これは契約だ
我は汝の強き願いにより目覚めた
よってその願い叶えよう
これは契約だ
汝は我に正当なる代価を支払わねばならぬ
それは・・・
果て無き闇の果てに・・・
第一話 『闇より暗き者』
「目的のものは手に入れた・・・
後は任せる・・・消せ・・・・」
少年の声を合図にいくつかの影が走る。
少年はその腕に1人の少女を抱えていた。
透き通るような白い肌・・・
少し力を入れれば折れてしまいそうな四肢・・・
そして淡い桃色の髪・・・
「ふっ、妖精とはよく言ったものだ・・・
この掌で握り潰せそうなほどのか細さ・・・・虫唾が走る」
少年は来た道を戻る。
来たときと違って、その道は一面血に染まっていた。
「会長、もう報告は受けましたか?」
「あの研究所の事かい?」
部屋には3人の人物がいた。
1人は細身でメガネをかけた男、もう1人は長髪の優男、そして白のスーツを完璧に着こなしたショートカットの女性。
「そのとおりです・・・」
「何やってたのよ!
あそこには貴重なマシンチャイルドの実験体がいたのよ!!」
「いやいや、私に言われましても・・・」
「また奴等かい?」
「あれだけの警備を突破し、なおかつ生存者は無し・・・
おそらく今回もクリムゾンの特殊部隊かと・・・」
「”ダーク・クリムゾン”・・・か・・・・・」
「その名前の通りクリムゾンの闇の部分を統べる集団・・・
現在のところ、間違いなく最強の部隊よね・・・」
「う〜ん、ゴート君もがんばってはいるんだけどねぇ・・・」
「それを統率している者の情報すらつかめていないのが現状ですから・・・」
「「・・・・・・・・」」
「・・・”ダークネス”・・・・・
会った事も無いのに・・・その名を口にするだけで寒気がするよ・・・・・」
「やぁ、テンカワ君
今回もご苦労様だったね〜」
研究室らしき部屋に入ると白衣を着た男が笑顔で出迎える。
「そのにやけた顔をオレの前に出すなと言った筈だぞ・・・」
「ちょ、そんなに怒らないでくれよ・・・
生まれつきこんな顔なんだからしょうがないだろ?」
「・・・まあいい・・・・
お望みの品だ、受け取れ・・・」
少年は抱えていた少女を片手で放り投げる。
「ちょ、ちょっと待ってよ・・・おっとっと・・・・」
よろけながらも何とか受け止める。
「も〜、投げなくてもいいだろ?
ボクは君みたいに力持ちじゃないんだから」
「・・・オレは帰るぞ」
「あっ、今ここに会長が来てるんだ
君を呼んでたから寄って行ったほうがいいと思うよ」
白衣の男は用件を伝えると、少年の存在を忘れてしまったかのように夢中になってそこらへんの機械をいじり始めた。
その様子を見て少年はそっと部屋を後にする。
「ふん、あの爺・・・今度は何をさせる気だ?」
会長室前・・・
「入るぞ」
部屋の中には初老の男がイスに座っていた。
灰色の髪で背丈は低いが、こちらを睨むその目は活力に溢れている。
「よく来てくれたな・・・」
「挨拶はいい、何の用だロバート?」
「ふっ・・・天下のクリムゾングループ会長を呼び捨てに出来るのはお前くらいだな」
「・・・用件は何だと言っているんだ・・・・・」
「そうあせるな・・・今回の任務は”潜入”だ」
「潜入?何故オレなんだ?」
「話は最後まで聞くものだ・・・・
”ナデシコ”の事は知っているか?」
「知っているも何もオレの部下が手に入れてきた情報だろうが?」
「そうだったか?
まあいい・・・お前も知っているように”ナデシコ”はネルガルの最新鋭戦艦だ
そしてその目的はおそらく・・・・・」
「・・火星・・・・」
「・・・まず間違いないだろう
表向きは人命救助に研究施設の奪還・・・
だが、本当の目的は”遺跡”だ」
「”三者”入り乱れての争奪戦といったところか・・・」
「それだけの価値がアレにはあるのだ
現在のところ、ネルガルは若干我が社の上を行っている・・・
”彼等”と協定を結んでいるとはいえその存在は無視できるものではない」
「それでオレにどうしろと?
