〜 一年後 火星極冠遺跡跡 地球連合軍&統合軍合同駐屯地 〜

「………そう、火星は静寂を取り戻したのだ。かつて、無人兵器達がこの火星を席巻していた頃の様に」

「提督」

「だからと言って、わざわざバッタやジョロを調達してくる程、俺は完璧主義者では無い」

「提督!」

「おお、懐かしきは喧騒に満ちしあの日々よ」

「提督!」

くっ、丁度筆が乗っていた所だというのに。
俺が内心の苛立ちを胸に収めつつ顔を上げると、予想通り其処には、杓子定規のサンプル見本が置いてあった。

「なんだ?
 この駐屯地に配属されて既に一年近くも経つのに、一向に此処の流儀に馴染まない辺り、
 実は強固な精神力の持ち主かもしれんと、密かに感心している我が副官のナカザト。
 日記の執筆中は入るなと、何時も言っているだろう」

「僭越ながら、就業時間中に日記を書くべきでは無いと愚考致します」

「そう固い事言うなよ」

「言いたくもなります。 大体なんなんですか、先程の無駄に長い説明的なセリフは」

「日記の執筆中だったからだよ。
 何せ悲劇の名提督オオサキ シュンの半生を綴った衝撃の話題作として、あの『ユリアンの回想録』を越えるミリオンセラーと成る予定の物だからな。
 表現が少々文学的に為った所で可笑しくは在るまい?」

「日記とは、そういう事の為に書く物では無い筈です!」

おやまあ、額の血管ピクピク動かして。
ふっ、後一押しだな。

「やれやれ、無粋な奴だな。
 だが安心しろ。俺の執筆を邪魔する間抜けな副官役として、お前の登場も既に決定している。
 上手くいけば、ホームズシリーズのレストレード警部の様に、コアなファンが付くかも知れんぞ」

「そんなものは要りません!」

激昂するナカザトを尻目に、俺は徐に机の下に隠したストップウオッチに目を落とす。
今日は2分38秒か。うん、まずまずのタイムだな。

にしても、手の懸る副官殿だよ、まったく。
何せ、こうやって俺が気に掛けてやらんと、禄に感情の発露も出来んからな、コイツは。

   コン、コン。

「入れ」

   シュイン

「失礼します。 マキビ ハリ特務准尉、オオサキ シュン准将の従卒兼新造艦のオペレータとして着任しました」

入室とともに、ビシッとした敬礼をするハーリー君。
僅かながら背も伸び、1年前からは考えられない様な精悍さを漂わせている。
どうやら、士官学校を主席で卒業しただけの事はある様だ。

「うむ。ようこそ火星駐屯地…いや、キミの古巣たるナデシコへ」

「はっ、有難うございます。
 早速ですが、ミスマル提督より内示の命令書をお預かりしております。
 必ず提督に直接お渡しせよとの厳命を受けております故、この場にて御検め下さい」

と言いつつ、差し出す命令書の渡し方も、将官に対するマニュアル通りの折り目正しいもので、
実の所、俺がこういった対応を受けるのは、この駐屯地に来て以来初めての事だったりする。
あっ、なんかナカザトの奴、涙目になってやがる。
幾ら何でも、其処まで喜ぶ様な事じゃないだろに。

「うむ、確かに。返事の方は此方で出しておこう。
 当座の君の世話はレイナ君に頼んであるから、判らない事があったら彼女に聞く様に。
 そんじゃあナカザト、お前案内してやれ」

「いえ、お気遣い無く。本駐屯地の概略図は既に頂いていております故、問題ありません」

「そうか。それじゃレイナ君は格納庫の方に居るから、自室に帰る前に顔だけ会わせといてくれ」

「判りました。では、失礼いたします」

   シュイン

「やれやれ…っと」

溜息を吐きつつも、俺は義務感から命令書に目を通すフリをする。
何しろこの命令書、実は俺が書いた物だからな。(笑)
いやなんか、ミスマル提督に艦を出す為の命令を出してくれる様に頼んだら、
ムネタケ参謀に『そんな不正に関与する事は出来ない』とか言われて、仕方なく俺が自作したヤツを、裏から手を回して通す事に成ったんだよな〜
その癖『事が露見する可能性は総て潰せ』だの『書式の××が間違っている』だの、あれこれ指図された挙句、16回もリティクされたっけ。
今思えば、アレって実は婉曲な嫌がらせだったのかもしれん。
うん? 何を物欲しそうな顔してるんだ、ナカザト。

「提督。その…差し支えが無ければ、自分にもその命令書を拝見させて頂けませんか?」

ああ、そう言えばコイツってスパイだったんだよな。
うんうん、この一年コイツもコイツなりに頑張った事だし、一つ敢闘賞として事前に見せてやるか。
計画発動直前祝いの出血大サービスだぞ。もっとも、報告しても意味の無い物だがね。(ニヤリ)

