機動戦艦ナデシコ  アナザーストーリー


                            世紀を超えて

                     第47話 時として必要な「開き直り」

 

…ズドォォォォオオオン!!


13組目の合体が失敗に終わる。

敵は、奪取した試作機がまさか冗談だった等とは全く思っていないようだ。


「努力と根性!!」
「一念発起ぃ!!」
「願えば叶うっ!」
「一汁三菜っ!!」
「それ行けぃ!!」



…ドッゴォォォオオオン!!


敵パイロット達は、何の疑いも無く掛け声と共に爆砕していく!!

…関係無い台詞も混じっていたが…。(汗)


因みに失敗原因は、一度に合体しようとしたものの、

真ん中(腰)の機体がスピードに付いてこれなかった為。


「テンカワさん…今のうちにこっちの準備もしておく?」

「そうだな、山崎…。」


そして…そんな二人の声を皮切りに、連合軍の方も戦闘準備を開始した。


「戦車隊…いいか?」
「OKだぞっ。」
「戦闘機隊?」
「基地内で使えるかよ?」
「歩兵隊は…。」
「死ねって言うのか!?」



…そんな中、上空から一機の大型戦闘機が降下して来る。

そして、外側のパーツが背部に移動していき…人型になると…地面に降り立った!

そう、エステバリス・強襲フレーム…アキトの機体だ!


オオオオオオッ…!!


凄まじいざわめきが起こる!


「何いっ…可変型!?」
「すげぇ…。」
「…がーん…俺には作れなかったぞ…。」
「でも、あれ…誰の?」



…そして、それにアキトが乗り込むのを見て、全員納得した。

…何故なら、ラピスも無理やり乗り込んでいったからだ。


「「「…なんだ、あの子のか。」」」


この反応…ラピス…まさか…。(汗)


…。


さて、その時強襲フレームのコクピットでは…揉めていた。


「ら…ラピス…降りろって。」

「イヤ。」


そして、座席の後ろに備えつけてあったチャイルドシートを開くとちょこんと乗り込む。


(…何いっ!?)



ガビーン…な表情のアキト。


だが、…強襲フレームはダッシュ製作…。

このぐらいはお茶の子さいさいだったのだろう。


…。


…ゴガァアアアアン!!


現状報告…敵、21組目が合体に失敗。

原因は、頭部となる小型戦闘機が、オーバースピードで合体を試みた為。


…。


…そして…アキトが戦闘準備を整えた時…戦場には一体の合体ロボが立っていた…。


「チョイ電磁ロボ…コンデンサーV(何とか)完成!!」


…。


…ドガーーーン!!


敷地内に…前日から仕掛けていたらしい爆弾を爆発させ取りあえずカッコつけ。

だが、周囲の残骸のせいで台無しである。


「…まさか…成功するとはな…。(汗)」

「テンカワさん…でも良いんじゃない?」


…アキトと山崎の会話にも緊張感が無い。

それに対し、ラピスが首をコクコクさせた。


「アキト…大丈夫…敵の結合部分にヒビが入ってル…。」

「…本当か?(汗)」

「…うん。」


嗚呼…浪漫系のロボットよ…!

…実際はこんなもんでは済まないだろうが。


…。


その時、敵ロボ…コンデンサーVが動いた!


「チョイ電磁…タ・ケ・ト・ン・ボーっ!」


ガパッ…胸部アーマーが突然開き…中からエステバリスの全長程もある、巨大なプロペラが現れた!!


「くらえ…とおっ!!」


…ブルゥゥン!!………ガギィッ…!!


…顔面!…直撃ィ!!


「…自爆?」


…タケトンボを実際に飛ばした事がある方ならば分かるだろうが、あれはやり方を間違えると、
顔に直撃する事がある。


…そして…そこに残ったのは…顔を失った合体ロボ…。


…しーん…。


あまりと言えばあまりな展開に、ついて行けない連合軍一同。


…その時である。


「…甘いな…!!」


…上空から、もう一機、小型戦闘機が降りてきた。

そして、キキィ…と着陸すると、顔の無いロボに信号を送る。


ぴぴ…ガチャン…。


すると、ロボットは屈み、戦闘機を掴む。

そして、そのまま顔に持っていき、ゆっくりとはめ込んだ…。



「再合体完了…コンデンサーV!!」



(…最初からそれやりゃ良かったのでは!?)


…そう言う叫びは野暮と言う物である。

浪漫に生きている連中と言う物は、基本的に格好がつかなきゃ駄目だから…。


…。


合体が終了したその時。

…コンデンサーVがビシイッ…と、アキトを指差してきた。


「貴様…以前、それ一機で一個艦隊を潰した事があるそうだな…。」

「…ああ。」


…ピースランドに向かう道すがら、確かにそんな事があった。


「…ふ、英雄様か?」

「そんな事は有るまい…襲ってきた連中をやっただけだ。」


「だが…俺は英雄とか言う人種が嫌いだ!!」

「…話…聞いてるか?」


答え:聞いてません。


そして、敵は一方的に名乗りをあげる!!



「俺は『聖教団三鬼衆』のカタオカだっ!!」


『聖教団』なのに『三衆』?(汗)


…因みに、コイツはテツヤの先祖。バールの先祖に続く「時の流れに」系列の二人目である。


…。


「死ね…英雄!!」


…ブォォオオオン!!


コンデンサーVの巨体(50メーター級)から蹴りが繰り出される!!

迫り来る、巨大な足の裏!!