妨害して欲しいのならオレが破壊して来れば済む事ではないか・・・」
「いや、”ナデシコ”には火星まで行ってもらう
お前にはネルガルの持つ”遺跡”の情報と火星の単独調査をやって欲しい」
「ふん、独り占めしようという腹か?」
「今”彼等”との関係を壊すわけにはいかんからな・・・
ネルガルには隠れ蓑になってもらう
”ナデシコ”だけでは”彼等”を振り切って火星までたどり着くのは不可能に近い・・・
だが、そこにお前が加わればそれほど難しい事ではなかろう?」
「だがネルガルとてバカではあるまい・・・
そう容易くオレを乗せると思うか?」
「そのためにお前を・・・”テンカワ・アキト”を選んだのだ
ネルガルがお前の両親にした事、お前が軍の元エースパイロットだった事・・・そして、なによりお前が”生きている”という事・・・
これらを上手く餌として撒いてやれば向こうは食いついてくる筈だ
しかも現在のお前の”闇”としての存在は一切ばれていないと来た・・・
これほど好都合な人物はおるまい」
「なるほど、上手く考えたものだ・・・」
「そのぐらいでなくては大企業のトップは出来んよ・・・
しかし・・・お前もそれだけ派手な事をしておきながらその存在を一切漏らさずにいるというのも流石だな・・・」
「ふっ・・・出来る限り見られない事と出来る限り”消す”事・・・
この2つさえ徹底すればそう難しい事では無い」
「それを徹底する事が難しいのではないか?
まあ、兎に角そう言う事だから頼んだぞ
詳しくは後でまた連絡する」
「わかった・・・
ではオレはもう帰るぞ?」
「ああ、しばらくはゆっくりしてるがいい」
部屋を出て、歩きながらこれからの事を考える・・・
(・・・・・ふん、餌に群がっているのは貴様も同じ事、せいぜい楽しんでいるがいい・・・・・)
【あとがき】
こんにちは・・・いかがでしたか・・・・
わたしは・・・徐々に・・・ダークに・・・染まりつつ・・・あります・・・・・
というわけでダークに染まりつつあるわけなんですが、最近はもともとがダークなのではないかと疑ってしまいます(汗)
次から次へと痛い話が浮かんできてしまうんです(汗汗)
誤解の無いように言っておくと、このお話は普段のハッピーなお話の反動でかかれています。
しかし根っこの部分は、『両親を殺したネルガルと仲良く出来るか?』『チューリップを落とされて黙ってられるか?』等の疑問から作られてます。
”アイちゃん”のトラウマはもちろんの事、小さな頃から奪われ続けた筈の彼がどうしてTV版のようにまっとうに育つでしょうか?
ネルガルやチューリップの事を知らなかったとしてもですよ?
まして、全ての事情を知っていたとしたら・・・・・
私なら普通の精神状態を保つ事は出来ません。
このお話にはそんな疑問が根底に流れています。
私も痛いお話はキライですし、最後にはハッピーで終わりたいと思ってますが・・・こればっかりはどうなるかわかりません。
なるべく痛いシーンが浮かんできても無視して書くようにしますので、チラチラッとでも読んでいただければいいなぁと思います。
また、これからもアドバイスは募集していますのでよろしくお願いします。
アドバイスでなくても、『ここはこうじゃない方が良かったよ』などという苦情でもOKです、これからの参考になりますからね。
ではでは。
by.Chobi
代理人の感想
う〜む、キてますね(汗)。
確かにTV版の彼がネルガルと手を組んでいるのは
「自分の力のなさゆえの諦め」という部分が大きいわけですが、
そ〜か、別に黒の王子でなくてもアキトってここまで痛くなれるんだ(汗)。
まあ、実の所ダークだけを書くならざらざらとした感触は感じてもあまり痛くは感じません。
「ほのぼの」「ささやかな幸せ」などをいれて一気にダークにもっていくから痛いのです。
そこらへん、痛くしようと思えば教科書には事欠きませんが、
あまりやると某氏のようになりますのでご注意(核爆)。