機動戦艦ナデシコanother 楔 kusabi  〜 第2話






 アカツキ・ナガレが、何を考えているのかわかりづらい、微妙な笑みを浮かべながらアキトを見ている。

 この時代のアカツキと出会うのは、アキトにとっては初めての経験だったが、その笑みが、未来のアカツキに比べ、まだまだ不自然なものであることを見抜いていた。

 相手に真意を悟られないための、仮面なのだ。

 若いアカツキが、ネルガルという大企業の会長になり、必要に迫られて身につけた、交渉術の一つなのだろう。

 しかし、はるかに食えない男に育っていた未来のアカツキと比べれば、アキトにとってはまだまだ与し易い相手だといえる。

「こちらの手の内は明かしたし、要求も伝えた。どうだ、悪くない取引だと思うが」

「どうだかねぇ。まだまだ、すべての手の内を明かしてもらえたとは思えないんだよ、ボクにはさ」

 そのアカツキの横で、エリナ・キンジョウ・ウォンが、きつい視線をアキトに向けている。

 しかし、その程度の視線は、アキトの黒いバイザーに軽々とはねかえされていた。

「エリナくん。ボクには憶えがないんだけどね、その第二世代マシンチャイルドの研究っていうのは、

 ホントにウチでプロジェクトが進んでいるのかな。

 たしか、マシンチャイルドの実験は、法で禁止されたはずだったよねぇ」

「そうですわね。我がネルガルで、そのような違法な研究が進められているという話は、

 私の耳にも入っておりません。何かの間違いだと存じますが」

 アキトは、冷たい笑いを吐き出した。

「とぼけてもムダだぜ。なんなら、取引という体裁はなしにして、脅迫と取ってもらっても結構なんだ。

 ただし、こちらとしては、今後もネルガルと……いや、アカツキ・ナガレ、

 あんたとうまく付き合っていきたいと考えている。

 あんたに、一方的な損をさせようってんじゃないんだ。

 ただ、二人のマシンチャイルドを、こちらに譲って欲しいだけ。

 代わりに提供できる、こちらの技術は、かなりの価値があるだろう?」

 そうなのだ。アカツキがその価値を認めながらも、あまりにも価値が高すぎるために疑いの念を晴らせずにいる、数々の技術。

 ナデシコ・シリーズの上を行く、情報戦略艦のデータ。

 高度に教育された、戦術コンピュータの実戦データ。

 携帯型ディストーションフィールド発生器。

 高い出力を誇る、小型のジェネレータ。

 人間が乗りこなせるのか疑問すら感じる、エステバリスの高機動型追加ユニット。

 ――そしてなによりも、ボソンジャンプに関する、正確なデータ。

 こんなエサを目の前にぶら下げられ、素直に飛びついてしまうことは、企業人としてのアカツキには、到底不可能なことだったのだ。

 あまりにも美味しい話すぎて、疑うことが当然であったが、アカツキはその道を自ら放棄することにした。

 小さく息を吐き出す。

「まあ、いいさ。キミの言う通り、第二世代プロジェクトは進んでいるよ。ナデシコ・シリーズのためにね」

「会長!」

 叫ぶエリナを抑え、アカツキは笑みを消した。

「ここからは、会長じゃない。ボクはアカツキ・ナガレ個人だ。そう思ってもらおうか」

 アキトは、小さく微笑んでいた。

 この決断の早さ。

 やはり、若かりしといえど、アカツキは、アカツキなのだろう。

「――あんた、何者なんだ」

「ずいぶんストレートだな。でも、残念ながら、それには答えられない。他の質問にしてくれ」

 ふん、と鼻で笑いながら、アカツキは長い前髪をかきあげた。

「じゃあ、こうしようか。これらの技術は、とてもじゃないが、今の地球の技術とは思えないんだよね。

 ボクたちネルガルの技術陣だってバカじゃない。それほど、他社の技術に遅れているはずがないのさ。

 でも、これはねぇ。はっきり言うと、ありえないだろう?

