機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー
世紀を超えて
第75話 始まりが再び(中編)
…2度目の"旅立ち"が近づいている…。
…恐らく、殆どの人はこの現状に至るまでの戦いを知るまい。
旅立つ艦…その名はナデシコ。
だが…あるものは偏り、あるものは不足した情報をもつ現在において…その旅立ちは想像以上に大きな意味を持つものになろうとしていたのである…。
…。
運命の日…朝、ミスマル邸。
「おーい、ユリカ…もう時間だぞ…。」
「はーい、お父様ー。」
…ミスマル・ユリカ。
運命の女性…彼女は何も知らず…前回どおりの行動をしている…。
…様に見えた。(ヲイ)
「あのなユリカ…もう時間が近いし…急ぎなさい」
「大丈夫!…荷物はジュン君に持っていって貰ってるから!」
…待てい。
「おお、そうかそうか…だが、式典に間に合うのかね?」
「お父様…ヘリコプター呼んでるから間に合います!」
…チョット待てって言ってるでしょ!?
それは拙いってば!!(汗)
…既に、出会い自体が起こらない可能性が出てきた。(汗)
そして…その頃ジュンはと言うと…。
「よし!…荷物は全部ナデシコに置いた。…くくく、出会いさえなければっ!!」
…全部お前の仕業かい!!
…なお、ジュンは時速60キロで、電線の上を疾走していた。
やはり、人外化は彼にまで及んでいたのだ…。
下から見上げる女子高生がうっとりしている辺り…"才覚"まで多少受け継いでいるのは間違い無い。
…アキトの集女性力に比べ、2割〜3割と言った所か。
結構な出世である。…良かったな、ジュン…。
…刺されて死ぬなよ。(ぼそっ)
…。
さて…その頃…。
「ふはははははは…僕は…運命に勝ったんだーーーーっ!!」
「じ…ジュンさん?…な訳無いですよね…第一あの人が電線走ってる訳無いですし…。(汗)」
…あ、たれルリ。(爆)
どうやら…ジュンは彼女達のご近所を疾走しているものと思われる。
なお、ついでに…ここは2階である事を追記しておこう。
「うぁ…知り合いなの?」
「いいえサフィー…。少なくともあの人は人外では無かった筈です。」
「ふぅん…。かきかき……あ、クレヨンとって欲しいの…。」
「…はいはい…。」
…ルリはサフィーと遊んであげている最中のようだ。
やはり彼女には良き姉と言う姿が良く似合う…。(個人的意見)
「ねー…お姉ちゃん?」
「なんです、サフィー…。」
「ネルガルのロボット…お名前なんていったっけ…。」
「エステバリスですか?」
「そう、それ…そうなの。」
「それが…どうかしました?」
「…お外にいるの。」
「…はい?」
…ぬっ…。
「お姉ちゃん…。(汗)」
「はい?」
「なんで…こっち向いて…腕…振り上げてるの?」
「さ、さあ?」
…ヴォゥン
「おめめが赤いの…怖いのぉ…。(泣)」
「あ、いえ…何だか壁に腕を叩き付けそうなのは何でなんでしょうかね…。(汗)」
…そしてルリは思い出す…。
(そう言えば…ネルガルに私の居所を教えましたっけ…まさか…。)
…そのまさかである。(笑)
…。
バキ…バキキィィィィィイイイッ!!
「うぇ…お家が…お家が壊れちゃうの…うぁ…びぇぇええええん!!」
「い…幾らなんでも強引過ぎじゃないですかネルガルってば!!(汗)」
がしっ…
「ふえーーーーん…!たーすーけてーーーーっ!!」
「ちょ…なんでサフィーまで!?」
…ついでに引っかかってしまったのだろう。
怖がってルリに引っ付いていた訳だし…。
「ひぐっ…おにいちゃぁーーーーーんっ!!」
「お、落ち着くんですサフィー!アキトさんはきっと来てくれます!!」
…だが、その間にもエステバリスは二人を引っつかんだまま、
街中をホイールダッシュで突っ走っていく…。
「あぅ…浚われちゃったの…お姉ちゃん…どうするの?…えぐっ…。」
「…泣かないで下さいよ…しかし…時間が無いとは言え…ネルガルも跳んだ強攻策を…。」
確かにぶっ飛んだやり方である。(苦笑)
だが…救いは直ぐにやって来た!!
