漆黒の戦神赤き蛇の国へ
〜序章
『俺が帰るべき場所は・・・ナデシコだ!!
皆が揃っているナデシコだ!!
何処に跳ばされようと、俺は絶対に帰ってくる!!
例え、遥か距離だろうと、時を越えてもーーー』
「・・・キト兄、アキト兄起きてよ!」
『アキト兄!』
「ううっ・・・ディア、ブロス・・・」
俺がディアとブロスの声で目を覚ますと、モニターに映っていたのは完全な闇だった。
「ディア、ブロスここはどこだ!」
「アキト兄、落ち着いて。何が起きたか覚えてる?」
「たしか演算ユニットをナデシコに運ぼうとしたら演算ユニットが変形してブローディアが捕まって、
強制的にジャンプさせられたんだよな。」
「そうそう。」
『僕たち半径10キロくらいをサーチしてみたけど、何にも存在しなかったよ』
(どういうことだ?遺跡はなんのために俺たちをジャンプさせたんだ・・・。)
俺が自分の考えに没頭し始めると、ディアとブロスも静かになり、しばらくの間静寂があたりを支配した。
すると、突然モニターに一人の男が映った。
「アキト兄!この人突然現れたよ。」
『ボソンジャンプじゃないよ、ボース粒子の反応は無かったから。』
「ブロス!!もう1度周辺をサーチしてみてくれ!
ディア!俺が外に出ても大丈夫か?」
「アキト兄、外に出るつもりなの?あいつが何者か分からないのに、危険だよ!!」
「分かってる、だがここがどこかも分からないんだ。手がかりを得るためにはあいつと話してみるしかないだろ。」
「分かったよ、外は地球とほとんど一緒の大気組成になってるよ、毒素の反応も無いしでても大丈夫!」
ディアは納得したのか、外の状態を教えてくれた。すると今度はブロスが・・・
『アキト兄、やっぱり辺りにはあの人以外なんにも存在しないよ、
でもまた突然でてくるかもしれないから気をつけてね。』
ブロスがそう言うと、コックピットのハッチが開き俺はブローディアから飛び降りた。
「やあ、待ったいたよ。テンカワアキト。」
俺が男の前に立つと、俺が話しかけるより先に男が話しかけてきた。
「・・・なんで俺の名前を知っている?お前は何者だ、ここはどこだ!」
「いきなり直球だね、まあ一つずつ答えていくよ。
君の名前を知っていたのは、私が遺跡の管理人で、君達をここに呼んだのが私だからだ。
ちなみにここは・・・説明するのが難しいので、演算ユニットの中とでも思っていてくれ。」
ボオオオオッッ
俺の周りで昂氣が渦を巻く、俺の怒りを象徴するかのように・・・
「ふざけるなっ!!お前のせいで!お前のせいで、俺が!ユリカが!火星の人たちがあんな目にあったというのか!
