機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー
世紀を超えて
第38話 闇夜の陰謀劇
…ぱぁ…ん…!
鳴り響く銃声…!
…アキトとサードニクスはその方向に向かい疾走していた。
民家の屋根に飛び乗り、
運河を飛び越え、
時計台に着地して、
そのまま現場に降り立つアキト!
…。
「兄上ーっ!?…アンタ…ホントに人間ですか−ッ!?」
…そう言いつつ、車から車に飛び移って行く彼も、十分に化け物である。
…。
「はぁ…はぁ…アムちゃん!?」
「……姉上−−−ッ!?」
…駆け付けた二人が見たもの…それは、夕闇をバックに立ち尽くす影と、
…倒れ伏す人影であった…!
それの…意味する事とは…!
…。
「あ、アキトさんにサード?」
…あれ?
「もう、最近はこんな街中にも暗殺者が来るんですね…。」
アムちゃん…?
「…お姫…様…あんた…速撃ち…出来たんだ…な…ぐふっ。」
「…アムちゃん?」
「姉上…。」
「あ、大丈夫…まだ死んでませんよ、コレ。」
…何時ぞやの、北方にぶっ放した大型ライフル(無反動)で倒れ伏す暗殺者を突付きながら言ってのけるアム…。
伊達や酔狂で幼少から暗殺者と戦い続けてきた訳では無いようだ。
…それが少女として正しいかどうかは別にして。
…。
…結局…遅れてきた近衛兵に犯人を引き渡し、事件は一応の決着を見る。
だが、結局犯人はわからずじまい。
ただ…今後も襲われる可能性が有ると言う事で、
アムには外出禁止令が出てしまった…。
そして…日が暮れ…ここはアムの部屋。
アムの前でサードニクスが謝っていた…。
…。
「ゴメンナサイ…姉上…僕の我侭の所為で…。(泣)」
すっかり縮こまって言うサード。
ディフォルメ表現で言うなら、ガチャポン人形位にまで縮んでしまっている。
「…何時もの事でしょうが…ほらほら泣かない泣かない。」
弟の頭を撫でてやりながらアムが言う。
…でも、何時もですか…こんな事が…。(汗)
…そして…宮中の晩餐会。
長いテーブルに全員で着いて食事をする…。
だが、会話は無かった。
…不気味なほど静まり帰った部屋…。
なにせ、一番大きな音がメイドの足音だったと言うのだから恐れ入る…。
…アキトは末席でそれを眺めていたが、どうも何かおかしい。
謎の緊張感が場を支配しているのだ…。
そこで…食事が終わった後、取りあえず聞いてみる事にした。
「アキトさん?…何時も、こんな感じですよ…。」
「そうですね…確かに今日は、一段と静かではありますが…。」
…取りあえず納得した物の、アキトには何か引っかかるものがあった…。
(…何か…おかしい…。)
…それに気づいたのは、食事が終わり、部屋に戻った後。
…綺麗に掃除された室内だが…アキトは気づいた。
(盗聴器が二つ…いや、三つか…。)
…しかも、良く見るとテレビに隠しカメラまで設置されていた。
(…いやはや…警戒されたもんだな。)
だが、不用意に外せば、不穏な動きをしたと見なされるかもしれない。
…不意に名案の浮かんだアキトは、ある人物を呼んだ。
…。
「…でさ、盗聴されるのって気分が悪いからね…。」
「盗聴機…あるんですか?…兄上がそう仰せなら、明日にでも外させますが。」
…確かに彼が言えば、多少の無理は通るだろう。
「じゃ、頼むよ。」
「はい、時に兄上…お願いがあるんですが。」
「ん?」
…そして…、二人は連れだってある場所に赴く…。
…そこは、一言で言うなら体育館のような場所だった。
「…ここは、兵士の鍛錬などを行う為の場所です。」
そして、剣を抜くサードニクス。
「…しかし…君もしつこいな。」
「先ほどは途中で終わってしまいましたからね…。」
「まあいい。だが、これで最後にしてくれ。」
「…分かっています…僕も…男ですから、二言はありません。」
…そして、昼間の続きを始める二人。
戦闘がヒートアップする中、次第に観客の兵士が増えてきた…。
…。
がたっ
…異変は、そんな時に起こった。
鎧などが収められている棚があるのだが…二人がそこに近づいた時…。
ガラガラガラッ…!!