「こ…これは、木連駐留軍との合同演習をせよとの指示! それに、木連側の合意書までついて!」

「ああ。どちらも非公式の物だがな」

そう。この命令書は、『非公式に木連に出向き、シャクヤクとの模擬戦を行え』という、御都合主義の塊の様な内容を指示した物なのである。
普通なら、如何にホシノ君の手腕を持ってしても通る筈の無い無茶苦茶な代物だが、政府に提出する際、
『そろそろ退屈しきって暴れ出すかもしれない、真紅の羅刹への御機嫌伺いの為の戦闘』
と、いう意味の書面も同封しておいた御蔭で、こうして恙無く、承認印付きで俺の手元に帰って来たと言う訳なのだ。

「まったく、たった一週間で準備を行えっていうのかよ。これだから現場を知らない将校って奴は………」

「何を言ってるんです提督。
 この火星駐屯地発足以来、初の出撃命令ですよ。
 提督の好きな文学的表現とやらで言えば、漸く廻ってきた桧舞台ですよ」

くっ。感動に打ち震えた声で、さり気無くイヤミをかますとは。
お前もこの一年、無駄に過ごしていた訳ではなさそうだな。
一寸だけ頼もしいぞ。

「嗚呼、待てば海路の日和あり。
 こんな辺境に飛ばされ、一時はもうどうなる事かと思っていたのに………
 俺は、俺は………提督! 今夜は飲みましょう。俺が奢ります!」

やれやれ、嬉しくて仕方がないらしいな。言葉使いまで素に戻りやがって。
本気でスパイに向いてないな、お前。俺を失脚させる事が、お前の仕事だろうに。
まあ、これが全部演技だとすれば、007以上の凄腕って事になるんだろうけど。(笑)

「正直な所、あんな幼子が任官して来る様では、この駐屯地もついに終わりだと思っていたんですよ。
 それが、こんな朗報をもたらしてくれるなんて。
 それに、見ましたか提督! 彼のあの、幼いながらも毅然とした軍人振りを!
 あの様な若人が次代を受け継いでくれる以上、太陽系の未来は安泰ですな」

若人って、お前だってまだ22だろナカザト。
まっ、何れにせよ『知らない』ってのは幸せな事だよな。
今頃は、ハーリー君も廊下の隅で笑い転げている頃だろうに。
ふっ、苦労して事前に打ち合わせした甲斐があったというものだ。

   アクトウ

仕方ないだろ。
ナカザトの前では、俺は昼行灯の提督を演じ続けなきゃならん身だ。
まあ、それも後一週間の話だがな。

そう。俺としては、ナカザト自身の事は結構気に入っているのだが、彼の正体は軍の………あれ、政府のだったかな?
と…兎に角、ホシノ君の調べた結果、その正体は、どこかの陣営のスパイだったのだ。
正に驚愕の真実とゆ〜か、正直言って、ミスキャストとしか言い様のない人選である。

だがまあ、スパイを送り込まれること自体は、此方の予測通りのものでしかない。
何せ、喩え遺跡の残骸しか無い(と、政府は思っている)場所でも、俺が自分達の目の届かない場所に赴任した事を、怪しむ者も少なくないのだ。
そこで、最初からスパイと承知した上で、此処に赴任させる様に手配した人間の一人が、このナカザトなのである。

無論、この件に関する配慮は、それだけでは無い。
地球政府に『シュン提督は左遷されて腐っている』と報告して貰うべく、
俺の執務室に仕掛けられた監視カメラの類を、全て放置したままにしたり、
狭い駐屯地の住宅事情を色々遣り繰りして、尉官の彼に個室を与えたり、
地球への報告書の提出を押し付けてみたりと、
この一年、正に万全の体制で欺き続けてきたのである。

   シンピョウセイ、ナイケドネ

五月蝿いな。俺だって、ナカザトの報告書が鵜呑みにされていると思っている訳じゃないさ。
でもな、素人同然のナカザトの腕では、此処以外の情報には手が出せなくても、別に不自然じゃ無いだろ?
名目こそ軍の駐屯地だが、此処は事実上、ネルガルの新兵器実験施設も同然の場所なんだし。
本職のスパイ達だって、産業スパイって事で証拠を挙げて拘束し、半年以上も前に全員御退場済み。
つまり、どんなに頼りなくて拙いレベルでも、ナカザトの報告でしか、此方の様子を伺えないという訳さ。

それにだ、軍や政府には、世間体もあればパワーバランスもある。
かの大石蔵之助の放蕩三昧だって、あれだけ嘘臭いのに、それでも吉良は、蔵之助を始末する口実を失っただろ?
ようは、対外的な介入を防げればそれで良いんだよ。

