機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー
世紀を超えて
第35話 シスコン現る
…輸送機が、空港に降り立った。
そして、その中から一人の少女と軍服の男が降りてくる…。
無論、アキトとアムだ。
…向こうを見ると、黒山の人だかりが出来ているが、この滑走路については静かな物だ。
…VIP用は流石に一味違う…。
…。
輸送機は、給油と整備をするからと言われ、ドッグの中に消えていった…。
…しかも有無を言わさずに。
…無論、エステは乗せていない。
危険を察知して、予め海岸沿いの洞窟に隠してある。
…悲しい事だが、信用できない事が多すぎたのだ…。
…。
「…迎えが来たそうですよ、アキトさん。」
…アムの表情にも緊張が見られる。
無理も無い…暗殺の危機を感じ、家を出てから既に一年以上。
…如何言う顔で帰れば良いか解らないのだ…。
ききっ…
黒塗りのリムジンのドアが音も無く開く。
「じゃ、行こうか…!」
…そう言うや否や、アキトはマッチに火をつけ座席に投げ込む!
「…くっ!!」
すると、運転手は突然走り出て、角の奥に走っていく!!
…ドォォォォォオオオン!!
その刹那…凄まじい爆音が響き渡る。
…車に爆弾が仕掛けられていたのだ。
「…素人が…気配の殺し方も知らないとはな…。」
…すると、暫くして別なリムジンがやってきた。
不審げな目を向けられ、怪訝そうに聞く運転手。
「いやあ、遅くなりました…おや…如何しました?」
…恐らくこの男は何も知らないのだろう。
だからと言って、安心するのは早いが。
…。
「…。」
「…。」
…車中で、二人は何も語らなかった。
何故ならば、大量の盗聴機の存在を確認していたからである。
…だが、その取り外しは断念せざるを得なかった。
敵対する者に、これ以上の警戒感を抱かせない様に…。
…。
(しかし…一体誰がこんな事を…少なくとも外部から出来る事じゃあない。)
(…恐らくは父様…弟に家を継がせたいのでしょう…。)
…お忘れかも知れないが、アキト・ラピス…加えてアムはリンクされてます。
その為…会話するのに言葉なんかいらなかったりする…。
(義理の母親の方はどうなんだい?)
(義母様は…お優しい方でしたから…。)
…確かに優しかったのかも知れない。
だが、それは表層的な物では無い…と絶対に言い切れるのだろうか…?
(…では…当の弟さんと言う可能性は…?)
(…無いと思います。)
(はっきり言うんだね…。)
(ええ…だってあの子は…。)
…。
「…うぇぇええええん…姉上−−−っ!!」
…ここはピースランド王宮の入り口前…。
アムにしがみ付いて泣きじゃくっている少年が一人。
…例の五つ子に良く似ている気がする彼の名は…。
「…ほら、サードニクス…これくらいで泣いては駄目です。」
「ですが、姉上…心配だったんですよぉぉぉぉぉぉ…!!」
「ほら、皆が見ています…ボクなら平気ですから…。」
「嗚呼…敵地から命からがら脱出したばかりだと言うのに…お優しいィィィィィィぃぃぃっ…!」
…ザッパーン…!
…滂沱の涙を流しつつ、クルクルと回りながら姉の優しさを強調する。
しかもバックは弾ける波!(東映映画のオープニング状態)
…どうやら信奉者の様だ。
「…大丈夫なのかい…彼は?」
…盛大に引きが入りつつも、気丈に踏ん張って倒れ無いようにするアキト。
…少しばかり眩暈がしている様だ。
「…これがこの子なりの愛情表現なんですよ…。(汗)」
…それでも何処か嬉しそうに答えるアム。
兄弟仲は非常に良好そうだ。
「おや、姉上…この方は?」
「アキトさんですか…ボクのナイト様です。」
…。
「…アムちゃん?(呆)」
…。
……ぺしっ
アキトの顔に手袋が飛んでくる。
「…決闘です…アキトさんとやら!!」
…イキナリかい!?
「イザ尋常に勝負です!!…うおおおおぉぉぉぉっ!!」
返事も聞かずに斬馬刀で切りかかってくるサードニクス君。
…手袋投げつければ良いって物じゃないのだが…。
…どごぉぉ…おん
「…マジかい!?」
…横の街路樹が一刀両断される!!
「姉上のナイトは少なくとも僕よりは強い方じゃないと認めない…!」
「ま、待ってくれ!…落ちつけ!!」
「…と、言って弱かったら最悪だから鍛えてたんです…。(苦笑)」
「…もしかして、最初から落ちついてはいるのか?」
「さあ、姉上に付く悪い虫よ…覚悟ぉぉぉぉっ!!」
「は、話せば解る!!」
「問答…無用……です!!」
グワシャッ…!!
「…だから待てって言ってるだろうが!!」
…斬馬刀を真剣白刃取りで受けとめるアキト…。
流石に今回は命がけだったようだ…。
…オオオオオオっ……
…周囲から感嘆の声が上がる。
「…これを受けとめられるなんて…。」
そして、そのまま剣を引くサードニクス。
…そして、アキトに手を差しのべた。
「…失礼しました…貴方なら姉上のナイト役…お任せできます。」
がしっ…硬く握られる手。
「あ、ああ…しかし強かったな君…。」
「いえ…兄上こそ。」
…。(謎の静寂)
「アニウエ?」
「はは…ご謙遜を…姉上の心を射止められた方が居るとは聞いていました。」
「誰に!?」
…がさっ
「手紙……アムちゃんから!?」
「はい、先日届いた姉上からの手紙です。」
…ドドドドドドド……ガシッ…!!
「さ、さあアキトさん…両親に『挨拶』しなくては!!」
「待った!…何で『挨拶』が強調されてるんだ!?」
「さあ?…とにかく急いで下さい!!」
ドドドドドド…
…こうしてアキトはアムに引きずられる様に奥へと向かうのだった…。
…。
「…仲が良いんですね…羨ましい限りです…。」
…取り残されたサードニクス君。
…ホントにそう見えるの?
「ですが兄上…もう少しだけ…姉上に相応しいか…試させて頂きますよ…。」
…どうやらピースランドには、この時代から既に濃い連中が揃っているようである。
…はてさて、どうなる事やら…。
続く
−−−テラス−−−
微笑ましい姉弟の再会。
…その、一部始終を、上階のテラスから静かに見下ろしていた人影がある。
…頬はこけ、目が多少落ち窪んで居る為に恐ろしい印象を与えるその人物が不意に口を開く。
「アメジストめ…何故…帰ってきたのだ…!」
忌々しげに顔を歪め、唸る様に声を搾り出す…。
その男こそ、ピースランドの王…。
…即ちアムとサードの父親であった・・・。
::::後書き::::
BA−2です!
第35話…如何でしたか?
…新キャラ・サードニクス君登場!
…でも、ピースランドの話が終わったら最早出番が無くなっちゃうんだよね、この子…。
…ま、最後に怪しげな王様も出てきた事だし、次回をお楽しみに!
(楽しみにしてくれる人がいると良いけど)
では!
代理人の感想
いやあ、次回が楽しみだなぁ!
とゆーわけで少なくともここに一人おります(笑)。
サードニクス君も注目株ですが国王様は・・・・・・。
これで親馬鹿というのはさすがにないと思うけど(笑)