機動戦艦ナデシコ  アナザーストーリー


世紀を超えて

第98話 すれ違う意思(おもわく)・重なり合わない精神(こころ)







…風の音が聞こえる…。

それを最初に気付いたのは、リョーコだった。


「…おい、コロニーに風が出てるぞ…?」

「…穴が空いたんだね、きっと。」


それに合わせるかのように…今までじっと屋内に隠れていた一般市民たちは、

我先にとばかり逃げ出していく…。


「…まるで沈みかけた船から逃げるネズミだな…。」

「意外とその通りかもね。…もうここに住みたいなんて思う奴は居ないよ。」


…今回長々とシリアスモードが続くイズミがそんな風に言う。

事実、脱出艇が次々とサツキミドリを飛び立っていた…。


いの一番に逃げ出したのが守備隊長である事を除けば、

おおよそ当然の人間心理である。


…。


気が付けば、ナデシコ関係者を除いて殆どがサツキミドリから脱出していた。

…そして…アキト達にも指令が下る。


『アキト!…もうここは放棄するんだって!…アキト達も早く逃げて!!』

「艦長!?…だが…目の前のデカブツはどうする!?」


通信機越しにアキトが怒鳴る。

…因みに他の人には通信すら寄越さないユリカさんであった…。(苦笑)


『貴方が無事なら後はどうでも良いです!!』

「…凄まじい暴言だな。…だがまあいい、了解した。」


…漫才のようなやり取りだが、コロニーを一基放棄するのだ。

今まで受けた被害でコロニーが危険な状態である事は容易に想像できる。


…。


「…という訳だ。…お前達は先…行ってくれ。」


…事も無げに言うアキト。

だが、その意味を理解したコウが食って掛かる。


「馬鹿な!…一人では死にに行くような物です。」

「放棄するならどれだけ壊しても問題ないだろう?…それに、お前にはやってもらうことがある。」


…その時、コウの機体に軽い衝撃が走った。


「…アー君。…死んじゃ嫌だよ…。」

「…そういう事だ。…枝織ちゃんを頼む。…スバル達は護衛を頼むぞ…!」


「…一人でどうにかなるのかよ…。」

「時間稼いで逃げるだけだ。…一人のほうが気楽さ。」


それを聞いて、ヒカルが手をポンと叩く。


「…そっか、そうだね。…リョーコちゃん、早く行こう…その方が良いみたいだし…。」

「…あ、ああ…。」


だが、リョーコの頭からは、漠然とした不安が消えなかった。


…そして…時折無意識に見せる表情が妙に自分達に優しげである事に、

…言いようの無い違和感を覚えるのだった。


…。


…ガチャン…ガチャン…。


…コロニー内部の町並みをエステが4台並んで走っている。

アキト一人をしんがりに残し、彼らは一路ナデシコに向かっていたのだ。


「…大丈夫ですかね、テンカワさんは…。」

「お兄様ならそうそう遅れを取るとは思えません。…ただ。」


不安げな語尾に反応したのはリョーコだった。


「…ただ…何だよ。」

「…あのお兄様が、逃げる事を前提とした戦術を取るとはとても思えないんです。」


「それってどう言う…。」

「…一対一なら、負ける事はまず無いと断言できます。」


…その時、枝織が口を挟んできた。


「…待ってよ。…あそこには他にも敵が居るんだよ…?」

「…やはりですか。…待って下さい、敵の数は!?」


「…小さめの石版が一枚。」


「…も、モノリスがあるんですか!?…一体何時の間に!?」

「馬鹿な…死ぬ気ですかあの人は!?」


…ヒスイとコウの顔色が変わった。それがどんなに恐ろしいか理解しているのだ…。

…何故そんな事を知っているのかは不明だが。


「…な、なあ…そのモノリスって一体…。」

「要はチューリップみたいな物です。」


…キキッ!

リョーコの赤い機体が急ブレーキをかける。


「おい!…それじゃあ敵は幾らでも沸いて出るって事かよ!?」

「…スバルさん!?…何処に行くんです!」


「…アイツの援護に行く。…ヒスイって言ったか?…お前の兄貴は必ず連れ帰るさ。」

「…無茶です!…お兄様ならいざとなったらCC持っている筈ですし…ああっ!