   コン、コン

おっと、またか。タイミングからいって彼女だな。

「やれやれ、千客万来だな。入れ」

   シュイン

俺が入室を促すと、予想通り淡い栗色の髪の少女が入ってくる。

「御久しぶりです、シュン提督」

「おお、カヲリ君か。よく来てくれた。グラシス中将は御元気かね?」

「ええ、それはもう。
 最近の御爺様ったら、再び提督が振るわれる采配の妙をこの目で見たい…と駄々をこねられて、関係各所を困らせている真っ最中ですのよ」

「期待して貰って悪いが、只の模擬戦だよ。そんな御大層な物じゃ無い」

「ご、御歓談中失礼します。提督、此方のお嬢さんは、どの様な素性の方でしょうか?」

はあ〜、声が裏返ってるぞナカザト。
まあ、これまで何度調べても素性の掴めなかった相手が目の前にいる以上、お前に平静を保てと言う方が、無茶な話なんだろうが。

「ああ、彼女の名はカヲリ=ファー=ハーデット。
 サラ君とアリサ君の従姉妹で、今はグラシス中将の私設秘書を務めている少女だ。
 ついでに言えば、お前が御執心の、例の月一ペースで送られてくるグラシス中将からの親書を届けてくれていた人物の正体だよ」

「か…彼女がですか?」

「私設秘書と言ったろ。メッセンジャーを務めたとしても可笑しくあるまい?」

「いえ、その様な意味では無く、その………彼女は月に一度は此処を訪れていたんですよね?」

「ああ。お前にも、毎回中将の親書は見せてやっただろ?」

「し…失礼。自分の思い過ごしでした」

ふっ。思い過ごしでも偶然でも無く、必然だよ。
何せ俺の知る限り、予定外の行動ってのを執った事が無い奴だからな。
不在の時を見計らうなぞ、雑作も無い事だ。

「(クスクス)提督。宜しければ、そろそろ此方の方を紹介して頂けないかしら?」

「ああ、コイツは…」

「重ね重ね、失礼致しました! 自分は提督の副官を務めます、ナカザト ケイジ中尉であります!」

お前なあ〜、そこまで慌てて遮らんでも良いだろうに。
余計な事は言わせない…っていう態度がミエミエだぞ、まったく。

「貴方があの………本当に、シュン提督の御話通りの人なのね。
 辛くはありませんか? その澄み切った瞳の端に、濁りを宿したりして」

「お…仰る意味が良く判らんのですが」

「(クスッ)御免なさいね、勝手な事ばかり並べ立てて。でもね、貴方を見ていると、心が震えるのを抑えられないの」

「は?」

「貴方に会えて、嬉しいってことよ」

と言いつつ、ナカザトの右腕にそっと抱き付くカヲリ君。
って、そこで顔真っ赤にして振り払うか、普通。無粋の極みだぞナカザト。

「随分と一時的接触を嫌うのね。
 怖い?人と触れ合うのが。
 そうね。他人を知らなければ、裏切られる事も互いに傷つけ合う事も無いかも知れない。
 でも、寂しさを忘れる事もできなくてよ」

「じ…自分は軍人です。孤独に打ち勝つのも職務の一つであります」

「(クスッ)硝子の様に繊細ね、貴方の心は。好意に値しますわ」

「は?」

「好きってことよ(ハート)」

「も、申し訳ありません。自分は急用を思い出しましたのでその、し…失礼致します」

   シュイン

やれやれ、あれ位のモーション、軽く受け流せよな。
ホント、一体何時の時代の人間なんだよ、お前は。

「ふふふっ。本当に愛すべき人ね、ナカザトさんて」

キミもキミで、初心な少年でも見るかの様な目をするのは如何かと思うぞ。
まっ、本来の君の目から見れば、ナカザトなんて本当にボウヤなんだろうが。

「余りからかわんでやってくれんか? 何せその手のジョークには、此方が悲しくなるくらい免疫の無い奴なんでな」

「あら、彼に好意を持ったのは本当の事よ。オオサキ提督だって、気に入っておられるのでしょう?」

「そりゃあ、見所が全く無いとは言わんがね。まあそれはそれとして、本来の仕事の方を頼む」

「(クスッ)私としては、こんな物よりずっと価値のある出会いでしたわよ」

と言いつつ、優雅な手付きで手渡す書類は、ダミー様の親書と今月の政府の動向の裏表が詳細に記された極秘レポートだったりする。
職務に対する情熱の無いこと夥しいが、彼女以上に確実なメッセンジャーも居ないだろう。
ふっ。彼女が北斗ですら手を焼く程強いと知ったら、ナカザトの奴はどんな顔をするかな?

