『時の流れに』アフターストーリー

大後悔時代

 

 

 

 

  

 

木星と地球、この両者で行われた不毛な戦争は一人の英雄の活躍によって終結を迎えた。

 

 

 

……其の名は、テンカワ・アキト。またの名を『漆黒の戦神』…。

 

 

この物語はアキトが異世界に逃亡を開始してから暫く後…。

『自由への脱出』が編成された辺りの物語。

 

…そしてこの物語はアキトの『ひなた荘潜伏時代』に続く、

『異世界逃亡時代』の重要エピソードの一つでもある…。

 

 

・・・。

 

時は1520年代半ば頃・・・。

ポルトガルの首都リスボン沖にて、壮絶な海戦が始まろうとしていた。

両陣営とも緊張した面持ちで、まさに一瞬即発といった所である…。

 

(この話は光栄の『大航海時代U』を元にしています。

 古いですね…Wまで持ってはいるんですけど、年代が少し違うんでカットしました。)

 

・・・。

 

…戦艦の上で何名かの航海士が望遠鏡を覗いている。

その顔色は悪く、ズーンといった感じの暗いオーラを纏っていた…。

 

良く見ると…その中に一人、その場に似つかわしくない男。

『ヤガミ・ナオ』がいる。

 

…どうやらこの連中は…。

 

・・・。

 

「…参ったな。…アキトの奴、厄介な仕事を押し付けやがって…。」

 

責任転嫁しつつ、ナオはため息をつく。

幸い、彼女達の側にはまだ『某同盟』の技術力は使われていない。

それが、唯一の救いだ。

 

…因みに現在の現状は、ナオ達逃亡側に、

 

第一艦隊

シップ型戦艦×1

ガレオン型戦艦×4

フリゲート型戦艦×2

キャラック型輸送艦×3

第二艦隊

ベネツィアン・ガレアス型戦艦×1

フランダース・ガレー型戦艦×2

ジーベック級輸送艦×7

 

後、その他…さまざまな理由で国に居られなくなり、この機に乗じて逃げ出そうと目論む連中の小船が多数。

 

 

因みに…追いかける方は黒山の如き大軍。

…数えるのも馬鹿らしい。

なにせ水平線が見えないほどだ。

…まさに圧倒的…。

どうやら国中の船を集めたらしい。

 

…一体この世界に何が起こったというのか?

 

…。

 

さて・・・読者諸兄は現状を理解していただけただろうか?

つまりナオのいる艦隊の連中は全員『逃亡者』なのである。

 

百華ちゃんとの事がミリアさんに知られてしまい、アキトと共に異世界に脱出したナオは、

人材確保と資金調達に奔走していた。

 

アキトの預金なんかを使おう物ならルリに一発で居場所が知れてしまう。

…アナログな通貨が必要なのだ。

 

そしてこの世界に訪れ、資金集めをしていた所、リスボンの酒場での痴話ゲンカに遭遇。

…そして、窮地に陥ったフェレロ公爵の嫡男ジョアンを逃亡させるべく行動を起こしていたのである。

 

…因みに酒場での一部始終はこんな感じだ。

 

152×年・某月某日。

リスボンの酒場にて…。

 

「ふう…資金集めも大変だぜ…。」

 

ナオはこの世界に一人潜伏し、交易商人として資金調達をしていた。

…ところでこの日は、酒場に先客が居た。

 

「?…なんの音だ?」

 

…何かの楽器の音が響き渡る。

 

「…ああ、あれはジョアンのリュートよ。」

 

酒場の看板娘のルチアがそんな事を言った…ブロンドの活発そうな娘だ。

そう言えば…噂では二人は出来ているらしい。

 

…そうこうして居るうちにジョアンがカウンターまでやって来た。

 

「はい。ルチア…これプレゼント。」

「わあー。有難う!大事にするわ。」

 

それを横目で見ながらナオは途端に不機嫌になった。

…いや、羨ましいわけじゃない。(苦笑)

 

…ジョアンが取り出した物…それは『白銀のブローチ』

金貨にすれば20000枚もの価値が有る代物である。

 

…それだけ有ればそこそこ良い船が一隻買える。

 