…突然…棚が倒れてくる!
「何ッ!?」
「わわわっ?」
…ドッシー−ーン!!
…。
二人は、総重量1000キロオ−バーの、棚とその中身に押しつぶされた…!
「お、王子っ!?」
「大変だーっ!!」
「客人も潰されたみたいだ!!」
「バカッ!…王子まで巻き込んでどうする!」
「済まん!!」
「如何するんだ!?」
「まだ、生きてるかもしれん!!」
「…助けないと!!」
…騒ぎ立てる兵士達。
騒いでる暇があったらとっとと助けろ。
…。
ガシャーーーン!!
「なんなんだよ…これは!」
「…整備不良ですね…責任者は首だぁーっ!!」
…でも、無傷な二人。(爆)
「「「ご無事ですか!!」」」
…サードに近衛兵達が殺到する。…周囲を取り囲んで…まるで人垣だ。
これでは周りも満足に見えないだろう…。
…。
「凄いな…。」
「…ええ、跡継ぎにあられますから…。」
呆れ果てるアキトに、衛生兵らしい男が話しかけてきた。
「…過保護に過ぎないか?」
「ははは…確かにそうかも知れません。」
…そう言って、衛生兵はバッグを空け、注射器を取り出す。
「…災難でしたね…痛み止めをどうぞ。」
「ああ、ありがと」
ガシッ!!
…アキトは注射器を奪うと、衛生兵に突き付けた!!
「な、何を!!」
「…この中身は毒だな…?」
「…え?」
「ふん…俺はこう言うのにも詳しいんだよ!」
「…つっ…!!」
…アキトの手を振り解き、衛生兵は逃げ出した!!
「待てッ!!」
…そして…施設の入り口にまで辿りついたアキトの見た物は…、
…。
「クソッ…何を考えてるんだ…一体!!」
…側面から狙撃され、頭部から脳漿をこぼして絶命する…先ほどの男だった…。
…。
「あ、アキトさん。」
…部屋に行くと、アムは昼間に買ってきた物を選り分けている最中だった。
「…アムちゃん…急いだ方が良いかもしれない。」
「…アキトさんも狙われたんですか?」
…アムは、ただの一言で状況を理解した様だ。
…アキトは静かに頷く。
「ふう…このビデオ…観てから行きたかったんですがね…仕方ないか。」
…ゴソゴソと、買いあさったビデオの山をリュックサックに詰め直すアム。
…そして、おもむろにロープを取り出すと、ベランダに置いた。
…ここからならば、城壁まで十分に届く長さだ。
「ボクの脱出準備はOKです。」
「ああ。だが、バレバレなのはまずい。」
「ええ、一度は寝たふりしないと…。」
…。
…一方、サードニクスはその頃…両親の部屋へと向かっていた。
アキトまで襲われた事で、アムの警護を増やすように言うつもりなのだ。
そして…部屋には…国王だけがいた。
「父上…姉上の警護の事でお話があります!!」
…だが、返って来た答えは…。
「…そんな事にかける金は無い。」
「そんな!!」
…にべもない物だった…。
「第一、ここが危ないならさっさと出て行けば良いのだ。」
「…父上!!」
「…そんなにアメジストが心配か?」
「勿論です!!」
…王は、即答するサードをじっ…と見つめていたが、不意に口を開く。
「…なら、自分で護れば良かろう…警護の増員は認められんよ。」
そうして、ぷいと横を向いてしまう…。
…。
…サードは部屋を出ていった。
ドアがバタン…と凄い音を立てたのはお約束である。
「…まったく父上ときたら…!!」
…怒り覚めやらぬサードニクス。…そこに、母親が歩いて来た。
「母上…姉上の警護の事なのですが!!」
…王妃はにこやかな笑みを浮かべてこう切り返した。
「既に20人ほど、腕の立つものを配置してありますよ、サード。」
「警護の人数を増やして下さったんですね…さすが母上。」
…王妃は微笑んでいた。
「時にサード。」
「はい、母上。」
