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   〜 五日後。放課後、第三新東京市、2Aの教室 〜

「(フ〜ッ)良しっと。ねえカヲリ、これからチョッと付き合ってくれない?」

本日も、ある意味、最も危険な戦闘を。北斗のHRを乗り切り、ホッと一息ついた後、
アスカは、隣の席に座る友人に、そう声を掛けた。

「ごめんなさい。この後は、もう予定が入っているんですの」

更に二〜三の補足のセリフを。実家の手伝いが入っている事を告げて謝辞すると、カヲリは『ごきげんよう』と、何時もの挨拶をした後、足早に退室していった。

「やれやれ、またか。
 にしても、幾ら会長の孫娘だからって、毎日の様に中学生に仕事を押し付けるかしらね〜普通。それも、世界で五指に入る最大手の証券会社だってのに」

そう愚痴りつつ、胸中で狂った予定を立て直す。
そう。カヲリの獲得に失敗した以上、本来なら自動的に付いて来る取り巻きの二人を個別に確保しなくてはならないのだ。
そんな訳で、レイにミサトからの呼び出しがあった事を告げると同時に、マユミに協力を依頼。そして、

「ねえ、レイ。カヲリってば、今日は何をやらされるか知ってる?」

チョッとした好奇心から、そう尋ねた。

「AWAとの折衝」

「AWA? ああ、あの頭の腐ってる連中の事か。アレとマーベリックとに何の関係がアンの?」

「只、彼等に別荘地を売ったというだけで、基本的には全くの無関係です。
 ですが、何故か、今回の問題に際し、両陣営がカヲリさんを調停役に指名してきたらしくて」

カヲリが不在だと、只でさえ少ない口数が更に端的になるレイの言を、マユミが補足する。

ちなみに、この団体。正式名称を『使徒戦をライブで観賞する会(Apostle War live Appreciation association)』と言って、
その名が示す通り、第四使徒戦以来、運良く準避難地区となった会員の邸宅テラスに陣取って、
オペラグラスで戦闘を眺めながらブランデーグラス片手に悦に入るという趣味に走り捲くった催しを、
第三新東京市付近に使徒が来襲する度に開いていたりする。
つまり、こうした事が可能な財力の持ち主揃いな、所謂、腐った金持ち達なのだ。

「両陣営?」

「はい。AWAとネルフの広報課です」

「ウチと? 何でまた?」

「私も良くは知らないのですが。発端は、AWAの代表者が、ネルフの広報課へ抗議に来た事とかで………」

更に説明を続けるマユミ。その内容は、要約すると次の様なものだった。

両陣営の確執の始まりは、第7使徒戦の翌日にネルフの広報課へとAWAの代表者達数名が抗議書を携えて来訪した事に単を発している。
その内容は、『葛城ミサト一尉のプラグスーツのデザイン変更』と『プラグ内映像の完全公開』だった。
無論、彼等にそんな権限が有る訳では無い。おまけに、前者は兎も角、後者の要求は論外である。
だが、彼等は無駄に金持ち。しかも、それなりの権力を持つ者も多いだけに、あまり強硬な態度に出る事も出来ない。
おまけに、交渉の場においては、

『葛城ミサトはイラナイ子』『いや、寧ろ必須。ドジっ子お姉さん萌え〜』
『レイたん萌え〜』『ナイムネはイラネ』『此処で貧乳党結成!』
『ツンデレ系の新キャラキター』『牛チチとの差別化を切に求む』『抗議文ゲット、ズシャ〜』
『シンジ君、レギュラー化キボン』『ショタキャラ万歳』『腐女子、必死だな。(プッ)』

といった、訳の判らない主張を繰り返すばかり。まったく会話にならない。
当然ながら、第一回目の交渉は平行線のまま終った。

このまま行けば、両陣営は決定的な破局を迎えるだろう。
そこで、マーベリック社がダークネスのスポンサーになる際に起こったネルフ広報課とのゴタゴタを鮮やかに納め、
同時に、あの話の通じない連中を相手に、別荘売却の交渉を纏めた辣腕の持ち主に御鉢が回ったという訳である。

