」

 

「…ふもとに辿りついたら端末に連絡しろ…試験を行う。」

 

因みにハーリーはオモイカネとは随時通信できるようにしてある。

 

「試験?」

 

俺に一撃入れられたら合格だ。」

 

「…僕にそれが出来るでしょうか?」

 

「…出来なければ…死んでもらう。

 

「なあっ!?」

 

「ホシノ・ルリの好意で、この山はお前の物になった…何年かかっても良い。やって出来ない事は無いはずだ。」

 

 

…そして北斗は行ってしまった…。

 

「…ルリさんが…よし!頑張るぞォ!

 

どうやら山を買い取ってくれたのを自分の為だと思ったようだ。

 

…一方、ピースランド。

 

「これで、ハーリー君は暫く山から降りられませんね。」

 

ルリである。

 

「…でも、ハーリーがあの北斗に一撃入れるなんて出来るの?」

 

ラピスだ。

 

「…一生、無理でしょうね。」(ヲイ)

 

…。

 

「戻ったぞ。」

 

「あ、北斗さん。」

 

「お前の言うとおりのメニューを与えてきたが…。」

 

「そうですか。」

 

「…山まで買ってやることは無かったんじゃないか?」

 

「…途中で開発が入ったら修行を中止されるじゃないですか。」

 

「…一生、あの雪山で過ごさせるつもりか?(汗)」

 

「それはハーリー君次第ですよ…。(クス)」

 

…ハーリーはその後、(予想に反して)本当に北斗に一撃入れられるまでに上達してしまい、

北斗の一番弟子に相応しい男に成長してしまう。

 

ルリちゃん…真意がばれたら大変だよ…。(汗)

 

 

…追伸。この頃、既にユリカの中にはアキトの長男が入っていたらしい。(滝汗)

 

 

 

::::後書き::::

BA−2です。

いやあ、長くなってしまいました。

…今度はハーリーの修行時代でも書きますかね…。

それとも逃亡メンバーが捕まった経緯でも…。

では、応援よろしくお願いします!

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの投稿です!!

・・・そうか、こうリンクをするのか!!(笑)

しかし、危機に陥ると相転移エンジンの封印は解けるんですか?

ある意味、凄い奴だなハーリー!!

自分の身体に隠された謎を知らない超人だ!!(核爆)

 

・・・本当に、普通の生活を送れるのかよコイツ(苦笑)

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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