「さてと。御二人以外の方達に会えなかったのは残念だけど、そろそろ帰らないと。
 まったく。御爺様たっら、ジャンプの度にオロオロするんなんて。極端な心配性ってことね」

「まあそう言うなって。
 何せお偉方の所には、ジャンプに関する危険性を示したデータが、鬼の様に送られているんだ。
 グラシス中将だって、その一人。となれば、心配するのも無理の無い事さ。
 まあ、それだけ愛されてるんだとでも思ってくれ」

「ふふふっ、そうね。それでは、次は運命の箱舟にてお会いしましょう」

「おう。中将に宜しく伝えてくれ」

「では、ごきげんよう。……………………ジャンプ」

   シュ

ふっ、イネス女史命名『セルフ・ジャンプ』
ATフィールドを変質させてジャンプフィールドを形成し、それと同時に、DNAを自己調整する事で、一時的にA級ジャンパー化する離れ業である。
それを自在に操って見せる様は、正に自由の天使の面目躍如と言った所か。
はっきり言って、どっかの誰かさんより余程神様って感じだよな。

   アレハ、ハンソク

負け犬の遠吠えなんぞ、見苦しいだけだぞ。

おっと、忘れる所だった。火星の入出国手続き改竄の為、レイナ君に連絡を入れておかねば。

   ピコン

「ああ、レイナ君。今、カヲリ君が来たんで、ハーリー君に言って何時もの処置をくれないか?」

『ハーリー君に…って事は、もう着てるんですよねハーリー君。すぐ来れますか?』

「10分ばかり前に其方に向ったから、そろそろ着くだろう」

『良かった〜
 アレってもうホンキで面倒臭いし、最近プログラム関係で色々トラブってたしで、正直、かなり困ってたんですよ』

「そうか。じゃあ、精々コキ使ってやってくれ」

『了解』

   ピコン

う〜ん、到着を此処まで喜ばれるとは。破格の大出世だな、ハーリー君。
まあ、御荷物から便利屋になっただけって気がしないでもないが。
と…兎に角、君が大きく前進した事だけは間違いない。俺はこれからも、君の躍進に期待しているぞ。

   ソレイジョウ、ノコト、デキナイ

オチを先に言うんじゃない。
まったく、オマエときたらこの一年、俺が口が酸っぱくなる位『雅』というものを教え込んだってのに、ちっとも成長しとらんじゃないか。
少しはハーリー君を見習ったら如何だ。

   セイチョウ、ナシ、アンタモ、オナジ

い〜や、オマエと付き合わされた御蔭で、忍耐力が鬼の様に付いたぞ。
その代償に、肝臓のガンマ値と血圧の最大値も上がっちまっがな。

   イネス…シュジュツダイ…オールグリーン

………吼えろ、我が内なる竜よ! 秘剣、吼竜斬!

   ギャア〜〜〜〜〜ッ

ふっ、雉も鳴かずば撃たれまいに。
言っては…じゃ無かった、イメージしてはイケナイ物を伝えてくるからだ。

それにしても、もうあれから一年もなるとは………

ふと、改めてこの一年というものを振り返りたくなった俺は、常に懐に忍ばせた本物の日記帳を取り出してみた。

   ペラ、ペラ、ペラ………

そう、一年前のあの日。
思えばあの日こそ、主役不在のこの祭りが、第一歩を踏み出した日だったよな………




『 3月15日 晴れ』
   今日より日記をつける事にする。
   と言うのも、今日という日を忘れない為である。
   ○○○少将、××××少将、△△△△准将、その他諸々。
   俺と艦長だけは、アキトの葬儀に出席するよう強制した挙句、俺の弔辞を、まるでアキトの死を喜んでいるかの様に
   脚色しやがった奴、何時か必ず復讐してやる。

うん、この件は既に対処済み。




『 3月16日 曇り』
   今日より艦長と共に、ナデシコクルーが抑留されている仮設住宅に入る事になる。
   と同時に、これまで引き伸ばしにしてきた、アキト帰還の為の説明会を開く事になった。




    〜 佐世保の某所仮設住宅 通称『ナデシコ長屋』の会議室 〜

「ホシノ君、準備は良いかね?」

「はい。既にこの部屋の監視装置は、ダミー情報に差替えてあります」

「結構。それでは、これよりアキト帰還の為の具体的な方法についての説明を行う」

   ガチャ

と、俺が言った瞬間、ドアから飛び込んでくる白い人影。ま、まさか………

「ちょ〜と待った!」

「「「イ、イネスさん」」」

「その説明、私に任して貰えるかしら?」

   シ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン

イネス女史の『ふいうち攻撃』 クルー達は精神値に150Pのダメージを受けた。

「あ…あの〜、イネスさん。何故此方に?」

と、俺が現実逃避をしている間に、恐る恐るイネス女史に話し掛ける艦長。
うんうん。良いねえ、こういう率先して矢面に立つ姿勢。正に艦長の鏡だね。オジサンは嬉しいよ。

「説明が私を呼んでいるからよ」

「いえ、私が聞きたいのはそういう事では無くて。その〜、此処まで来た方法の方なんです。
 確かイネスさんは、某県某所の地下研究所で、外界と隔絶された隠遁生活をしている筈じゃなかったんですか?」

