I Wish・・・
「やっと・・・やっとすべてが終わったか・・・。」
今俺の周りには、駆逐艦や、突撃艦、空母等の艦艇郡。ステルンクーゲル等の機動兵器の残骸
が無数漂っている。
俺は、ついさきほどまで、『火星の後継者』の残党との戦闘をしていた。
火星で自らの復讐のひとつ、北辰を倒した。
そして、ユリカに自分の姿を見せることなく、ルリ、昔の仲間たちの前から姿を消してもう、一年。
一年・・・長いと取るか短いと取るか・・・。
『火星の後継者』につかまり、身体を心を壊され、どうにか今まで生きてこれた。
復讐に明け暮れ、多くの人の命を奪ってきた。
罪を持ちし者も、罪を持たない者も全て・・・。
復讐などという言葉をかざしてみても、自分が大量殺戮者であることには代わりはない。
その業は、拭えるものではない。それに拭おうともおもわない。
自分が多くの人を殺してきたのは事実だから。
それについては後悔していない。また、もし同じ事が起こってもきっと同じことをしただろう。
かつて、戦うことに疑問を持ちつづけていた自分はもういない。
(いつからだろうな・・・他人を壊すことに罪悪感を覚えなくなったのは・・・。)
ただ、己の敵を殺すのみ。向かってくる敵をただただ壊し、殺す。
それの繰り返し。
ラピスとも半年ほど前に別れた。
といっても今のラピスはアキトのことなど覚えてはいない。
ラピスが寝ているうちに、俺とのリンクを解除し、深層心理下における強力な催眠をかけることにより俺に関する一切
のこと、およびここ数年間の記憶を封じてもらった。
あんな、記憶残していてもラピスが傷つくだけだ。ならいっそのことそんな記憶なくしてしまえばいい。
それで、ラピスが普通の女の子と同じ生活を送れるのなら・・・。
ラピスは、エリナが引き取り姉妹のように暮らしているのをアカツキから聞いている。
『帰ってこないのかい?』
何度となく言われた言葉である。
その都度、答える答えは決まっていた。
『復讐にあけくれ数多の人の血で呪われた俺の帰る場所などどこにあるというんだ・・・。』
いつもそれで会話は終わる。
(『火星の後継者』の中で指導者としての実力があった連中はすべて排除した。あいつ等の残党も全体の90%ほど
は排除してきたはずだ。残っているのはせいぜい宇宙海賊レベルの弱小どもだけだ・・。それぐらいなら宇宙軍でも
排除しきれるだろう。)
アサルトピット内に蒼い火花がはぜる。
いや、アサルトピット内だけではない。ブラック・サレナの各所から蒼い火花が飛び散り明らかに機体の限界が
きているのがみてとれる。
「・・・もうブラック・サレナも限界か・・・。あたりまえだな・・・ろくな整備を行うこともしないで一年間おれにつきあってきてくれたんだからな。」
四肢はまだどうにかあるが、度重なる戦闘による故障で、動かせることすらままならない。
ラピスと別れて以来、一度もネルガルのドックには近寄ってない。
それでも、どうにか半年間戦ってこれたのはひとえにアキトの腕だけでなくブラックサレナの機体性能の高さがうかが
いしれる。
しかし、全能力を使うためにはやはり整備が必要である。ユーチャリスにも無人整備システムは存在するが
ブラック・サレナもの機体となると、構造が複雑すぎて無人整備システムだけでは完全には整備しきれず本来の性能
の70%ほどしかひきだせない。
(もはや俺ができることはない・・あとはこの血塗られた復讐鬼のおれが死ねばこの狂った茶番劇は終わりだ
・・それで全てが終わる。)
アキトがそんなことを考えているとユーチャリスより通信が入ってくる。
【マスター、これですべておわりましたね。】
【・・・あぁ・・・。】
通信はユーチャリス搭載オモイカネ級AIである、サイネリアである。
サイネリアはナデシコAに搭載されていたオモイカネのコピーを改良したものである。
【マスター、機体の損傷が激しすぎます。帰って来れますか?】
【・・・無理だな。ジェネレーターもいかれてる。自力航行はすでに無理だ。回収してくれ。】
