機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー
世紀を超えて
第33話 嵐の予感
…連合宇宙軍・戦闘空母オリエンタリス…。
あの戦いから一夜が開け、アキト達は今…この艦で地球へと向かっていた。
…何時もの黒いマントとバイザーは付けず、連合軍の制服を着たアキト。
それが、自分たちの天敵…『黒帝』である事に気づく兵士は皆無だった…。
「…軍の制服の着心地はどうかな…大尉?」
「…止してくれ…俺は…こう言うの…好きじゃない。」
…大佐が声を掛けるが、アキトは乗り気ではない。
まあ、当然だろう。
…いくら軍艦に乗り込む為とはいえ、軍人に偽装しているのだ。
軍嫌いのアキトには厳しいかも知れない。
「…しかし…何故アンタはここまでしてくれる?」
「ミスマル中佐から話を聞いたのでな…。」
「…は?」
「…6.25%か…。」
…実は、中佐は大佐に対し、
最後の会話後に、アキトについて語っていたのだ。
『あの男、何処かの施設で作られた貴方のクローンかも知れません。』
…ミスマル中佐はそう言ったのだが、伝わる過程で意思の齟齬が生じ、
『…あの男は貴方のクローンです。』
と、大佐は解釈してしまったのだ。
…まあ、身内がいる訳でも無いので問題は小さいと判断したらしい。
「黒帝…いや、アキト…君は暫くの間、俺の弟として行動するといい。」
…で、こう言う結果となる。
因みにちゃっかりと、連合軍の大尉として登録済み。
…。
「何から何まで済まない。」
…まあ、アキトとしては自分の知らない所で何が起こったか等は知る由も無いが。
「…ラピス君は、君の腹違いの妹と言う事にしておいた。」
「そうか…。」
正直な所、アキトの危惧はこれで一つ減った事になる。
実際…戸籍の無い状態は、色々と不便なのは間違い無いからだ。
…まあ、大佐に借りが一つ出来たと言う所か。
でもそれだと、大佐もラピスの兄貴って事になるのでは!?
…。
「…時に兄貴…更迭されたと聞いていましたが?」
…茶目っ気を出し、あえて兄貴と大佐を呼ぶアキト。
…まあ、顔もよく似ているし不自然さは無い。
「ふ…何やらくすぐったい感じもするが…まあ、大丈夫だ。」
「と、言うと?」
…そうして、格納庫を指差す。
「…成るほどな…エステとリモニウムか。」
「そう言う事だ。…黒帝の機体と敵の量産機…そして…、」
…そこまで言って、大佐はアキトの横を見る。
アキトの足元にはラピスがくっ付いているが、その逆隣には…、
「ボクですか?」
…アムがいた。
「そうだ…行方不明の王女様を取り返した…となると?」
「…逆に表彰される可能性もあり…か。」
…そう、黒帝の愛機リモニウム…そして敵側の量産機エステバリスを捕獲。
更に捕らわれの王女様を助け出した…。
…この功で大佐の罷免はチャラ…。
逆に昇進の可能性も大いに存在した。
ムネタケ以下、上層部が多数戦死した事も大きな要因だろうが…。
…。
「…お茶…入りました。」
…マスミが入ってきた…その手にはお茶が二つ。
「はい、大尉…熱いから気をつけてくださいね。」
「大尉は…止めてくれ…アキトで良い。」
「…了解しました、アキト。」
…ギン!!!
…ラピスとアムが絶対零度の視線でマスミを射抜く…。
目が怪しく光り輝く!(汗)
「…。」
…効果は無いみたいだけど…。
(おやおや…。)
…大佐が苦笑した…何故なら、アキトはこの状況に気づいていないから…。
…後に、お馴染みとなる光景なのであるが…。(爆)
…顔を僅かに赤らめて、そそくさと出て行くマスミ。
嗚呼、彼女も…遂にアキトLOVEな人間になってしまった…。
まあ、強姦寸前から助けられた訳だし…おかしくは無い。
…。
…おかしくは無い…が、ユリカに似た容貌の彼女が参戦とは…。(汗)
(…せっかくナツメさんを追い払えたのに…。)
(敵…敵…敵…敵…敵…!)
吹き荒れるジェラシー・ストーム!!