やっとやりなおせたっていうのに、また俺の人生を狂わすのか!!」
俺は完全に逆上した。目の前の男のせいで前の世界でたくさんの人たちが死に、
俺は味覚を失ったのかと思うと、
すると目の前の男は頭をさげ、謝りだした。
「すまなかった!ボソンジャンプのせいで君達火星の住民を不幸にしてしまった。」
「謝ってすむことか!お前のせいで、お前のせいで・・・」
俺は男の首を掴み吊るし上げた、もう少し力を入れれば男の首は折れるだろう。
「アキト兄!落ち着いて、その人死んじゃうよ」
『落ち着いてよ!!』
ディアとブロスの声で俺は正気に戻った、
あと2,3秒遅かったらこいつの首はそこら辺に転がっていたことだろう。
こいつがそれで死ぬのかは分からないが。
「あっ、ああ、ありがとう、ディア、ブロス。
すまん、大丈夫か。」
男は咳き込みながら立ち上がり、口を開いた。
「いや、いいんだ。君が味わった地獄の日々に比べたら、こんなことなんでもない。
しかし、ほんとにすまなかった。私は管理人といっても基本的に外の世界にはほとんど干渉できない。
できたのは、たまたまランダムジャンプした君とナデシコBやユーチャリスのB級ジャンパーを過去に跳ばすことだけだった。」
「!!!お前が、いやあなたが俺やルリちゃん達を過去にもどしてくれたんですか?」
「ああ、本人達の承諾もないのに勝手に過去へ戻したのは悪いと思っている、
だが私にはあれが私にできる最良のことだと思ったんだ。」
「いえ、少なくとも俺は過去に戻してくれたことをほんとに感謝しています。
あなたのおかげで俺は五感を取り戻すことができたし、前の世界で救うことのできなかった人達を救うことができました。
しかし、別の人たちを・・・メティちゃんやカズシさんを死なしてしまいました・・・、
でも、俺は過去に戻ったことを後悔してはいません!!」
俺は心の底からそう思っていた。
サブロウタに聞いた話では前の世界で北斗は精神崩壊をおこし、
舞華さんは暗殺され、優華部隊のみんなは反逆罪で処刑されたという。
俺は、いや俺達はたくさんの人達を救うことができた、それだけはゆるぎない事実だと信じている。
「ありがとう、テンカワアキト。
君がそう言ってくれるだけで、私の罪が少し軽くなったような気がする・・・、
しかし私はこれから君に残酷な話をしなくてはならない。
そのために君をここに無理やり連れてきたんだ。」
男は悲愴な面持ちで語りはじめた。
「ボソンジャンプの演算ユニットに新たなプログラムが生じた。」
俺は嫌な予感がするのを感じながら、男に尋ねた・・・俺の嫌な予感は外れたことがないということに目をつぶって、
「どんな・・・プログラムなんですか?」
「プログラム自体は一つのものをジャンプさせるだけのとても単純なものだ、しかしそのジャンプさせるものが問題なんだ。」
「一体、なにを、ジャンプ、させるんですか?」
俺は言葉を一つ一つくぎりながら、ゆっくりと訊いた。
心の底では『訊くな!』と叫ぶ声を抑えながら・・・。
「火星」
男は小さく、だがはっきりと呟いた。
「えっ、い、今なんていったんですか」
「演算ユニットに与えられたプログラムの内容は「火星を地球周辺へジャンプさせる」だ。」
俺は最初その言葉が理解できなかった、そしてその言葉が俺の頭にだんだん浸透していく。
「な、そんなことになったら一体地球や、火星はどうなるんだ」
「・・・ジャンプさきにも拠るが、おそらく衝突・・・。
たとえ衝突しなくても公転軌道が変化し地球の生物は全滅するだろう。」
(そ、そんな・・・なぜ、なぜこんなことになったんだ。
俺達のやってきたことは無意味だったというのか・・・。)
「どうして、どうして、こんなことに!
そんなプログラムを誰が一体与えたんだ!!」
「・・・このプログラムを与えたのは、テンカワアキト、君だ」
俺は雷が落ちたような気分だった。
「そのプログラムを与えたのが俺!どういうことだ!!」
「・・・あの、君とDとの最終決戦。あのとき君は昂氣で刃をつくりそれでDを倒したな。
あのときの衝撃波が演算ユニットに当たり、その時生まれたんだ」
「馬鹿な!演算ユニットは無事だったはずだ、そんな、そんなはずは!」
「たしかに、演算ユニット自体はなんの損害もなかった。
しかし演算ユニットといっても機械であることは間違いない。
こういう事故がおこることも絶対に無いとは言い切れない・・・たとえどんなに確率が低くても。」
「一体どんな確率だ!!こんなことになるなんて!」
「・・・おそらく君がここでランダムジャンプしてナデシコに帰れる確率よりはるかに低いだろう。」
「そうだ、そのはずだ!いくら俺の運が悪いからってこんなことが起こるなんて!」
「君ならありえない話ではない、いや君だからこそありえるんだ。」
「・・・どういう意味だ。」
「最初にも言ったが私が君達を逆行させた、そのために君達に対して『向かい風』が吹き始めた。
本来過去に戻るなんてことは絶対してはならないことだ。
それを君達はしたために世界そのものが君達の敵になったんだ。
君も感じていたと思うが、今度の世界は前回よりはるかに困難だっただろう。
それが『向かい風』だ。」
(そんな!世界そのものが俺の『敵』!!そんなのどうすればいいんだ!!)
