シャリン
その音は部屋の中に響き渡る。そしてその音とほぼ同時に室内の電気が落ちた。
「なん・・・・だ?」
光の無い部屋の中、培養機の前に立っていた男―この『施設』の『所長』は突然の事態に困惑する。他の研究員も困惑の表情を浮かべている。
『所長』は考える。この『施設』はありとあらゆる面で完璧だ。主電源、副電源が落ちても、すぐ非常用の電源に切り替わるはずだ。
主、副、非、三つの電源が同時に落ちるなんてありえない。そう外部からの干渉が無い限りは―――――
そこまで考えて気づく―侵入者だ。間違いない。
この『施設』の持ち主、『所長』の所属している世界有数の大企業『ネルガル重工』に敵は多い。こういう事態も考えられていた。
そのための『N.S.S.(ネルガル・シークレット・サービス)』だ。そういうことはプロに任せるのが一番いい。
「おい、そこの君。保安部(N.S.S.)に連絡してくれ。」
反応が無い。『所長』はそれに苛立ちその男の肩を叩く。
「きいているのか!?」
男の白衣が紅く染まっていた。その男の胸に風穴が空いた。そして、その穴からはじわじわと血が染み出している。
『所長』の言葉に答えることなくその男はそのまま倒れた。悪夢のように血が床を汚していく。
「ひいっ。」
蚊の鳴くような悲鳴が漏れる。その声が引き鉄になった。
「パシュ」「パシュ」「パシュ」「パシュ」「パシュ」「パシュ「パシュ」「パシュ」「パシュ」「パシュ」「パシュ」「パシュ」
銃声。人の―恐らく研究員の倒れる音。
「ひいいいいいいっ。」「AHHHHHHH」「た・・・・たすけ」
悲鳴。肉の潰れる音。肉の引き裂かれる音。
後に、痛いほどの静寂。
「ピチャ」水の音が室内に反響する。視線をその方向に向ける。
闇の中に編み笠をかぶった女が立っていた。
特徴的な左の紅い義眼に、怜悧で秀麗な顔立ちをした女。
懐に手を差し込み、護身用の拳銃を引き抜き目の前の女に向けて発砲する。『紅い義眼の女』の手に握られていた錫杖が閃く。
「キィン」澄んだ濁りの無い音が六度。目の前の女が――信じられないことに――その手に持つ錫杖で弾丸を弾いたという事に気づくのには、数秒の時間を必要とした。
「あ・・・ああ・・・」
意味を成さない言葉あるいは、うめき声が『所長』の口から漏れる。
「カチッ」「カチッ」何度も引き鉄を引く。何もでない。それでも引き続ける。
その女は爬虫類じみた嗤い――まぎれもない嘲笑を浮かべて錫杖を振るった。
「滅」
頭を失った身体が力を失い倒れた。首から水道の蛇口のように血が断続的に溢れ、床の溝に血が流れ広がっていく。
「フン。」
それをつまらなそうに眺め、女は四角い箱を机の上に置く。
それからきっかり20分後、『施設』は爆発の後に炎上。巨大な――まるで火山の噴火のような―火柱がその『施設』を跡形も無く吹き飛ばした。
それを機動兵器のカメラで眺めていた女の額には、大粒の汗が浮かんでいた。
女はかすれた声で呟いた。
「爆薬の量・・・・間違えたか?」
その呟きは、夜の闇に溶けて消えた。
「蒼い煉獄」そんな名前の店がある。
料亭と喫茶店。洋と和をたして二で割ったようなその店は、確かな味と、そのお手ごろな―それほど高くもなけば、それほど安くも無い―値段もあり、たいして広くない客間は絶えず人で賑わっていた。
「むう」
その店の厨房に女がいた。手の中のフライパンを眺めしきりにうなっている。店がもう閉まっている事を考えると、この店の関係者だと思われる。
その女の左目は紅い義眼になっていた。だが、人目で義眼と見抜く人物はいないだろう。その眼は、本物以上に精巧に作られたそれは、よく女に似合っていた。
「どうした?」
低い平坦な声色。しかし、その女はその声に含まれる感情を読み取ることができる。
女は笑みを浮かべた。その容貌は間違いなく麗しい。
そして女は、唯一心を許してる男に向けて言い放った。
「汝には、我の『りぞっと』を食らう義務がある。」
「いや、意味わかんないぞそれ・・・」
かつて『北辰』と呼ばれていた女に向けて、男はため息をついた。
口の中に『りぞっと』を放り込み、よく噛もうとして、
男の動きが止まる。
男の口の中に、なんともいいがたい味が広がっていた。なんと言うか的確な言葉が思い浮かばない。まちがいなく妙な味だった。
「どうじゃ?うまいか」
女の眼は輝いている。それはもうキラキラと。
男の首にもたれかかり、それは楽しそうに眺めている。
男の背中に胸が当たっているのは『お約束』というやつだ。
そのとき男は正直だった。男の性根はもう原始崩壊をおかし、修復不可能なほどねじくれていたが、そのときはとても素直だった。
だから思ったことをそのまま口に出した。その行為は間違いなく愚かだった。
「ワイルドな味だ。」
女の額に微妙に青筋が浮かぶ、その腕に万力のような力がこもる。
もちろん男は気づかない。大宇宙の神秘。これもまた『お約束』である。
「我は、うまいのかと聞いているのじゃ」
「まず――――――――――」
『まずくも無いが、うまくもない』と言おうとして男の意思は闇に落ちた。
なぜ闇に落ちたかは不明であり、それもまた『お約束』の一つである。
女が浮かべた爽やかな――すっきりとした笑顔が印象的だったと目撃者R.Rは語る。
「アキト、アキト。」
体が揺さぶられている。視界が急速に開け、金色の瞳が心配そうに自分を覗き込んでいた。
「ら・・・ぴす?」
視界が揺れていた。まだ頭がふらふらする。
頭を抑えて立ち上がる。らぴすがまだ心配そうに見ていたので、大丈夫だと告げる。
「なかなか丈夫じゃのう。」
「弓枝・・・お前・・・・・・・・・・・」
「どうしたのじゃ?」
罪悪感のかけらも持っていないその姿に、アキトは深いため息を吐き出した。
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初めまして私はクックロビンと言います。
それにしても初投稿です。初HTML、初ナデシコSSです。
すごいですね初めてだらけです。嗚呼いろいろあったなあ・・・・・・・
後、つたない文になってしまいましたが、いろいろがんばるのでよろしくお願いします。
ちなみに、目標は完結させることです。では、よしなに。
代理人の踊り
パパンがパン♪
(あっそーれ)
だ〜れが殺したクックロビン♪
(あっそーれ)
だ〜れが殺したクックロビン♪
(あっそーれ)
パパンがパン♪
(あっそーれ)
と、まぁお約束のネタ(但25歳以上限定)はともかく。
かなーり衝撃的な始まりには違いありません、ええ。
とりあえず掴みはおっけー、今後に期待。というところですね。
ではまた。