『時の流れに』アフターストーリー



                             雪山の死闘

 

木星と地球、この両者で行われた不毛な戦争は一人の英雄の活躍によって終結を迎えた。

 

……其の名は、テンカワ・アキト。またの名を『漆黒の戦神』…。



アキト達「自由への脱出」が、異世界逃亡の旅から戻って(連れ戻されて)から数日…。

…世界は「ルリ姫ご結婚」のニュースで持ちきりであった。


…アキトは仮装の如き『王子様』状態

そのまま、玉座に縛り付け…もとい腰掛け、世界中の皆にお披露目されていたのである。

…本人としては晒し者以外の何者でもなかったろうが・・・。


…。


そして始まる盛大な結婚式…。


世界中からのVIPがお祝い…もしくは偵察に訪れ、その全ては全世界に生中継された…。
…しかも視聴率は史上最高の
99.9%!!

…ウエディングケーキは高さ10メートルにも達する。
その上、キャンドルサービス等は一月がかりだった程だ…。


…屋外で行われたのだが、理由はただ一つ・・・どんな建物でも、客が入りきらないから・・・。

因みに、その日が雨だった場合を心配し…、
ただそれだけの為に、気象制御システムを作った科学者が居たとか…。(汗)


…。


…だが、一番恐ろしいのは…逆らう物への見せしめのように行われた見世物だろう…。


アフリカ方面軍のバール少将、他…戦神に逆らった者達を一堂に集め、ある場所に押し込める…。

そして…始まった宴の名は…。


…人間レミングス


…イネス特製の薬品により、真っ直ぐ歩く事しか出来なくなった哀れな咎人達…。
(…余りに残酷な為、この場での描写は省きます。)


…結局、式は三ヶ月もかかった・・・無論、世界中で知らぬ物など居ない…。

…筈だったのだが…。

 

…。

…とある雪山。…ここに…世界でただ一人、その事を知らない少年が居た…!!


マキビ・ハリ(通称、不幸なハーリー君)


…つい、先日までヤマサキ・ラボで実験体をやって居た上に、帰ってくるや否やこの山篭りに入った男。

その為、ここ1年余りの世界情勢の事は、彼の頭の中には無かった!!


「ルリさん…僕はやります!!」


吹雪吹きつける極寒の大地!!

…その中でハーリーは吼えていた!!


…。


…因みに、その頃のピースランド。


「では…誓いの口付けを…。」


…ハーリー、いと哀れなり。

唯一の救いが、それを知らない事だと言うのも泣かせてくれる…。


…。


そして、それから数日後…。

ハーリーは森の中をさまよっていた…。


「…お腹…空いた…。」


…どうやら、あれから何も食べていないらしい。


「…さ、寒い…。」


…因みに防寒着等は無し。


「…ね、寝たら駄目だ…寝たら死ぬ…間違いなく…。」


…更に、一睡もしていないらしい…。


空腹・凍え・睡魔…要は凍死の一歩手前。

…そんな状態のハーリーに、生き残る術などあるのか!?


助けを呼ぶ声は届かない!

…更に、届いたとしても
助けに来るとは限らない!!


…。


…そして、神はそんなハーリーを見捨ててはいなかった…!(無論、ゴートのとは別…だと思う)


「あ、洞窟…?」


…見ると、ぽっかりと横穴を空けた洞窟がある。

堪らず駆け込むハーリー!


「…ここは、結構暖かいな…。」


…そして、ここなら大丈夫かもと思い、壁にもたれて横たわる…。

…風の当たらないこの場所は、とても快適に思えた。

…更に毛皮もとても暖か…


…毛皮?


「…がゥ・・・?」


…くまさん?


「…。(ヨダレがだら〜り)」


…やっぱ…お腹空いてるんですよね…?


…。


……ガブリ…!!!


…。


…そして…ハーリーは目を覚ました・・・?


「…ここは?」


…そこは、川辺だった…。

だが、ハーリーは今まで雪山に居たはず…?


こつ…こつ…


…周囲には無数の子供達…が、石積みをしていた…。(汗)


「…賽の河原ぁっ!?」


…哀れハーリー、遂に死んだか!?