俺は次々に入ってくる情報で半ばパニックにおちいっていた。
火星のジャンプ、地球消滅の危機、そして世界そのものが俺の『敵』だったという事実。
あと、もう少しで俺は狂うかもしれなかった。
「『アキト兄、落ち着いて』」
「!!!」
今まで完全に沈黙していた、ディアとブロスの声が俺を引き戻してくれた。
「ああ・・・ありがとう。ディア、ブロス、落ち着いたよ。」
「よかった、アキト兄が落ち着いてくれて。」
『今は目の前のことを考えたほうがいいよ。』
「そうそう、何か地球や火星を救う方法があるから、私達をここに連れてきたんだと思うよ。」
「・・・そうなのか、ディアの言うとおりみんなを救う方法があるのか?」
俺は静かに、だが圧力をかけながら話した。どんな嘘も許さないために・・・
「・・・お前はいい家族を持ったな、そのとおり救う方法はある。
それを教えるために、君達をここに連れてきたんだ。」
「じゃあ、どうすればいいんだ!!どうすれば・・・」
「落ち着け!たしかに方法はあるが、とてつもなく困難なものだ。
もしかすると歴史を変えるよりも難しいかもしれない、
それに失敗すればおそらく死ぬ。
それでもいいなら、教えよう。
しばらく考えてくれ。」
そう言うと男は俺に背をむけ、闇の中へと消えていこうとする。
だが俺に考える時間など必要無い。
すでに答えは決まっているのだから
「待て!!」
男は俺の言葉に反応して、足を止めこちらを向くとゆっくり話し出した。
「もう答えは決まっているのか?」
「ああ、どんなに困難でもいい、その方法を教えてくれ。」
「分かった、お前には考える必要のないことだったな。
いいか、地球や火星を救う唯一の方法は演算ユニットのプログラムを改竄することだ。
お前も知っているだろうが、演算ユニットのプログラムに手を加えることができるものは今の太陽系に存在しない。
それが出来るのは古代火星人だけだ。」
「じゃあどうするんだ?
まさか過去へジャンプして古代火星人を連れて来いとでもいうのか?」
「いくらなんでもそれは無理だ。
時間移動は跳ぶのが遠ければ遠いほど難しくなる。
古代火星人がまだ火星にいたころに跳ぶのは不可能だ。」
「じゃあどうするんだ?」
「違う世界に往ってもらう。
・・・平行世界というものを知っているか?」
「ああ、イネスさんに聞いたことがある。
そういえば、ボソンジャンプは平行世界にいけるかもしれないとか・・・まさか!」
「そう、そのまさかだ。
その世界では古代火星人が旅立ったとき一人だけ火星に残り冷凍睡眠していた。
彼女は目覚めると地球へ行った。
そして彼女はかなり前に死んだが、その子孫は残っている。」
「じゃあ、その子孫なら演算ユニットを扱えるのか?」
「ああ、その可能性はある。
今はまだ出来ないが、できるようにはなる。
詳しくはこいつに訊いてきれ。」
男はそういうと一枚の鏡を懐から取り出した。
「これは?」
「これは耶麻台国の神器の一つで天魔鏡といってなこれには精霊がやどっている。」
「???『耶麻台国』?『天魔鏡』?『精霊』?なんだそれは。」
「詳しくはむこうに往ってからこいつに聞いてほしいんだが。
まあいい、いいかこれからお前が往く地球は文化レベルでいうと、お前のいた世界の3世紀ぐらいだ。
そいつは・・・姫神子と呼ばれていたらしいが、
姫神子は日本の九洲に耶麻台国という国を興したんだ。
そして姫神子が死んだ後は彼女の子が女王として火魅子の称号と『力』を受け継いでいったんだ。
そして、天魔鏡は姫神子が造った神器の一つだ。」
「ということは俺はその国の女王に頼んで演算ユニットのプログラムを改竄してもらえばいいのか?」