…また…嵐の予感が…。(滝汗)
そして、二人はマスミを追って出ていった。
…毒でも盛る気なのだろうか…?(爆)
…。
「ま、兎に角…今のお前は軍の大尉なんだからな…一つやってもらいたい事がある。」
…突然大佐が切り出す。
「…あまり軍隊には関わりたくないんだが…な。」
…やはり、乗り気になれないアキト。
「まあ、そう言うな…内容は護衛だ。」
「…護衛?」
「…そうだ、アメジスト姫を故郷までお連れしてくれ。」
「それは俺がやらなきゃ…いけないのか?」
…そこで苦笑しつつ先を続ける大佐。
「姫様からの、たってのご希望だよ…。」
「アムちゃんの?」
「お前と一緒じゃないと帰らない…だとさ。」
こうして、アキトのピースランド行きが決まった…。
…そして、暫くの時が過ぎ…艦は地球に辿りつく。
・・・。
そして…アキトはアムと共に、輸送機で飛び立った。
…行き先はピースランド。
「うぅ…アキト…何で私を置いてくノ…?」
…泣きが入ったラピスを残し…。
続く
−−−出立前夜−−−
ピースランド行きの前日、アキトは大佐に呼び出された。
「どうだ…普通の飛行機の…操縦には慣れたか?」
「ああ…だが、何で俺が操縦しないといけないんだ?」
アキトは、今まで飛行機を操縦した事は無い。
…IFSを使えるなら、話は別だが。
…少し、声のトーンを落とし、大佐が続ける。
「…あそこの王妃…アメジスト姫の事を良く思っていないらしい。」
「…。」
「まあ、自分の子が王位に就けるかの瀬戸際…と考えてるかもしれん。」
「俺の同行は…暗殺への対応の為…か?」
「…それもある…が、あそこは今…飛行場も港も全部あの王妃の持ち物でな。」
「…脱出の必要もあるかも知れないと?」
…大佐は黙って頷く…この件では信用できる人物が居ないのだ。
ヤマダは揉め事を大きくしそうだし、
マスミは戦闘能力が足りない…。
「…今の段階では、彼女を国元に返す命令が出たら従うほかは無い。」
「成る程、先に向こうが手を出したなら、保護する理由も出来る…か。」
…呆れ顔のアキトに向かい、大佐は続ける。
「…ま、あそこは連合軍にとって、大事なパトロンの一つでな…。」
「金…か。」
「そう言う事だ、上の立場としては、あまり刺激はしたくないようだ…。」
…アキトは理解した。
アムを見捨てないなら、付いていくしか無いのだ…と。
「…なら、ラピスは置いていった方が良さそうだな。」
「世話は任せておいてくれ…心当たりがある。」
「…そうか、話はそれで終わりか?」
「いや…悪いニュースが何件か。」
…大佐の話す内容は、アキトに立ちくらみを覚えさせるのに十分過ぎる内容だった。
「…エステバリスを連合軍が量産!?」
「ああ、ま…これは当然だろうな…。」
…敵の高性能な機体が手に入ったら、当然こうなるのは見えているだろう…。
因みにリモニウムの量産は、最初から無理だと判断された様だ。
但し、技術的な面での問題は大きく、コストの割に性能は上がらなかった様だ。
…いきなりで量産できたと言う事実の方が凄いかもしれない。
「後は?」
「…どうやら、月面が建国を宣言したらしい。」
…まあ、これも予想の範囲内と言えるだろう。
元々の目的を果たしただけだ。
「それで…まだ有るのか?」
「ああ、極め付けだ。」
「…ほう?」
…そこまで言うと、大佐は地図を取り出した。
あちこちに赤いマーキングがされている。
「…この赤い部分は、テロリストに占拠されている場所だ。」
…そう、連合軍の度重なる敗退に、全世界のテロリストが一斉蜂起。
遂に各所の軍施設を占拠するまでに至っていた…。
「俺の…所為なのか?」
呆然とするアキト。
「…やむを得まい。…誰も先の事など解らんのだからな…。」
…ぐさっ
アキトの心にナイフがぐさり。(汗)
嗚呼、逆行者よ何処へ行く…。
「お、俺は…俺は…。」
…アキト、崩壊。
だが、そんな事には気づかずに大佐が続ける。
「あ、そうだ…お前当てに荷物が届いてるって話だ。」
「…今の地球に、俺の知り合いは…居ないはずだが?」
…確かに不思議だ。
アキト現在の戸籍は作ったばかり…第一、知り合いが居ないのに、何故荷物が届く?
「…差出人不明…20m級のコンテナ一つ…か。」
…!!
アキトの頭に閃く物が!
…アイツだ…アイツしか居ない!!