「それがあの娘なの? マジで?」

そう。なまじ有能であるが故の不幸。
今日も学校6時間。更に残業12時間。人が嫌がる仕事でも、やらにゃならないカヲリだった。

「まあ良いわ。何にしても、せめてもう一人くらい一般生徒を………あっ、ヒカリ。悪いけど、これからネルフに付き合ってくれない?」

イマイチ納得しかねる話ではあったが、『まあ良いか』とばかりに割り切ると、アスカは、帰り支度をしていた親友にも声を掛けた。

「えっ? あの、私も?」

「そう。なんかヤバイ事になりそうなんで、チョッと戦力が欲しいのよ」

怪訝そうな表情を浮かべ問い返すヒカリに、腰に手を当てて胸を張る何時のポーズでそう宣うアスカ。
だが、それは更なる困惑を促すものでしかなかった。

「戦力って、私が? 無理よ、そんなの」

「大丈夫。ヒカリはただ、私達と一緒に居てくれれば良いの」

「………良く判らないけど、それでアスカの助けになるなら」

「もっちろん! これ以上ないくらい心強いわよ。ダンケ、ヒカリ!」

笑顔で礼を言いつつ、『良いのかな』という表情のままのヒカリを促し、教室を後にするアスカ。
かくて、急編成の四人組にて下校の途に。アスカ達が呼び出された、ネルフが誇る作戦部長の執務室へと向かう。

「あの。やっぱり、北斗先生の威光を借りるつもりなんですか?」

その途中、左斜め後方から小声で。
アスカの右隣を歩くヒカリに聞えない様に、そっとそう囁くマユミ。

「当然でしょ。折角、恰好のバックボーンがあるんだから、利用しない手はないわよ」

アスカもまた小声で。だが、キッパリとそう言い切った。
そう。彼女の狙いは、北斗の庇護下にある2Aの生徒を同席させる事による牽制だった。
当然ながら、愛弟子達ならば更に効果的なのだが、今も血の滲む様な訓練を行なっている彼等にそれを切り出す様な。
北斗の機嫌を、覿面に損ねそうな無謀な真似をする訳にはいかない。
只でさえ、自分は目を付けられているっぽい立場。
おまけに、理由は知らないが、レイもまた、彼と折り合いが悪いらしい。
彼の人の性格上、いきなり二人揃って見捨てられる様な事はまず無いとは思うが、自分からその確立を増やすのは愚行の極みと言うものだろう。
その点、一般生徒ならば問題ない。
取り分け、彼のお気入りの生徒(ヒカリにしてみれば不本意極まりないだろうが、委員長職を誠実にこなす彼女を、北斗は高く評価している)が横に居れば、
イザという時、『北斗先生が黙っちゃいないわよ』という脅しが、説得力を持つという寸法である。

「でも、これから向かう先は、味方の陣営なんでしょう?
 幾ら何でも、チョッと警戒しすぎなんじゃないんですか?」

「同感」

「そんな訳ないでしょ。あのミサトが、作戦部長としてアタシとレイを呼んだのよ。
 アレが自発的に仕事をするなんて、どう考えても不吉の前兆。幾ら用心しても、やり過ぎって事は無いわ」

考え過ぎだと主張するマユミ達に向かって、アスカは力強くそう言い切った。
ちなみに、彼女の予感は図に当った。



   〜 一時間後。ネルフ、葛城作戦部長の執務室。〜

「えぇぇ〜〜〜っ! 修学旅行に行っちゃ駄目!?」

先の使徒戦中、シンジの手によって。彼我の戦力差を考えれば奇跡的な戦果により、
辛うじて『煩雑な部屋』と言ったレベルの清潔度を保っている応接セットのテーブルを叩きつつ絶叫するアスカ。
そう。ミサトから申し渡された通達は、彼女にとって到底許容出来ないものだった。

「どうしてっ!?」

「戦闘待機だもの」

「そんなの聞いていないわよ!」

「今、言ったわ」

「誰が決めたのよ!?」

「作戦部長の私が決めたの」

「ぐっ!」

テンポ良く攻勢を続けていたアスカだったが、ミサトの放った最後の一言が急所に入り、言葉を詰まらせる。
そう。名ばかりの役職とは言え、決定権『だけ』は彼女にあるのだ。
もっとも、このまま引き下がる気など毛頭無い。気合を入れ直し、別系統からの論破に掛かる。

「シンジは!? アイツだってチルドレンでしょ!」

「いやその。ほら、彼は予備役だから………ね」

それまでの“してやったり”という表情を一変させ、あらぬ方向へ視線を彷徨わせるミサト。
その姿に、アスカは確信した。コイツは、北斗先生が怖くて日和ったのだと。
とは言え、この件で更に攻め立てる訳にはいかない。
そう。彼女にしても、シンジを巻き込むのは避けたい所なのだ。
何せ、ミサトがキレた挙句に、『じゃあ、シンジ君も戦闘待機。それなら文句無いでしょ!』等と言い出した日には、最終兵器教師との全面対決に巻き込まれかねないし。