【了解】
<テンカワ・アキト ブリッジイン>
機体の収容が完了すると俺はブリッジにあがった。
【マスター、これからどうするんですか?】
「復讐も終わったいま、俺がすることなんて一つしかない。」
【・・・死ぬおつもりですか?】
「あぁ、俺が今まで戦ってきたのは復讐のためだけだ。その復讐が終わった今、俺が生きる意味はないさ。」
【ルリさん達の元には戻らないのですか?】
「それだけは絶対にない。絶対に・・・」
そうさ、俺があいつ達のもとへもどることなどできない。
いや、違うか。戻りたくないのか。
【なぜですか?】
「・・・・・・・」
俺はサイネリアの問いに答えることなく艦長席から立ち上がる。
「サイネリア。ブラック・サレナの整備をしておけ。」
【・・・・・・了解しました。】
俺はそう命令を下すと後はなにも言わずに自分の部屋へと戻った。
【マスター・・・・。】
ブリッジの扉が閉まる直前、扉の向こうでウインドウが浮かんだ気がしたが無視した。
部屋に戻ると耐Gスーツもかねている戦闘服を脱ぐのもわずらわしく、そのままベッドに腰掛けた。
(さて・・・と、どこでこの血塗られた人生に幕を下ろすとするか・・・。)
その時視界の隅に部屋に備え付けの机が目に入る。
(CCか・・・火星・・・。すべての厄災の始まりの地であり俺が生まれた場所。そしてすべてが終息する地か・・・
火星で幕を引くのもいいか・・・。ふんっ、こんなおれでもやはり死ぬときは故郷がいいというわけか・・・いまさら・・・。)
机の上には戦闘服に仕込まれているジャンプフィールド発生装置が故障した時の緊急用のCCがいくつかころがって
いる。
俺は自分の死に場所を決めるとベッドに横になり、ぼそりとつぶやいた。
「・・・・火星か・・・・」
そんなことを考えているとだんだんとさきほどの戦闘の疲れからか睡魔がおそってくる。
(コレが最後の眠りというわけか・・・最後ぐらい昔の夢を見てみたいものだな・・・)
どうこうするうちにも俺は眠りにつき、部屋の照明が落とされた。
【・・・マスター・・・おやすみなさいませ。】
あとがき
どうもはじめまして、作者のcinerariaです。
こうやってナデシコSSを書くのは、はじめてなのでだいぶ変になってます。っていうか文才ないですから・・・(T_T)
それから先に言っておきますがわたしはギャグ小説は書きたいとおもっているのですがボキャブラリーのすくなさ
からかけません。のでいちおうシリアス路線ということで。
しっかしこの小説のアキト君、おもいっきし死にたがってますね。・・・いや、それほどでもないか・・・。
まぁ、この後の展開はあんまり考えてないのにいきなりプロローグだけおもいついたので書いてみました。
展開に関してはおいおいかんがえます(爆)
あっ、そうそう、いきなりですが1話目からアキト君しにますから。こう御期待!
紹介。
・サイネリア
花言葉は、「快活」。春から夏にかけての花です。本当の呼び名は「シネラリア」なのですが、シネラリアの「シ」
が「死」に通じるとして嫌い、サイネリアと呼ばれるようになったそうです。
一応、この作品ではオモイカネのコピー改良型となってますが性格というか、まぁ女性型AIです。処理能力でいえば
ナデシコCの先行試作艦の制御AIということもありナデシコCに搭載されているオモイカネと同レベルです。
しかし、サイネリアはアキトの五感補助のための計算を常に行っているのでオモイカネには、負けます。
代理人の感想
う〜む。やはり「船魂」は女性なのか(謎爆)?
と、読者の半分がわからないであろうギャグをかます代理人です。
それはともかくとして、アキト君不在のまま話が進むとか期待しちゃっていいですか(笑)?
試みる人も少なければ、成功した人も希少という「主人公不在SS」!
(ただし、オリキャラが主人公の場合を除く)
・・・・現在某氏がやっているじゃないか、とかゆーつっこみはめーなのよ。