もう一度、あの日々を。

 

第五話


[ルリ]

 

ナデシコは、無人兵器の殲滅のためにサセボドッグを出た後、そのまま出港しました。

とはいっても、クルーが艦になれるための訓練航海です。

私たちは二度目ですから、ナデシコについてはよく知っています。

そんなわけで結構ひまです。・・・・空いた時間は訓練や作戦会議に使ってますけど。

 

もっとも、ひまなのは、私たちだけじゃありません。

整備班などは各部のチェックやエステバリスの整備に終われて結構忙しいですが、その他はそれほどではありません。

ナデシコはかなり自動化されていますから、使い方を覚えるのは結構簡単です。

そんなわけで、ミナトさんやメグミさんもひましています。

 

ブリッジにいるのは、ミナトさんとメグミさん、ユリカさん、そして私の四人です。

フクベ提督は自室にいます。・・・・お茶でも飲んでいるのでしょうか。

副提督は・・・やっぱり自室のようです。副提督に対しては常にオモイカネの監視がついています。叛乱を起こすことがわかっていますから当然です。

プロスさんとゴートさんは話し合いをしています。

アオイさんは・・・・・・・やっぱりいい人すぎますね。事務仕事をしています・・・ユリカさんの分まで。

それも、自分から言い出して、ユリカさんの分までこなしているのですから。

それにしてもユリカさん、他人のことにも目がいくようになったのに、なぜかアオイさんだけ見えてないような・・・・。

 

 

 

 

 

まあ、それはともかく・・・・・。

勤務終了まで、後三十分くらいです。ユリカさんだけは夜勤ですので仕事はこれからですけど。

することがないので皆さんおしゃべりしています。

「あの、艦長とルリちゃんって、アキトさんとどういう関係なんです」

「あ、私も興味ある。三人で一緒にいることもが多いし。・・・・・二人だったらわかるんだけど」

アキトさんとユリカさんの二人なら、『劇的に再会した幼馴染が恋に落ちた』というストーリーが成り立つわけですね。

「二人でいるときだって、ルリちゃんだけは誘いますよね。・・・・・・・・・・・私だと嫌がるのに」

「他の娘が近づくのは嫌がるのに、ルリルリだけは一緒にいたがる。

やっぱり不思議よ。艦長って、ルリルリくらいの子にだって嫉妬しそうなのに。

『アキトは私とルリちゃんの王子様』なんて言ってたし。ねえ、どういう関係なの?」

 

ミナトさんは、興味津々という感じで目を輝かせています。・・・・・・・・楽しそうです。

メグミさんは少し真剣な目です。・・・・・・・嫉妬の色が混ざっています。

ミナトさんはアキトさんに興味がある程度。メグミさんは・・・・・たぶんアキトさんのことが好きなのでしょう。

二人の様子からそんな気がします。

 

「あのね、アキトはルリちゃんと私の・・・・」

ユリカさんは真剣な目になりました。・・・・・・・・・・なんか不安になるのは何故でしょう。

「「ふむふむ」」

 

 

「アキトは、ルリちゃんと私の初めての人で〜す

 

 

ピキーーーーン

 

 

ブリッジが凍っちゃいました。

私も固まっちゃいましたけど。

ユリカさん、とんでもない爆弾発言です・・・・・・・・・・嘘ではありませんが・・・・・・・絶対に誤解します。

 

「「ええーーーーーー!!!!!」」

 

解凍が終わったとたんに、ミナトさんとメグミさんが叫び声を上げました。・・・・・耳が痛いです。

あまりに予想外な発言にリミッターが外れたのでしょうか。

二人がかりとはいえ、ユリカさんにも匹敵しそうな大声です。

 

「ちょっと、それホントなの!?」

「うん、ホントだよ」

「ユ、ユリカさん!!」

肯定してどうするんですか!?

 

「アキトさんて、ロリコンだったの!?」

「ううん、メグちゃん。この場合艦長にも手を出してるんだからロリコンていうわけじゃないわ」

ミナトさん論点がずれてきてませんか。

「ロリから年上までOKな節操なし」

「二股をかけてる鬼畜」

「外道ともいえますね」

その後も、アキトさんを非難する言葉が続いています。

あ!アキトさん、部屋で頭を抱えて座り込んじゃっています。

 

「アキト君、どういうことなの!?説明してもらえないかな」

ミナトさんがコミュニケを開いてアキトさんに質問・・・・尋問の方が適当でしょうか・・・・しています。

口調はとっても優しげなのですが、背後に黒いオーラが漂っています。

「艦長はともかくルリちゃんにまで手を出すなんて、アキトさん変態ですか!?」

メグミさんのこめかみの辺りに血管が浮き出ています。

二人とも爆発寸前です。

 

