「暑い――あーほんとに暑い暑い暑い……」


延々と愚痴を言いながらジェイクは道を行く。


時刻は丁度通勤のピークも過ぎた辺りで、今ジェイクがダラダラ歩いている通りには殆ど人影が見当たらない。


と、不意にジェイクは立ち止まり、にへらと顔を弛める。


「おっ、そんなに際どい格好で俺の前に姿を現すたー、俺のことを誘ってるな?」


薄着の女性を発見したジェイクは妄想に突入したようだ。その女性までの距離およそ五十メートル、彼の脳内では一体どんな化学反応が起こっているのだろう。


そのまま真剣な顔でじっと女性の胸あたりを凝視していると、唐突に背後から声がかけられた。


「ジェイク・ラードさんか?」


「ちっ……何だ――」





























その日の朝。


昨日の約束どおり昼にディオスたちと会う予定のアキトたちは身支度を整えホテルを出た。まだ約束の時間までには随分あり早すぎだが、ホテルでじっとしていることにジュリスが耐えられなかったのだ。


空には、カッという擬音さえ聞こえてきそうなほど熱い血潮をたぎらせる太陽。気温は例年を大幅に超え、朝にも関わらず地面から立ち昇る熱で陽炎が発生している。


このジュエルシティには環境調整するような設備は導入されていないため、人々は茹るような酷暑をダイレクトに味わうことになる。


「いやー、今日も暑いねー! サイコー!」


きっと寒くても変わらないのだろうハイテンションぷりを発揮して、ジュリスが太陽に吼える。その肩下まで伸びた金髪が光を反射してキラキラと輝く。


これだけ嬉しそうに呼びかけられたら、太陽の方も悪い気はしないだろう。顔があれば「フッ、惚れるなよ。火傷するぜ」とかほざきそうだ。


そんな元気娘は置いておいて、アキト、ルリ、ラピスは前日をかなり超える暑さにゲンナリした様子だ。


「アキト、暑い……疲れた」


くてーとアキトにもたれ掛かり、ラピスが音をあげる。これで本日三度目だ。


だがこのクソ暑いなか、引っ付かれるアキトもたまったものではない。


「俺も暑い。だから離れろ」


暑さのためか語気も荒く、少々強引に襟を掴みラピスを引っぺがす。


アキトの手からブラーンと猫のように吊り下げられたラピスは、不満なのか頬を膨らませている。


だがアキトはそんなラピスに取り合わず地面に降ろす。


「はあー、ラピスもいい加減にしろよ……ルリちゃんからも言っ……おい」


「へ?」


手で胸元をパタパタと引っ張り、少しでも暑さを和らげようとしていたルリが、驚いたように振り向く。


「その、あんまり女の子がそんな風にするもんじゃない……というか、下着もつけてないのか?」


「暑いですから」


しれっと答えるルリ。まあ胸が見えるほど開いていたわけではないので、気にしてないのだろうか。


むぅーと全然納得してないが、アキトの暑さにやられた脳みそは、もうどうでも良いという結論を出した。


「はははっ、もう知らん。そんなことよりこの暑さをどうにかしてくれ」


どこか遠くを眺めるその瞳は濁っている。


見れば道行く人々も力なくうな垂れ、働きすぎの太陽に頼むから休んでくれと訴えているようだ。


「うあー、この暑さはたまんないね!」


そんな中、一般人とは違う感覚の持ち主だけはテンパったように大声ではしゃいでいる。


(あの女はこの暑さで頭がおかしくなったのか?)


恐らくはジュリスを見た人々は皆こう思ったことだろう。

























アキトたちは軽く食事を取って行こうと、手近な店に入った。


店内は当然冷房が効いており、外とはまるで別世界だ。


「はー、生き返る」


窓際のテーブルに着いたアキトは、やたら爽やかな笑顔を振りまく。もう少しレベルが上がればきっと歯が光るのだろう。


そんな上級者一歩手前のアキトは置いておいて、他の三人……いや二人、ルリとラピスも何やら清々しい良い顔をしている。ジュリスは変わらずハイテンションだ。


席順はアキトが通路側、その右隣にジュリス。アキト正面にルリ、その隣がラピスとなっている。


と、アキトたちのテーブルへウェイトレスが注文を聞きに来る。


「アキト、アイスが食べたい」


すかさずラピスが注文を催促する。だが今回はラピスだけではなかった。


「あの、私もアイスをお願いします」


ルリがすっと手を挙げ、自分の分も頼む。


(確かにこれだけ暑いと冷たいものが欲しくなる)