「俺の家族をどうするつもりだコラァァアアっ!?」
「お兄ちゃん!!」
「アキトさん!!」
「無事か!!…今助ける!!」
…全速力で突っ走る陸戦フレームに併走しながら(!)アキトは手に持つスティンガーミサイルの照準を合わせる!!
「死ねぇぇぇえええっ!!」
どぅ…っ!!
「ふぇ…飛んでくるのぉ!!(汗)」
「あ、アキトさん…私達もいるんですよ!?」
「ぉぉおおおおおおっ!!」
…すたっ!!
アキトはミサイルより早く跳躍すると、ルリ達の捕まっているエステの手に飛び乗った!!
「ぬ…ぐぉぉおおおおっ!!」
ぎぎ…ガギギギギギギギギいい一!!
「さあ、指は緩めた…俺につか」
「お兄ちゃん…危ないの!!」
「なに…ぐぁぁああああっ!!」
…それは一瞬の出来事…。
陸戦フレームは片腕に持っていたラピットライフルを振るい、アキトをその銃身で弾き飛ばした!!
「アキトさ…きゃぁぁあああああっ!!」
「ひいっ!怖いの…こ゛わい゛…のーーーっ!!」
…その時…アキトの放ったスティンガーが着弾!!
ルリ達は上空に弾き飛ばされた!!
…がしっ!
が、何かの腕の中におさまる。
「う…誰で…え゛?」
…デルフォニウム…なんでここに…?
…だが、ルリには直感でわかってしまった。
「もしかして…クリムゾンですか?(汗)」
…その推測を裏付けるかのように、デルフォニウムはネルガルとは逆の方向に飛び去ろうとする。
…情報が漏れてしまったようだ…。
「うぇーーーん…怖いぃ…早いの…。(泣)」
「拙い事になりました…このままじゃ…。」
だが、ネルガルとて無能ではない。
空戦フレームの部隊が、迎撃に飛び立つ!!
ダダダダダダッ!!
クリムゾン側も負けじと戦車大隊を繰り出す!!
ドォーーーン!!ドォーーーン!!
更に何処の馬鹿かは知らないが、各国の諜報員やら暗殺者やらが次々と投入され…
…終いには爆撃機の大編隊が街を襲い、全てを焦土としていく…。
…って…そりゃ拙いだろ!!(汗)
…だが…主を失ったとある店内で、ラジオだけが律儀に放送を受信し続けていた…。
「本日10時過ぎ…防衛システムに異常が生じ各装置が暴走を始めました。…事態を重く見た政府は近隣に避難警報を出し、非常事態を宣言…。」
…全て事故で済ますつもりか!?
げに恐るべしは金と権力!!
…。
燃え盛る街…泣き叫ぶ人々。吹き飛ばされるサラリーマン…のヅラ(笑)
子犬の死体…崩れたビル…そして…火事場泥棒…。(ヲイ)
阿鼻叫喚の地獄絵図を尻目に、ルリ達は何度も連れ去られる先を変えつつ、現在はまたネルガルの元に連れ去られている最中であった…。
現在空戦フレームの持つ網に掛かっている二人は…じたばたしながら今後の心配をしている…。
「お姉ちゃん…怖いの…ひぐっ…えぐっ…。」
「…うかつでした。…馬鹿ですよ…ホントに…。」
ズズーーーン…
また一つ…民家が砲撃の流れ弾で崩壊した。…周囲に広がる焼け野原…。
最早…この町がもとの姿に戻る日はくるまい…。
…たった一言の伝言でこの有様。…伝説…恐るべし!
…そんな時である。
「…あ、お兄ちゃーん!!」
「アキトさん!!」
…どうやら…アキトが追いついたようだ…。
戦闘ヘリから誰か知らない人が蹴り落とされたところを見ると、何処かから奪ったものらしい。
ん…蹴り落としたって…!?(汗)
「おおおおっ!!…ルリ、サフィー!!お前たちは必ず助ける!!」
「アキトさん!!」
「アキトおにーちゃん!!」
ダッ!!…ガツッ!!
アキトはヘリからエステに飛び移ると、速攻でバーニアに蹴りを飛ばす!!
その結果…空戦フレームは体勢を崩した!!
「そらっ!!…妹たちは返してもらう!!」
だが…任務に忠実なパイロットは突然
…網を振り回し始めた!!