「あの、チョッと良いですか?」

と、此処で、打開策が見出せず長考に入ったアスカに変わり、マユミが質問を。

「ん? 何かしら?」

「レイ達に戦闘待機を命じるのは、近日中に使徒が現れるという目算が立っているからなのですか?」

「う〜ん。ホントはこういうの、部外者に言っちゃあマズイんだけど。まあ、良いわ。
 答えはノーよ。でも、これまでの出現傾向から考えればイエスって感じかしら?
 いずれにしても、何時来るか判らないからこそ備えは必要なの。判って頂戴」

「つまり、有事の際に、速やかな召集が出来ない事が問題なんですね?」

「まあ、平たく言えばその通りよ。
 せめて関東圏内だったら許可してあげられたかもしれないけど、沖縄じゃあねえ〜」

アスカが黙り込んだ事で勝利を確信。
その余裕からか、久々に的を得たセリフを宣うミサト。
本作品では殆ど見られなかった、原作っぽい大人な態度である。

これに対し、『少々お待ち下さい』と断ってから、マユミは鞄から携帯を取り出し何処かへ電話を。何事か交渉っぽい事を始めた。
途中、何故か甘える様な声音を出したり身体をクネクネさせたりと、傍から見ていてチョッち不気味だったが、それも五分程で終了。そして、

「今、お姉………じゃなくて、カヲリさんにお願いして、マーベリック社名義で、例のミラクル宅配便を、修学旅行中の4日間チャーターして貰いました。
 と同時に、米軍の沖縄基地にも着陸許可を申請してくれるそうです。
 北斗先生にお願いすれば、沖縄のどこに居ても、かの基地まで20分以上掛かる事はまずありません。
 そして、そこからネルフの離着陸場まではワープで一瞬。この体制ならば、学校からの非常召集とほぼ同じタイムで到着する筈です」

携帯を切ると同時に、東陶と自説を展開。
最後に、『これで、ミサトさんの論拠は崩れましたよね』と言いつつ、彼女はニッコリと微笑んだ。

かくて、一転して苦境に立たされるミサト。
何しろ、強引な力技とはいえ、最大の問題点がクリアになってしまったのだ。
おまけに、さっき自分で『せめて関東圏内だったら許可してあげられたかもしれないけど』と言ってしまった手前、警備体制の不備を理由にする訳にもいかない。
とゆ〜か、北斗が引率する以上、たとえ世界の何所でも同じ事だ。
仮に、銃弾の飛び交う紛争地帯だったとしても、きっと安全地帯に早変わりするだろう。
双方の部隊の全滅をもって。

「な…なんで、カヲリちゃんにそんな事が出来るのよ?」

「マーベリック社が、ダークネスの公式スポンサーだからです」

「だとしても、沖縄基地に着陸許可が下りる訳ないじゃない。
 何か、最近はもう忘れさられてるっぽいけど、アレは侵略者なのよ、侵略者!」

「かの基地の臨時司令官は、ダークネスのファンだそうです。
 それに、マーベリック社には、米軍の上層部にもコネがありますから、多分、大丈夫かと」

苦し紛れの反論を淡々と論破され、ミサト撃沈。
だが、このまま引き下がる訳にはいかない。
これには、作戦部長としての面子が掛かっているのだ。

チラリと、アスカの方を見る。案の定、おもいっきり勝ち誇った顔をしていた。
尻馬に乗って追撃してこない辺りに、ドイツに居た頃の彼女には無かった貫禄というか、強者の余裕の様なものさえ感じられる。
これだけは許せない。何としても、逆転しなくては!

「……………判りました。その体勢が整った事を確認後、二人の修学旅行への参加を許可します。ただし!」

「な、何よ」

「有事の際の迅速な対応力を確保する為、作戦部代表として、私もそれに同行します」

かくてミサトは、何時もの強引なゴリ押しの実行こそ辛うじて踏み止まったものの、ある意味、それ以上に性質の悪い打開策を選択した。
作戦部長的に、これを成長と呼ぶべきか否か? 
現時点では微妙。将来に、一応は期待と言った所だろうか。

「わ…私ったら、なんて取り返しのつかない事を。
 嗚呼、お姉さまに、何と言って御詫びすれば良いの」

「泣かないで、マユミ。貴女は立派に戦ったわ。只、武運に恵まれなかっただけ」

あまりの事に。己の策が、藪を突いて蛇をだしてしまった事を悔み、泣き崩れるマユミ。
レイがそれを慰めている。やや言葉足らずな感は否めないが、彼女としてはこれが精一杯である。

「勝手すぎるわよ、そんなの!
 第一、参加するのはアタシ達だけじゃないのよ。一般生徒の迷惑ってのも考えてよね!