「ふっ。ボソンジャンプを習得した今、距離も空間も私の敵じゃ無いわ。説明を求める声あらば、何時でも何処でもやって来るのよ!」

「レッド・タイガーかいアンタは!」

しまった。十代・二十代の若人を、完全に置き去りにしたネタだった。
嗚呼、周りの奇異の視線がイタイ。………って、今はそんな事を気にしている場合じゃない。

「(ゲフン、ゲフン)今の発言は忘れてくれ。そんな事よりイネス女史、ボソンジャンプを習得したとは………」

「言葉どおりの意味よ。ほらこれが、(ピラッ)新作のジャンプフィールド発生装置。
 何処からでも説明に跳んでいける、正に人類の至宝とも言うべき一品よ。納得してもらえたかしら?」

と言いつつ、白衣の下からアキトが付けていた物より若干大きめのそれを誇示して見せるイネス女史。
嗚呼、ある程度は仕方ないと覚悟していたが、まさか此処まで応用力の高いものだったとは。これじゃ、気○いに刃○じゃないか!!

『落ち着きたまえオオサキ殿。今のはイネス女史のハッタリだよ。
 例の…………が発見されたんで、その報告に来たのであって、丁度、説明と口にした時現れたのは、只の偶然だ』

おお、アークの上役殿か。
そ…そうか。そうだよな、幾ら何でも。

『それにしても、何故そんなに貴公らは彼女の説明を嫌うのかね?
 私としては、彼女の説明は、他に類を見ない位、明瞭で理解し易いものだと思うのだが。
 それこそ、言語を使用した情報伝達手段としては、一つの完成形と言っても過言では無い程だ』

それが地球人の種族的本能だからだよ。
そんな事より、何でもう見つかったんだ。確か政府筋は、火星の遺跡を只の残骸と判断した筈だが?

『貴公らの情報が誤っている訳では無い。イネス女史が独自に調査して得た結果だ』

って事は、イネス女史は、例の場所にもジャンプ出来る様になったのか?

『貴公の推測通りだよ。
 実の所、本来ならイメージ伝達力がかなり足りないのだが、それは此方でフォローしている故、ピンポイントでのジャンプでさえ可能だ。
 最も彼女自身は、テンカワ アキト氏の残したジャンプデータを元にした座標補正プログラムの御蔭と思っているだろうがな』

なっ! 何故そんな余計な事を。

『何故とは心外だな。
 早急に例の物を彼女に発見してもらった方が何かと都合が良いだろうし、
 何より、万が一にも彼女にジャンプミスで失踪された日には、計画そのものが頓挫する事になるぞ。
 まして此度は、本説明会に於ける貴公の負担を軽減する情報を携えての来訪。寧ろ、良いタイミングだったと喜ぶべきではないかな?』

確かに、今回に限っては渡りに船なんだが………
その、なんと言うか………

『正直言って、感心な態度とは思えんな。
 だがまあ、そこまで嫌うのなら、今後は出現位置を調整して、いきなり出現する事だけは無い様にしよう』

そうして貰えると助かる。
とゆ〜か、この際、彼女の到着が何時間か遅る事になっても構わんから、絶対にそうしてくれ!!

『判った、判った。それでは、また会おう』

ああ、またな。

「ん、どうしたの提督? いきなりボーとして」

気が付けば、最早見慣れた不審顔、主違えど、皆同じ顔。
5・7・5・7・7 良しピッタリ………なんて事いってる場合か!
しまった〜 また、やっちまった。

「いや、そのなんだ〜、余りに当然だったもんでな」

「まだ納得できないのかしら?
 ああそうか、この装置のリニューアル部分の説明をして欲しいのね。
 私とした事が、こんな重要な事を忘れるなんて…御免なさいね。
 この装置は、通常のジャンプをDFSに例えるなら、簡易型DFSにあたる物であり、その最大の特色は通常ジャンプにおける問題点の一つである………」

って、更に墓穴を掘って如何する、俺。

「いや、そのなんだ…その話はいずれ、老後にでもゆっくり聞かせと貰うとして、先に本来の目的の方を済ませて貰えないか?」

「本来の目的?」

「『ちょ〜と待った』からの先だよ。
 今更、『俺が何を話すつもりか知っているのか』なんて野暮な事は聞きやせんから、初期の目的を果してくれんか?
 まさか、俺の説明を横取りする事だけが目的じゃあるまい」

横取りする事も重要な目的なんだろうがな。(笑)

「そうだったわね。私とした事が、この大発見を前に自分を見失い気味の様ね。では早速、説明を始めましょう」

ううっ。何と無く、別の墓穴に嵌っただけの様な気がする。

「ああそれなんだが、アカツキ達は3時から役員会議が入ってるんで、悪いがそれに間に合う様に纏めて貰えるかな?」

「(チラッ)2時間弱か。概略だけに留めたとしても、少々難しいわね。う〜ん、如何するか………」

おやまあ、俺の咄嗟の出任せを鵜呑みにしてくれるなんて。本当に余裕を失っているらしいな。
てっきり無駄な抵抗に成ると思っていたが………いや、何でもやってみるもんだ。

