Grim Reaper
第零話
終局と変わり始めた時
人の世界において、赤は生を司る色とされている。
「桜が赤いのは、根元に死体が埋まっているから。」
などと言う言葉が紡がれるほどに、赤という色は人の生に近いものを感じさせる。
しかし、それは生の対たる死をも意味する。
生を司る赤。
それはそのまま、生そのものとも言えるのではないだろうか。
ここに、赤一色に彩られた世界がある。
器たる身体を捨てた生命のみが存在する世界。
そんな世界に、取り残された様に一人の少年がいた。
砂に汚れた黒いズボンと白いYシャツを着た彼は、
深く空虚な瞳を命の源泉と化した赤い海へと向けていた。
あまりにも鮮やかな紅眼と、艶やかな光沢を放つ灰銀の髪は、
神々しい印象さえ覚えそうになる。
しかし、彼自身が纏う不安定で無感情な雰囲気がその全てを消し去っていた。
人って勝手なんだ。
大人とか、子供とかに意味なんてないんだ。
ただ、みんな勝手だったんだ。
「俺はお前を殴らなあかん!殴らんと気が済まんのや!!」
トウジはそう言ったよね。
だったらトウジは戦えたの?
呼ばれて行った場所で、いきなりEVAに乗って戦えって言われて。
それでもトウジは戦えたの?
「いいよな。俺もEVAのパイロットになれないかな。」
ケンスケはそう言ったよね。
変わって欲しかった。
ケンスケでもやれるって言うなら、変わって欲しかったんだよ。
見たでしょ?
第四使徒のときに、エントリープラグの中から。
僕が使徒と戦っているのを。
使徒と戦うのは怖いんだ。
殺されるかも知れないから。
殺さなきゃいけないから。
EVAに乗るのは嫌なんだ。
誰も僕を見ていないって、碇シンジは要らないんだって再確認させられるから。
それを見ていたはずなのに、ケンスケはそれでも乗りたいって言ってたよね。
結局ケンスケも同じだったんだね。
ケンスケも、僕をサードチルドレンとしてしか見てくれなかったんだね。
「やれる事しっかりやって、それから死になさい!!」
ミサトさんはそう言ったよね。
そう言うミサトさんはどうだったのさ。
戦闘中は僕に命令を聞けって、そう言っていつも怒ってたよね。
それなのに、あの時はそれさえしようとしなかったじゃないか。
僕のことを家族だって言ってたのに。
あの家も、監視されていたんだから知ってたんでしょ?
僕とアスカの関係が、だんだん悪くなっているのを。
その時、ミサトさんは何してたのさ。
僕達の事なんて見向きもしないで、自分のやりたいことをやっていただけじゃないか。
居心地が悪いからって、仕事に逃げてただけじゃないか。
ミサトさんは知ってた?
中途半端って、一番苦しいんだ。
甘えたくても、戦闘のときは命令を聞けって拒絶される。
だから怖くて甘えられないんだ。
人形なんだって、僕はただの駒なんだって、そうやってみんな拒絶したかった。
でも、優しさを見せられて、逃げる場所を与えられたら。
それを無視できるほど、僕は強くないんだ。
だから苦しいんだ。
逃げる事も、縋る事も、どれもできないから。
僕の逃げ道を無くして、
自分の全てを僕に押し付けて、
自分だけ逃げるなんて、勝手過ぎるじゃないか。
「バカシンジ!!」
アスカはいつもそう言ってたよね。
辛かったんだ。
一番近くにいて、誰より僕を知る人に罵倒されるのは。
逃げる場所もなく、だから言われ続けるしかなくて。
でも、言われる度に泣きたくなった。
僕にシンクロ率で抜かれたからって、それを理由に罵られるのが一番辛かった。
いつも心の中で叫んでたから。
僕はEVAに乗りたくなんかないんだ!
乗るしかないから、乗らなきゃ誰も僕を見なくなるから乗ってるんだ!
そうやって、何度も叫び続けていたから。
だから、家事、料理、洗濯、いろんな事をしたんだ。
見て欲しかったんだ。
サードチルドレンと言う、アスカの敵としてじゃなく。
碇シンジと言う、アスカと同じ人間として。
「すまなかったな。シンジ。」
父さんはそう言ったよね。
そんなのって酷いじゃないか。
父さんは母さんに会いたかったんだよね。
そのために綾波を人形にして、僕を駒にした。
たくさんの人を巻き込んで、みんなの幸せを潰した。
母さんに会いたい、ただそれだけの為に。
そして、会えたんだよね?
幻かも知れない。
幽霊かも知れない。
それでも母さんに会えたんでしょ?