「「アキト君(さん)!!」」

 

「な、な、な、何を言ってるんだ!!」

そんな風に動揺すると、肯定しているようなものです。・・・・・身に覚えがあるので、仕方ないかもしれませんが。

<だー!ルリちゃん、そんなこと言ってないで、助けてくれ!!>

<私、少女ですから>

<・・・・・・頼むから助けて(泣)>

もう『闇の王子』の面影はありませんね。なんか楽しいです。

・・・・・・・・・私、ここのところ加速度的に人が悪くなってますね(汗)・・・・・・・気をつけましょう。

<アキトさん、嘘ではないけど本当でもない言い方をすればいいじゃないですか>

<そうだな。ありがとう>

それにしても、ネルガルとの交渉では使っていたのに、なぜこういうときは忘れてしまうのでしょう。

・・・・・・・・女性が絡むと全然ダメな所は変わっていないと言うことですか。

 

「黙ってないで、答えてくれないかな、アキト君♪」

ミナトさん、その♪は凶悪です。アキトさん引いちゃってます。

「俺は、二人に何もしてない。・・・・・・この時間では

「本当ですか?」

「ああ、本当だ」

ようやくアキトさん、調子を取り戻しました。

このようにアキトさんが、はっきりと答えると説得力があります。

 

「ルリルリ、本当に?泣き寝入りすることないのよ」

「そうよ、私たちが味方になってあげるから。女の敵は許しちゃダメよ」

前言撤回。まだ疑っているようです。

「アキトさんは何もしてません。・・・・・・戻ってからは

「本当に、大丈夫なのね」

「ええ、ユリカさんも私もまだですから。・・・・・・今の身体は

「まだって?・・・・・・・・・・あ!(///)」

「ルリルリったら。お・ま・せ・さ・ん♪」

考えてみれば、私すごい事言ってますね(///)。

「可愛いー、ルリルリ」

はあ、ホント、勘弁して。

 

 

 

 

 

 

 

「私たち、艦長に担がれたわけね」

「艦長、冗談にもほどがあります」

「えー、嘘は言ってないよ」

ユリカさん、またとんでもないことを言い出すつもりじゃないでしょうね。何か楽しげな感情が伝わってくるのですが。

「だって、アキトは、ルリちゃんと私の初めて好きになった人だもん」

「はあ、そういうこと」

「もう、からかわないでください」

ミナトさんたちもようやく納得したようです。・・・・・・・・・・かなりお疲れのようですが。

もう終業時間ですから、ゆっくり休んでください。

 

「そろそろ時間ね。艦長、お先に」

「それじゃあ、失礼します」

ミナトさんたちが退出していきます。

さて私はどうしましょうか。

「ルリちゃんも終わりでしょ。戻っていいよ」

「いいんですか」

「うん、アキトのことよろしくね」

「それでは失礼します」

 

 

 

 

 

 

 

ブリッジを出て部屋に向かいます。

ユリカさんと私は同室です。三人部屋を二人で使っていることになっています。

アキトさんは隣の部屋です・・・・・・・・・表向きは。

ドアを開けて部屋に入ります。

「お帰り。ルリちゃん」

「ただいま。アキトさん」

『お帰りなさい』と『ただいま』

これだけの言葉がとても嬉しいです。これも、ユリカさんが一緒に住みたがった理由の一つでしょう。

 

結局、ユリカさんの意見がとおって私たちは三人で暮らしています。

それで、やっぱりユリカさんの意見どうり、夜は三人一緒に寝ています。・・・・・・アキトさんを真中にして(///)。

アキトさんの部屋は実際には使ってません。・・・・・・このことをプロスさんには言ってあります。

 

「はあー」

アキトさん、疲れてますね。

ユリカさんの発言のおかげで、二人に詰め寄られていましたから。

「ユリカ、何であんなことを」

<別に嘘は言ってないよ。全部ホントのことだもん>

「確かにそうだけど、だからって・・・・・・」

「ユリカさん、性格が悪くなってませんか?」

<えー、ルリちゃんだって人の事言えないよ>

確かに思い当たる節はありますが・・・・・・・・・。

それにしても、ユリカさん、確信犯ですね・・・・・わざとやってましたね。

 

「にしたって、あんな誤解を招く言い方・・・・・・」

「じゃあ、誤解でなくせばいいじゃない」

「いったいなにを言い出すんだ!!」

傍から見てれば楽しいのですが、私、当事者なんですよね。

「ルリちゃーん(泣)」

アキトさん、そんな泣きそうな顔しなくても。

 