うーん、とアキトも注文するか悩む。えらく真剣で、周りの音も聞こえなくなる。無駄に集中力がある男だ。


「ああ、私はサンドイッチで、こっちの男はこの【暑さを熱さで吹っ飛ばそう麺(全て食べきればお食事代タダ)】をお願いします」


横からジュリスがさっさと注文を決めてしまう。だがアキトは尚も考え中。


注文を確認した後、ウェイトレスはさっさと戻っていってしまった。


「あれ? ウェイトレスはどうした?」


ようやく自分もアイスを食べることを決めたアキトは、気づいたときにはウェイトレスが居らずに戸惑う。


「ああ、大丈夫。アキトもアイスを食べるんでしょ? 私がちゃんと注文しといてあげたよ」


内に含んだ企みを欠片も見せないその笑顔に、アキトも疑問に思わず礼を言う。


だがこの場にアキトの味方はいた。


ラピスが不思議そうにアキトに教えようとする。


「アキト違――」


しかしそれを、脇からルリが口元を押さえ遮る。


《ラピス、大丈夫です。アキトさんは分かってますよ》


わざわざリンクを使ってまで、ラピスが余計な事をしないように説得する。


それにはラピスも、そうなのかな、とアキトへ教えることを止めてしまう。


こうしてアキトの地獄行きは決定された。















ドン


テーブルを揺らして置かれた大きなドンブリ。


中にはグツグツと煮えたぎる液体に漬かった、青みを帯びた白い細長い麺に、黄土色のネギみたいなものや、ヤバ気な模様をしたキノコの具、何より目を引くのはスープが黒ずんだ赤緑色をしていることだ。この店のコックはかなり疲れているのだろう。


