機動戦艦ナデシコ  アナザーストーリー


                              世紀を超えて

                           第37話  試練の時

 

…ピースランド城下町にて。


その日、ピースランドは快晴であった。…爽やかな風が吹く中、昼前の街には人々が溢れる…。


…その中に、ひときわ目を引く一団があった。


爽やかな笑顔が印象的で、すれ違う女性は思わず見惚れる程の好青年と、

西洋人形のような顔立ちに、咲き掛けの花のような清楚な雰囲気を持つ絶世の美少女。


…そして、その後方を気取られない様に尾行しつつ、周囲の男達に矢継ぎ早な命令を与える、この国の王子様。

…。

…更に、その周囲に何故か増え続ける黒服と、鋭い目の人達。


その上、すれ違う女性達は必ずと言って良いほど振り返って頬を赤く染め、

男達は取りあえず怨みと怒りを込めた視線を送る…。


…青年と少女の周囲1kmは正に異空間と化していた…。(汗)


…。


「すみません…サードが何か企んでるみたいです。」

「ああ、でも凄いと思うよ、完全に気配を消している。」


そう、サードニクスは完全に気配を消していた。

…アキトですら解らない程に。


「右に曲がられた様だ!…3人ほど広場に回せ!!」


…でも、周囲に数十人の近衛兵を侍らせ、大声で命令を出しているので台無しである。


…。


「あ、アキトさん…お腹空きませんか?」


…不意にアムが話し掛けて来る。

時刻は12時ジャスト。確かにアキトも腹が減ってきていた。


「…そうだね。」


…二人は飲食店街に向かう…。


「…お食事ですか…では、作戦A−1です…行け!!」


…そして、サードの指示の元、近衛兵が飲食店街に向かう。

…アキトがルリを連れてきた時、並んでいた兵士のあの格好…その上、全力疾走で…。(涙)


「畜生ーっ…今日は厄日だーっ!!」


…哀れな兵隊さん。

唯一の救いは、お捻りが二つほど飛んで来た事位だろうか…?


…。


飲食店街


「…あれ?」

「…何処もお休みですね?」


…普通、こう言う事は起こり得ない。


「…何処かに開いてる所は無いかな?」

「あ、新しいお店が一軒だけ開いてるみたいですね。」


…。

「駄目だ!!」


…アキト、絶叫!!


「何でですか?…ボクもあの店は行ったこと無いんですけど…。」

「駄目…あそこだけは駄目だ!!」

「…アキトさん…もしかしてピザとかパスタって苦手なんですか?」


…そう、その店の看板には…。


『元祖・本場のピザとパスタ』


伝説の(爆)…あの店だ…!!


「もう、アキトさん…好き嫌いは駄目です。」


ズルズルズル…


…アキトは店内に引きずり込まれた…。


…。


「…ふふふ、入りましたね…余りの不味さにそろそろ追い出そうかと考えてましたが…。」


…付近にある教会のような建物の上で、ほくそ笑むサードニクス。


ゴーン…!!


「…がはっ!!」


…お昼の鐘が打ち鳴らされる…。


…どさっ


「…ふふふ、腕自慢のあの店主相手にどう出ますか…兄上…がくっ。」


…自らの血液で、赤く染まった路上に倒れ伏しながらも、作戦の成功を喜ぶサード君でしたとさ…。


…。


「お待たせっ!」


…ドサッ!


前回以上に筋肉ダルマな店主…。

…因みに料理は…?


「…この味は…まさか先祖伝来なのか!?


…どうやら、前回同様(もしくはそれ以上)らしい。(汗)


「…美味しくない…。」


…アムも、アキトがここを避けようとした訳が解ったらしい。

…が、それをここで言うのはマズイ!!


「何だと!!」


…怒り狂う店主。

でも、目の前にいるのはこの国のお姫様だけど…大丈夫か?


…。


そして、店主がアムの胸倉を掴もうとしたその時!


…ボカッ!!


「がはぁっ!!」


…アキトの鉄拳が店主を襲う!!


「「「…先生!!」」」


ドガッ…バギィ…ゴスッ…!!