現在ハンザ・コグ(金貨1300枚程度)一隻で資金稼ぎをしているナオにしてはため息物の代物である。

 

「…ちっ、これだから金持ちのお坊ちゃんはよ…。(怒)」

 

誰にも聞かれない様にそう悪態を突いていて思い出した。

 

「…そう言えば、コイツ…前にロンドンのリリアンちゃんにも…。」

 

…。

 

「…それ、詳しく教えてくれない?」

 

ルチアだ…どうやら、無意識に喋っていたらしい。

当のジョアンは青い顔でブルブルと顔を横に振っている。

 

だがナオには何の義理も無い。

 

「ああ、半月くらい前かな?…ロンドンで飲んでたらコイツがあそこの看板娘にプレゼントしてたぜ?」

 

・・・。

 

ギロリとジョアンを睨みつけるルチア。

そして冷や汗を掻きつつ、必死に言い訳するジョアン。

 

「ルチア…違う…違うんだ…ほら、敵艦隊の情報収集で…。(滝汗)」

 

…ナオは流石に可哀想になってきた。

何せ、自分たちと重なって見えたのだ。…同情もするだろう。

 

「お、おい…プレゼントってもただの絹のショールだぜ?」

「!…うんうん。そうなんだ。(汗)」

 

ナオの弁護にほっとするジョアン。

が、

 

「…第一帰った後で、それ見て鼻で笑ってたし。」

「え?」

セコイ男は嫌いなんだとよ…好みは宝石だそうだ。(笑)」

「!!!!(ガーン)」

 

その内容にショックを受ける公子様…哀れ。

だが、問題はルチア嬢の反応だった。

 

「金貨3000枚…。」

 

…少女が顔を下に向けたままポツリと言う。

…暗黒のオーラが見えたと後にナオは語る。

 

「「はい?」」

「…絹のショールだって金貨3000枚はするのよ!この浮気者!!

…。

「…まって、君に一番良いのをあげてるんだよ…!」

「…五月蝿いわ!その女に幾ら貢いだのよ!」

「…ルチアの10分の1くらい…かな?」

…金貨10万枚も?…ふざけないで!!」(ヲイ)

「だって、敵国の船から奪った宝物がもう持ちきれなかったんだ!」

「売れば良いでしょ!」

「だって面倒くさいよ…。」

「ジョアン…お金の感覚狂ってるんじゃない!?」

「だって拿捕した船を売ったお金で充分やっていけるし!」

「じゃあ私の所に持ってくれば良いでしょ!?」

「でも、あちこちで情報収集しないといけないし…!」

「…あちこち?(ハッ)…まさか!!

「仕方ないだろ、父上だってそうだったってロッコが…!」

「…呆れたわ!…親子そろって!?」

 

・・・喧々囂々・・・。

 

…雲の上の痴話ゲンカは延々と続いた。

因みにナオはと言うと…。

 

「お…俺の船はショールより安いのか?…て、事は銀の燭台よりも?」

 

放心状態…しいて言うなら真っ白に燃え尽きちまったぜと言った感じだ…。

 

 

・・・。

 

 

それから一月。

ルチア嬢の働きかけにより全世界の酒場女達の間で交流会が開かれた。

…その裏では、某同盟の介入もあったらしいが…。

 

…。

 

結果…船乗りが旅先で浮気をしている可能性は思った以上に高いと言う事が判明した。

…無論、真面目な者も数多く居るが…。

 

…その結果が冒頭のような状態である。

…イヤ、後ろめたい所を持つ連中が多い事…。(苦笑)

 

…因みに追跡者側にも男性の姿が多く見られる。…何故か?

答えは、嫉妬。

 

…この機にもてる連中を根絶やしにしようと言う魂胆なのだ。

 

故に士気は高い。

…そりゃあ、もう怖いくらいに。(汗)

 

・・・。

 

そして始まる海戦・・・。

 

その戦いは凄惨を極めた

 

ガアアアア!!死ねやァ!色男どもォ!!」

 

ドガーン!!

 

「「「「ぎゃあーーーーっ!!」」」」

 

尋常じゃない気合の元で発射された砲弾が、甲板の水夫をふっとばす!