「うわああああっ!!」


…足先に乗っていたパイロットの一人が死にかけているが、この際それは無視!


…ささっ…。


でも、巨体ゆえか…ゆっくりだったので容易に見切るアキト。


…ドシィイイイン!!


そして…可動部分が少なかった為か、立っていられずにずっこけるコンデンサーV!

…資金や資源の無駄使いである…。


…。


ジタバタジタバタ…。


…戦いは終わった。(爆笑)

向こうは未だやる気満々だが、起き上がれない以上戦えまい。

(胴体に可動部分無し)

…。

そして、引きずり出される敵パイロット4人。

…及び死者一名。(足の先に居た人)


結局…アキトが何をするでもなく…戦闘が終わってしまった…。


…。


数時間後…。

…尋問に回された敵だが、なかなか口を割らない。

とにかく、敵の情報が何でもいいから欲しい所なのだが…。


「……このカタオカ…教団を裏切りはしないぞ。」


…それを見て、大佐は最終手段の使用を許可した。…実は…この男の事を知っている者が居たのだ…。



「へ…あ…デュワワワ…アアアアアアッ!!」



…。


そして…次の日。

大佐とアキトがなにやら話をしている。


「アキト。奴は…知ってる事は全部吐いたようだ。」

「ああ、しかし…どうやったんだ?」


「うん…実はな、奴は…名うての結婚詐欺師でな。」

「ほう?」


「…以前…カズミ君も引っかかったらしい。」


そう言えば、前回の口喧嘩の際に、そんな事をマスミが言っていたような…。


「成る程…それでか…兄貴?」

「…それでだ…。」


そして…何処か重苦しい沈黙が暫く続く…。


「昨日…密室の中で何が起こったのかは…彼女達にしか解らないけど…。」

「そうだな…。」


「「…アレはやり過ぎだと思う…。」」


…そういって…二人は滑走路に立てられた、真新しい『磔台』を横目で見る…。


「怖い人ですね…。(多分先祖だと思うけど…メグミちゃんとは偉い違いだな…。)」

「…そんな事いわんでくれよ…今度…見合いする事になってるんだから…。」

「…兄貴が…か?」


…大佐は、冷や汗をかきながら、こっくりと首を縦にふる。


…。


ガチャコン…ガッタン…。


…外では敵残骸の片付けの音と、逆襲用の装備の搬入が行われていた…。


カッチンコッチンカッチンコッチン


…そして、室内には黙りこくる二人の男が居た。

時計の秒針だけが、時が流れている事を感じさせてくれる…。


(…何か…とんでもない事になっている気がするが…考えるのを脳が拒絶するのは…何故だ!?)


…そして、思考停止を起こしかけているアキト…。

そう…洒落にならないフラグが立とうとしていたのだ…。

続く


−−−その頃、格納庫−−−


その日…アキトの機体は凄い事になっていた。

機体のあちこちに、技術者達が張り付いていたのだ…。


「解らん…何一つ解らん。」
「第一、こんなに精度の高い部品など何処に有ると言うのだ…。」
「糞ッ…10円傷付けてしまえ…!」
「駄目だっ…こんないい機体を傷つけんな!!」



…どうやら、作れないを通り越し、理解できないのレベルに達している様だ。

…それを見て苦笑する山崎とラピスの元に、今まで機体上を這いずり回っていた連中がやってくる。


「おお…君がエステバリスの開発者らしいね…。」
「あれだけの物…一体どうやって…。」

「いえ…僕はアキトさんが最初に乗ってたのをコピーしただけですから。」

「なんと…では…アレのことは解るかね?」
「動力…部品精度…プログラム…どれを取っても我々には理解不可能なのだ…。」

「さあ…あそこの…は僕、ノータッチですし…。」


うんうんとラピスが頷く。


「そうだネ…アレを作ったのはダッシュだヨ。」

「…お嬢ちゃん…そのダッシュさんとは…何処にいるのかな?」


「…火星。」

「ふむう…残念だ…。」


…まさか人では無いなどとは、夢にも思っていない技術者さん達一同であった。


「しかし…火力と言い、可変機構と言い…まさしく悪夢だな…。」

「うんうん。…敵にとっては正しく『悪夢』の具現化だろうね…。」

「…むしろ…わし等、技術屋にとっての悪夢だと思うが…。」


…そこで、ポンと手を叩くラピス。

そして、不思議そうにそれを見る山崎。


「…それ、いいかモ…。」

「ん…ラピスちゃん?」


「あの子の名前…。」

「愛称かい?…悪夢…『ナイトメア』か。悪くは無いね。」


…こうして、強襲フレームはこの後『エステバリス・ナイトメア』と呼ばれる事となる。

…それに伴い、カラーリングも黒系統に変更。


後に…この機体を駆って敵を狩るアキトの姿は、死んだ…とされている「黒帝」になぞらわれ、

「黒き皇帝」と呼ばれる事となる。

…無論、両者が同一の存在である事など…誰も知らない事であった。

 

::::後書き::::


BA−2です。

さて…次から本格的な戦闘に入ります。


舞台はクレの海軍基地。

…ま、今回ので…敵がどれくらい逝っちゃった集団なのかお分かりになった筈です。

笑える戦闘シーン目指して頑張ります。

では!

 

 

代理人の感想

 

・・・・・ちょっぴり入信したいかも(核爆)。

嗚呼、浪漫なるかな!

 

 

あ、そうそう。

『ナイトメア』って色を黒にすると「ハサミのないガンダムアシュタロン」になりません(爆笑)?