機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー
世紀を超えて
第54話 戦いの足音
…ここは大佐の家。…マスミは息子を連れ、ここに来ていた。
「大佐…いえ義兄さん。お元気そうで。」
「ああ、マスミ君。…アキトには、また大変な任務を押しつけてしまったな。」
心底すまなそうに話す大佐。…だが、
「…いえ、それほど苦労したようにも見えませんが。」
「そうか?…何故解る?」
「…そこに居ますし。」
「な?」
…シュゥゥン…
ボソンの光が、大佐の背後に輝いている。
…そして…そこから出てくるのは…当然アキト達だ。
「よ、兄貴…。」
「お元気ですか!?」
…ラピス…猫かぶり。
「よ…アキトにラピス君…首尾は良い様だな?」
「ああ、大丈夫だ…。」
だが…アキトの様子がおかしい事に大佐が気づく。
「…ん…どうした?」
「…来るぞ…月の奴等が。」
…。
アキトと大佐は月の侵攻の件について話し合って居る。
…連合軍の方も情報は掴んで居た様だ。
そして…その横では…。
「…うわー、赤ちゃんの頃…アキラもこうだったんだよ…。」
「おねーちゃんは?」
「う…実は…知らないんだ…。(汗)」
…大佐の子供を、ラピス達が囲んで居た。
…大佐はあの後、カズミ・レイナード准尉と結婚、一児をもうけた。
まあ、色々と…あったらしい。(爆)
因みにその場合、メグミがどうなるのか凄く心配だが…。(汗)
…ま、今に始まった事では無いし…。(汗)
…。
…横でのラピス達のやり取りを、横目で見ながら苦笑しているアキト。
正直…悪い気はしない。
…だが、大佐との現実的な話は…決して楽観できる物ではなかった…。
「…敵の戦力は不明だが…こちらにもエステはある…それほど不利にはなるまい。」
「ああ、だが…山崎君が居なくなってから、量産が出来なくなって困っている。」
…山崎は、月側と互角に戦える分のエステバリスを作った後、アキトの依頼で何処かに消えた。
…絶対的な戦力は…連合…地球側の方が圧倒的だ。
出来れば力が拮抗して、睨み合って居る内に解決方法が見つかれば良い…とアキトは思って居たのだ。
…だが…それで納得が行く事など無いことを…アキトはまだ気づかない…。
実際…新兵器を持った権力者を…誰が止められるのだろうか?
…。
「…アキト…上層部の意向を伝えねばならん。」
「俺にも出て来いと言うのだな?」
「ああ…敵が来たら迎撃後…そのまま月に攻め入るんだそうだ…。」
「…全く…困ったもんだ…。」
はっ…と、呆れるアキトと、苦笑するしかない大佐。
「ま、仕方ないだろう…頼むよ。」
「了解…仕方ないな…本当に…。」
…しかし…アキトはその選択を後悔する事になる…。
…アキトは気づいていまい…。
…この戦いが…アキトにとってどんなに辛い物となるかなど…。
…。
…そして…月面では…。
…。
…ここは旧連合軍・月面司令部…。
今は独立派…月面軍の本部となっているこの基地で、ある叙任が行われて居た。
…壇上に上がる一人の男…。
…そして月面独立政府の代表が、彼に一枚の委任状を手渡す。
「…白鳥五十六殿…貴殿を地球攻略軍の総司令に任命する…。」
「はっ…。」
「…地球と対等になる為…今回の作戦を必ず成功させて貰いたい。」
「…。」
「…貴方は今は亡き、『黒帝』の親友…。必ず仇を討ってくれる物と確信しています…。」
「…はい。」
わぁぁあああああっ…
…周囲から歓声が上がる…。
この日、地球攻略軍の司令官に白鳥五十六が任命され…同時に地球攻略作戦がスタートした…。
…。
…地球攻略軍旗艦…その艦長室。
「…全く…困ったもんだな…弦悟郎よ…。」
「…俺をその名で…まあいい、確かにそうだ…。」
…白鳥と月臣がぼやいている。
アキト謀殺の事実を知る二人としては…正直、白けた感を拭えないでいるのだ…。
「…確かに、テンカワさんの仇は討ってやりたいが…。」
「…その場合、こっちの上層部も叩く事となるからな…。(苦笑)」
…アキト生存を知っている月臣だが…まだ、誰にも話しては居ない。
…言うと大変な事になるのを、彼は誰よりも知って居たのだ…。
「…だが…アイツだけは叩いておきたい…。」
「五十六…誰だ?」
「あの…テンカワさんの偽物…『黒き皇帝』とか言う奴だ!」
「…。(汗)」
「全く…地球の奴等はそっくりさんまで使って…テンカワさんの名声を使った悪質な行動だ!!」
「…ま…なんだ…気にする事は無いだろう?(汗)」
「月臣…お前は良いのか?…テンカワさんが汚されて居るんだぞ…!!」
「…いや…まあ…な…。」
「…独身のまま死んだアキトさんと違って…あの偽物には妻子まで居るそうじゃないか!!」
ぶばぁ…!!