…ヒスイの声は届かなかった。

リョーコはきびすを返し、戦場に舞い戻っていく…。


…。


「…あーあ、行っちゃった…。」

「馬鹿な事を…お兄様だけならともかく…足手まといになるだけなのに…。」


「…何にせよ、私達に出来るのは急いでナデシコに辿り着く事だけですね。…くっ。」

「そうだね。…ま、リョーコなら何とかするさ。…真面目にやるのも疲れたし…急ごうか。」


…。


そして…コウ達と別れ、アキトの元に舞い戻ったリョーコは…、

…絶句していた。


「…な、何だよこれは!?」


…ウジャウジャウジャ


見渡す限り敵・敵・敵…。

バッタ程度の敵だがその数が尋常ではない。


「100や200じゃねぇ。…長い時間かけて潜伏してやがったな…!」


そしてふと気付く。


「…て、テンカワの奴は!?」
馬鹿野郎!!…なんで戻ってきた!?」


全身バッタに張り付かれている状態ながら、アキトは戦闘を継続していた。


「だってよ…お前一人じゃ危険だと思って…。」

「ぼおっとするな!!…危ない!!」


「え?」

「後ろだ後ろ!!…ちっ!


…ゴオッ!


…リョーコが驚き、戸惑った一瞬の隙。

それをつく形でバッタが一匹突っ込んできた…!


「…しまった!?」
「…糞ォッ!!」



…ゴスッ!

ブラックサレナがリョーコ機を庇うように突っ込む!!


「テンカワッ!?」

「…ぐおっ!」


…ゆらっ

アキトが体勢を崩したのを待っていたかのように、アキトに群がるバッタ達…。


「ぐぉぉぉおおおっ!?」

「…あ、お、俺の所為か!?」


…そうこうしている内にも、ブラックサレナはバッタ達の波に揉まれて見えなくなっていく…。

そう、まるで蟻地獄に飲まれた蟻のように。


「…あ、あ…あああ…。」


…自分がここに来たのは間違いだった。

リョーコがそれを肌で感じた正にその時…、


…ごぉぉぉおおっ!!


「…!…あれだけ呆けるなって言われたくせに…俺って奴は!!」


まさに一瞬の差!

正気に戻ったリョーコが横っ飛びをしたその時…、先ほどまでの場所にバッタ達が殺到した!


「…冗談じゃねぇや。…自分のポカは自分で片つけないとな…!」


…ラピッドライフルを敵の群れに撃ちかけるリョーコ!

だが、あっさりと弾かれる。


「な…なんて分厚いフィールドだよ!?」


…だが、そんな事を言ってみても何も始まらない。

今の攻撃に反応した10数機が、大型ミサイルをリョーコに向けた…!


「…しまった!…まずい!!」


…至近距離からの一斉射撃!

この数ではフィールドも殆ど意味が無い!!


ぱかっ


開かれたバッタ達の背中から覗くミサイル…。

…背後は壁…逃げ場は無し…!


「そんな…こんなにあっさりと…!?」


…絶体絶命とはこう言う状況を言うのだろうか…?

だが、その時…声が響く!!


「前だ!・・・敵の群れに突っ込んで!」

「…え?…あ、ああ!!」


…深く考える暇はなかった。

リョーコはウゾウゾと動くの中に機体を滑り込ませる!


そして…それとほぼ同時に…ミサイルが一斉発射された…!



…。



…リョーコの目にに閃光が走り、耳には爆発音が聞こえる。

そして一瞬遅れて衝撃波。


「うわああああああっ!?」


…吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる…。

だが、機体自体への損傷は軽微…。


「バッタ達に埋もれてたからな…奴らが盾になったのか…?」


…見ると、外部に露出していた片腕が無くなっている。

更に、肩口に引っ付いていたバッタが足を残して四散していた…。


「…どうやら、上手く行ったみたいだ…な。」

「テンカワッ!?」


…ブラックサレナは、未だ敵の大群に押しつぶされたままだった。

だが、かなりの数が爆風で吹き飛ばされ、その頭部は外を覗けるまでになっている。


即席で考え付いた割には良い作戦だったと言えよう…。


「よし、じゃあ今出してやるからなテンカワ!」

「…ま、待った!」


…ゴキン!

鈍い音がリョーコ機を包む。


「…え!?」


…グラッ


突然崩れるバランス!