ミサトの予想外な攻撃に心が折れてしまい、戦闘不能に陥った戦友達に成り代わり、必死の抵抗を行なうアスカ。
だが、いかな彼女とて、此処からの巻き返しは絶望的だった。

「大丈夫よん。こ〜んなキレイなお姉さんが同行するのよ。
 男子生徒なんか大喜び。も〜、サービス、サービスってカンジ?」

そう。戦いの趨勢は、既に決してた。
進むべき道が決まれば、後はもう一直線。乗客の安全なんて頭から無視する暴走列車。それがミサトなのだ。
北斗の様な絶対的な壁でもない限り、その直進を阻む事は不可能。
アスカの苦言程度では、かように障害にすらなっていない。

「旅費はどうするのよ?」

「や〜ね〜、経費で落とすに決まってるじゃない」

(目標はATフィールドを展開。肉眼で確認できるほど分厚い面の皮ってところかしら)

胸中でそんな軽口を。奇しくも、実は揶揄ではなくそのまんまの意味のセリフを呟くアスカ。
敵は正に、絶対的な心の壁。かの第五使徒以上に絶望的な強度を誇る城壁だった。
仕方なく、正攻法を諦め次善の策を展開する。

「………判ったわ。その代わり、旅行中は北斗先生の指示に従ってよね」

「そうですね。それと、ミサトさんが同行する班の。私達の班長の指示にも従って下さいね」

と、此処で、何時の間にか復活していたマユミが、アスカの援護射撃を。
ヒカリの肩をポンと叩きつつ、そんな事を宣まった。

「えっ? えっ?」

かくて、旅行中のミサトのお守は、此処までの展開に全く付いてこれなかった少女の。我等が委員長ちゃんの担当となった。
頑張れ、負けるな、委員長ちゃん。修学旅行の平和は、君の双肩に掛かっている!



    〜 同時刻。芍薬101号室、影護邸 〜

一通りの指導を終え、シンジ達に新たな課題を与えた後、一足早く帰宅した北斗は、月臣 京子に自分の予定を。
修学旅行の引率に出かける事を告げた。

「そんな訳で、俺は明後日から4日間此処を留守にする」

「はい」

蚊の鳴く様な声で、それに答える京子。
そう、彼女が居候を始めて早5日。夫に反省を促す為の一時的な家出のつもりだったのに、いまだに迎えが来ないのだ。
いきおい、暗くもなろうというもの。

「一体、何がいけなかったのでしょうね………」

いまや、こんなネガティブな愚痴まで洩らされる始末である。

「そんな弱気でどうする。まだ、たったの5日だぞ。
 それになんだ。お前は、木連の挺身女学院で教えているらしい『良妻賢母』とかいう技の習得を皮切りに、出来る限りの努力をしたのだろう?」

「はい」

「ならば、非は元一朗にある。もっと、泰然と構えていろ」

「ほ…北斗殿」

思わず声を震わせる京子。
ジーンと胸の奥が熱くなる。まさか、この人にこんな気遣いをされる日がこようとは。

「勿論です。私は、常に元一朗様の為に! 夫に寝顔を見せた事など、一度としてありません!」

「そうなのか? 夫婦となるくらいだから、お前と元一朗は昵懇の仲だと思っていたのだが………やはり、寝首をかかれそうになった事があるのか?」

前言撤回。改めて再認識する。影護 北斗とは、こういう人間だった事を。
かくて、ここ数日の屈託を振り払い、彼が何かの武術の技だと勘違いしているものの一節を持ち出しての自己主張は空回りに終った。
正直、苦笑を禁じえない。だが、同時に、カラ元気くらいは出た気がする。

「今のは『寝顔を見せるのが恥ずかしい』っていう意味なのよ、北ちゃん」

と、此処で零夜のフォローが入ったが、

「なんだ。それなら覆面でもすれば済む事だろう?」

「だから、そうじゃなくてね………」

そんな二人のやりとりにも、つい笑みが零れる。
だが、それも束の間の事。我が身の現状を振り返ると、再び心が冷えてゆく。

自分にとって此処での暮らしは、多分、ぬるま湯の様なものなのだろう。
浸かっている間は心地良いが、そこから出ようとすれば、あっという間に寒さに身を震わす事になるのだ。
それでも、心に着物を着せてくれる筈のあの人は、いまだ姿を見せようとしない。
それが恨めしくてならない京子だった。


