『会長室まで来てくれんか?』
「別にわざわざ行かなくてもいいだろう?」
『今後の打ち合わせがしたい・・・
それに・・・最近お前がいじめを働いていると言う訴えがあってな』
「ふっ、くだらん・・・
まぁいい、そのうち行くから待っていろ」
『あまり待たせるなよ?』
(やはり来たか・・・)
果て無き闇の果てに・・・
第五話『全てを零に・・・』
ロバートが椅子に座りながら待っていた
まずはアキトにソファーにかけるよう勧めると、苦笑いしながら口を開く
「ヤマサキが泣いておったぞ?」
「勝手に泣かせておけ・・・」
アキトはくだらないとばかりにぶっきらぼうに答える
「・・・・・理由を聞こうか?」
表情が威厳と策謀に満ちた大企業のトップのものに変わる
「オレの方が上手く使える・・・ただそれだけだ」
「それは我が社の利益になるのか?」
「お前等しだいだな・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
ロバートは沈黙しながらアキトの意図を探る
「たかがマシーンチャイルド1匹でオレを大人しく飼ってられるなら安いものだと思うが?」
クリムゾン・グループの闇の部分を司る部隊”ダーク・クリムゾン(闇の鮮血)”
要人暗殺から施設の破壊までを一手にこなす彼ら・・・
それを統べるアキトは、下手をすればロバート以上に裏の裏までを知る存在である
”アキトの離反”・・・それはクリムゾン・グループにとっては致命傷に他ならない
要するに「大人しくしている代わりにラピスの事は口出しするな」と、暗に脅しをかけているのだった
「・・・・・ふっ、良かろう・・・お前の好きにするがいい・・・・
それと例のナデシコ潜入の件だが・・・」
「それならオレに考えがある、任せておけ」
「・・・・・お前がそこまで言うのなら心配なかろう・・・頼んだぞ」
「まぁ、黙って見ているがいい・・・」
アキトは立ち上がると足音もさせずに部屋を出て行く
ロバートはそれを黙ってみていた
ドアが閉まり部屋に1人きりになると軽く深呼吸をする
手には軽く汗が浮かんでいた
別に何をしていたわけでもない、ただ見えないプレッシャーに押されたのだ
ロバートの感じていた圧迫感・・・例えるなら首筋に刃物を突きつけられているような・・・・そんな感であった
「・・・・ふっ、天下のクリムゾングループを束ねるこのワシが気押されるとはな・・・
あのような若造、何を恐れる事があるというのだ・・・・」
ふいに立ち上がると、カーテンを開き窓の外を眺める
「今はまだ例の計画に必要な存在だが・・・・・そろそろ奴も消し時だな・・・・・・・」
会長室はクリムゾン本社ビルの最上階に置かれている
そこからは見下ろした地上の景色は、全てが点のようにちっぽけだった
それは、ロバートにとって、1つの権力の象徴なのかもしれない
車を運転しながらこれからの行動の計画を練るアキト
「まずはあいつとの接触か・・・・」
微かに心がざわめくのを感じる
「ふっ、くだらない・・・心などとっくの昔に捨てた筈だ、これは俺の感情じゃない・・・・・」
すぐにそのざわめきは消え、再びアキトは考えをめぐらせ始めた
「・・・さぁ、もうすぐ始まる・・・・・」
いつしか、常に無表情のアキトの口元にわずかながら笑みが浮かんでいた
「全てを零に・・・無こそ我が望み」
それは酷く歪んだ笑みに見えた
「・・・皆殺しだ」
【あとがき】
ども、Chobiです
次からようやく本編です
ここからは飛ばして飛ばして行こうと思ってます
ぜんぜん進みませんもんね(汗)
ではでは