見るからに色々間違ってしまっている【暑さを熱さで吹っ飛ばそう麺(以下略)】


それを見詰めるアキトの目は虚ろで、手に持つ箸がフルフルと揺れている。


「これは凄いですね」


予想を斜め上に超えてきた現物に、ルリはアイスをパクつきつつも、どこかワクワクした目をしている。


「アキト頑張れー」


こんな状況を作り出した張本人は悪びれた様子もなく、サンドイッチを口に運ぶ。


それには今まで呆然としていたアキトもキレて、


「こんなものが食えるか!」


本心をぶちまける。


だが――


「アキト食べないの? いつもは私に、出されたものは全部食べなさいって言うのに?」


ここで、状況をいまいち飲み込めていない少女が小首を傾げて尋ねてくる。それは本当に不思議そうに、純粋なまでの目で見詰めながら。


「ぐっ」


いつも教えている本人がそれを破る。それはやってはならないこと。


何よりそんな目で見られたら、期待を裏切ることなど出来るはずがない。


「――いいだろう。今まで幾つもの強敵を乗り越えてきた俺にとって、この程度の毒物など敵ではない」


シニカルに笑うアキト。その脳内では次々と過去の情景が再生されていた。


かつてのナデシコにおいて、伝説の殺人シェフたちが生みだした数々の生物兵器によって耐性を得ている俺に効くものかよ、アキトそう信じる。


「いざっ!」


アキトは箸を構え直す。その体からは鬼気迫るオーラが立ち昇る。


「いくぞ」


ナメクジにも負けそうな速度で、ノロノロと箸が麺へと伸ばされる。早くもオーラは霧散した。


「本当にいくぞ?」


遅滞戦術も僅かに先延ばしに出来ただけで、最後の悪あがきと三人に確認する。


「早く食べてください」


「アキト、食べなきゃだめ」


「早くー」


「……フッ、俺の生き様をその目に焼き付けろ!」


とうとうヤケクソになり、麺も具もスープも一息で口に詰め込み、一気に飲み下す。


直後、アキトは脳天を貫く衝撃に意識を手放した。














「はっ」


背もたれに体重を預けて、気絶していたアキトが目を覚ます。


「おっ、アキトが起きたよ」


横に座るジュリスがアキトの顔を覗きこみつつ、ルリとラピスに教える。


「おはようございます」


「アキトおはよう」


なぜか挨拶をする二人はともかく、アキトの意識は今だ朦朧としていた。


「……俺は寝てたのか?」


どうにも記憶に欠落があるらしい。脳に損傷がないか心配なところだ。


「――なあ、飯はまだか?」


「……アキトさん。そういうボケはもう少し歳を取るまで止めた方が良いですよ」


面白くないですから、と情け容赦なくルリは切り捨てる。


ちっ、と舌打ちするアキト。本人も分かっててボケたようだ。彼はどこか遠くを目指しているのだろう。


「あーでも本当にあの麺を食った後の記憶がない。俺はどれくらい寝てたんだ?」


「約二十分だね」


いつの間にか注文していた100%果汁ジュースをストローで啜りながら、ジュリスが教えてくれた。


「ああそうか……俺は二十分も放置されていたわけか……」


突然アキトの右腕が霞んで、ゴン、という鈍い音が聞こえたと思ったら、ジュリスが頭を抱えてテーブルに突っ伏する。なぜかジュースは倒れず立ったままだ。


さらに止まらず、ルリの額にデコピンをお見舞いする。


「痛っ」


手加減されているがアキトのデコピンはかなりの威力で、ルリは涙目で額を押さえる。


とりあえず自分の敵に回った二人にお仕置きを済ませたアキトは、唯一味方だったラピスにだけは、いい子いい子と頭を撫でる。


嬉しそうに目を細めるラピス。


悪い子には罰が当たり、良い子にはご褒美があるという一つの例だろう。















そんな馬鹿なことを繰り広げたアキトたちだが、そろそろ店を出ることにした。アキトの奮闘の結果、食事代がタダになった一行は悠々と席を立つ。


と、唐突に店内の中空にニュース放送のウインドウが出現した。


アキトたちは何気なくそのニュースに耳を傾ける。


『……本日午前X時Y分ごろ、△×○ホテルにて宿泊中の、ジェイク・ラードさんが何者かに刃物で刺され重体、すぐに中央病院に搬送されました。目撃者によると犯人は逃走したもようで………』


「……う、そ」


聞いた事が信じられないといった様子で、ジュリスは愕然と立ち尽くす。


そして、それはアキトたちも同じだった。

























中央病院:ICU(集中治療室)


手術中のランプが灯るICU前で、長椅子に腰掛けたアキト、ルリ、ラピス、そしてジュリス。





「兄さん……お願い、神様、兄さんを助けて……」


必死に祈りを捧げるジュリス。その肩は震え、頬を涙が伝う。


アキトはその痛々しいジュリスの様子に、胸を痛ませながらもジェイクの無事を祈る。


ルリも目の前で手を組み、必死に祈りを捧げている。


ラピスもまた、身近な者を失うことを恐れるかのように涙を浮かばせながらも、懸命に祈る。










「アキトくん」


不意に聞き覚えがある声が聞こえた。


顔を向ければディオス、カザハ、フウカが足早に彼らの元にやって来る。


「ディオスさん」


「さっきジェイクくんのことを知ってね。すぐに駆けつけたんだが……」


後が続かず、今も涙を流し懸命に祈り続けるジュリスに、ディオス、カザハ、フウカも声をかけることも出来ず目を伏せる。


ディオスも、カザハも長椅子に腰を降ろし、じっとICUを見上げる。フウカはラピスの隣に座り、そっとラピスの手を握る。


もうそれ以上は言葉を交わすこともなく、彼らはジェイクの無事を祈った。



それから二時間以上経った頃だろうか、片時も席を離れることなく、ただジェイクの無事を祈り続ける一同の元へ招かれざる客が訪れた。















二人の男。


一人はくたびれた背広を着崩した中年とおぼしき男。岩のような角ばった顔に、上背はアキトより僅かに上程度のがっしりした体格で、中年男性に良く見られる肥満とは無縁のようだ。


