機動戦艦ナデシコ  アナザーストーリー


                              世紀を超えて

                       第50話 全ての始まりは『あの時』に

 

…扉が音も無く開く。

そこは…本来であれば会議室か何かであったのだろう。


だが…広い室内には怪しげな天使像や悪魔像(ヲイ)が立ち並び、

更に奥には玉座らしき物まで見えた。


…そして、


「遂に辿りついたか…災いもたらす旅人よ!」


その玉座に座る大男が一人!


「貴様は…!?」

「私が聖教団を統べる者…ホーリー様だ!」

…。

聖なる…の意味を持つホーリーの名を持つこの男。

…顔立ちを見た感じ、間違いなくゴートの先祖だろう。


(ゴートさんの先祖って…宗教家だったのか?)


…アキトはそんな感想を抱く。


しかし…王冠を被り、マントを羽織り、その上に袈裟を付けている…。

…そんな奴に偉そうにされても…。(汗)


…だがまあそれはまだ良い…口元のナマズ髭(爆)を何とかしてくれ。

…。

…大男はギッとアキトを睨みつけて言った。


「異邦人よ…何ゆえこの世界にやってきたのだ?」

「…なぜ…そのような言い方をする?」


…正直、アキトは背筋が寒くなる思いをしていた。

アキトがこの時代にいるべき者では無いと、なぜ解るのだろうか!?


「一年数ヶ月前か…私は連合軍人として、宇宙空間をパトロールして居た。」

「何!」


「その時…何も無い宇宙空間から、突然一隻の巨艦が現れたのだ!」

「…まさか…。」

「その時は…見間違いとして処理した。…だがその後、その船が登録されていない事を突き止めたのだ。」


そう…あの時…アキト達が現れた時点で…もう、

…すでに歴史は狂っていた…そう言う事なのだろう。


「そして、数ヶ月後…火星の直上でその船を見つけた私は、取り調べる為に哨戒艇を横付けた!

「…もしかして…。」


「…その時だ…船が火星の重力に捕まったのは!!」

「…。(汗)」


「そして、私の哨戒艇はその船に巻き込まれ、火星に落ちていった…!」


そう、アキトがこの時代に現れた時…彼はその場所に居たのだ…!!

そして、追い続けた挙句にユーチャリス(偽装)の不時着に巻き込まれ、火星に落ちていく…。


…彼は薄れゆく意識の中…神らしき“何か”を見た…。
(なお、後世の歴史学者達は幻覚との認識で一致している。)


「私が目を覚まし、哨戒艇の残骸から抜け出した時…周囲には二つの人影があった。」

「…それが、俺達だったと言う事か。」


重々しく頷くホーリー様。

…見方によっては、居眠りしてるように見えるのがご愛嬌。(笑)


「そして…最寄の基地に出頭し、全てをありのままに報告したのだが…。」

「…信じては貰えなかっただろう?」


「…即刻、地球の精神病院強制移送された。」

「う…。」


…む、惨い…。(汗)


「幸い、一月程で病院を出る事が出来た…私は狂ってなど居ないから当然だが。」

「…いや、でもその服装のセンスは…。(汗)」


…実は見捨てられただけだったりする。


「…そして、考えた。夜も寝ずに昼寝して考えつづけた…。

「…なんて古典的なネタを…。(滝汗)」


「…そして…また神の声を聞いてみようと思い至った訳だ。」


…そして、神の言葉を聞くべく臨死体験を敢行。(冗談抜きで清水の舞台から飛び降りた

…そして、悟りを開き「聖教団」を結成するに至る。

…。

(もしかして…こいつ等の存在って…俺達のせいなのか!?)


…当たらずとも遠からじである。

少なくとも、アキト達の存在による歪みが生み出した物であるのは間違い無いのだから…。


「…そして…先日…某国で兵士をしていた信者の一人が惨殺された!」


…某国…ピースランドですか?(爆)


「その時…犯人の…貴様の顔写真を見て…ピンと来た。…あの男だと!!」

「…まさか…!」

「そうだ、この一件は…貴様をいぶり出す為の物だっ!!」


…ただそれだけの為に、何人死んだやら…。(汗)

いぶり出すだけなら他の方法もあったろうに…。


「…その為に…関係のない人達を巻き込んだのか!?」

「…そうだ。」


…アキトの顔に青筋が浮かんだ!