前回の分を含め、取りあえず全員をボコボコにするアキト。

…以前殴られた人と別人なのは放って置いて、取りあえずスッキリ。(ヲイ)


「…てめぇ…!」


…肋骨が腹から突き出した状態でもまだ戦闘意欲を失わない店主。

子孫(?)よりも数倍は骨があるようだ。


…。


そんな店主に対しアキトは…。


「…厨房を借りる。」

「へ?」


…そして、暫く後。


「…出来たぞ。」

「…不味かったら承知しねぇからな!!」


…更に暫く後。

「すいません…これからは精進します…!

「…解れば良いんだ。」

…未来での不幸が…一つ消えた!!(ヲイ)

ピースランドから…不味いピザの店が消滅!


…。


「驚きました…料理も達人級ですか。」


…店を出たアキト達の目の前に、イキナリ現れるサードニクス君。


「…君か…付けてたみたいだね。」

「時に…兄上…男同士でサシの話があります。」


「…ボクは席を外せと?」

「姉上…申し訳無いですが…。」


「ま、良いでしょう…では、今暫く街を回ってきます。」


…。


…そして、

…夕日が赤く燃える中、町外れの未開発区域に二人はいた。


サードニクスは斬馬刀を既に抜き放ち、アキトも臨戦態勢を崩さない。


「兄上…正直に言います…僕は貴方が憎い!!


…サードが突然叫ぶ!

だが、その台詞回しはジュンの物に近いぞ…良いのか?


「…アムちゃんの事か。」

「そうだ…僕は、姉上を愛している


ザワッ…!!


…周囲に隠れていたマスコミの方々が、一大スクープだとばかり飛び出し、逃げていく!!

…急げ、

まだ明日の朝刊には間に合うぞ!!


…バタタタタタタッ


でも…周囲に隠れていた近衛兵に残らず撃ち殺された…。

…いと哀れなり。


「あ…そ、そうなんだ…。(汗)」

「ですが、ご存知の通り僕は腹違いとは言え弟です。」

「…そ、そうだな…。」

「ですから、姉上が誰かを愛したとしても止める権利はありません。」


…そこまで言って、袖で涙を拭くサードニクス。

…そんなに悔しいのか?


「ですが、姉上のお相手は最高の男性で無ければ認める気は無いのです。」


そして、剣を構えるサード。


「…ま、待ってくれ。」

「命乞いには遅いですが…?」


「まだ、俺の事が好きだと決まったわけじゃ…」


…斬!!


「……この…鈍感大王がーっ!!」


怒りの一撃は衝撃波を生み出し…建設中の橋を叩き落し、城壁を突き破る!!


「…このままでは殺られる…なら…!!」


…そして、戦闘が始まった…!!

恐らく…周囲一帯は焦土と化すだろうが…。


…。


一方その頃、アムはビデオ屋から出て来た所だった。

…アキトが居ない所為か、ヒマを持て余しているように見える。


「ふう…買い物にも飽きました…アキトさん達の所に行って見ますか。」


…その時…アムは後ろから迫る殺気に気づく!

良く見ると、周囲から人影が消えていた…!!


「フ…お姫様…アンタに怨みはねぇケドよ…金が貰えるからなぁ…。」


…後ろから近づいて来た男が、アムに突然ピストルを突き付けた!!


…ぱぁ…ん…!


…。


「!!…アムちゃん?」


…アムの異変にいち早くアキトが気づいた!

見ると…サードも銃声を聞きつけたのか、固まっている。


…そして、二人は顔を見合わせ…同時にコクリと頷くと、銃声のした方向に向かって走り出すのであった…。

続く

::::後書き::::

BA−2です。

…さあ、突然の大ピンチ。
前半の、のほほんな雰囲気は何だったんでしょうね?(自分で言うな)

…アキトとサードニクスはアムを救えるのか!?
それとも…。

…こんな駄文ですが、応援して頂けたら幸いです。

では!

 

 

 

代理人の感想

 

最後の十数行でいきなりシリアスになりましたね〜。

シスコン王子と鈍感大王の一大決戦が見られるかと期待していたんですが(笑)。

 

にしても。

 

「余りの不味さに〜〜」のセリフからすると、サードニクス君って

国にある飲食店をいちいちチェックしてるのだろうか(笑)。

それも王族の責務だったらイヤだな(汗)。