リョーコが不審に思う間も無く、画面いっぱいにエマージェンシーが響いた…!


「…なっ!?…関節部分の損傷だと!?」


…先ほどの爆風は、大半をバッタ達が受け止める形になった。

だが…露出していた片腕は吹き飛び…また、装甲の施されていない関節部に負担が集中したのだ。


「両足が…死んでやがる。……まずい!!」


…ドシィィン!!


倒れこむリョーコ機。

そして、それに気付いたのか…敵の本命が動き出した…。


ふわっ…


巨大土偶…遮光が動き出す。

そして…動けないリョーコの機体にじわじわと迫ってきた!


「うわっ!?…く、来るなぁっ!!」

「くっ…機体を捨てるんだ!!」


…敵に押しつぶされたままのアキトの指示の元、リョーコは急いで脱出する。

見ると、敵はある程度の位置で止まり…エネルギーを集め出した!


「…なっ!?」

「離れろォっ…重力波反応…
…グラビティブラストだっ!!」


「…冗談は止せぇええええっ!!(半泣き)」


だが、それは冗談でも何でもなく…、

…遮光の胸部から…重力波が…放たれた…!




…。(閃光)




…光が収まった…。

凄まじい波動で周囲の町並みが破壊される中…リョーコは無事に瓦礫の下から顔を出す。


「…じ、冗談じゃねぇぜ…。」


リョーコの機体はバラバラにされ、修復不能なまでに痛めつけられていた。

…いや、原型が残っている分だけ奇跡なのだろうが。


「…アイツは…おい、テンカワ!…そっちに向かってるぞ!!」

「分かってる!!」


…ふわりと浮いたまま、アキトの元に巨大土偶は進んでいく。

それを見て、どうにかしないと…と考えをめぐらすリョーコであったが…、


…それ以前に…彼女は忘れていた。

自分の方が、余程危険な状況である事を…。



…ドン!


それは、本当に一瞬だった。

今までも一瞬で片がつくことは多々有ったが、今回のはそれに輪をかけて酷い。


(…あれ…何で俺…宙に浮いてるんだ…?)


リョーコの意識はそれを最後にブラックアウトした…。

最後に…視界の隅に、自らに体当たりした一機のバッタの姿を写して…。



























…。












「…。」


アキトの視界に…弾き飛ばされたリョーコの姿が写る。


その瞬間、思考が停止した。

そして…何故何時も味方に死なれないといけないのか?…そんな風にぼんやりと思った。


…何故何時も力が足りないのだろう…と、昔の事をふと思い出す。

何時もそうだった。…何時でも、どれだけ力があっても足りた事など無い。


…何時も、そう…
いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも………。



…その時…アキトの脳裏に見覚えの無い光景が写し出される。

ユリカのような銅像…いや、銅像のようなユリカ。


…その瞬間…彼の中で何かが弾けた…!


…。


「リョーコちゃん!!」


…ゴォッ!!

その叫びに呼応するように…周囲に張り付いたバッタ達が剥がれ…吹き飛んでいく!


…駆け出すブラックサレナはリョーコを倒したバッタを踏み潰しつつ彼女の元に向かう。

そして、弾き飛ばされたリョーコの元に辿り着くと…急いで拾い上げた…。


「…。」

「良かった。…たいした怪我は無いみたいだ…。」


リョーコの無事を確かめるアキト。…幸い体当たりはかすっただけだったようだ。

そして…安全そうな場所にリョーコを下ろすと…遮光の方に向き合う。


「…借りは返させて貰う。」


アキトはそう言うと、ハンドカノンを捨てる。

そしてそのまま…正面切って突っ込んだ!!


「馬鹿!…またグラビティブラストがくるぞ!!」


…その時、意識を取り戻したリョーコが叫ぶ。

だが…敵の動きの方が一瞬速い!!


…ゴォォォオオオッ!!


重力波がサレナを飲み込んだ…。

遮光の斜め後方から見ていたリョーコにはそう見えた。

…事実、黒いパーツの欠片が随分な数弾け飛んでいるのがわかる…。


「…テンカワ…馬鹿野郎………え!?」


…ぶわっ…メキィッ!!

重力波の中からブラックサレナの腕が伸び出て、遮光の腹を貫いた!!