「ねえ、アキト。誤解されるのが嫌なんでしょ?だったらホントにしちゃえばいいんだよ」

「な、な、な、な、な・・・・・・」

<今夜は私夜勤だから、戻らないし。やっぱり二人っきりの方がいいでしょ?初めては。

まあ、リンクを使うと見えちゃうけど、それはしょうがないよね>

「なにを言い出すんです!!」

ユリカさん、すごいこといっています。それって、私とアキトさんが・・・・・・・・(///)。

「だー、なに言ってるんだ!ルリちゃん、身体はまだ十一歳なんだぞ!・・・・・・ルリちゃんも想像しない!!」

<年齢なんて関係ないよ。大切なのはお互いの気持ち。ルリちゃんだって満更じゃないみたいだし・・・・・・・>

ユリカさん、恥ずかしいです(///)。・・・・・・・確かにそうじゃないと言ったら、うそになりますけど。

そして、ユリカさんは意地悪そうに続けました。

<それにアキト、こっちへ来てからルリちゃんに対して、そういう思いを抱かなかったって言い切れる?>

「うっ・・・・・・・・・・(滝汗)」

<そういうわけだから。ルリちゃん、『こっち』のアキトの初めてはルリちゃんにあ・げ・る

 

「「ユリカ(さん)!!!」」

 

<あ、アキト、今度は優しくしてあげなきゃダメだよ♪>

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、お風呂にも入ったし、今日はもうすることがありませんね。

「アキトさん、もう寝ましょうか」

「え!ああ、そうだな・・・・・・・・」

こういうときリンクは問題ですね。アキトさんが思い浮かべた映像が伝わってきます(///)。

 

そういえば、戻ってきてからは二人だけで寝るのは初めてですね。

向こうではいつも二人で寝ていましたが・・・・・・・・・・・・あの時からずっと。

「あの時は、すまなかった」

「いいんですよ、アキトさんなら。・・・・・・・・・アキトさんなら何をしてもいいです」

あの時の様子が浮かびます。・・・・・・・ミナトさんたちが知れば激怒するでしょうけど、でも私は・・・・・・・。

言う必要ありませんね。すべて伝わっているのですから。

「ルリ・・・・・・・・・・・」

「アキト・・・・・・・・・・」

アキトさんと私の視線が絡み合います。

 

アキトさんの顔が近づいて来ます。

私の顔が近づいて行きます。

 

そのまま、アキトさんと私の距離がゼロになりました。

 

 

そして、二人は・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[****]

 

アキトは、プロスペクター、ゴートと打ち合わせをしていた。

「工作員が動き出した」

「では、予定どうりに、ご退場願いましょう」

「うむ」

向こうは気付かれていないと思っているが、ナデシコの中でオモイカネの監視を逃れるのは不可能に近い。

軍の工作員はすべて監視をしていた。それらの通信もすべて傍受しており、叛乱の計画はすべて把握していた。

後は叛乱の鎮圧計画を遂行するだけである。

そして三人は、出て行く。

その後、艦内の各所で鈍い打撃音が聞こえることとなる。

 

 

 

 

 

ブリッジにはナデシコの主要メンバーが集まっていた。その他の人もコミュニケで艦内放送を見ることになっている。

「重要な話ってなんでしょうね?」

「ううん、やっぱりこれからの予定とかじゃないのかな。何も聞いてないでしょ」

まだ、プロスペクターがきておらず、ミナトとメグミは話をしていた。

ルリはオペレーターシートについて仕事をしている。

ミナトたちは気付いてないが、ルリはここからアキトたち三人に指示を出していた。

 

工作員の鎮圧が終わり、ルリの仕事も一息ついた。

「ねえ、ルリルリ。昨日の朝、なんだか歩きにくそうだったけど、もう大丈夫なの?」

「え!?ええ、もう大丈夫です。・・・・・・・・・・・・・・・ちょっとぶつけただけですから」

ルリは表情に出さないように答えた。・・・・・・・・・・また、大騒ぎになりかねないから。

「そういえば、今朝、艦長も何か歩き方がおかしくありませんでした?」

「あ、えっと、ユリカさんと私が同じ部屋って事は知っていますよね。

それで、同じ理由なんです。ちょっとぶつけただけです」

あまりうまい言い訳ではないがそれでも沈黙するよりはましである。

ほとんど嘘は言ってないし・・・・・最後の言葉以外は。

「そうなの。家具の配置でも悪いんじゃないの。二人してぶつけるなんて」

「もう大丈夫ですよ。問題は解決しましたから」

「そう、よかった」

 

 

これ以上この話題を続けてぼろが出るとまずいので、ルリは別の話題を探していた。

「ルリちゃんて、夜勤明けよね。起きてて平気なの?」

ちょうどメグミが尋ねてきたので、これに乗ることにする。

「はい、私はあまり眠らなくても平気ですから」

もともとIFS強化体質であるルリは、常人より睡眠時間が少なくて済む身体だった。

ただし、低血圧なので普段は寝起きはあまりよくない。・・・そのためユリカと一緒に、毎朝アキトを困らせていたりするのだが、それは別の話。

もっとも、復讐期の経験のため、非常時にはすぐに起きられる。

 