「ダッーシュ!!…お前だろダッシュ!!」
『大当たり〜♪』
「何送ってきた!?」
『開けてビックリ…玉手箱ぉ〜♪』
「ち、チョット待てアキト…今の声は何だ!?」
…飲みかけのコーヒーを吹きだして、いきなりの天変地異に腰を抜かす大佐。
しかし…貴方もギャグ…出来たんですね…。(汗)
『はじめまして〜…オモイカネ・ダッシュであります』
…なんか、日を追う毎に壊れていくダッシュの性格。
性能自体は上がっているから始末におえない…。
「…何物だ!?」
『精密機械…かな?』
「…はぁ?」
…取りあえず固まる大佐。
「…ダッシュ…初対面の人間を脅かすのは止せ。」
『まあまあ、兎に角受け取ってよ。』
・・・。
で、ここは格納庫。
「…で…これは何だ…。」
…アキトの声が震えている。
『ほら、アキトがリモニウムに乗ったら、黒帝だってばれ易いと思ってさ』
…確かに正論だ。
もう乗らないほうが良いのだから、代わりの機体を送って来た訳だ。
『自信作のエステバリス・強襲フレームだよ」
…それは…見た所、ただの空戦フレームだった。
背中の巨大なバックパックが気になる所だが…。
「…何処が強襲なんだ?」
『…アレ』
…つつーっと、コンテナの中を見て…固まるアキト。
「なんだこりゃ!?」
『いーっつも、時代的に問題だって騒いでたから、これを用意したんだよ?』
「…。(滝汗)」
『45サンチ単装砲…《大和魂》』
…それはもう…デカイ大砲だった…。(汗)
旧日本軍の最強戦艦から主砲を一本折り取って来たかの如く。
「ダッシュ…。(呆)」
『文句無いよね…これなら20世紀の科学力でも作れるよ?』
「普通…このサイズは戦艦に乗せないか?」
『弾切れには注意してよ…それと…、』
…まだ有るんかい!?
『背中のバックパックには相転移エンジンと試作型エンジンが積んであって…』
「し、試作型?」
…最早びびるしかないアキト…。
『うん、相転移エンジンはどうしても大気中での稼働率が悪いからね。』
…アキトの手元にパンフレットのような物が落ちてくる。
− ボソンエンジン −
…相転移エンジンはその特性上、地球など、大気のある場所での稼働率があまりに低い。
その為に開発されたのが、このボソンエンジンである。
…まあ、難しい事は放って置いて簡単に言うと、
エネルギーのある場所から、自機のエネルギージェネレータにエネルギーをジャンプさせるシステムの事。
…通常、太陽系では太陽からエネルギーを持ってくる。
普通のボソンジャンプでは、目の前の物をイメージした場所に飛ばすのだが、
これの場合、イメージした場所のエネルギーをジャンプユニットで手元に持ってくる事になる。
なお、ジャンプユニットのエネルギーもエンジンから得ている為、
一度停止させた場合、再起動時にCCが必要となる。
なお、欠点としては、
遺跡を占拠される等の異常が発生した場合、S級ジャンパー以外は使用不可能となる事。
頻繁に自機中枢にジャンプアウトが行われる為か、周囲のボース粒子が常に増大している(隠密性が低い)事が上げられる。
なお、これを流用した戦術として、弾倉に予備弾をジャンプアウトさせたり、
敵のエネルギーを奪ってしまうと言うような事も可能。
(但し、敵位置の座標指定が上手くいかないと失敗する)
・・・。
「と、とんでもない事するなぁ…。」
…冷や汗を掻くアキト。
『いや、とんでもない事って言うのはああいう事だよ、アキト。』
「え?」
…アキトが顔を上げるとそこでは・・・、
「た、大佐ぁーっ!?」
「ば、化け物め!」
「でっかい蚊だなァ…。(汗)」
…大佐がバッタに何か注射されてました…。(滝汗)
ブゥゥゥィン・・・
…取りあえずバッタが行ってしまったのを確認すると、アキトは早速駆け寄る。
「おい!…大丈夫か!?」
「うう…。」
意識が無い(爆)。
「ダーッシュ!…一体何したぁーっ!?」
…。
『アキトと同じナノマシンを打っただけだよ?』
…。
「…。(唖然)」
…アキトはその台詞を聞かなかった事にして、次の日旅立っていきましたとさ。
::::後書き::::
BA−2です。
地球編にようやく入れました。
アキトはここでも二つ三つ伝説を作る予定です。
…さて、相転移エンジンって…地上では出力が低いはずですよね?
そう言う訳で、新型エンジンを出してみました。
…こんな駄文ですが、応援宜しくお願いします!
では!
代理人の感想
アキト・・・・逃げたな。気持ちはわかるが(笑)。
しかし意識不明の大佐に打ちこまれたナノマシンですが、中身は一体なんでしょうね?
大佐はジャンパーじゃないから演算装置でないとは思うけど・・・エステの操縦用IFS?
そうすると大佐もエステに乗るのかな?
ま、それはともかく・・・新しい機体って太陽からエネルギーを得ているわけですよね?
ならアキトの新しい決めゼリフは
「世の為人の為、
悪の野望を打ち砕くテンカワアキト!
この日輪の輝きを恐れぬなら、
掛かって来いっ!」
ですよね! ね!←何かとっても期待してるらしい(笑)