…。


「…そうよ…久しぶりね、マキビ・ハリ。」


…しかもキノコも石…積んでるし!(少なくとも、彼の父親は健在です。)


「ムネタケ提督…?」

「…アンタもとうとうこっちの住人ね…辛いわよ…ここは・・・。」


因みに、賽の河原とは…親より早く死んだ子供が行く場所らしい。
…ここで、子供達は贖罪として石を積む事になっている。
だが、ある程度積むと…鬼がやってきてそれを崩して行くのだと言う…。


…とても、救われない場所ではある。



…。


「…何時の間に?」


…普通なら…川の向こう側にいて、死んだお爺ちゃんが手招きしてる物じゃないのだろうか?

…つーか、渡し守は?


「…アンタの場合、向こう側から砲弾みたく突っ込んできたのよ。」


…見ると、着弾地点らしいクレーターも出来ている。

…流石に熊にかじられて・・・と言うのは派手な死に様のようだ…。


「…我ながら…不幸だなぁ・・・。」


…乾いた笑いを漏らすハーリー。

だが、それをムネタケは制した。…かつて無い真面目顔で…。


「そう言うのは…あれを見てから言いなさい。」


…そこには…八十歳程の老人が居た…。


「は…?」

「…ご両親は百歳過ぎらしいわ…。」


…確かに親より早い…早い…が…それは酷いような気がする…!!


「…。(放心)」

「…世の中…上には上が居るものよ…!」


…そして、それに対してうんうんと頷く『先の戦争の犠牲者達』。

良く見ると…戦争で死んだ人達で、川原は溢れかえって居る…。


…。


…ハーリーは、帰りたいと思った…。

少なくとも、この…むさい軍人だらけの川原から、逃げ出したかった!!

…少なくとも、戦争の後に来たい場所では無い!


「…うわぁぁぁぁああああああん!!!」


気合(?)と共に…ハーリーは川に向かって走る!!

…向こうに行けば…現世に帰れる…筈


「無理よ…あの川には、物を浮かべるだけの浮力が無いのよ!!」


…だから、渡しが必要なのだが…。


…。


ダダダダダ…バッ!!


「…飛んだ!?」


…そして…ハーリーは帰っていった…!

…余りに非常識な方法で、だが…。

…。


(…夢?)


…そして、ハーリーは目を覚ます…今度は本当に。

…今までの事が、夢なのかどうかは解らない…だが…。


「痛−−−−!!」


…ガバッと熊の口を外すと、そのまま外に放り出す!!

…今まで、ずっと熊にかじられて居たのだ!


「…ガゥゥ…!!」


…向こうも警戒態勢に入った様だ…。

…かくして、雪山を舞台にした死闘が始まった!


賭け金は…自分の命!!


…。


「があぅぅ!!!」


…熊がハーリーに突っ込んでくる!!


「だぁりゃあああああっ!!」


…そして、渾身の気合と共にハーリーダッシュ…!


…づがっ!!


「…うわぁぁぁぁぁん!!!」


弾き飛ばされたのは…ハーリー!?(注:普通なら当たり前…ってこの文も変だ)


…下は柔らかい新雪が、30センチ近く積もっていた!!

熊は大きかったので、大した影響を受けなかったのだが…ハーリーでは、見事に足を取られる!!


「くっ…このままアイツのご飯になっちゃうのかな?」


…そこまで言って…ハーリーは気づいた!!


(…ご飯…!?)


…そして、再び熊に向かって立ち向かう…が、目が違う!!


「…そうだよ…食えそうな物が目の前にあるじゃないか!!」

「…ガ・・・ガウ?」


…目を血走らせ、ヨダレ垂らしながら…目をキュピーンと光らせてにじり寄るハーリー!!

…熊のほうが怯えたくらいだ。


「…いだだきます!!」


…通常なら食事の時の掛け声と共に…突っ込むハーリー!…もはや、雪など問題にならない!!

…そして、熊に対してルパンダイブを敢行!!


「…!!」


…怯えまくって逃げ出す熊だが、ハーリーは執拗に追いかけた!!


…。


その後、熊がどう言う運命を辿ったか…詳しくは書かない。

だが、ハーリーはその夜…腹一杯になった上で防寒着?を付けて寝ていたと言う事だけは記しておく。

…そしてその後、先ほどの洞窟に住み着いた事も追記しておこう…。


…そして、それが…彼の伝説の始まりでもあった…。

終わり

−−−ヤマダ迷惑劇場・劇場版−−−


…ある世界の、ネルガル秘密ドッグ。

そこでは、この世界のアキトとエリナが例の会話をしていた…。


「ルリちゃんとナデシコCが合流したそうよ。」

「勝ったな…。」


「ええ、あの子とオモイカネのシステムが一つになったら、ナデシコは無敵になる。」

「俺達の実戦データが役に立った訳だ…。」


「…やっぱり行くの?」

「ああ。」


「復讐…。昔の貴方には一番似つかわしくない言葉だったわね。」

「昔は昔…今は今だ」


…ドォォォォン!!