もう片割れはどこかヒョロっとした長身の若い男で、中年とは逆に背広をピッチリ着込み、気が弱そうなな顔は細長く、相方とはまるで正反対だ。


この二人の外見に対するルリの第一印象は、中年=岩男 若い男=モヤシ小僧だそうだ。










アキトたちに悠然と近寄ってきた二人組み。その内の岩男(仮)がダミ声で話しかけてきた。


「我々は大法院の者です。今回の事件について何か心当たりがないか伺いに来たのですが。ジュリス・ラードさんはどなたですかな?」


まるでジェイクに襲われる理由があるかのような物言いで、傲然とアキトたちにねめつける。


おまけに脇からモヤシ小僧(仮)が「たしか金髪の……」と岩男(仮)に教えるようにジュリスの方に目を向ける。


ジュリスが誰か分かった岩男(仮)は、ふむ、と頷き足を踏み出そうとする。だが――


「待ってもらえますか。事情聴取は後でも構わないでしょう?」


岩男(仮)からジュリスを隠すように、ディオスが前に立ちふさがる。


「あなたは……グラウンの会長がなぜこんなところに?」


「襲われた彼は、私の友人でしてね」


「なるほど、そうでしたか。……ですがいくらグラウンの会長とはいえ、我々大法院の職務を妨げることは許されてませんよ?」


岩男(仮)はズイッとディオスの脇を通り抜け、ジュリスの前に出ようとする。


が、またしてもその前に立ちふさがる者がいた。


「待て、あの子の様子を見てみろ。今の状態でまともな話が聞けると思うのか?」


岩男(仮)を睨みつけ、アキトは出直すように要求する。


その鋭い眼光を受け額に汗を滲ませつつも、岩男(仮)はジュリスの様子を確認する。


急な事態に驚いたように岩男(仮)たちの方を見上げているが、目は赤くなり、その頬には涙の跡がくっきりと浮かび、血色も悪く青白い、それらが合わさり酷く弱弱しく思えた。


岩男(仮)は幾らか逡巡したが、結局、


「ふー、分かったよ。一度出直すことにする」


深いため息を洩らした後、モヤシ小僧(仮)の背をバンッと叩き「さっさと帰るぞ」と八つ当たり気味に怒鳴りつけ引き上げていった。















岩男(仮)たちが去った後、アキトは彼らのことをディオスに尋ねた。


「あの連中は大法院と言っていたが、刑事みたいなものか?」


「大法院の内部組織の一つで……まあ今でも警察や刑事と呼ばれてるけどね。あの二人はまだ話が分かる方だったけど、中には職務に忠実な優等生も大勢いる。グラウンの治めている都市なら融通も利くけど、ここは中立都市だからね。実質は大法院の管轄下さ」


カザハがすっとディオスの傍による。あいも変わらず無表情だが、微かに困っているようにも見える。


「ディオス様。あまりでしゃばり過ぎると後々問題になることもあります。注意してください」


秘書として忠告は忘れないようだ。あれくらいでどうこうなる事もないだろうが、余計な問題は起こさないに限る。


ディオスは軽く肩をすくめることで、忠実な相棒に答える。


と、そこで掠れた声が横から聞こえた。


「……アキト、ディオスさんありがとう」


ポツリとジュリスが二人に礼を言う。弱弱しいが微かな笑みを口元に浮かべ。


アキトはそれにフッと笑い席に戻る。ディオスも構わないと微笑み、カザハと一緒に長椅子に座り直し、黙然と目を瞑る。


そして再び、刑事二人が来る前と同じように、ピンと張り詰めた静けさが辺りを包み込んだ。

























それからどれほど経っただろうか。



不意に、手術中のランプが消えた。




思わず息を詰める一同。




ジュリスも、アキトたちも知らず立ち上がっていた。





ドクン



ドクン






開かれる扉。




ドクン



ドクン





この後に待つものを恐れるかのように足が震える。





口が戦慄く。





中から執刀医が出てくる。




ドクン



ドクン




萎えそうになる足を必死に踏みしめ、ジュリスは医師の元へと歩み寄る。



その後姿が、アキトにはまるで迷子になった子供のように思えた。





医師が振り向き、マスクを外し出す。





ジュリスは涙の跡を残した顔で、それを見詰める。





ドクン!