「それだって、こんな小さい子に夜勤させるなんて。子供は寝なきゃ大きくなれないのに」

「ミナトさん、私少女です。・・・・・・・・・・それはともかく、オペレーターは私しかいませんから」

オモイカネのオペレートが可能なのは、ナデシコにはルリ一人しかしない・・・・・・・・・・ことになっている。

ミナトはまだ何か言いたげだが、今日だけは仕方があるまい。

ナデシコの目的の発表、そして、叛乱の鎮圧と言う重要な事態があるのだから。

 

などと話をしているとブリッジの扉が開いてプロスペクターとゴートが入ってきた。

皆に注目させてからプロスペクターは話し出した。

 

「今までナデシコの目的地を明らかにしなかったのは、妨害者の目をあざむく必要があったからです。

我がネルガル重工が、わざわざ独自に宇宙戦艦を建造した理由は木星蜥蜴と戦うためではありません。

以後、ナデシコはスキャパレリ・プロジェクトの一端を担い、軍とは別行動をとります」

「われわれの目的地は火星だ」

「それでは、現在地球が抱えている侵略は見過ごすというのですか!?」

「多くの地球人が火星と月に植民していたというのに、連合宇宙軍はそれらを見捨て、地球周辺に防衛ラインを引きました。

 では、見捨てられた火星の人は、資源は、どうなったのでしょう!?」

「あれからもう一年も経っているんだ。全滅したに決まっている」

それらの話をルリは聞き流していた。もう知っている話でもあるし、これからが本番だからだ。

 

「わかりません。しかし確かめる価値はあります」

「まあ、戦争するよりいいわね」

「人助けか。それって、いいことですね」

「では、皆さんの同意も得られたところで、艦長」

「はい、それでは、機動戦艦ナデシコ、火星に向けて・・・・・・・・・・・」

「そうはいかないわ」

突然、ブリッジに入ってきたムネタケが、ユリカの言葉をさえぎった。

その後ろから、数人の武装した兵が入ってくる。

「この船は私たちがいただくわ」

兵士達はブリッジのクルーに銃を向ける。

銃を向けられた経験などないメグミは恐怖で震えている。

ミナトは表情こそ緊張しているが、意外に落ち着いている。

ルリ、ユリカ、プロスペクター、ゴートは平然としている。・・・・叛乱は予測のうちであるし、それにもう一つ理由がある。

「血迷ったか、ムネタケ。この人数で何ができる」

「あーら、私たちだけじゃありませんよ。今ごろは部下達がナデシコの要所を押さえているところよ」

 

「それはどうかな」

ブリッジのドアが開いて、黒い服と黒いバイザーに身を包んだ男が入ってきた。

「ア、アキト君!?」

「なんなんです、その格好」

「その話は後だ」

アキトはルリに合図を送る。ルリは艦内の様子をモニターに写していく。

「ど、どーいうことなの、これは」

そこには縛られた軍人たちが写っていた。

「民間企業の情報収集能力を侮ってもらっては困りますな。叛乱の計画にはとっくに気付いておりましたよ」

「なら、ブリッジを制圧すればいいのよ。あんたたち!」

ムネタケの命令に兵士達が動き出す。

 

アキトは、みぞおちをひざで蹴り上げ、首筋に手刀を落とし、兵士達を気絶させていく。

数々の実戦を行い、鍛え上げられたアキトと並みの兵士では勝負にすらならない。

ものの数秒で兵士の半数は地に伏せた。

 

ゴートも兵士を叩きのめしていく。

実力ではアキトには及ばないが、実戦経験の豊富なゴートも兵士を寄せ付けなかった。

 

 

劣勢を悟って一人の兵士が、ユリカの方へ駆け出した。

艦長を人質に取ろうとしたのだろう。

この兵士は他の者より心得があったらしく、うまくゴートをすり抜けていった。

アキトも他の兵士を相手にしており追うことができない。

 

「艦長!」

メグミが悲鳴をあげた。

ユリカを人質にとられては抵抗できなくなる。それにユリカのことも心配だった。

 

 

バタン!