「たった…それだけの為に…関係無い人達まで巻き込んだのか…許さん!!」

「…やはり…そう来るか、正義感の強い事だな。」


「お前等のやっていることはただの人殺しに過ぎない…!」

「…むうぅ…その台詞…そっくり貴様に返そう。


「…!!」

「お前とも…大して変わらぬ…。」


…確かに、一連の騒動…この一年ちょっとの間に、アキトは随分多くの戦いをこなしている。

その際…かなりの死傷者が出ているのは間違いのない話であった…。


…今までのアキトを追ってきた方々なら解ると思うが、全て仕方ない事であると言えた。

成り行き上、やむなく戦い続けて来たのだ…。


…だが、そんな事は被害者側からすれば言い訳に過ぎない…!

アキトの精神は、殴られたような衝撃を受ける…!!


だがアキトよ…過去の事…忘れたとは言わないよな?


「俺も…貴様等と…同じだと言うのか…!?」

「…さて…それは解らぬ。」


…そして、ホーリー様は玉座から立ち上がる。

…急造りの玉座がゴロンと転がった…。(素材:発砲スチロール)


「…自らの意見を通す為には…時として力も必要だ。正しいか間違っているかなどは…。」

「…歴史が証明してくれるだろう!!」


…ばさっ!

…袈裟とマントを取り払い、大男は戦闘態勢に入った!

その、強靭な筋肉が白日の元に晒される!!


…ごろっ…。

王冠が頭からずり落ちる。

…そして、“波平”な頭部が現れた(爆)

オバQで無いだけまだマシだが。


「行くぞ…!!」


からんころん…ばふっ

足元は何故か下駄。…しかも、もう片方は長靴!


「神の戦士の力…存分に味わうが良い!!」


…上半身はブレストプレートで覆われている。

下半身は…、



…越中ふんどし一枚!!

しかも黄ばんでる…。(汗)

 

 

…。


「…何なんだ…一体コイツは!?」


アキトも未知の敵(爆笑)に戸惑いを隠せない!

…だが、敵は待ってなどくれない!


「…見るがいい…これが神から授かった神器だ!!」


…ごそごそ


「…褌から取り出すなぁーっ!!」

「…むう…どうだ!!」


(あ…赤貝!?…しかもチョット温もってるーっ!!)


アキト、思わず茫然自失!(もしくはガビーン状態)

だが…それこそ敵の狙いであった!!


「スキあり!!」
(しまった…ガードが…!!)


「ひっさーつ!…ムーミンはカバじゃないっ!!


…無防備なアキトに、唸りを上げて襲いかかる鉄拳!!

ズゴァッ!!
…ズザザザーーーッ!!



(…ぐはっ…なんて…パワーだ…これが…神の力なのか!?)


…多分違う。


「これこそ我が流派の片割れ…セクシーコマンドー!

「せ、せくしー?(汗)」


ホーリー様は嬉々として言い放つ!


「…むう…敵に隙を作る…フェイントを極めた流派だ。」

「フェイントを…極めた…!?」


「達人同士の試合では、敵の隙を見つける事は困難だ。」

「まさか…無いのなら作れ…とでも言うのか!?」


「そうだ、現に貴様はスキだらけだったぞ?」


…まあ、よくアレを伝えている物好きが居た物だが…。(汗)

確かに、実力さえ確かなら、かなりの戦力を持つ流派…かも知れない。


(厄介だな…何をしてくるか解らないと言うのか!?)


…アキトよ、アレに対してマトモに考えるだけ無駄だぞ。

ま…言って聞くような奴では無いが。


ダダダダッ!!


その時…走り寄る巨漢!!…見た目と違い、かなりの速度だ!

そして、眼前まで来ると…突然後ろを向く!!


「何をする!?」

「…これを受けられるか!?」


ズルッ…

越中ふんどしが宙を舞う…。(嘔吐)


「いきなり尻見せっ!!」


…カッコーン(何故かししおどし)


アキト、放心!…無論、大口開けて顔には無数の縦線!(ヲイ)

意識が遠のくのが良く解った…。


「…むう!?」

「つ…ついで…ついでに…とん、ちんか…ん…。」

「この程度で(ヲイ)…笑止な!!」


…ドゴッ!!


汚い(下駄をはいてた方)足の裏に、顎を蹴り上げられるアキト!

その目の焦点が合っていないのは、蹴りのダメージが大きかっただけでは有るまい!!


「…がはぁッ!!」


…だが、ここで終わるようなアキトでは無い!

壁に叩きつけられそうになった瞬間に意識を取り戻し、壁に張り付く!


「…三角飛びの要領で…蹴りを食らわしてやる!!」


…そして、前を見たとき!

…巨漢の顔が目の前にあった…。


「残念だったな…一撃でカタをつける。…トドメだ!


…そのまま敵は上昇を続ける!

そして!!