 技術なんてのは、大抵は平行進化するもんだ。

 こんな飛びぬけた技術が生まれる理由は一つしかないんだよ。

 つまり、この技術が地球で生まれたものじゃないってことさ」

 アカツキはアキトの反応を試しているようだった。

 もちろん、アキトがこの程度の揺さぶりに反応する理由はない。

「あんた、どこから来たのさ。火星か? いやあ、案外、木星あたりだったりしてねぇ」

 笑いながら言うアカツキだったが、その眼はまったく笑っていなかった。

 木星。

 アカツキにとって、このような技術が発生する土壌は、そこにあるとしか思えなかったのだろう。

 冗談に紛らわせ、こう問うていたのだ。

「おまえは、木星蜥蜴か?」と。

 この時代のアカツキは、すでに木星蜥蜴が人間であることを知っている。

 こんな疑いが出るのは当然だった。

「残念。外れだ。まあ、出身は火星だけどな。

 そうだな、例えば、火星の極冠あたりが故郷っていうのはどうだ?

 なかなか、傑作だろ」

 逆に反応を示してしまったのは、アカツキとエリナのほうだった。

「あ、あなた、いったいどこまで知ってるの!?」

「エリナくん!」

 アカツキの叱咤に、エリナはハッとなったが、もう遅い。

 アキトの知っている二人であれば、こんな簡単な誘導に引っかかるはずもなかったのだが、経験というものの重さをアキトははっきりと感じていた。

「ははっ! エリナさん、カワイイな!」

「バカにしないでちょうだい! 馴れ馴れしく名前を呼ばれる筋合いは無いわ!!」

 真っ赤になって怒鳴るエリナを見ながら、アキトは背を丸めて笑いを洩らしていた。

「いや、ごめんごめん。あんまり可愛かったんで、ついね

 ……で、どうかな、アカツキさん。

 俺、他にもいろいろ知ってるんだよ。でも、敵じゃない。

 それを信じてもらうしかないんだ」

 アカツキは、相手の男が、突然、長年の親友のような態度を取り始めたことに混乱していた。

 ――なんなんだ、この男は。

 底が知れなさすぎる相手に、アカツキは自分がいいように振り回されていることを、はっきりと自覚していた。

「信じてもらえると、本気で思っているわけじゃないんだろう?

 ここは、純粋なギブアンドテイクの関係でいくしかないかな。

 あんたは技術を、我々は二人のマシンチャイルドを。

 ずいぶん、こちらに有利な条件なんだがね。後で、文句を言われるのは御免だよ」

 アキトは、エリナの表情を楽しみながら、答えた。

「ま、もう一つ、教えておこうかな。

 そちらに提供する、情報戦略艦のデータなんだけどさ、データだけじゃないんだ。

 実際に稼動している戦艦が二隻ある」

 もう、目の前の二人から、驚きの言葉は出なかった。

 アキトはエリナの眼をじっと覗き込みながら続けた。

「まあ、その二隻のメンテナンスと補給が、もう一つの条件だよ。

 同時にそちらも実物のデータが手に入る。いい取引だろ?」

 アキトの視線をうけ、エリナは居心地が悪そうに身をよじっていた。

「でも……それじゃあ、こちらに有利な条件が増えただけじゃないの。信じられないわ!」

「うーん。そうだなあ。もう一つ、頼みがあるんだけどな」

 条件でなく、頼み、という言葉を使うアキトを、二人は不思議なものを見るような目で見ている。

「こちらにも、一人、マシンチャイルドの子供がいるんだ。女の子のね。

 その娘を、二人のマシンチャイルドと一緒にナデシコに乗せてやって欲しい」

 さすがに、アカツキも辛抱できなくなったようだ。

 いきなりテーブルを叩くと、立ち上がった。

「バカな! こちらに有利な条件が、増えていく一方じゃないか!

 なんなんだ、一体なにを企んでいる!?」

「もちろん――」

 アキトの声に、鋭利な刃物が加えられた。

「三人の安全は、絶対に保障してもらう。

 もしも、貴様らがなんらかの危害を三人に加えた場合、俺は、徹底的に貴様らを叩き潰す。

 ――できないなどと思わないことだ」

 アカツキとエリナは、目の前の男が自分達とは住む世界が違う存在なのだということを、はじめて知った。

 鬼気。

 そんな生易しい言葉では言いあらわせない圧迫感が、二人の体を完全に絡め取っている。

「まあ、いいけどな」

 いきなりアキトは、親しい口調に戻っていた。

「なんといっても、ナデシコなんだ。あの人たちなら、黙っていても三人を守ってくれるさ」

 アカツキは深く息を吐き出しながら、口をひらく。

「なにが目的なんだ。それだけは訊いておかないと、条件は呑めない。絶対にだ!」

「目的ね。信じてもらえるかな?」

「言ってみたまえ」

「――情操教育……かな?」

 アカツキは、ガクリとソファーに座り込んでいた。

「ウソなんだろ? 民間とはいえ戦艦だぞ」

「本当なんだよ。ま、いろいろあるのさ、こっちにもな。

 じゃあ、取引成立と思っていいかな?