ユリカが捕まったと思った瞬間、兵士の体が突然回転し床にたたきつけられた。

受身も取れなかったらしく、そのまま気絶していた。

 

「艦長・・・」

メグミはほっとしていた。

「艦長って強かったのね」

ミナトは感心している。

「ユ、ユリカ!?」

一番驚いていたのはジュンだった。

何しろ士官学校時代のユリカの能力を知っているのだから。

まさか兵士を投げ飛ばすとは思いもしなかった。

ジュンにはユリカの動きが見えなかったし。

 

「は、は・・・・・危なかった(汗)」

当のユリカ本人は、引き攣った顔で冷や汗を掻いていた。

メグミたちは、兵士に襲われたことに驚いたのだろうと想像していたが実際には違う。

ユリカは、遺跡のナノマシンの影響で身体能力が強化されている。

さらに、この三ヶ月のアキトたちとの訓練と、リンクによるアキトたちの記憶により、かなり腕を上げていた。

この程度の兵士なら十分以上に相手にできる。

 

しかし、経験が不足しているため、とっさの行動に問題が出る。

技のかけ方を知っていても、それを出すタイミングやつなぎ方は経験を積んで身に付けるしかない。

相手の動きに対応する時、反射的に動けなければ実戦では意味がない。

だから、一流の相手には勝てない。

 

この場合も、反射的な行動に、別の意味で問題が出た。

もともとアキトやルリが身に付けた投げ技は、実戦用の技で、スポーツとは違って、相手を倒す・・・つまり殺す・・・技だ。

その技を、そのまま相手に使ってしまったのだ。

床に落ちる寸前に気付いて威力を弱めたからよかったものの、でなければ頭から叩きつけられて、よくて重症、悪くすれば死んでいた。

ユリカとてその覚悟がないわけではないが、この場合、死者が出れば軍との関係が悪くなる。

 

「やっぱり、もっと訓練しなきゃダメね(汗)」

今回は未遂に終わったが、きちんと制御できるようにしないとまずいだろう。

 

アキトは、ほっとして・・・わかるのはルリとユリカだけだが・・・ムネタケに向き直った。

あっという間に部下を気絶させられて、ムネタケは呆然としてたが。だが、我に返るとアキトに銃を向けた。

「来るんじゃいわよ!!撃つわよ!!」

それに構わず、アキトは近づいていく。

「し、死になさい!!」

敵を倒すためと言うより、恐怖に駆られて、ムネタケが引き金を引いた。

ダンッ!。

鈍い銃声。

「きゃあ!!」

メグミが目をつぶって悲鳴をあげる。撃たれたと思ったのだろう。

 

「ど、どういうこのなの!?これは」

副提督の動揺した叫びを聞いてメグミは恐る恐る目を開ける。

アキトは立ったままで、血を流している様子もなかった。

「計画には気付いていたと申し上げたでしょう。なのに武器をそのままにしておくと思われますか?」

そう、兵士達の銃はあらかじめ、弾を空砲に詰め替えておいた。これなら、クルーに被害がおよぶ心配が少ない。

 

「あんたたち!軍を敵に回して・・・・・・」

最初からすべて踊らされていたと気付いたムネタケが騒ぎ出す。

しかし、その言葉は尻すぼみに途切れた。・・・・・・黒装束のアキトが近づいてきたからだ。

この姿のアキトが発する威圧感には、ムネタケ程度では抗することができない。

「一つ聞きたいんだが、お前は何のために軍に入ったんだ」

「な、なにをいいだすのよ」

「何か目標をもって入ったんじゃないかと思ってな。なのにお前はそれを見失っていないか?

自分を見つめなおすべきだ。自分が何をしたいかを。

親の名など気にせず、自分の目標を追ったらどうだ」

「あんたに何がわかるのよ。あんたみたいな才能に溢れたパイロットに」

ムネタケは気付いていた。囮となったアキトの腕に。その目にはアキトへの羨望が見られる。

「才能か。お前は自分にないと思ってるのか。

自分が親の七光りで出世したと思っているようだが、お前はそんなに器用じゃない。

お前は決して無能でない。そこまで昇進したのはお前の実力によってだ。

それを生かす方法を考えてみてはどうだ。そして自分の道を歩けばいい。

『ムネタケ・ヨシサダの息子』ではなく『ムネタケ・サダアキ』として。

自分らしく生きればいい」」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

黙り込んだムネタケをよそに、アキトはプロスペクターに向き直る。

「こいつらはコンテナに詰めといてくれ。後で返品しておこう」

「わかりました。それにしてもテンカワさん大した腕前ですな」

アキトの言った返品の意味を悟って、かすかに笑いながらプロスペクターが言う。

「たいした事はない。あの程度のこと、プロスさんも容易にこなすだろう?」

「いえ、いえ、私はただのしがないサラリーマンですよ」

プロスペクターはそう言ってにこやかに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酷いじゃないですか!銃が偽物だってことを黙ってるなんて!本当に怖かったんですから」

メグミの目には涙がにじんでいる。

それは、銃を向けられたからだろうか。それともアキトが撃たれたと思ったからだろうか。

「申し訳ありません。ですが、できるだけ知っている人を少なくしておきたかったのですよ。彼らに気付かれないためにも」

プロスペクターの謝罪の言葉にメグミはしぶしぶ納得する。

 