「無事だったのか!?」

「…うおおおおおおっ!!」


…アキトの叫びと共にブラックサレナが重力波を振り切って現れる!

機体中が軋み、装甲が剥がれ落ちかけては居るが…それでも戦力が減退した様子は全く無い…。


…ガシッ!!

アキトは遮光の腰を両腕で抱え込むと、そのままの勢いで持ち上げる…!


「…何をする…つもり…。」

「リョーコちゃん…急いで離れて!!」


「へ!?」


…いきなりの事に面食らうリョーコだが…すぐにある事に気付く。

アキトに捕まった状態の敵機の動きがおかしい…。


「…まさか…!」

「そうだ!…コイツは自爆する!…おかしいと思ったんだ!」


…そう。考えてみればアキト達がバッタの相手をしている時…、

自分自身もかかって来れば殲滅は容易かっただろう…。


…だが、それをしなかった。

ならば何らかの意図があってしかるべき。


…元々自爆する気だったならそれも判るという物だ。

機体内部に仕掛けた爆発物を、不用意に爆発させる訳には行かなかったのだろうから…。


「…でもよ、何で今!?」

「多分、元々の任務は中枢部か何かの破壊。…でも、俺の攻撃でそれが不可能になったんだろう。」


…つまり、どうせ爆発するなら敵ごと…と言う訳だ。

だが、アキトにとってそれはある意味好都合だった…。


「…どうせだから、こっちもそれを利用させてもらうさ…幸い敵の出現元は分かってるんだ…。」


…そう言いながらアキトはとある壁に近づく。

しかも良く見ると…色が少しばかり違う…。


「まさか、モノリスの形状を利用して建材に化けてたとはね…。」


…そして…グングンと機体温度の上がる遮光を持ち上げたまま、

吊り出す様にその壁…モノリスの前に立つ!


「さてと、ここいらでいいか。…タゲテス!…コクピットを機体より離脱!!」
『了解。…!!


…ガシッ!!


その瞬間、遮光の方もブラックサレナにしがみ付いてきた…!

がっちりと挟み込まれ、これでは…離脱など出来ない!


「…読まれていた!?…人工知能か何かの筈なのに…!?」

『敵機体…エステバリス系データ取得の可能性有…対脱出プログラムが起動した模様』


…。


そして、その頃…。

リョーコは識別信号が消えた事に心配して戻ってきたヒカル機に同乗した所であった。


「…おい、アイツ…向こうからも掴まれてるぜ!?」

「完全に道連れモードだねぇ…でも、助けにも行けそうに無いし…。」


…そして…白熱…閃光!!



…ドゴォォォォォォオオオオン!!





…。






…ゴスッ!!