その頃、肝心の『あの人』はと言えば、アイドルの追っかけに現を抜かしていた所為か、京子の残した置き土産に。
普段なら絶対に気付くレベルのトラップをモロに喰らってしまい、イネスラボのICU(集中治療室)にて、生死の境を彷徨っていた。

「………京子」

なまじ、真面目一辺倒に生きてきた故の麻疹に。
一時の狂熱に犯されてはいたが、それでも心は愛妻と共にあった。
だが、その思いを彼女に伝える機会は、永遠に訪れないかも知れなかった。

「ったく、意識も無い癖に。なんか知らないけど、ムカツク二人よね。いっそ無駄口が叩けない様に改造してやろうかしら?」

現在進行形で、ヤマザキの投与した各種ナノマシンと薬物の働きの沈静化を。
その特殊能力を封じると共に、延命治療が施されていた某ブーステッドマン共々、生命だけでなく人間としての尊厳も大ピンチな元一朗だった。



    〜 二日後。米軍、沖縄基地の離着陸場 〜

本日は第三新東京市立第一中学校の修学旅行の初日。
あの後、本命の交渉相手であるリツコとの熾烈な攻防戦の結果、
本来ならば『行き』だけは他のクラスメイト達と同じ飛行機に乗る筈だったのだが、
この旅行の免罪符である所のミサトが、お約束通り二時間ばかり集合時間に遅刻した為、早くもチャーター機に頼る事に。

『本日も、ミラクル航空を御利用頂きまして、まことに有難う御座います。
 またのフライトを、パイロット共々、心よりお待ちしています』

   ガコン

かくて、もはや御馴染みになった感のあるアナウンスの元ネタバージョンと共に、ロサ・フェティダより、委員長ちゃん率いる第一斑と、
ケンスケ率いる第七班のメンバーを乗せたコンテナが投下された。

  ガチャ

「うわ〜、太陽眩し〜! 流石、元祖日本の常夏の国って所かしら。
 でも、こう簡単に着いちゃうと、なんか情緒もへったくれも無いわね」

「………誰の所為だと思ってるのよ」

着陸と同時に、一番乗りに外へ。必要以上にはしゃぎつつ、勝手な事を宣まってくれたミサトをジト目で見詰めつつ、釘を刺すアスカ。
コレの存在こそが、この旅行を楽しむ上での最大の障害なのは良〜く知っていたつもりだったが、どうやら、まだ認識が甘かったらしい。
実際、のっけからコレでは、膨らんだ期待も萎もうというものである。

「だって〜、仕方ないじゃない。
 此処数日は、この旅行中のスケジュールを空ける為に執務室に篭り切りで。朝、起してくれる人が居なかっただったんだから」

「って、アンタ、一人じゃ起きられないの!?」

「いやその。以前は、まあ何とかなってたんだけど。
 ど〜も起こして貰う事に身体が慣れちゃったらしくて、目覚ましを止めて『あと五分』からの感覚が狂ってるのよ」

「狂う狂わない以前の問題よ、そんな事!」

あたかも、熾烈な縄張り争いをする事で知られるランブルフィッシュの如く、顔を合わせれば始まる何時もの口喧嘩。
そんなアスカ達の間に『お二人共、その辺になさって下さいな』と言いつつ割って入り、この基地の臨時司令官への挨拶に行くという名目で、カヲリはミサトを連れ出した。

そう。このまま二人に角を突き合わせられ、只でさえ大量に抱えている不安材料を更に増やされては困るのだ。
彼女は、ミサトなど想像すら困難な程の死地を越えて。
殺人的な激務をこなしてスケジュールを空け、この修学旅行に参加したのだから。

このチャンスを逃す訳にはいかないってことね。
胸中で呟くその決意も、いつも以上に真剣だった。


「よ〜し、全員集合。委員長、点呼を取れ」

そんなカヲリと入れ違いになる形で最後に出てきた北斗が、ヒカリにそう命じた。

「判りました。相田君(はい)、綾波さん(ハイ)………」

それに応じ、一人一人、確認する委員長ちゃん。
此方の便で来た生徒は、自分の含めて10人。
カヲリが所用で不在なので、目の前には8人の生徒が居れば良いのだが………

判ってはいたつもりだったが、そのあまりに“濃い”メンバー編成を前に、改めて眩暈を覚える。
自分を班長に、カヲリ、アスカ、レイ、マユミ。
ケンスケを班長に、シンジ、トウジ、ラナ、ウミ。
更には、これに北斗とミサトが加わるのだ。
想い人と行動を共にする為の大義名分が立っている事だけが、彼女の心の拠り所だった。