いきなりっ…前見せっ!!」


でろろろ〜〜ん…!(嘔吐)

…アキトの鼻先五センチのところを、デロンとした『何か』が通りすぎる…。(滝汗)


…。(セピア色な沈黙)


≪アキト…アキト…こっちに…こっちに≫

(え…父さん…それとも母さん…?)


朦朧とする意識の中…三途の川の向こうで、誰かがアキトに手を振っている。

…あれ、でもこの時代に両親がいる訳無いし?


≪…来いッ…正しき友よッ!!≫


…北方だ−ッ!!(超爆)

しかも…ニヤケ顔でこっちに手を振ってる!!(汗)


「ウギャァアアアアッ…!!」


…ガクッ…どさっ


…アキトが地に落ちる。…叩かれた蚊のように。(笑)


…瞳孔は完全に開き、唇は真っ青。
その上…口から泡を吐き、全身はピクピクいっている。(汗)


…はっきり言って生命の危機だ!


…。


すたっ


ホーリ−様が哀れなアキトに歩み寄ってきた。

…何時の間にやらフンドシを締め直し、ジーンズまではいている。


…あるのなら最初からはけ!
…と、言う勇気がある者などいないだろうが。


…。


「勝負あり、か。…喜べ、お前は天に召されるのだ…さあ、天使の声が聞こえるだろう…?」


ゆっくりとアキトの屍(?)に語りかけるホーリ−様。

そう…アキトは確かに幻聴を聞いていた。


≪君の心も…ガラス細工の様に繊細だね…ふふふ。(ごくっ)


…まさか…天使って…。(汗)


「…き、キャインキャイン!!」
「むうっ!?」



その精神的な衝撃が、アキトの意識を引き戻す!!


のような泣き声を上げ、四足で部屋の隅まで逃げ去るアキト!!

そして、20メートルほど離れたところではっとする。


どうやら…本能のみで行動していたらしい。

…。

「ほう…私の攻撃を2度もマトモに食らって…良く生きていたな?」

「し…死ぬかと思った…。(泣)」


…その時、突然ホーリ−様の放つ雰囲気が変わる!


そして…アキトは、その雰囲気に覚えがあった。

何だったろうかと考えをめぐらせていると、敵はすっと構えを取る。


(これは!…木連式!?)

「…名前すらも絶えて久しき古流派だがな…威力はお墨付きだ…。


「…あの…せくしーなんたらはどうなんだ?」

「むう…あれはフェイントしかないのでな…攻撃自体は、腕力に頼るところが大きい。」


そう、攻撃自体はただ殴ったり蹴ったりしてるだけなのだ。


「…そうか…なら、ここからが本気だと考えていいんだな?」

「…好きにせよ。」


…そして、アキトも構える。

相手がいかな達人だろうが、流派さえわかっているなら戦いようはあるのだ!!


「行くぞ!!」
「むうぅぅぅっ!!」


ガスッ!!…ドガッ!!…バキッ!!


戦闘は一進一退を繰り返す!

少なくとも…敵は達人だ。…間違いなく!


…ゴスッ!!


その時…アキトの顔面にカポエラのような蹴りが入る!

…木連式には…こんな技は無かったはず!!


(がはっ…この技はなんだ!?)

「…なんだ、この程度すら避けられんとはな!!」


…敵は木連式では失伝された技すら使いこなしてくる!

例えそれが…基本技であっても、未知の技には対処が難しい物…。


そう…なまじ知っている為に、アキトは次第に追い詰められていくのであった…。


…。


そして…30分程が過ぎた…。


「ぐわっ!!」


アキトが弾き飛ばされた!!

…最初に…無防備な状態で受けた2発が効いて来たのだ。


「…今まで良くやった…が、ここまでだな。」

「はぁ…はぁ…。ぬかせ…まだ終わった訳では!!」


「…むう…ならば…これだけは使いたくなかったが…。」


…ごおっ!!

…ホーリ−様の周囲を、白い光が包み込む!!


「な、何だこれは!!」

「口伝だ。…知らんのか?」

「…うっ。」


…口伝・武羅威…。
…己の魂の色を発現せし昴氣をその身に纏う時、その者は人の身にして武神への道を歩む…。


…。


「…とか言ったな…つまりこれは、その者の心の色を映し出した物だ。」

「…心の…色を…?」


「…そうだ、人としての限界を越えた時、この力は発現する。」

「…限界を…越えただと?」


そこでふと、昔を懐かしむような顔をするホーリ−様。


「お前達に巻き込まれ…火星に墜落したあの日…私はこの力に目覚めたのだ…。神との出会いと共に発動せしこの力!
…これこそ神の加護を得た者にだけ与えられる聖なる力よ!