「それから、艦長もご苦労様でした。おかげで助かりました」

「いえ、それほどでも」

ユリカとしては今回は自慢する気にはなれない。

「ちょっと艦長には、びっくりしたかな」

「そうですね、あんな大きな人を投げ飛ばすんですから」

「ユリカ!いったいいつの間に!?」

「秘密の特訓をしたの。・・・・自分の身くらい守れるようになりたいから」

いつもどうり明るいユリカの言葉。しかし、そこに秘められた意味を識るのはルリとアキトだけだった。

 

「さてと、アキト君のその姿について聞きたいんだけど」

「びっくりしましたよ、いつものアキトさんと全然違うから」

「ああ、これは戦闘服だ。防刃、防弾仕様となっている」

他にも、個人用ディストーションフィールド発生装置などが組み込まれている。

「ふーん、そうなの」

「だから、そんな格好してるんですか」

「まあ、そんなところだ」

本当はもう一つ理由がある。心の切り替えのためだ。

ルリの師より学んだ精神制御、それを行いやすくする小道具でもある。

 

いかなる時も、平静を保ち、次の手を冷静に考える。

感情と行動を切り離す。

 

クリムゾンの研究所を襲撃した時もこの姿をしていた。

ルリも同じ姿をしていたが、こちらは実用的な意味がほとんどだ。精神制御を徹底して学んだルリに小道具は必要ない。

 

 

 

 

と、まあこういう理由があるのだが、

最近ユリカやルリに振り回されてばかりいる自分を省みて、

少し自分を見つめ直そうとしているのが一番の理由だったりするのは、アキトだけの秘密だ(笑)。

 

 

 

 

 

「さて、それでは、艦長、改めて」

プロスペクターの促しに、ユリカは先ほど中断した台詞を口にする

「はい、それでは、機動戦艦ナデシコ、火星に向けて・・・・・・・・・・・と言いたいとこだけど、ちょっと待ってね♪」

 

ガクッ!!

 

間を外されて、ブリッジの皆が思わず脱力してしまった。・・・・・・・・・わざわざユリカはさっきと同じところで台詞を止めたし。

 

「ルリちゃん、周辺海域を探査して」

「はい、わかりました」

ルリはある程度の予想をしてたので、ダメージは少なく、すぐにユリカの指示を実行する。

他のクルーはまだ突っ伏していたりする。

 

「連合宇宙軍の艦が三隻、海中に潜んでいます。さらに休眠中のチューリップが一つ」

「宇宙軍に通信を。チューリップの動向には注意してください」

 

「どうしてわかったの?艦長」

「あの人員では、艦の占拠はともかく、拿捕はできませんから。付近に味方の部隊がいると予想できます」

「まさに逸材ですな」

プロスペクターが艦長の洞察力を誉める。自分のスカウトとしての目に自信を持ったようだ。

 

 

 

 

 

宇宙軍は潜行していることを見破られたのに気付き浮上してきた。

戦艦トビウメ、護衛艦クロカッスとパンジー。

通信が開く。

「地球連合宇宙軍、ミスマルである」

「お父様」

 

「ユーリーカー!!!!!!!」

 

凄まじい音量に、ブリッジクルーの気が遠くなる。

「迂闊・・・・・忘れてました・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ルリは自分のミスを悔やんだ。頭がくらくらする中、何とか耳に詰め物をする。

ちなみにアキトはエステバリスで待機するために格納庫へ向かっており無事だった(笑)。

 

「無事だったか!!元気か!!病気になったりしてないか!!ちゃんと食事はとっているか!!!なんかやつれてないか!!!!!・・・・・・・・・・・・・・・」

 

超音波兵器は永遠と続く(笑)。

まるで何年も会っていないかのようだ・・・・・・・一昨日会っているはずなのに。

ユリカはこの大音響の中一人平然としていた。

大声には免疫があるらしい・・・・・・・・・まあフグが自分の毒で死なないのと同じだろう(笑)。

 

ミスマル提督の言葉は途切れない。

このままでは埒があかないので、ユリカが止めに入る。

 

 

 

「お父様!!静かにしてくださーーーーい!!!」

 

 

 

しかし止め方が悪い。

ミスマル提督をも上回る大絶叫。・・・・・・・声量ではついに親を超えたようだ(笑)。

確かにミスマル提督の言葉は止まった。

しかし同時に他のクルーも止まってしまった。

ナデシコ、宇宙軍とともに、ブリッジクルーは、ほぼ全滅。・・・・耳に詰め物をしたルリでさえ気が遠くなりかけたのだからすごいものだ。

この後、ブリッジメンバーを失った両者は機能不全に陥り、交渉が始まったのは三十分後だったりした。

ちなみに、パンジーは、音声通信システムが再起不能になったという。

 