「あ……」




掠れたように漏れたジュリスの声。















その視線の先では医師が、















「一時危険な状態が続きましたが、手術は成功です」






長時間の手術によりやつれていたが、ジュリスを安心させるように穏やかな笑みを浮かべていた。





「あ……」




全身が弛緩したように、ジュリスがその場に崩れ落ちる。





「あ、りがとう……ありがとう、ございます……」





後はもう、言葉にならず嗚咽を上げることしか出来なかった。

























病院内にある一室。


手術後ジェイクはこの病室に運ばれてきた。


ベッドに力なく横たわり眠りについている。



「良かった……良かったよー。兄さんが生きてる……」



ジュリスはその兄の右腕を取り、掠れた声で呟く。また涙が零れるが、今度はうれし泣きだ。


アキト、ルリ、ラピスにディオス、フウカも無事助かったジェイクにホッとしたような笑みを浮かべている。


と、そんな一同の背後から、先ほど携帯端末に通話の着信があって病室から出ていたカザハが姿を現し、何やら真剣な顔でディオスを呼ぶ。


他の一同から少し離れたところでカザハはディオスに体を寄せ、耳元にボソボソと囁く。


アキトたちには何を言っているのか分からなかったが、唯一内容が聞こえているディオスは驚いたように僅かに目を見開く。


「本当か?」


声を潜めて確認するが、カザハは何も言わずに頷く。


「どうかしたんですか?」


とりあえずルリが質問する。何となく他の連中も聞きたそうな顔をしていたためだ。


「ああ、少し問題が起こってね。すぐに本社に戻らなくてはいけなくなった。――すまないがこれで失礼させてもらうよ」


最後の方はジュリスに申し訳なく告げる。


だがジュリスもディオスの立場を分かっているため、そっと笑顔で頭を振り「ありがとうございます」と兄を心配して駆けつけてくれたことへの礼をする。



ディオスは軽く手を上げて、カザハはアキトたちに深々と頭を下げ別れの挨拶とし、フウカは少し寂しそうにラピスに「またね」と笑いかける。ラピスも同じように微笑み再会を約束する。


こうしてディオスたちは病室を後にした。

























病室の窓から覗く外は薄暗く、もう夜といってもいい時間だ。



ジュリスはベッドの傍の椅子に座り、じっとジェイクの様子を見詰めている。


ルリは先ほど一度ホテルに戻り、ジュリスの着替えなどを持ってきた。今はついでに買ってきたリンゴのような果物を、くりくりと果物ナイフで剥いている。良く見れば器用に動くその手には、幾つかマメや擦り傷ができているのが分かる。


ラピスは長時間続いた緊張状態に疲れ果てたのか、アキトにもたれ掛かってスースーと寝息を立てている。


そんなラピスをそっと膝の上に寝かせてやり、アキトはジェイクに目をやった。


医者の話では数日の間に、意識も戻るだろうとのことだ。それは良かった。


だが……



ギリ


アキトのかみ締められた歯が音を立てる。



先ほどまではジェイクの容態だけに意識を取られて考える余裕がなかったが、落ち着いた今では沸々と怒りがこみ上げてくる。





ジェイクがいなければ、ラピスは死んでいたかもしれない。アキトも感覚が戻らず、残り少ない寿命のままだっただろう。


アキトはジェイクに返しても返しきれないほどの恩があった。


だが何より、そんなものがなくても一緒に暮らす家族みたいなものだ。


(それを……傷つけられて、黙っていられるか!)



アキトの瞳に決意が宿る。


必ず犯人を捕まえる、と。













あとがき


なぜかサスペンスっぽい気がしなくもない今回の話。なんでこんな風になったのか分かりません。


この先アキトたちは犯人を追う予定です。


それと、どういうわけかアキトがおかしくなってきてます。心境の変化でもあったんでしょうか……。





>代理人様、少しは軽めの文章にしようと意識してやってみたんですが、どうでしょうか?


あとウインドウの使い方ですが、宙に出現するものやディスプレイなどの装置の画面に表示される窓がウインドウで、装置自体はモニタやディスプレイとしようと思うのですが。



 

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代理人の感想

「なんてこった、まともなのはワシ(読者)ひとりかっ!」

と、思わずジョジョの奇妙な冒険第三部「太陽(ザ・サン) 」編のジョセフの如く叫んでしまいたくなる情景でしたねー。

全員まるで別人なんだもの。w

 

それはともかく、路線はこのままでよろしいかと。

太陽の「俺に惚れるんじゃねぇゼ」あたりはちょっと笑いました。

無論全体的に見れば文章や構成がまだまだではあるのですが、方向性としてはこのままがいいかなと。