ナデシコ外伝 幕間
Far promise on day
−その、遠い日の約束に。−
そう、この出会いが偶然だと言うのなら。
それには、運命という名が相応しい。
〜アマツシマ研究所 パール・プラタナス自室〜
明るい日差しを受けて目を開ける。
布団の感触が心地よくゴロゴロとしていたい欲求が湧き上がるが、それを押さえ込んで体を起こす。
うーんと背伸びをして体を伸ばす。
硬直した筋が延びて、けっこう気持ちいい。
ふぃ、と息を吐き、大きく息を吸い込む。
今日は、彼が着任してくる日だ。
正直、履歴書を見たとき驚いた。
十年前の月面ラボ、5歳の私が交わした約束。
クローゼットを開けて、薄い青色のワンピースを取り出す。
さー行こう!!パンチは最初が肝心だ。
家を出て道を歩く。
舗装された黒いアスファルトは太陽の熱を照り返し、道際の斜面は崩れてこないようにコンクリートで固められている。
補強のフェンスや緑色の網で補強されてるのは、ご愛敬。
緑は逞しく、アスファルトの隙間から顔を覗かせ自己主張。
日差しを受けながら歩いていると目的のバス停が見え始める。
木で作られた待合所、屋根は赤く塗装がされて壁にはベンチが固定されている。
ベンチに置かれているペシャンコの赤い座布団の腰掛け一息。
まわりを見れば人それぞれ、眠そうにしてる整備班の女性たち鏡を見てるオペレーター、庶務課のおねーさんは待合所に置かれてる雑誌を読んでいる。
私は駅とバスの時間表を取り出して、それを一読。
電車は環状線で島の周囲をぐるりと回るように外周と内周の二本が配置されている。
バスはその隙間を埋めるように配置されているが正直、人気ない。
車、バイクに自転車と気ままに動けるモノを好むは人の常。
ふっとベンチに眼をむける。
すり切れた布地から綿が覗いているのは、それだけ長い間ここで使われていた証拠。
背もたれの壁やベンチには相合い傘やくだらない落書き、油性ペンで書いただけのモノもあれば彫り込んでいるらしいモノもある。
すり切れて読めなくなったもの、書いた後で名前を塗りつぶしているモノ。
ここに居るよと人が残したその証。
自分も何時か名を刻もう。
何時か何処かで誰かと共に、ふふふと可笑しくなってきた。
足を揺らしながら、それらを見ているとバスが到着、乗り入れ口のセンサーが財布の中の社員証をチェックして精算終了。
青色のイスに腰掛ける。
ゆらゆら揺れる吊り輪を見ながら少し昔を思い出す。
アレは質の悪い喧嘩だっと人は言う。
ユーラシア大陸にある国家を中心に構成された都市近辺を守る駐留軍、海洋国家中心に構成された軌道衛星上を拠点に月を守っていた軌道駐留艦隊。
補給のもつれ、街での喧嘩、故郷の悪口、教義のもつれ、それこそ数え切れないほどのもつれの末は労働者のデモ行進のトラブルで火がついた。
極東州軍は企業の要請で救出隊を組織、私兵も交えて泥沼の情報戦。
マシンチャイルドの私は、私自身が企業秘密な訳で兵隊さんが私をかかえて右往左往。
その兵隊さんの名前はナカムラ・テッショウ、今日着任してくる人のお父さんである。
ガタンと車体を揺らしてバスが止まる。
私はイスから立ち上がりヨタヨタと慣性に振られながら外に出る。
カンカンカンと音が鳴り、黄色と黒でペイントされた遮断機がおりるのが見えた。
ガタンガタンと貨物車メインの列車が通る。
大容量の荷物を運ぶのは車輪のついた列車が一番効率的ってことらしーい。
水素エンジンと電気モーターの複合列車が通りすぎていく。
緑のシートが被せられているのはエステの外装だろうか何処か人型を思わせるふくらみかたをしている。
音は遠く遮断機が上がる。
線路を渡れば、商店街、アーチと屋根の組まれたお店が並ぶ道が延びている。
喫茶店や定食屋さん、探せばブティク、銀行、宝石商。
駅の側には百貨店のビルがある。
店員にはお爺さん、お婆ちゃんばかりだけど穏やかな空気のココは結構スキ。
足取り軽く喫茶店へ、彼が港につくのはお昼すぎ軽く食べておくのは悪くない。
駐車スペースには何台かの車、四角に切られたスペースを横切りながら扉の前へ。
丸みのある扉の上にはコーヒーの図案の日に焼けた看板。
カランカランと扉についたカウベルならして店内へ。
奥のテーブルではコーヒーと図面を片手に技術者が、カウンターでは休憩中の整備班の人達が談笑まじえて軽く食事をとっている。