 

「…生き残るぞ!!…逃げ切るぞ!!何としてもだァッ!!

「「「「「「「おーーーーっ!!」」」」」」」

 

「逃すなっ!!皆殺しだァアアアアッ!!!

「「「「「ウゴォワーーーーーアアアッ!!」」」」」

 

キン!…カキン、キン・ブシュ…ジャキン…ズバッ!

 

…白兵戦でも凄まじい激戦が繰り広げられていた・・・。

 

・・・。

 

さて、ここは艦長室。…そこではジョアンが呆然としていた。

 

「…ヤガミさんが行方不明!?」

 

副官らしい男が頷いた。

 

「はい、白兵戦の最中に海に転落。…恐らくは…。」

 

ジョアンは天を仰ぎつつ思わず漏らす。

 

…捕まったか…『某同盟』に。」

「はい…ですが問題はそこではないのです。」

 

…ジョアンはフッと鼻で苦笑する。

 

「分かってるさ…これでアキト氏との合流地点が分からなくなった。」

「…では一体如何なさいますかな?」

 

…一息ついた後、ジョアンは全軍に命を下した。

 

「全艦、突撃…最後の意地を見せてやろう!!

 

・・・。

 

…逃亡者側の艦艇が残らず沈み、戦闘が終結したのは、それから僅か数時間後の事だった…。

数多の死傷者(男のみ)を出したこの海戦は、某同盟の勝利としては、最大の戦果であった。

…最も、追いかけてきた男が死んでしまって、泣いている女性陣も多い。

まさに傷だらけの勝利である…。

 

 

…そこに現れるナデシコ以下、某『同盟艦隊』。

その船内では、ルリが冷や汗混じりの顔で二人の夜叉を相手に、必死の弁解を続けていた…。

 

「あの…百華さん、ミリアさん…落ちついてください。(汗)」

 

…。

 

ナオ様ぁーーー。(泣)

「…。(放心)」

 

哀愁を漂わせながら壊れる二人・・・。

結局、ナオの生存が確認されるまで、二人はそのままだったらしい。

 

 

−−−次の日−−−

ナデシコは撤収した。

後に残るのは残骸のみ…。

船の残骸が数多浮かぶその海域に、一艘のひっくり返ったボートがある。

 

…突然それの中からナオが這い出してきた。

 

「・・・おーい!シンジ!…見つかったか?」

 

ザバ・・・。

 

 

姿を現すエヴァ初号機・・・。ずっと隠れていたらしい。

 

その手には金塊等、金目の物が多数握られていた。

 

…沈んだ船に積まれていた物だ。

 

「このとおりです。・・・けど。」

 

 

だが、シンジの顔は暗い。…辺りの残骸と死体の山を見たからだ。

 

 

「ああ、良いんだよ,あの連中はごろつきも多いしな。」

「けど…。」

「第一、あんな金銭感覚の狂った奴を仲間にできるか?」

「…まさか。」

「ま、気にすんなって…さ、アキトに合流しようぜ。」

「は…はあ。」

「金は手に入れたしな!…ま、結果オーライだ、うん。」

「確かにこれだけあれば…暫く持ちますよね…。(汗)」

「うむ!いやー、煽った甲斐が有ったってもんだな!!」

 

…ナオは嬉しそうにそう言った…。

 

 

ナオさん。アンタ…

 

・・・図ったね?

 

 

::::後書き::::

BA‐2です。久々の逃亡シリーズです。

古いネタなんで理解できる方が何人居るやら…。

…ナオの謀略物です。

逃亡側が、戦術的に敗北しつつ、戦略的に勝利する話。

…いかがでしたか?

では!

 

 

 

BA-2さんからの投稿です!!

おお!!ナオが活躍してる!!

まあ、元々は諜報の仕事もしてたはずですからね〜

しかし、よくルリ達を騙せたな〜

・・・海底にでも潜んでたのか、お前?(苦笑)

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

感想のメールを出す時には、この BA-2さん の名前をクリックして下さいね!!

後、もしメールが事情により出せ無い方は、掲示板にでも感想をお願いします!!

出来れば、この掲示板に感想を書き込んで下さいね!!