嗚呼、クルー達の敬意の篭った視線が心地良い。
此処久しく無かった事だけに、その感慨も一入(ひとしお)だ。
………零落れたもんだな、俺も。

「それでは、期待して集まってくれた皆さんには申し訳ありませんが、本日の説明は今回発見された物に関するものを中心とし、
 アキト君奪還の方策に付いては、後日書面にして各人に配らせてもらいます。
 ………たく、何でこんなに新事実ばっか出てくるのよ。
 これじゃ、オチオチ説明する時間さえ取れないじゃない! 責任者出てこ〜い!」

色々ストレスが溜まっているらしく、珍しく説明中に感情的になり、地団駄を踏むイネス女史。
だが、此方としては、正に『計算通り』の展開である。
何しろ、少々不自然になるのを覚悟で『そう成る様に』頼んだんだからな。(ニヤリ)
彼女には、この先も『研究だけ』に没頭して貰おう。それが世の為、俺の為だ。

「(コホン)失礼、見苦しい所を。
 失礼ついでに、説明の前に先ず、皆さんに謝罪させて頂きます。
 この件に関し、私は皆さんに先んじてシュン提督に、アキト君帰還に関する基本方針に付いての相談を受けていました。
 その理由に付いては、本説明の過程に置いて語りますが、如何なる理由があろうと、これが皆さんへの裏切りである事に変わりはありません。
 この場をお借りし、深く陳謝いたします。(ペコリ)」

「いや、これについては、全責任は俺にある。
 それも、実際にイネス女史が結果を出してくれるのはもっと先の事で、ほとぼりが冷めた頃に改めて………
 などと姑息な考えからした事。いや、本当に申し訳ない。(ペコリ)」

真摯な態度で、深く頭を下げるイネス女史に習い、俺も心から頭を下げる。
まったく俺とした事が、艦長達の負担を軽くするつもりで、イネス女史に言われるまで、隠し事をされる艦長達の心情を考えていなかったなんて。
弁解の余地も無いとは、正にこの事だ。

「もう。提督もイネスさんも頭を上げて下さい。
 御二人が、何か考えがあって私達には内緒にしていた事位、判らない筈が無いでしょう。
 そんなマネは水臭いだけですよ」

「そうそう。艦長の言う通り意味の無い謝罪だね。
 こういう事に関しちゃ、ドクターは特別。それを理解しないクルーなんて居やしないさ。
 まっ、オオサキ提督に関しちゃ『それはそれ、これはこれ』と考える某女性達が居るかもしれないけどね」

別の意味で怒る者。つまらない事だと茶化す者。
やれやれ。如何やら俺のした事は、身の程知らずの杞憂でしかなかったようだな。
俺は、ゆっくりと頭を上げると共に、自らの傲慢さを恥じた。

ところで、今のはジョークだよな。『経験者は語る』じゃないよな、アカツキ。(汗)

「有難う。
 では、気を取り直して。最初に、私が問題の物を発見するまでの概略について語るわね。
 あれは(ピラ)この装置が完成した翌日の事。
 実験を兼ねて火星へジャンプしてみたたんだけど、初ジャンプだった所為か、目標地点に大きな誤差が発生。
 ユートピアコロニー跡地に出る筈が、何故か極冠遺跡の内部、それも遺跡の記憶領域を司る部分の装置前にジャンプアウトしたの。
 そして、何故か私の持っていたハンディPCのOSにジャストフィットしたらしく、どう見ても規格が違うとしか思えない機体でありながら、
 恙無く情報を引き出せたばかりか、丁度最初の部分に、効果的な記録の引き出し方の載ったマニュアルが入っていたのよ!」

   ガタ、ガタ、ガタン

「あら、どうしたのシュン提督? 椅子ごと転んだりして」

お…俺は、イネス女史にヒントとなる物が次々見つかる様に、さり気無く誘導してくれと…………
ははははっ。そうだよ、判っていた筈じゃないか。アリシア人と地球人とじゃ、精神構造自体が全く違う事位。
だが、だからって。いくら御都合主義たって。そこまでやるか普通!

「ちょっと艦長、如何したのよ提督は?」

「それが…なんかもうアキトが居なくなって以来、ずっとこんな感じなんですよ」

「成る程。考えてみれば無理も無いわね。
 息子の様に思っていたアキト君が居なくなった上に、今となってはプロスさん以上に気苦労の絶え無い立場ですものね」

嗚呼、気が付けば、なんか哀れみの目で見られているし。

「ち…一寸待ってくれイネス女史。幾らなんでも不自然だとは思わないのか?」

つ〜か、何で誰もが疑問に思わないんだ?