修学旅行初日、いきなり番外編:沖縄基地の見学

兎にも角にも、こうして修学旅行の幕は開けた訳なのだが、その予定はのっけから変更に。
ケンスケの嘆願により、第一中学の学生達を乗せた便が沖縄空港に到着するまでの空き時間を利用して、第一班と第七班のみ、沖縄基地の見学をする事になった。
ちなみに、他の2Aクラスメイト達の引率は、隣のクラスの担任である神楽坂先生が担当。これは合流後も同様である。
そう。実質的に、北斗が引率を担当しているのは、実はこのメンバーだけ。
偶然とは到底思えない、露骨なまでの隔離編成だった。

「(カシャ、カシャ)凄いぞ! 90式戦車が中隊クラスにズラっと! おお! あっちにはF16が!」

かくて、ケンスケだけが大喜びでシャッターを切る中、格納庫にある各種兵装の見学に飽きた他のメンバーは他所の場所へと移動。
その途中、トレーニング室の片隅に配置されていたパンチングマシンに目を留めた北斗が、

「ほう、拳打の威力を測る機械か」

何やら思い付いたらしく、ニヤリと笑いつつ、愛弟子の一人に『やってみろ』と指示した。
それに従い、付属のグローブを右手に嵌め、崩拳の構えを取るトウジ。
師匠の意図は良く判らないが、コレには些か自信がある。
ついでに言えば、正直、チョッと興味もある。 そんなこんなで、気合乗りも充分に、彼は得意技を放った。

「でや〜っ!(バシッ)」

その重い打撃音と同時に、電子表示板の数字がパラパラと点滅。数瞬後、『185』と表示された。

「(ヒュー)思ったよりやるじゃない。ウエィトを考えればプロボクサー並。それもハード・パンチャーで通る数値だわ」

少なからず格闘技の知識と経験があるだけに、口笛と共にトウジを賞賛するアスカ。
だが、それだけでは終らず、

「もっとも、あんなテレホンパンチ、当りっこないけどね」

と、つい憎まれ口を叩いてしまう。
この辺は、おそらく何があっても直らない悪癖。惣流=アスカ=ラングレーという人間を形作る性格の一部と言っても過言では無いだろう。

「じゃかあしいわ! アレが当り難いんは判っとる。ホンマは短打で体勢を崩してから出すモン。ようは必殺技や」

それに噛み付くトウジ。
好結果に気を良くしていた時だっただけに、憤慨も一入である。

「それにしたってモーション大き過ぎよ」

それをいなしつつ、アスカは『貸しなさい』とばかりに、トウジからグローブをひったくると、

「見てなさい。これが実戦的なパンチってものよ」

コンパクトなモーションから右ストレートを。自身の主張通り、隙の少ない鋭い一撃を放った。
結果は『102』。ミニマム級を下回る体重であり、少女である事も合わせて考えれば驚異的な数値である。
差し詰め、天才少女の異名は伊達では無いと言った所だろうか。

「なんや。わしの半分くらいかいな」

「アンタねえ。当らないパンチは只の隙………って、この辺はこないだ習ったばっかでしょ?」

「そうや言うても、威力が低いんかて問題やで。アレじゃ、正面から突っ込んだかて恐ろしゅうないわ」

再び言い争いに突入する二人。
近代格闘技と古武術との間で、ありがちな擦れ違いである。
当然ながら、これはどちらが優れているというものでは無い。
手早く堅実に習得する事を主眼とし、短期間の修練でも戦える様に組み立てられた技と、
『拳訣は、長打に始まり短打に終る』という格言もある様に、長い時間を掛けて功を練り、寸剄を始めとするコンパクトかつ圧倒的な拳打を得る事を目指す技。
それぞれの特色の問題である。

「んじゃ、いよいよ本命登場ね」

そんな二人を豪快にスルーしつつ、ミサトも参戦。 結果は『158』。これもまた性別と年齢を考えれば驚異的な数値である。
まあ、ややトウジよりと言うか、アスカのそれよりも、かなり大振りなモーションではあったが。

「んじゃ、次の人は……」

そのまま、もはや全員参加を前提に次の挑戦者を募るが反応無し。
興味の無い者。下手に高数値を出してしまう事を恐れた者。怖くて出来ない者。
理由は様々だが、他の娘達は全員その誘いを黙殺。