自分のしたいことをして、
自分の求めたものを手に入れて、
最後に、自分の後悔を僕に渡して逃げるなんて、酷すぎるじゃないか。
この世界にいたのは父さんだけじゃない。
たくさんの人がいて、たくさんの想いがあった。
その全てをまき込んでおきながら、自分だけ楽になるなんて卑怯じゃないか。
ただ、僕は家族になりたかっただけなんだ。
朝はおはようって挨拶して、夜はお休みって言葉を交わすだけでもよかった。
会話なんてなくてもよかった。
ただそこが僕の居場所なんだって、父さんだけは僕を見ていてくれるんだって、
そう思えるだけでよかったんだ。
「生きている限り、どこでも天国になります。」
母さんはそう言ったよね。
それがこの世界なの?
なにもない、自分以外の人さえいないこの世界。
それが母さんの言う天国なの?
母さんは何も見ていなかったんだね。
父さんが、どれだけ母さんを求めていたか。
僕が、どれだけ甘えられる場所を探していたか。
僕達の心の全てを無視して、自分の考えの先に何があるかを見ようとした。
その為に取り込まれた。
全てを見届けられる場所で、結果をその目で見るために。
母さんも、父さんと同じだったんだね。
みんなを駒としか思ってなかったんだ。
母さんに必要だったのは、家族じゃなくて
自分の考えを満たすためのモルモットだったんだから。
でも、一番卑怯で、臆病で、汚れているのは僕なんだ。
いつもそうだった。
止められたかもしれないのに、それをしないでトウジの足を奪った。
傷ついた心を癒してあげられたかもしれないのに、避けて綾波を傷つけた。
仲良くなれたかもしれないのに、その希望を自分で捨ててカヲル君を殺した。
たくさんの人を救えたかもしれないのに、全てを拒絶してみんなをLCLにした。
この世界を創ったのは僕。
あの世界の全てを壊したのも僕。
誰よりも自分勝手なのは僕なんだ。
消えたほうがいいのかもしれない。
そう思ったこともあった。
僕なんかが生きているのがいけないんだ。
そう思って自分を痛めつけたこともあった。
それでも、見てみたいって思ったんだ。
あの薄汚れた世界にさえ、綾波みたいな優しく暖かい人がいた。
だから、人の価値を知りたいって思った。
もう死ぬことさえできないから。
僕はもう、”人間”じゃなくて”人”になってしまったから。
だから今度は、使徒として見てみたいって思ったんだ。
カヲル君はあの時、僕に自分の命をくれた。
人は、彼らを滅ぼしてまで生きる価値のある者なのか。
それを知るために、僕は世界を渡る。
”人を見極めるために、僕自身の心に決断を下すために。”
彼の気持ちの変化と共に、纏うモノもまた激変した。
悲しみさえ浮かべていた瞳は、全てを貫くほどに強い光を称え。
脆く、不安定にさえ見えた雰囲気は、妖刀の様に鋭く禍禍しいものへと変わった。
そして、彼は自らの想いを果たすためにディラックの海へと消えていった。
どこに向かうのかも分からないまま、自分の決意を貫くために。
それにより、この世界は滅び、ある世界の時は変わり始める。
第壱話
後書き
初めまして、Benさん、鋼の城さん。
そして、みなさん。
私、太政大臣と申します。m(__)m
ちなみに私は、ナデシコのことを殆ど知りません。
知っているのは、ごく一部のキャラクターと、本当にわずかなシーンだけです。
と言うわけで、ナデシコのストーリにつきましては、ここに投稿されている作品を
参考にしていくつもりです。
そのため、既存のキャラクターに限り、内容が被ることももしかしたらあるかもしれません。
一応、私のストーリー概要としましては、「ナデシコの世界に紛れ込んだシンジ君」
で行くつもりです。
ただ、故意にオリキャラを無断借用したり、オリジナルストーリーをパクルなど、
そういった、悪質極まりないことをするつもりは、"一切"ありません。
それ故、少しでもそう思われる点がありましたら。
教えてくだされば、早急に変更しますのでご協力お願いします。
また、小説とHP製作に関してはどちらも素人ですので、多々誤りもあると思います。
ですが、なにとぞよろしくお願いします。m(__)m
代理人の感想
ああっ、と〜て〜ナデシコ投稿には思えないっ(核爆)!
・・・・いや、後書き読むまでは本気で「エヴァの部屋作らないといかんかのぅ」
なんて悩んでたりしました(爆)。
いわゆる逆行シンジの、更に最強ものの様ですが(代理人、エヴァSSはあまり知りません)
ここからどう繋がってゆくんだか・・・・・
ま、とりあえずはあっと驚くオープニングを期待しましょう。