 

 

絶叫魔女。恐るべし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気を取り直して、交渉が再開した。

ユリカ、ジュン、プロスペクターが交渉のため、トビウメに乗り込むことになった。

マスターキーは、チューリップの存在が確認されたため、抜かれることはなかった。

 

「それじゃあ、いってきます。ルリちゃん、ナデシコをお願いね」

「はい、わかりました」

「うん、私が戻ってくるまで、ルリちゃんに指揮権を委譲します」

「「「「えっ!!」」」」

ミナトとメグミ、ゴート、それにジュンが驚いている。

「現時刻を持って、ホシノ・ルリを艦長代理に任命。期限は、ミスマル・ユリカが復帰するまでとします。ビシッ!」

「拝命します」

ユリカは、軍人らしい・・・・・・芝居がかった・・・・・・・口調で、ルリを艦長代理とすることを告げる・・・・・・敬礼まで付けて。

ルリもそれに付き合って、敬礼を返した。

ルリが付き合うとは思いもよらなかったのだろう、ミナトやメグミはぽかんとしている。

「ルリルリでも冗談を言うのね」

ミナトは思わずそう呟いていた。

 

 

「ちょっと、ユリカ。何でルリ君なんだ!?」

「そ、そうよね。どうして、ルリルリなの?」

「普通、十一歳の女の子に艦長代理をさせます!?」

「むう・・・・・・・・・・」

「ルリちゃんなら大丈夫です」

皆が疑問に思うのも当然だろう。

でもこれは最良の人選だ。

残るメンバーの中では、ミナトとメグミは戦闘に関しては全くの素人だ。

フクベ提督は、経験は豊富で有能ではあるが、あくまでオブザーバーの立場である。

ゴートは従軍経験があるものの、戦艦の指揮経験はない。

しかし、ルリは、わずかな期間ではあるが軍で艦長としての教育を受けており、さらに豊富な実戦経験がある。

この後、チューリップとの戦闘が控えており、自分が不在のとき、指揮を取れる人間はルリしかいない。・・・アキトは出撃する必要があるし。

ユリカはこのように考えている。

 

もっとも知らない人から見れば無茶な人選としか思えない。・・・・・・普段のユリカの態度も影響している。

だが、プロスペクターは疑問をはさまなかった。

彼は、戦闘に関してはユリカの能力や判断力を信頼していた。

「そろそろいきましょうか。ミスマル提督が待ちくたびれてしまいます」

「うん、じゃあ、ジュン君、行こう」

「・・・・・・ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ユリカたちが交渉に赴き、ナデシコは警戒体制のまま待機していた。

叛乱を起こした兵士をトビウメへ届けたアキトは、現在エステバリスで待機中。

ルリはブリッジで事態の推移を眺めていた。

そして、つかの間の平穏が破れる時がくる。

 

「メグミさん、総員に臨戦体制を発令してください」

「へ!?何?どうしたの?」

「チューリップが動き出しました。・・・・あとトビウメへ連絡、ユリカさんたちを戻すよう伝えてください」

「え!?うん、わかったわ」

「ミナトさん。チューリップの背後に回ります。ナデシコの進路だします。これに従ってください」

ルリはミナトの前のウインドウにナデシコの予定コースを写す。

「あ!?OK。わかったわ、ルリルリ」

突然、指示を出し始めたルリに戸惑っていた二人だが、その指示が的確であるのを悟り、指揮に従った。

「エステバリス、発進してください。ナデシコのコースをそちらに送ります。チューリップの誘導願います」

「了解」

ヤマダ・ジロウはまだ骨折が治っていないので、パイロットはアキト一人だ。・・・・ちなみに、ベッドに縛り付けられて、おまけに睡眠薬で眠らされていたりする。

 

ルリは、ユリカにも予定進路を送る。

「アキトさん、クロッカスの援護にミサイルを発射します。進路上に入らないで下さい」

ミサイルは、チューリップに命中し、その動きを止めた。

「クロッカス、チューリップより離脱。ナデシコ移動開始してください」

「OK」

 

「艦長たちの乗ったヘリが、離れていくけど。・・・どうしたんです?艦長」

《戦闘の邪魔にならないように離れるわ。戦闘終了後に着艦します。それまでよろしく!》

「ええ!?」

メグミが驚く。艦長が指揮を委ねてしまったのだから。

でも、ユリカは最初から自分が戻る前に戦闘になってしまったら、こうするつもりだった。

ヘリが近づけば足手まといになるだけだから。

このことはルリも承知していた。

 

 

 