目の前に飛んできた黒い物に押しつぶされたヒカル機が起き上がる。


…既に、周囲区画はかなりの数が崩壊していた。

だが、幸い今回は空気漏れが無かった…爆発が予想より小さかった事も幸いしたようだ。


「いたたたた…。」

「…おいヒカル、これ…!」


…ごそっ

良く見るとそれはブラックサレナのショルダーアーマー…。


「…まさか…!」

「あ、あれ!」


…ふと顔を上げる。

視線の先には破壊され、ささくれ立った区画が一つ…。


そして…そこにただ一機、半壊したブラックサレナが佇んでいた…。


「…あの野郎、心配させやがって…。」


…その時…ボロボロだった機体が崩れ落ちた。

そして…その内部からは、ほぼ無傷な一機のエステバリスが現れたのである…。


…それはブラックサレナとは対照的な、純白の機体であった。


「…驚いたー。…あの黒いの…追加装甲だったんだ。」

「…みたいだな。…ったく、テンカワの野郎…。」


…憎まれ口を叩きながらも、何処か嬉しそうに言うリョーコ。

但し、横でニヤニヤとしているヒカルに気付いては居ないが…。


そして…その直ぐ後に追いついてきたナデシコにアキト達は収容され…、

そのままサツキミドリを離れる事となったのである…。



…。


…あれだけの戦闘にも拘らず、全く無傷なコクピットの中…。

極秘回線で通信してきたプラスにアキトが話し掛ける。


「…そろそろ、『俺』が目を覚ます。…休ませて貰うぞ。」

『了解…時に小マスターには何と説明を?』


「…何時もどおり黙っていろ。まだアイツが知るには早い。」

『ですが、"自分の中の自分でない何か"に気付いておられるようです。』


「…先ずは木連を何とかするのが先決だ。…余計な事を考えさせる必要は無いと思う。」

『ですが…そうですね、せめて《大和》の最終目的だけでもお教えしては?』


「…太陽系の全住民を追い出しての移住…か。」

『次までにせめて御一考を。それと…一つの身体に二つの心…けしていい結果は生みません…。』


…それだけ言って通信は途切れ、ログも消去される。

そして…アキトもまた瞳を閉じる。…もう一人の自分に、肉体を返すために。


「…ん…俺は…一体…?」


その直後…アキト・ラズリが目を覚ます。


…だが、彼はどこまで気づいているのだろうか?

自らに宿る物。…それがこの歴史を狂わせた張本人…。

…自分の異なる可能性である『黒帝・テンカワアキト』であると言う事実に…。



そして…彼は知る由もあるまい。

黒帝の…結果的に、だが思わせぶりな行動が…周囲に様々な誤解を抱かせていると言う事実に。


…例を挙げよう…。


……ルリは…実は二人の区別がついていない。
…プロスは…アキト・ラズリを黒帝の偽名でしかないと思っているだろう…。
…ゴートは…どちらにしてもツボを売りつける気だろう。(爆)
…ユリカは…アキトは私の王子様…それ以外頭にあるまい。
…メグミは…この世界の場合では珍しく…アキト・ラズリの方がデフォルトだ。



黒い王子様は…新たなる世界での活躍で、黒い皇帝と呼ばれる事になった。

だが…一人で大事を背負い込んで、結果的に被害を拡大させる所は…、


…何も変わっていなかった。(爆)

…。


さて…アキト達が帰還したナデシコは、さっさとサツキミドリを離れる。

…また敵が襲ってこないとも限らないし、物資の補給も終わっていたからだ。


…大破、後放棄したリョーコ機と、追加装甲部分を失ったアキト機の惨状に、

ウリバタケが目を光らせ、プロスペクターが泡吹いてたりするが…。


…プロスの受難はこれに留まらなかった。(爆)


「…ユリカさん…これは一体どういう事でしょうか!?」

「…お、落ち着いて…カグヤさんってば!」


…ナデシコ格納庫…。

ここで、艦を失ったカグヤが怒りを露にしている。


…その理由は…。


「おーい、このパーツ…使えそうか!?」

「あ、ウリバタケ主任…そうですね、歪んではいますが…OKです!」


「…よおーっし!…やっぱ同型だから部品の互換性が高くて助かるぜ!!」

「…何言ってるんですか!!…私の艦を勝手にばらさないで下さる!?」


…カグヤ、解体!!

度重なる大破で補修部品を失っていたナデシコ…それに、大破したカグヤのパーツを使ったのだ。


…無論、勝手にだ!!(ヲイ)


「ううう…私の艦…私の艦…!!」

「カグヤ様!…ここは私にお任せを!!」


…そして勃発!プロスvsホウショウ!!

苦労人同士…己の誇りと自社の利益をかけた熱い論戦が続く…!


まあ…その背後ではヒスイが通信機で、
アカツキに
損害賠償を取り付けたりもしているが。(爆)


…アカツキの顔色はかなり悪い。

最後のプール金がどうした…とか、せめて自社株で勘弁…とか聞こえるが、きっと気のせいだろう。


「…という事で、片は付きました。…新しい艦を作る分は搾り取れましたよ。」

「…流石はヒスイ!…って何処行くの?」


「…忙しいんですよ私は!!」


…そして、ヒスイはパイロット控え室の方に競歩で歩いていく。

…本人的には急いでないように装っているつもりのようだが…バレバレだ。


「…アキト様の所にでも行く気かしら…はっ!アキト様!?