 近いうちに、こちらからもう一度接触する。そのときには今の件、頼んだぜ」

 そう言い残し、会長室を出て行く黒づくめの男の背中を見ながら、アカツキは、今の自分が小さな一人の人間でしかないことを実感していた。

 役者が違うどころか、生きている世界が違う、そんな存在を知ってしまったのだから。

「エリナくん、一言いいかな」

 ぼうっとしていたエリナに、アカツキは声をかけた。

「なんでしょう、会長」

「――顔、真っ赤だよ」







 
『ルリちゃん航海日誌 FILE_02』


 ―― 2196年 1月 5日 [まあまあ、晴れ] ――


 ナデシコAが発進しましたね。

 アキトさん、大活躍だったみたいです。

 なんといっても、私たちの時代のアキトさんが、あれだけ特訓したんですから。


『まった、ルリ』

「なに。日記か日誌かなんて、まだ文句を言うつもりなの?」

『違う。人物の呼称についてだ。『私たちの時代』などという表現は厳密性に欠ける。

 テンカワ・アキトという存在が二人いる以上、それぞれの呼称を明確に分ける必要がある』

「あ、そうか。それなら、『私のアキトさん』と『まだ私のじゃないアキトさん』で――」

『拒否』

「む。――じゃあ、『私のことを愛してくれているアキトさん』と

 『これから私を愛してくれるアキトさん』なら――」

『拒否』

「ぬぬっ。それなら――」

『拒否』

「まだ言ってないよ、オモイカネ!」

『拒否』

「ぶうっ!」

『――色分けすることを提案する。

 我々の時代のテンカワ・アキトを黒アキト、この時代のテンカワ・アキトは

 そのままでいいだろう』

「私は?」

『バイザーから色を取る。ルリは白ルリだ』

「ハーリー君はバイザーを着けてないけど」

『この時代のマキビ・ハリを、小ハーリーと呼称するのが適当だろう』

「なんだか、いいかげん」

『他の人物も私が決めておいた。確認してくれ

   我々の時代のメンバー:

    テンカワ・アキト   > 黒アキト

    テンカワ・ユリカ   > 白ユリカ

    ホシノ・ルリ     > 白ルリ

    ラピス・ラズリ    > ラピス

    マキビ・ハリ     > ハーリー

    オモイカネ      > オモイカネC

    オモイカネ・ダッシュ > ダッシュ


   この時代のメンバー:

    テンカワ・アキト   > アキト

    ミスマル・ユリカ   > ユリカ

    ホシノ・ルリ     > ルリ

    ラピス・ラズリ    > コラピス

    マキビ・ハリ     > コハーリー

    オモイカネ      > オモイカネA

    オモイカネ・ダッシュ > 不在

  以上だ』

「――うーん、可愛くないかも」

『受理と判断する。記録を再開』

「オモイカネ、私の話、きいてる?」


 とにかく、黒アキトさんから特訓を受けたアキトさんは、もう無敵。

 とっても素敵でした。

 私は黒アキトさんが好きだけど、アキトさんにも、ちょっと、くらっときてしまいます。

 そういえば、いつのまにか、ハーリー君が、ナデシコAに乗艦していましたね。

 なにを考えているんだか。

 いえ、何を考えているのかは、明白ですね。

 過去の私に手を出そうなんて、いい度胸です。

 間違いが起きないうちに、歴史の歪みは矯正しないと。

 歴史を歪めてはいけませんから、多少の強引な手段も許されるはずですよね。

 歪みの元は、確実に排除するのが私たちの義務です。


『黒アキトも、ずいぶん歴史に介入しているが、いいのか』

「ふっ。アキトさんのやることならば、どんなことでも、私は喜んで受け入れます」

『そうだろうな。続行』


 ま、それは後で実行するとして、ナデシコAでは、そろそろムネタケ副提督の反乱が起きる頃です。

 ナデシコごと、私たちを連合宇宙軍に引き渡そうとしたんですよね。

 ろくでもない人です。

 ユリカさんがマスターキーを抜いてしまったので、ナデシコは自力航行ができません。

 さらに、ユリカさんとジュンさん、プロスさんが、ミスマル提督と会談するために、連合宇宙軍の戦艦に連れて行かれてしまうんです。

 でも、意外と艦長の自覚があったユリカさんが、うまくその場を切り抜けてくれるんですよね。

 心配なのは、捕まってナデシコ食堂に閉じ込められてしまったアキトさんたち。

 無茶なことをしなければいいですけど。

 とっても心配です。


 以上、ナデシコC艦長ホシノ・ルリ少佐 報告終了






 ガイが、みんなを勇気づけるためという名目で、ナデシコ食堂で映写会をはじめていた。

 ゲキガンガー3。

 アキトも思わず身を乗り出してしまう。

「おおっ、ゲキガンガー3じゃん! オレ、小さい頃、好きだったんだよなぁ、このアニメ」

「そうか! おまえなら理解してくれると思っていたぞ、心の友よ!」

 バンバンとアキトの背中を叩きながら、ガイが大喜びしている。

 謎の覆面コーチの一件で、アキトは、ガイの心の友にランクアップしていた。

 アキトは、とりあえずゲキガンガー3に夢中で、その事実に気づいていないようである。

「そうだよな。オレ、このアニメを見て、正義の味方になりたいって思ったんだ。

 でも、アイちゃんを助けられなくて、木星蜥蜴が怖くって……」

 そんな述懐をするアキトの後ろで、ガイがクルーの面々に熱血宣言をしていた。

「どうだ、みんな! この素晴らしいアニメに、なにか感じるものがあるだろう?

 副提督の卑劣な裏切り、捕虜となり閉じこめられた俺たち!

 ここで立ち上がらずに、熱血を語る資格がはたしてあるのか!?」

「そんな資格、私、いらないです」

 メグミが、斬って捨てた。

「私も、いらないかなぁ〜。ルリルリと、ハーリー君はどう思う?」とミナト。

「熱血って、なんですか?」

「アニメなんて、子供の見るものです」

 ハーリーのその言葉に衝撃を受け、ガイがふらついた。

「な、なんだと、少年!

 君のような少年に愛と勇気を伝えるために、このゲキガンガー3は存在するんだぞ!?

 悲しいことを言うんじゃない!!」

「ボク、少年じゃないです」

「ちなみに、私は少女ですから」

 正義は死んだのか!? などという、ワケのわからない叫びをあげながら、ガイがよろよろとくずおれた。

「――違うさ。正義は死んじゃいない! いや、死んじゃいけないんだ!!」

 かわって立ち上がったのはアキトだった。

「オレ、行く。ナデシコを取り戻して、ユリカを迎えに行ってくる!」

 やれやれ、といった調子でハーリーが肩をすくめた。

 どうにも態度が年齢不詳だ。

「テンカワさん! 危ないですよ!」

 そう言うメグミに、アキトは微笑んでみせる。

「大丈夫だよ。オレ、こう見えても強いんだぜ? なんとかしてみせる。

 もう自分の居場所が無くなるのはイヤだしね。

 メグミちゃんは、ここにいてよ」

 音もなく扉に向かって移動を始めたアキトの後ろ姿を、メグミは見つめていた。

「やっぱり、いいかも……」

 そんな独り言は、誰にもきこえることはなかった。

 スッと開いた食堂の扉の向こうで、二人の見張りがこちらにふりむこうとしていた。

 それより早く、体を落としたアキトが、床の上を滑るように二人の間に動く。

「貴様――!」

 軍服に身を包んだ男は、その言葉を言い終えることはできなかった。

 床から垂直に伸びるような蹴りが、銃を蹴り上げた。

 その脚は、空中で蛇のように軌道をかえ、男の首の後ろに吸い込まれる。

 それだけで、男は簡単に白目を剥いて倒れていた。

 もう一人の男は、いくらか体術の心得があった。

 距離を取るために、後ろに跳んだ。

 その顔に驚愕が走る。

 距離が開かない。

 後ろに跳ぶスピードにぴたりとついて、アキトが移動していたのだ。

 ――ふしゅ!

 空手特有の息吹を吐き出し、男は正拳を放つ。

 避けたところを、銃で撃ち殺す。

 それが男の狙いだった。

 距離さえあけることができれば、どんな武術だろうが銃の前では何の役にも立たない。

 そう信じての行動だ。

 アキトはその正拳に対して、逆に体を投げ出していた。

 するりと、拳から腕まで、何かに巻き取られるような感覚。

 気が付くと、男はきれいに一回転しながら、宙に飛ばされていた。

 ――受身!