「やれやれ、提督ともあろう人が気付いていなかったとわね」

「まさか、そんなワケ無いですよ。
 今のはほら、定期的な立場の確認が必要だと判断しての事じゃないかと」

「本気でそう思ってる艦長?」

「あは、ははははっ」

「これはもう、オオサキ真っ暗て感じね」

   ポカッ

「イ〜ズ〜ミ。オマエな〜、チャチャ入れて良いモンと悪いモンってのがあるだろうが〜」

「まあ、まあ。そんなにカッカしてたんじゃ、最後まで持たないぜリョーコ君」

「うっせ〜な。そう言うオメエは如何なんだよ、ロンゲ。如何にも訳知り顔な顔してっけど、実はハッタリじゃね〜だろうな?」

「な…何を言ってるのかなリョーコ君。そんなの当然だろ」

「そういやアカツキ君てば前回の歴史で、自分だけがネルガル会長だとバレていないと思い込んでいたっていうエピソードがあった様な………」

「ヒ…ヒカル君。何もそんな古証文持ち出さなくても良いだろう」

ううっ。何か、更にはカヤの外になって行く様な

   パン、パン

「はい、私語は此処まで。それじゃ念の為、今置かれている状況について説明するわよ。
 まず注目すべきは遺跡の意図。そう、遺跡はアキト君に『直接』手を下す様な直情的な性格なのよ。
 あれに比べれば、この程度の露骨な偶然なんてあって無きが如し。
 つまり、『テンカワ アキトは預かった。返して欲しくば、此方の指示通りに動け』と脅迫されているのが現状というワケよ。
 ついでに言えば、この露骨な迄の誘導も、此方を嬲るのが目的でしょうね」

ううっ、そういう受け取り方もあったか。すまん、アークの上役。お前の名誉を、俺は守れそうも無い。

「まったく。此処まで露骨にやっときながら、肝心のアキト君のジャンプ先を示したログを出そうとしない辺り、イイ性格してるわよねホントに」

嗚呼、単に向こうの世界と繋ぐ迄の時間稼ぎのためだと言う事が出来たら………かえって怒らせるだけか、この場合。

「あの、良いですかイネスさん」

と、俺の内心の苦悩を知ってか知らずか、何やら焦った顔で、イネスさんを相手に質問を敢行するホシノ君。
良いぞ。なんか知らんが、頼むからこの良くない流れを止めてくれ!

「あら、何かしら?」

「今のお話に出てきた記憶装置の件です。
 私の調べた限りでは、既に政府が大規模な調査を行っており、その結果、火星極冠遺跡は、只の残骸だと判断されています。
 無論、この件に関する第一人者であるイネスさんを欠いてのものですから、丸で的外れな調査内容だったのかもしれません。
 ですがそれでも、遺跡残骸へのアプローチや周辺の地質・地盤の調査位は行った筈です。
 にも関わらず発見されていない以上、そう簡単に見つかるとは思いませんが、それでも件の物は、早急に隠した方が良いのでは?」

「確かに妥当な意見ね。でも、その必要は無いのよ、ホシノ ルリ。
 何故なら例の記憶装置は、どうも此処とは異なる時空にあるらしいのよ。
 つまり、現在地球人であの場所に行けるのは、ポゾンジャンプが出来て尚且つあの場所をイメージ出来る、私一人という訳ね」

成る程。アークの上役が、露骨に御都合主義な形に成らざるを得ないと言っていた理由はこれか。
となると、奴の性格からして、残りの部分は『毒食らわば皿まで』っていうつもりなんだろうなあ。
ううっ、ちゃんと説明を聞いておくんだった。

「そ…そうなんですか。すみません、話の腰を折っちゃって」

「いえ。貴女の懸念は、もっともだわ。
 今だから笑って言えるけど、当初は、あんな馬鹿デカイ物どうやって隠そうか、私自身途方にくれたものよ」

「そんなことより、アキトの居場所は判ったんですか!」

業を煮やして、イネス女史に詰め寄る艦長。
やれやれ。アキトのジャンプログが見つかっていない事は、既に明言されているというのに、どうしてこうアキトの事となると頭が働かなくなるんだろう?
………艦長だからとしか言い様が無いところが怖いな。