「…ああっ!…アキトは私の王子様なんだからね!!」


…カグヤとユリカがアキト目掛けて突っ走っていく。

そして残されたのは…。


「…私達って一体…。」

「会長…一体幾ら払ったんですか?…戦艦一隻…幾らすると…!!」


…燃え尽きた苦労人たち。(笑)


だが、プロスがアカツキと一緒に交渉すれば結末も変わっていただろう。

…それを考えるととしての役目を全うしたホウショウの勝ちと言えるが…。


…。


そして…明日香インダストリー関係者は…近くのコロニーへと向かう。

…そのまま地球に帰還するために。


「…じゃあ…元気でなヒスイ。」

コウさん…また…会えますか…?」


「…ヒスイ…俺を無視しないでくれ…!(泣)

「…それじゃあ、また。…あ、ついでにお兄様も。」


…打ちひしがれるアキト。(笑)

因みにコウはと言うと…突然パイロット控え室にやってきて、


「助けられたお礼に付き合ってください!!
 …あ、はしたないですか…じゃあ、
まずはお友達から!


…等といきなり言って来た少女に困惑しながら笑っていた…。(汗)

…。

そして…一方サツキミドリ。

…すっかり無人になってしまったこのコロニーに動く影が2つ。


「…置いてかれちゃったなぁ…ま、次の出番はナデシコ帰還後か…。」

「時に兄弟。…なんで僕まで弾倉に詰め込まれなきゃならないんだ…!?」


…あ、ハーリーズ。(汗)


「テンカワさんには僕らの区別がつかなかったんでしょ。」

「…だからって…枝織さん探してる僕をいきなり捕まえて、縛り上げるのは止めて欲しいな…。」


…横には廃棄されたハンドカノンの残骸…。
どうやら、発射される事すらなく放棄された為に、取り残されたようだ。


「…さて、地球に戻るか…。」

「僕は手近なチューリップで木星に帰る。…あの二人をナデシコに置いたままで不安だけど。」


…そりゃまあ…。(汗)

だが、その時二人に声がかかる。


「じゃあ、私が送ってあげましょう。」


「…え?…あ、アオイさん!?(兄)」

「…一体どうやって…って、黒帝の子孫なら跳躍ぐらい出来るか。」


…しかし、距離はともかく何でこんな所に…?


「…いや、ここが襲撃される事は知っていたからね…防衛強化を命令してたんだ。」

「「はぁ。」」


「でもまさか、発注した強化内壁に敵のモノリスが混ざってるとは思わなかったよ!…ははは。」

「「…マジですか!?」」


…コイツが壁の強化を命じなかったら、モノリスが建材に混ざる事も無かったと言う事か…。

全くもって迷惑な話である。


「まあ、そう言うわけで来てたんだ。…さて両方送りますか。…CC使うから掴まりなさい。」

「「…了解。(弱疲労)」」


…ここに居る理由にはなっていないが…何にせよ、ハーリー達は帰還手段を得たようだ。(汗)

そして、ボースの光と共に3人が消える…。


…。


「…行った…ようです…ね。」


…ごそっ

下の階層から一人の女が現れた。


「…ふふふ、流石にこの月読がいた事には気付かなかったようで…。」


…いや、こんな状態のところに人が居るなんて考えてる奴は居ないってだけだとおもうが…。

第一、この人は大和の重臣である。…なんでこんな所に居る…?(注:月臣では無いです)


「…ふふ、計算どおり…このコロニーは廃棄されましたね。…あのキグルミは予想外でしたが。(汗)


…どうやら、あの遮光も含め…何やら考えがあるようだ。


「さて、無人兵器ども…ここを地球圏移住の拠点とするのです。…けして気付かれぬように。」


…その一言を待っていたかのように無人兵器たちが現れ…次々と破壊された設備を修復していく。

…但し…ボロボロの外観は保ったまま…。


「…この世界にはあの忌々しい女提督も居ないみたいですし…今度こそ失敗は許されませんよ…。」


…そして…サツキミドリは大和の支配下におかれる事となる。

だが、地球圏でそれを知るものは…まだ誰も居ない…。


続く


::::後書き::::

BA−2です。

さて、遂に98話…もう少しで100ですね。


…大和が遂に本格的な行動に動き出しました。

…それが関係してくるのはまだ先ですが。


…さて、こんな駄文ですが応援していただけると幸いです。

今後も頑張りますんでどうか宜しくお願いします。


では!

 

 

代理人の感想

あー。一応コミック版を読んでいない方の為に追加説明しておきますと、

 

・・・と、思いましたが面倒臭いのでパス。(オイ)

 

作品についてはここでも読んで下さい。

 

ただ、月読っててっきりあの機動要塞とともに散ったとばかり思ってたんですが(笑)。