「…某国の暗殺団が紛れ込んでいる様です。」
「それで今日は…。」
「そうです…ですから今日はもう寝なさい。」
「…。」
「敵の主なる目標はアメジストさんの様ですが、スキあらば貴方も危ない。」
「…僕なら大丈夫です…この国で一番の騎士でもあるのですよ?」
「貴方は確かに強い…ですが、策謀には弱いと思いますよ…?」
「しかし、それでは姉上が…。」
「大丈夫、万全の体制を取っています…何処にも抜かりはありませんよ。」
「はぁ…。」
「解りましたね…可愛いサード。」
「…はい。」
…そうは言った物の、サードは一旦自室に戻った後、アムの居る部屋にまた向かった。
(…姉上が危ないのに黙っていられませんよ…。)
…自らの警護兵にすら見つからない様に、庭を通る。
すると…車をなにやら弄っている侍従長が居た。
「む、爺…何をやっている?」
「これは王子…車の整備に御座います。」
「…そんな事は先刻承知です。…何をしているのかと聞きましたが?」
ピタリ…と、止まる侍従長の手。
…そして暫く黙っていたが、意を決した様に口を開く。
「…リミッターを…切っています。」
「…なんでそんな真似を?」
「必要になるかも知れませんゆえ。」
…寂しげに言う侍従長。
「何に使う気なのですか…まあ良いですが。」
…そして、先を急ごうとするサードに声がかかった。
「王子…姫様の所に行かれますかな?」
「…解りますか。」
「…でしたら、この際…甘えてみたら如何ですかな?」
「…甘える…ですか?」
「はい、幼い時のように添い寝をお願いしてみては?」
…かっこーん。
何故か鳴り響くししおどし…。
「…馬鹿者(赤)」
「イエイエ…お二人が並んで寝て居る時に、暗殺者がベッドに辿りついた例は今までありませんでした故。」
「…僕達…もう15ですよ?」
「姫様達の婚前交渉に対する牽制にもなりますが…。」
…。
「…そうですね…取りあえず言うだけ言ってみますか…。」
…ヲイ!
…兎にも角にも、サードは行ってしまった。
…一人取り残された侍従長はポツリと呟いた。
「…此度が、最後の別れになるやも知れません…甘えておいた方が良いでしょう・・・。」
…そして、車をまた、弄り始める。
カチャ…カチャ…プチン…
そして、何時しか彼は車に向かって話しかけていた…。
「…今まで…王族の皆様方を送り迎えしてきた我等だが…。」
「此度ばかりは動かずにいられれば良いのう…。」
…そして、アムの部屋に向かって顔を上げる。
「姫様…どう転ぼうが、これがこの老骨の最後のご奉公になりましょう…。」
…そして、侍従長の腕章をむしりとり、盗聴機を握りつぶす…。
「王子…テンカワ殿…姫様の運命は…あなた方にかかっておりますぞ…!」
…そして…また車に向かい…何やら弄り始めるのであった…。
続く
::::後書き::::
BA-2です。
…策謀の匂いがプンプンとします。
いやあ、これでこそピースランドですね!(そうか?)
…さて、ピースランド編ももうじきクライマックス!(予定)
…今後はアキトが地球でも伝説となるために、それ用のエピソードを一つ二つ入れて、その後…帰還と言う流れになる予定です。
…こんなのですが、応援して頂けると幸いです。
…感想待ってます。
では!
代理人の感想
サードニクス・・・・なんて美味しいキャラだ(笑)!
只でさえ「シスコンな弟王子、しかも強い」という今までにないシチュエーションであるのに加え、
どうですか、この素敵な壊れっぷり(爆)!
(注:あんまりそうは聞こえないでしょうがベタボメしてます(^^;)
いや〜、過去編だけで終らせるには余りに惜しい!
未来でも「おまえクローンだろ」って位似てる子孫を出して欲しい物ですが・・・ダメ(笑)?