「はいはい、興奮しないの。それを、これから説明する所よ。丁度、艦長が主役の話だから、良く聞いていてよね」

「ほえ?」

「皆も良く聞いてね。此処からが、この話の本題だから。
 さて。先ずは私が遺跡から抽出したデータなんだけど、何故かその総てが、映像として記録されていたわ。
 それも、明らかに言語で表現した方が簡潔に成る様な物までがね。
 そして、(ピラ)このジャンプフィールド発生装置に組み込まれている座標補正装置なんだけど、
 これは簡易型DFSと同様の発想から生まれた物であり、あくまで使用者のイメージングを補助する為の機能しか付いていない。
 つまり、この装置が扱うデータもまた、抽象的な…映像に近い物であり、
 私達が通常使用している、数値化された座標軸のデータは一切使用されていないの。
 にも関わらず、この装置が絶大な効果を発揮した事は、既に私が証明済みよね。
 更にもう一つ。前回の歴史において、火星の後継者が艦長の夢…イメージを遺跡の翻訳機として利用したという事実。
 私は、この三つの事例の共通点から、遺跡の情報伝達方法は、私達の概念による所の、イメージ映像に近い物じゃないかという仮説を立てたの。
 そして、それを裏付けるかの様に、最初に見つかったマニュアルには、マンマシンインターフェイスに近い概念のものが、映像として入っていたわ。
 この事から、もう一つの仮説、『遺跡に納められている全てのデータは、映像若しくはそれに準じる物である』が成り立つ事になる。
 つまり、通常の検索方法で探そうにも、遺跡にはログと言う概念自体が存在しない可能性が高く………」




    〜 30分後〜

「………という訳で、艦長にはIFSの前身となったサイコミュシステムを利用して、遺跡にアクセスして欲しいのよ」

「そ…そんな、一体どういうつもりですかイネスさん!
 遺跡のナノマシンの危険性は、貴女も良く知っているはずですよ!」

「安心しなさい、ホシノ ルリ。別に遺跡と同化する必要はないのよ。
 言ったでしょう、何故か私の持っていたハンディPCのOSにジャストフィットしたって。
 遺跡をコントロールしようかというなら兎も角、簡単な命令を伝える程度ならば、通常のコンソールでも可能でしょうね。
 つまり、操作者をA級ジャンパーに限定してサイコミュシステムを使用するは、単に遺跡の規格に合せ、作業効率を向上させる為のもの。
 安全性に問題がある様なら、最初から採用しないわよ。それに………」




    〜 一時間後 〜

「………という訳で、私・艦長・万葉嬢の三交代制で、24時間フルにデータを抽出する体制を取りたいんだけど、艦長の方は構わないかしら?」

「え〜と。私は只8時間、作業台の上で眠っているだけで良いんですよね?」

「極論すれば、そういう事になるわね。
 只、地球と火星の行き来や、装置の取り付け取り外しがあるから、実際には10時間近い拘束。
 時間的には、午後10時から朝7時迄という事になるけど問題ないかしら?」

「要するに、残業なんかしないで、真っ直ぐ御家に帰れば良いんですよね?」

「し…思想そのものに問題がある気もするけど、取り敢えずはそういう事ね。
 それじゃ、艦長と私は抽出作業に専念するとして。皆には、抽出したデータの洗い出しを行って貰おうかしら」

「つまり、僕らはテンカワ君の映っているデータを探せば良いって事だね?」

「その通り。そして、その中で最新の物が、私達の求める、アキト君のジャンプ先を特定する為の重要な手掛りという訳よ。
(チラッ)それじゃあ、少し早いけど、続きは次回の講義という事にするわね。
 御清聴、有難うございました。…………………………ジャンプ」

   シュ

   ドサ
        ドサ
             ドサ

終わった…終わってくれた。
イネス女史が消えると同時に、気が抜けたのか次々と倒れるクルー達。
かく言う俺も最早限界だが、提督としての最後の矜持から、彼らの安全を確認する。

「おお〜い。全員生きてるか?」

「な…なんとか」

「う、恨むぞアキト」

「お婆ちゃん、ポリデント」

「ううっ、今回は聞き流すわけにはいかね〜だけに、ダメージも一入だぜ」

一部錯乱している奴もいるが、ウリバタケ班長以下某組織の面々は、概ね無事の様だ。
さて、同盟の方は……あれ?

「お〜い、アカツキ。彼女達は如何した?」

「エリナ君は、万葉君を借り出す為の交渉に。
 ホウメイガールズは、メグミ君のツテでオーディションに。レイナ君とサラ君はその付き添い。
 ルリ君とラピスちゃんは明日の学校の準備。艦長は対遺跡用特訓の為に昼寝するそうだ。
 そして、リョーコ君以下パイロット達は此処でヘバってる。
 何と言うか、珍しく短めだったからかね。知性派タイプはノーダメージだったらしいよ。」

「そうか………って、お前は知性派じゃなかったのか?」

「そう言う提督は如何なんです?」

「「あはははっ……………(ガシッ)俺達は人間だ!」」

硬く手を握りあう俺とアカツキ。
その上に、感極まった顔で、静かに手を乗せるウリバタケ班長。
スバル君達パイロット達も輪に加わり、整備班達も互いに健闘を讃え合っている。
そう、もはや言葉は要らない。長く苦しい戦いは終わったのである。
アレを理解出来る超越者達の往く末なんて、知った事ではない。

説明にサヨウナラ。

平和にアリガトウ。

そして、この戦いを生き抜いた全ての将兵達に、オメデトウ。




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