「オーラスでシンちゃんか。頑張ってね」

少女達の反応にチョッちシラケはしたが、気を取り直し、有無を言わせない調子でそうまくしたてると、ミサトは、シンジにグローブを手渡した。

一瞬、さも自信なさげというか、かなり嫌そうな表情を浮べたが、すぐに拒否権が無い事を悟ったらしく、達観した顔に。
かくてシンジは、アスカより更に鋭くコンパクトな。ステップインからのショートフックの様なモーションの一撃を放った。

「えぃ(パシッ)」

全員が。ミサトのそれと違って気になるのか、アスカとトウジも、言い争いを中断して表示板に目を向ける。注目のその結果は、

「な…なんやソレ」

ポカンと口を開けて驚愕するトウジ。
それもその筈、その数値は彼の約1/3。たったの『63』だった。
ハッキリ言って、同年代の中学生の平均値すら下回る結果である。

「チョッとシンジ。幾ら何でも、パンチ力勝負でジャブなんか………」

「いや。今のが、シンジに教えた中では、もっとも威力のある拳打の打ち方だぞ」

なんとなく、アスカがフォローぽいセリフを入れようとしたが、それを遮る形で、北斗がそう宣った。

「何せ、シンジは骨格が華奢だからな。下手に打撃力を上げても、身体がそれに付いてこん」

そして、そんな補足説明も入れた後、

「ついでに言えば、こうも数値に差が出るのは、筋力だけじゃなく技の錬度でも、シンジよりトウジの方が優っているからだ。
 これは当然の結果。何しろ、2ヶ月以上も同じ技だけをひたすら修練したんだからな」

そう言いつつ、北斗はシンジからグローブを受け取ると、教職に就いて以来、急速に身に付いた良識から、パンチングマシンを壊さぬよう手加減された一撃を。

「判るかトウジ。お前に教えているのは、只一つの技を練り上げ必殺となす剛拳。
 他の技はあくまでも余技に過ぎん。目指すは、二の打ちを必要としない究極の一だ」

『これがお手本』という感じに、取り敢えず『830』をマークした。
驚異的な。普通なら、蹴りでも中々出せない数値だ。
これには、遠巻きに見詰めていた駐留中の兵士達も驚愕の声を上げる。
そんなどよめきを黙殺しつつ、今度はシンジの方を向き、

「そして、お前に教えた技は、相手を幻惑しつつ急所を狙う事を前提としたもの。足りない打撃力を技巧で補う、虚拳という訳だ」

師匠の教えを、神妙な顔で拝聴するシンジ達。
かくて、北斗の臨時講義は終了。
いまだにシャッターを切り捲っていたケンスケを強制回収した後、彼等は沖縄基地を後にした。


修学旅行初日:午後の部、那覇国際空港。

第一中学校の生徒を乗せた便が到着する15分程前。
一台のマイクロバスが、大胆な進入速度で空港内駐車場へと突入。

   キキキキ〜〜〜ッ!

タイヤを抉る様な急ブレーキで車体をパワースライドに持ち込み、そのまま絶妙なコントロールで区分けされた白線内に駐車した。

「到着〜! うん、見事なまでの安全運転。注文通りっしょ、ヒカリ………ちゃん?」

いかにも『良い仕事をした』とばかりに顔を輝かせつつ後ろの席に声を掛けたものの、振り返ると同時に困惑するミサト。
それもその筈、乗車前に『安全運転でお願いします』と何度も念押しをしてきた少女が、何故かグッタリと。しかも、時折、身体をピクピク痙攣させているのだ。