「ひゃぁあああああっ!?」
「目が回ります〜!」
「貴様ァアアあっ…何をするぅっ!!」
…ぽい!
「ああっ!?」
…そして…その網の中の二人は…近くのネルガルマークのヘリに向かって飛んでいく…。
どうやら…墜落を覚悟した後、とっさに周囲の味方を探し、投げつけたらしい。
だが…人間が入っていることを完全に忘れていたものと思われる。(ヲイ)
…。
ガシッ!!
ヘリの足の部分に捕まった男が、網を捕まえた…ジュンだ!
「ねぇジュン君。…何が飛ばされてきたの!?」
「ああ、ユリカか…。なんでも行方不明のオペレーターが見つかったんだそうだ…。」
…だが、ルリ達は完全に目を回している。
「…この子達がそうなの?」
「ああ、こっちのツインテールの子がホシノ・ルリだと思うけど…。」
…ガクン!
突然、ヘリが揺れた。
「え゛…ジュン君…今の何?」
「さ、さあな…何かが下に引っかかったみた」
がばっ!!
「妹たちを…返せェェえええっ!!」
「うわっ…何するんだコイツ!!」
ガキィィイイン!!
アキト(もしくは謎の怪人)のセイバーとジュンのレイピアが火花を上げる!!
なんと…アキトはこの距離をジャンプ(ボソンではない)してきたのだ!
「やるな貴様!!」
「ふっ…このジュン…こう見えてもフェンシング世界大会で4位の実力者だぞ!!」
4位…この中途半端さがジュンらしい。(爆)
ハイパー化も中途半端…。(爆)
「だが…実戦知らずだな!?…お坊ちゃんがっ!!」
「何っ!?…刀身が延びた!?…レーザーか!」
ガキィィン…ジュンのレイピアが飛ばされ、喉元にアキトのセイバーが突きつけられた…。
「さあ、妹を返してもらうぞ!」
「そうは行くかぁっ!!」
バキィッ!!
ジュンのパンチがアキトの顔面に突き刺さる!!
しかし…アキトは微塵も揺らいだ様子が無い…が、
カラン…
ヘリの床にバイザーが落ちた。
そこから現れた顔にジュンは驚く…!
「き、貴様…まさか!!」
「ん?…なんだ…俺を知っているのか?」
…緊迫する空気…!
だが…それを打ち破る素っ頓狂な声が…。
「…あれ?…何処かでお会いした事がありませんでした?」
「…何?…いや…知らんが…。」
ユリカ乱入!…だがそれが予想外の結果を生む!!
「隙ありーっ!!」
「しまったっ!?」
ばきっ!…ヒュー…ン
一瞬ユリカのほうを向いてしまったアキトは、ジュンによりヘリの外に蹴りだされた!!
…正に予想外の展開!(そうか?)
「今だっ…上昇!!」
「えっ…あれ?…ジュン君?」
「良くやってくれたよユリカ!」
「…あのー、あの人どっかで会ったような気が…。」
「…そう?(おかしい…火星からユリカが離れる時に見送りに来た幼馴染は女だと聞いたが…。)」
「…ま、いいか!…ジュン君遅れちゃうから急ごう!」
何処までもお気楽なユリカであった…。
…そうして…ヘリは行ってしまう…アキトを置き去りにして…。
…。
パチ…パチパチ…
未だ残り火の消えない街角…そこにアキトはクレーターを作り、大の字で横たわっていた…。
だが…のっそりと立ち上がると、銃の弾丸を確認し…ゆっくりと歩いていく…。
…行き先は…約束の地…サセボのドッグ…。
だが…その目的は違っていた。
彼は明確な戦意を持ってそこに向かおうとしている…。
狂いかかった歴史…修正する事は出来るのであろうか…。
続く
::::後書き::::
BA−2です。
連載75話にして、ようやくTV版のスタート位置に追いつきました。(苦笑)
既にアキト殺る気満々ですが、上手く治まる筈(予定)なんでご安心を。
…こんなのですが、応援頂けると嬉しいです。
では!
代理人の感想
ジュン君意外な大活躍!
願わくば、これが最期の活躍でないことを(核爆)!
・・・・・いや、だってさ、普段目立たない人が無理に目立つと・・・・ね。
ちなみに「ハイパー化も中途半端」には爆笑させていただきました(笑)。