空いてる席へと腰を下ろす。
丸いテーブル、木製のイス。
いらっしゃい、と白髪の店主が水とおしぼりを出してくれる。
アイスティとサンドイッチを指さして頼む。
ネルガルを退職後、この保養所で趣味の喫茶店を開いたのだと笑って話すお爺さん。
妻にはのんびりすれば良いのにと呆れられたと楽しく話す。
大きな窓から日の光、レースのカーテンが華麗な陰をテーブルに落とす。
天井には梁につけられたシーリングファンが木目を見せながらゆっくりと回っていた。
カウンターに置かれたラジオから流れる流行曲、軽いポップに軽いおしゃべり。
記憶には残らない耳障りの喧噪。
シャクシャクと歯ごたえの良い野菜サンドとハムと卵を何層か重ねて食べ応えを出したハムサンド。
アイスコーヒーにはシロップとミルク。
レモンはお好みだけど、ミルクにレモンはスキじゃない。
最後に水を一口、カランと鳴る氷の音が心地よい。
ごちそうさま、と食べ終わり。
カードリーダーに社員証を通して精算。
ペコリと店主におじぎをしてから店を出る。
港を目指して道を行く。
据え付けられた案内板、港はココだと主張する。
線路と道を隔てる有刺鉄線、鉄の支柱に巻き付いて赤く錆をうかせてる。
線路の砂利の間には草が元気に生えている。
日差しがチリチリ肌を焼く。
帽子をかぶってきた方が良かったかなと少し思って空を見る。
晴れ渡った青い空。
海から上る白い雲。
潮の臭いのする風が火照った体に心地よい。
通りの少ない海沿いの道。
白線を外さぬように歩いてく。
海沿いの堤防の上を歩く。
両手でバランスを取りながらトントンパと歩いてく。
高さはたったの1メートル、それでも遠く世界は広く見渡せる。
古くて小さな木の社。
蜘蛛の巣だらけで日に焼けたソレは今にも崩れそう。
鳥居は色がはげていてどこか痛そうな感じがした。
それでも中の石仏はなんだか笑っているようで。
パンパンと手を叩いてお辞儀を一つ。
それが礼儀な気がしたの。
港について海を見る。
船を待つトラックが列をなし。
今か、今かと待っている。
波止場では整備班の手すきの者が脇にはバケツ、手には短めの竿。
手慣れたしぐさでエサをつけ、手慣れたしぐさで仕掛けを作る。
ひょい、と海に投げこんで、静かに当たりを待っている。
見れば同じような人影はちらほらと白いTシャツ、灰色の作業ズボン。
片手に雑誌、あるいは飲み物の入ったペットボトルやオニギリを。
思い思いに時をすごす。
私は海を見て船を待つ。
そーいえば、落ち着いて話ができたのは船の待ち時間だった。
テッショウさんの手帳を使った筆談で。
『ありがとう』
「なに、いいってことよ。
守れる範囲で命を守るのは当たり前のことだろう。
テル坊にも、その辺はキッチリしこんでるからな」
とガハハと笑うテッショウさん。
『テル坊って?』
「ああ、息子さ」
笑ってる子供の写真ニカっと手を突き出している。
『じゃぁその子も私を守ってくれる?』
「ああ、当然だ。
守らないなんて言った時点で拳骨くれてやるさ」
『じゃぁ、その時はお願いします』
「ああ、約束だな。
その時は遠慮無くこき使ってやってくれ」
彼は知っているだろうか?
彼は聞かされているだるか?
気の遠くなるような確率の果てに、その時は巡り来た。
そーして船はやってくる。
さーて、始まりの言葉は何と言おう?
向こうが知らなかったとしても。
向こうが覚えていなかったとしても。
私は、知っている。
私が、覚えている。
さぁ、約束を果たしてもらうのだ。
あとがき
まぁ、練習で書いてみました。
コンセプトは台詞の無い、もしくは非常に少ない話を書いてみようと思い作成。
どうかね同士よ?
めるう゛ぃる:練習作を投稿するかいな?
まぁそれはともかく、どこかの星の水の都でゴンドラに乗ってる女の子を思い出してしまったのは気のせいだろうか。
後、最後に『その日彼女は運命に出会う』とか入れてみたくなったり。
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代理人の感想
うーん、正直こうぽん、と出されると「だからなに」って話ですね(苦笑)
文字通り連載を続けていく中でふっと幕間に出せば随分印象が違うんですが・・・・