…飲んで居たコーヒーを吹きだす月臣。
「…どあっ…汚いぞ!!」
「ま、まて五十六…本当か!?」
「ああ、軍の機密情報にあった…相手はあのマスミさんだそうだ…。」
ガクッ…
今度は顔面から床にダイブする月臣。
「…どうした…重力制御が壊れたか…?」
「…いや…ちょっとな…。」
「…とにかく…奴だけは討たねばならん…その為に今回の任務を受けたんだしな!」
「…そ、そうか…。」
「ああ…ま、大丈夫さ…こちらにはマーズガンガー3がある!!」
「…俺から取り上げた…な…。」
「う…まあ、正義の為…許せ!」
「…いいけどな…実際。」
…なお、マーズガンガー3とは…リモニウム2号機に与えられたコードネームである。
1号機はアキトが乗って居た物で、今はマスミの手に渡った『ラティフォリウム』。
2号機が、この『マーズガンガー3』である。
なお…白鳥は当初3号機(マーズガンガーV)に乗って居たものの、
初陣で大破。
…今は火星の地でスクラップとなって居る物と思われる…。(26話)
「…まあ、地球の島一つでも取れれば…地球もこっちを認めざるをえまい…。」
「…そう上手く行けば良いがな…俺は疲れた…少し歩いてくる…。」
「おいおい、まだ何も…おい……。」
…。
そして、月臣は人気の無い通路から星空を眺める…。
(まったく…ナツメ達の事をほったらかして結婚だと…?)
(…しかも子供まで居るとはな…。)
月臣は…ほんの少し…アキトに同情した。
…え?…何故に同情!?
(その上…アムは行方知れずだしな…。)
(…さて…テンカワよ。…どう言い訳する気だ…?)
…そして、月臣は一筋の冷や汗を掻いた。
更に…今後の事を考えて…気が遠くなった。(笑)
…。
…その頃…白鳥は火星のナツメと通信していたりする。
…実は、月臣と白鳥は…火星が月に逆らわないという意思表示の為に、月の軍隊に参加して居たのだ…。
『悪いわね…単身赴任させちゃって。』
「いえ…妻も解ってくれている筈です。」
『…こんな時…アキトが生きてれば…なんてね。…あはっ、愚痴よね…。』
「…ご心痛…察します。」
…事実、ナツメの目じりには涙が溜まっていた。
『…まあ、4年も前だけど…アタシには…アキトは何処かで生きてる…って気がしてならないの…。』
「そうですか…いえ、故人をしのぶ心は必要ですよ…。」
…それを聞いて、ナツメはフッと自嘲的に笑った。
『…アキト…か…。結局、アタシはアキトの寿命を縮めさせてただけだったわね…。』
「まさか…あ、そうだ…テンカワさんと言えば…地球に偽物が居るそうです。」
『アキトの偽物…務まる奴なんて居るの?』
「居る訳ありません…彼の名声を汚す輩は…私が必ず倒して見せますよ。」
『うん…頼むね。…あ、オチビちゃん達からの応援メッセージがあるよ…。』
「…ほう?」
…。
『…いっせーのーで…』
「ん?」
…画面の周囲に子供たちが集まってきて…、
…。
『ハクチョウのおじさん!』
(は、ハクチョウ!?)
…ザ・勘違い!
この日の白鳥の表情は…恐らく末代までの恥と言えるほどの物だったろう…。
…ガビーンの上、縦線・鼻水・顎外れの三点セット!
まさしくギャグキャラである…。(笑)
『小父さん…お仕事大変でしょうが、頑張ってね!』
(…お、オジさん…。)
最後に、3歳程度の女の子がその言葉で締めた時…白鳥はと言うと…。
…もはや息も絶え絶え…。…哀れである。
『…小父さん?』
「…お、オチビちゃん…私は…まだ小父さんじゃあ無いよ?」
『…私だって「オチビちゃん」なんて名前じゃないもん!』
「…へ…?」
『れでぃに対してしつれーです!』
「の…ノォォォ…。」
『ぷぷ、ゴメンね…白鳥君…でも貴方の負け。』
「な、ナツメさんまで…ぁぁぁ…。(崩壊)」
子供相手に完全にのされる白鳥。
…こんな奴に一軍を任せて…本当に大丈夫か!?
…。
…なお、月臣が戻ってきた時…既に通信は切れていて…、
某ボクサーの様に、真っ白に燃え尽きた白鳥だけが、呆然と椅子に座って居たと言う…。
…だが…そうしている間にも…彼等の眼前には、地球が大きく映し出されようとして居たのである…。
…戦いの日は…近い。
続く
::::後書き::::
BA−2です。
今回はインターミッション的な話でした。
ですが…敵はかつての友人達!
…そしてアキトよ…マスミとの事がナツメにばれたらまずいぞ!!
…アキトの運命やいかに!(笑)
…こんな物ですが、応援頂ければ嬉しいです。
では!
代理人の感想
やはりええコンビやのう(笑)。
弦悟郎がギャグキャラに落ちれば五十六もキャラを崩壊させる。
これぞ麗しき友情・・・・ってなんか違う(爆)?