「予定地点に着いたわ」

「アキトさん退避してください」

アキトのエステバリスが安全圏まで退避する。

「グラビティブラスト発射」

ルリの指令により発射されたグラビティブラストがチューリップを粉砕した。

「やったあ!!」

メグミが歓声を上げる。

「ルリルリすごい」

「見事だ」

「むう、たいしたものだ」

予想もしなかったルリの手腕を、ミナト、フクベ、ゴートが誉めたたえる。

「まだ終わってませんよ。エステバリスとヘリを収容後、この空域を離脱します」

 

 

 

 

 

 

「ミスマル・ユリカ、ただいま戻りました。ブイ!!」

ヘリから降りたユリカは、お得意のポーズを決めた。

いつものことなので、クルーはもう慣れてしまっていたが。

「お帰りなさい、ユリカさん」

「お帰り、ユリカ」

「ルリちゃん、アキト、ただいま。それから、ルリちゃん、ご苦労様」

挨拶をする三人。何かほのぼのとした雰囲気が流れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナデシコのクルーは戦勝にうかれていた。

そのためほとんどのクルーは気付いていなかった。

交渉に行ったのは三人だったのに、ヘリから降りてきたのは二人だけだったことに。

クルーに認識されていない影の薄さ・・・・・哀れなり・・・・合掌。

 

 


あとがき

 

こんにちは、無色です。

第五話をお届けします。

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・

だんだんと、ルリとユリカが壊れています。

特にユリカが・・・・・・・・・・・・。プロローグの雰囲気はどこへ行ったのでしょう。

某最強人妻集団の企みか、はたまた、やっぱり割烹着の悪魔の陰謀か・・・・・・・。

 

まあともかく、今回ルリパートがやけに長くなりました。

最初はおまけくらいのつもりだったのに、これが全体の半分近くを占めています。

 

ユリカがアキトとルリを振り回しています。特にアキトが被害にあっています。

ルリも、ときどきアキトをイジメちゃってますから、力関係は、ユリカ>ルリ>>アキトというところでしょうか。

それから、今回のアキト君がシタことについては・・・・・・・・・・・・・・・・・・なにも言わないでおきましょう(笑)。

 

その他としては、ジュンが悲惨ですね(笑)・・・・・・・・・話を聞いてもらえなかったり、忘れられていたり。

でも、もっと悲惨なのは、ダイゴウジ・ガイ(自称)でしょうか・・・・・・・・・・・・今まで一度も台詞なし(笑)。

別に嫌いなキャラではないんですけど・・・・・・・・・。

次は、防衛ラインの突破なのででてくると思います・・・・・・・・・・・・・たぶん。

 

アキトとムネタケの会話・・・・・これは説得というより洗脳って気が・・・・。

洗脳に使われる手段としてこういうのがあります。

周りから否定され追い詰められた者を、肯定して救い上げる・・・・・すると、助けられた側は、助けてくれた人が救世主に見える。

洗脳に使われるセンシティビティ・トレーニングもこの類だし。

なんか、ここの会話って、この類型なような・・・・。

まあ、この後ムネタケの再登場は未定です。少なくとも、アキトに洗脳されたムネタケというのは出てこない・・・・・はずです。

 

 

 

あとは、ユリカがパワーアップしています。いろんな意味で(笑)。

ひょっとして最強なのはユリカなのではないかと思う今日この頃。

やっぱり人妻は最強なんだろうか・・・・・・・・・(意味が判らない方はすみません)。

 

 

それから、前々回から特殊な文字(ハートマーク等)を使用している所があります。IE5.5では正しく表示されますが、その他では確認していません。

うまく表示されない場合があるかもしれないので、そのような方がいたらすみません。(少なくともFontPageのプレビュー画面ではうまく表示されませんでしたので)

 

では、これで失礼します。

 

 

追伸

 

ここのユリカは、『アーパー吸血鬼』が7、『割烹着の悪魔』が3、というところしょうか。

『割烹着の悪魔』の被害者は、主にアキト(あとルリが少し)。

『アーパー吸血鬼』の被害者は、ほとんどが某副長でしょう(笑)。

 

 

 

 

代理人の感想

ユリカ爆走中。

「壊れルリ」に関しては押しも押されもせぬ「アレ」があるのですが

こう言う風にポジティブに壊れたユリカと言うのは結構新鮮なのでは(笑)。

かく言う私も大好きです(笑)。

 

 

>最強の人妻

・・・・・・某鍋つかみの石破「了承」拳のひとでせうか。

(さらに分かりにくくて申し訳ない(爆))

 

 

 

>艦長代理の人選

 

ジュン置いてけばいいじゃないか

 

と思った人、手を上げて(笑)。

つーか、普通艦長の代理を務めるのは副長じゃないのかなぁ・・・・・哀れジュン。