突然、ドッグに爆音が響く!!


「ラピス?…何が起きた!!」

「…エステバリス…ボソンアウトしてきた…異常に高スペック…。」

「…何!…クッ…ここを嗅ぎ付けられたのか!!」


…ゆっくりと立ちあがろうとするエステバリス…それは…!!


「…俺のと同じ色とは…良い度胸だ!!」


…そして、ブラックサレナに乗り込もうとするアキト!

だが・・・。


「…うおーい…アキト…助けてくれ…!」


…そして、ハッチが開き…中から聞いた事のある声が…。


「だれだ…?」

「…さあ?」


…アキトもエリナも、非常に不思議がっていた…のは、男の顔を確認するまでだった!!


「おお、なんか違うが間違いなくアキトだな!」


…。


「ガ……ガイッ…!!?」
「し、白鳥九十九!!?」



そして、二人ともガバッと土下座する!!


「「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏…迷わず成仏!!」」


「…おーい…。」


「…なんで私達の所に化けて出るのよ!…あわわ…月臣のとこでも行きなさいってば!!」
「…何でもする…だから…安らかに眠っててくれ!!」


「もしもーし…。」


「ヒィィィ…近づいてくるわぁぁぁ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


…バン…バン・バン!


…二人とも、耐えられずに発砲!

…よほど怖かったらしい。


「…痛つ…ひでぇな…。」


…でも、「時の流れに」系列のガイなので効いてない…。


「…ほ、ホントに化け物!…銃が効かない!」
「ひぃぃ…帰って…帰ってよ!!」


「…解った…だが、食料が無くなっちまってよ…。」


…ドサドサ…。

僅か数秒でヤマダの前に並ぶ食料の山!


「「…早く成仏して(くれ)!!」」


…それを見ると、ヤマダは食料を積み込み…そのまま消えていった…。


…。


「…逝ったのか?」
「お腹が空いて成仏できなかったのかしらね?」


…結局、二人とも何か勘違いしている…。


「…(ヤマダへの)補給…有難う。」

「いいえ私は…会長のお使いだから(経費で落とせるわよね)…。」


…。


結局…その後…その世界は、史実通り進んでいった。

…唯一違いがあるとすれば…、


「ルリ達の所に帰るなら…この写真・・・ばら撒くからね?」

「…解った…解ったから…。(泣)」


…アキトの消えた理由が、

さっきの土下座を写真に取られ、ラピスの尻に敷かれていたからだと言う事と、


「帰ってこなかったなら追っかけるだけです…。(激怒)」

「る…ルリルリ…。(汗)」

「だって、あの人は…大切な夫(ひと)だから!!」


…ルリが最後の所で目を血走らせ

更に、『ヒト』の字が違っていた事ぐらいだろう…。


…勿論、某同盟の介入があった事は疑う余地も無いが…。

ちゃんちゃん

::::後書き::::

BA−2です。

…久々のアフター…どうも、題名に偽りありになってきているような…雪山部分が殆ど無いし…。

因みにこれは、アフター20th の、最強ハーリーへの道を書いた話です。
…ま、はちゃめちゃな話になるとは思いますが…温かく見守っていてください。

それと、久々の『巻末ヤマダ迷惑劇場』です。
…上手く書けてると良いですが…。


では…これからも頑張るんで応援お願いします!

では!

 

 

 

代理人の感想

 

(通称、不幸なハーリー君)

 

・・・・・・いつの間に通称になったんだろう。

元はと言えば私がでっち上げた呼び名なのに(笑)。

まあ、今回もその不幸とそれに負けないたくましさ(・・・・なんかニュアンス違うよーな気もするが)で

我々をたのしませてくれました。ありがとう、ハーリー君(笑)!

 

 

 

 

ところで、ハーリーの話とガイの話と・・・・・・・・

どっちが本編ですか?

 

って、代理人も昔同じようなコメントをもらった事があったよーな気がするな(笑)。