「…戯言をっ!!」

「…ならば…その身で試して見るかっ!?」


…ガスッ!!


「…ごぉっ!?」

「愚かな…昂氣に包まれた拳の威力は、通常とは比べ物にならん…。」


…腹に昂氣を纏った一撃を受け、吹き飛ばされるアキト!!

…間違いなく内蔵の一つもいかれている事だろう。


…そして…今度こそアキトは意識を失う…。


…。


戦い終わった室内。

壁のあちこちに穴が空き、崩れかけた天井から、日光がさし込んできている。

そこに立つのはホーリ−様ただ一人…。


「…むう…災いは潰えた…か?」


…そして…アキトに近寄る。


…アキトは…ナノマシンで光り輝いていた…!

…体内の全てのナノマシンが、生命維持と肉体の修復に当たっていたのだ。


そして、そのある意味神々しさすら感じる光景に…宗教家たる男はおののく。


…神々しさ…それは神の側の者にのみ与えられる物。

この男は、固くそう信じていたのだ…。


「…これは!…この男は…災いもたらす者がこんな神々しい光を放つ訳が!?」


…そして…恐ろしい想像に辿りつく。


「…まさか…私は何か、勘違いしていたのでは無いのか?」


…しかし…彼の想像もそこまでだった。

…。

「そこまでにして貰えますか?」

「…何奴!!」


…そこには…迷彩服に身を包んだ女が一人立っていた。

メガネをくいっと直しながら、女は続ける。


「堀井の叔父様、七瀬です…お久しぶりですね…。」

「むう!…北方の…辰彦の娘か。大きくなったな!!」


あんたら…知り合いなんですか?(回答:北方とホーリ−様は同門の出)


「はい、色々あったんですが…今は連合軍に所属しています。」

「…では、私を止めに来たのだな?」


「正確には友達を助けに来たんです。」

「…コイツか。」


「ええ、ここでテンカワさんを見捨てたら後悔すると思うんで…。」

「…だが、おとなしく渡す訳にも行かぬ…私は聖教団のホーリ−様なのだからな。」


「そうですか。」

「そうだ…。」


…この時…周囲の温度が2〜3℃下がった気がした。

そして…七瀬はメガネに手を掛ける。


「大佐に助けてもらった…って事もあるんで、彼は連れ帰らせてもらいます。」

「出来るのか?…君に。」


…さっ

メガネが外された瞬間…彼女の顔から表情と言う物が消える!

…そこに残ったのは…命令を実行するのみの、戦闘マシーン!!


「…命令実行…排除!!」


ザザッ!!


…そして、戦いが始まった。…激しい戦いが…。


その為…二人とも気づかなかった…アキトの変化に…。

そう…アキトの体から放たれる光に…蒼銀の輝きが混じっている事に…。

続く

::::後書き::::

BA−2です!…遂に50話の大台に乗った−ッ!!

あ…最後までキチンと続けますんでご安心を。(死亡時などは別)


…今回は少し多めにしてみました。

…でも、ギャグの部分は削ってるんです。
…前見せより怖いネタもあったんですが…(ある意味での)R指定にはされたくないし…。

ヒント:「アホリアン」コミックス十巻…だったかな?


…さて…聖教団が現れた理由が明らかになりました。

…第3話…あの時点で既に取り返しのつかない事になっていたと言う事だ!!
…最初はただ単に目撃者がいたと言うだけの設定だったんですが…大きくなったな…話題が。(汗)


…そして…昂氣発動!!
…最後のアキトは、間違いなく覚醒してます!!

…でも、相手がなぁ…。(笑)



いままで続けて来れたのは、感想などの応援を頂いた皆様のお陰です!

有難う御座います!!


…今後とも頑張りますんで応援宜しくお願いします!

続きをお楽しみに!!(…って偉そうにいえるレベルじゃない)


では!

 

 

代理人の感想

 

アレ以上・・・・・私には「前世紀最大の下ネタ」くらいしか思いつかないんですが(爆汗)。

まあ、元々少年誌に載ってたネタだし、大丈夫でしょう ・・・・・・・・・・・・多分。

それは置いておいても今回はいつもにも増して爆笑させていただきました。

やっぱり下ネタというのはギャグとして捨てがたいものがありますね〜(爆)。

 

そして七瀬さん復活!

個人的に好きなので嬉しい限りです。

旦那さんや子供とは再会できるんでしょうか?

 

・・・・・・・・・今思ったのですが、ひょっとして南雲さんもホーリー様と同門(核爆)!?

 

 

追伸

まぁ、「ANGEL」には違いないし(核爆)