「ああ、そうだ。私はお前が跳んだあとは何も手助けすることは出来ない。
帰るときは火魅子に連れてきてもらってくれ。」
「分かった・・・ところでブローディアはどうすればいい?」
「ブローディアは持っていかないでくれ、これはむこうの世界ではあまりにも異質すぎる。
持っていくとなにが起こるかわからないんだ。
ここに置いていくといい。
だがブロスとディアだけは連れて行くといい。」
「ブロスとディアを?どうやってだ?」
「この二つの指輪にはいってもらう。」
そういうと男は今度は懐から二つの指輪をとりだした。
銀でできたなんの装飾もない指輪だ。
「この指輪に入っていれば、アキトがこの指輪をつけているかぎり話すことができる。
まあ、ラピスとのリンクと同じようなものだ。
それから実体化もできるぞ。
お前達に異存がなければ二人をいれるんだが?」
「そういうことらしい。どうする、ブロス、ディア?」
『アキト兄、僕達が反対するはずないよ。』
「そうそう、アキト兄だけじゃ心配だよ。」
俺は二人の言葉がほんとにうれしかった。
俺にはもったいないような家族だ。
「いい家族をもったな。」
「ああ」
「それでは二人をいれるぞ。」
そういうと男はブローディアに触れた。
するとブローディアが光ったと思ったら、その光は二つに分かれ指輪に入っていった。
「よし、これでいい。指輪をはめてみろ。」
男はそういうと俺に二つの指輪を渡した、よく見ると『ブロス』『ディア』と彫ってある。
俺は右手に『ディア』を左手に『ブロス』をはめた。
すると・・・
「『アキト兄!」』
心の中に二人の『声』が響いた。
「うまくいったようだな、その指輪をしていれば二人は感覚を感じることもできるぞ。
・・・さて、そろそろ旅立ちの時だ。」
「分かった。
・・・最後に名前を教えてくれないか?」
「・・・いいだろう・・・わたしの名は『ラムダ』。」
「そいか、ラムダいろいろありがとう。」
「さあ、そろそろ送るぞ。
がんばれよ、また会えることを祈っている。」
「ああ、絶対に火魅子と共にここにまた来る!」
こうして俺達は旅立った。別の世界へと・・・
人類を救うために。
あとがき&キャラコメ
かいるろっどと申します
私のデビュー作につきあっていただきありがとうございました
アキト「おい!」
おう、これはこれは主人公のアキト君ではないですか
アキト「俺はこの話では異世界にいくようだな。」
ええ、あなたには火魅子伝の世界に行ってもらいます
アキト「なんでだ?」
理由ですか、そんなの決まってますよ。
私が火魅子伝が大好きだからです。
アキト「理由になってねーーー!」
まあ、それは置いといて
アキト「置いとくな!!」
知ってる人もいると思いますが、火魅子伝の世界には多数の女性キャラがいます
今のところヒロインは決定していませんので、募集したいと思います。
ヒロインの希望があったらメールで送ってください
感想と共にお待ちしてます。
アキト「ちょっと待て!じゃあハーレムにしてくれというメールが多かったらそうするのか?」
ええ、しますよ
アキト「ううう、ルリちゃん達のお仕置きが〜
あ〜、メティちゃんとカズシさんが手を振ってる。」
さて、アキト君が違う世界へいってしまったようなのでそろそろ終わります
では、さようなら
代理人の感想
「空気がある」のに「何もない」とはこれいかに。
と、細かい突っ込みはさておき。
遺跡に管理人がいたとして、蜥蜴戦争や火星の後継者事件ってそいつのせいなのかなぁ。
違うような気がするなぁ(苦笑)。
どう考えても悪いのは草壁その他でしょう。