 しかし、天井に向いていた顔面に、空中でしなる脚が叩き込まれ、男の意識は一瞬で消え去っていた。

 人形のような異様な動きで、男は床に落ち、転がった。

 わずかに2、3秒の出来事である。

 二人の見張りは、アキトの前に簡単に一掃された。

「じゃ、ちょっと行ってくるから」

 通路から食堂に顔だけ出してそう言うアキトに、誰も返事をすることはできなかった。

 あまりに衝撃的すぎる。

 機動兵器での戦いは、どこか映画のような非現実感がつきまとっていたが、目の前で繰り広げられた肉体での闘いは、アキトの異常な戦闘能力を全員の心に叩き込むのに十分だった。

「アキト、おまえ、いったい何者だよ……」

 さしものガイも、それしか言葉がなかった。

 険しい表情の中にわずかに混じる感情。

 それは嫉妬ではないのか。

 正義の味方、ヒーローに憧れるガイにとって、目の前でそれを実行するアキトに、嫉妬心を感じるのは当然のことだった。

 ――嫉妬なんざ、ヒーローに相応しくねえだろ!

 そうは思っても、湧き上がる感情を止めることはできない。

 左足のギプスを見下ろしながら、ガイはやりきれない思いと戦っていた。














 ナデシコで起きた反乱は、アキトの卓越した活躍と、ユリカの機転により早期に解決した。

 飛び去るナデシコを見ながら、その追撃は不可能とミスマル提督が判断したのは、有能な側面の現れだったのかもしれない。

 しかし、この事態が、歴史の歯車をわずかに狂わせていたことなど、誰にもわかるはずがなかった。


 ――そう、本当であれば、ここでナデシコは、チューリップの襲撃をうける運命だった。

 しかし、あまりに早い反乱の鎮圧は、その矛先を別なものに向けさせた。

 当然。

 そこに集まっていた連合宇宙軍の艦隊にである。

「ユリカぁ〜〜〜〜っ!!」

 家系かなにか知らないが、ユリカと同じ、とんでもない大声で、娘の名を叫ぶミスマル提督。

 連合宇宙軍の艦隊は、ボロボロになりながら、なお、チューリップの攻撃を受けていた。

 そんなわけで、すっかりナデシコに存在を忘れ去られたジュンが、ミスマル提督の背後で「ユリカぁ〜」とさめざめと泣いていたことなど、もちろん誰も気づくはずがなかったのである。








あとがき


本当は、このあたりで、
ストーリー上、重要な位置を占める「美少女オリキャラ」を出すはずだったんですが
その設定が、某氏の某キャラと完全に被ってしまい、取りやめました(^^;
そのキャラは、形を変えて、先のほうで再登場する予定です。
しかし、その影響がもろに出て、今回は、ずいぶん短くなっています。
しかも話の焦点が無くなってしまい、ただ消化するだけの回に。

……次回は頑張ります。すみません。。。


以下は、勝手に作った設定の補足とか、いろいろです。
◆木連式柔に関して
 たった一年の修行で、あのアキトがこんなに強くなるか? とお思いでしょうが、劇場版のアキトだって、
 事故から、再び姿をあらわすまで二年。その間に実験されて、救出されて、回復して……というわけで
 一年もあれば、かなり体得できてしまう武術だったりするんです、木連式柔は。
 ……というか、そういうことにしました(笑
 あと、蹴ってるけど、それって柔か? という感じもするかもしれません。
 もともと古流柔術(柔道じゃないです)には、当身や関節技も多数存在していたそうなので、実戦的な
 武術ということで、なんでもありにしています。
 やっぱり無理矢理ですけど(笑


それでは、よろしければ、次回もお付き合いください。
ではでは……。

2002/10/24 あとがきをすこしだけ修正しました

 

代理人の感想

・・・・結局の所ルリは壊れているんですね(爆)。

 

それはともかく、展開が基本的に同じとは言えそこに至るまでの過程はやはり別物な訳で。

アキトに対するガイの反応などを丁寧に描写されてるのは好感が持てます。

 

木連式についてですが、

何だかわからないけど古武道っぽい武術

と言うイメージがあるので蹴りだろうと当て身だろうとOK・・・と言いたい所なんですが、

古武道とか柔術というのは袴を着ているのが前提なのでハイキックは普通使わない様なんですね〜(爆)

まぁ、空手やキックボクシングとかの技術も加えられているんでしょう(笑)。