「……………彼女、何か持病とかあったの?」

「ンな訳あるか〜! ショックで気絶してんのよ!」

恐る恐る尋ねるミサトを一喝するアスカ。

「何で? どうして?」

「いや、『何で』って。そりゃまあ、いつぞやのスポーツカーでのバトルん時を基準にすんのやったら安全運転かもしれへんけど………なあ」

ミサトの問いに、淡々と答えつつ、隣に座るシンジに同意を求めるトウジ。

「そうですよ、ミサトさん。安全運転と言うからには、せめて交通法規を守って貰わないと」

「ってゆ〜か、こんな巨体でドリフトかました時点で、安全もへったくれも無いわよ!」

シンジが、やんわりと。アスカが直球で批難を。
だがミサトは、さも心外だと言わんばかりに、

「え〜っ! 別にイイじゃない。広義の意味じゃ、これだって一応FRっしょ?」

「って、アンタの辞書じゃ後輪駆動=ドリフトなの!? 一体、ドコの公道レース漫画よ!」

ちなみに、このマイクロバス。
当初、コンテナに同乗させるのは、緊急時用の百華繚乱のみの予定だったのだが、
諸般の事情で、(ミサトの遅刻が確定した際、アスカとレイだけを残していく訳にも行かず、
北斗を含めた班のメンバー全員が空港に居残った為)10人以上の人員を乗せての移動手段が必要になった為、急遽手配された物である。
だが、なまじ都合良くこんな車で乗り付けた所為か、第一班と第七班は合流後も別行動に。
修学旅行中の各見学場所への移動中さえも、他の生徒達から隔離される事になった。



修学旅行初日:午後の部、沖縄戦戦跡地の見学。

【糸数壕(アプチラガマ)】
 玉城村糸数にある全長270mの壕。終戦直後の6月の初旬、米軍はこの一帯まで進出し、馬乗り攻撃を敢行。
 出入り口や空気穴からガソリンや黄燐弾が投げ込まれ、子供や老人、重症患者らに多数の死傷者がでた。

【第32軍司令部壕】
 別名、天ノ岩戸戦闘司令部。東シナ海と那覇市、中部一帯が眺望でき、戦況を把握するには最良の地形に位置。
 地下約30メートル。城塞を南北に貫通し約1km。
 入り口はコンクリートで固め、内部は丸太で補強。1t爆弾や40サンチ艦砲弾にも耐えられる構造になっていた。
 そんな鉄壁の要塞も、現在では、巨大なコンクリートの残骸が点々としているのみ。

【ギーザバンタ】
 具志頭城跡から摩文仁の丘に連なる約4kmの険しい絶壁。
 沖縄戦末期、米軍による激しい掃討戦で、多くの住民や兵士が死んだ場所である。
 背後には火炎放射が迫り、目前の海にはおびただしい艦艇が放火を向けていた為、前にも後ろにも逃げ場を失った住民は、
 捕虜になる事を恐れ、そのまま崖から身を投げた。
 それ故、当時の米兵達は、この場所をシューサイドクリフ(自殺の断崖)と呼んだと言われている。

「なんつ〜か、辛気臭いトコばっか回るのね、修学旅行って」

「(カシャ、カシャ)判ってませんねえ、ミサトさん。  これこそ本物の戦争の傷跡。後世に伝えるべき、貴重なメモリアルですよ」

ツアー中、終始つまらなそうにしているミサトを、シャッターを切りつつケンスケが窘める。
だが、敢えて言わせて頂こう。彼が一番判っていない!

「そう。これが、『恥ずかしい』ということなのね」

カヲリ達に習って他人のフリを決め込みながら、新たな感情の芽生えを実感するレイだった。



修学旅行初日:午後の部ラスト、泡盛製造所の見学。

「お…美味しい」

泡盛館にて一通りの製造過程を見学した後、ミサトは一人、臆面もなく試飲コーナにて一杯引っ掛けた。
だが、チョッとした味見に以前飲んだ際は『こんなモンか』程度だったそれが、何故か素晴らしく美味しかった。
勢い込んで銘柄を尋ねたところ、この酒は、泡盛を長期間寝かせた古酒という種類の物。
年月を得る程に味にまろみが増し、中には100年を超える物まであるという。
と言っても、80年超えの物は太平洋戦争中に。
50年クラスの物も、セカンドインパクト直後のドサクサを狙って行なわれた某北の国による侵略戦争によってその殆どが失われていて、現在は5年物や10年物が主流らしいのだが。

「そ…そんな。こんな美味しいものが、そんなくだらない理由で大量に失われていただなんて!」

驚愕しつつも、更にもう一杯。

「(プハァ〜)うんうん。やっぱ戦争反対。ノー・モア・ウォーズ・ヒストリーよね」

「アンタ、実は今、自分の立場を完全に忘れてるでしょう」

シミジミとそう述解するミサトに、これまたシミジミと語るアスカ。
その後、大量購入を決意するも、20年超えの古酒のプレミア価格を前に完全敗北してサメザメと泣く義姉を前に、『私は泣かない』と改めて胸に誓う彼女だった。

「お願いカヲリちゃん、お金貸して!」

「嫌です」

「じゃ、今、一ダースずつ注文した20年物と30年物を何本か回して!」

「駄目です。これは私個人ではなく、マーベリック社の秘書として注文した物。日頃お世話になっている方々への御土産の品ってことね」

泣かないったら、泣かない。

そんなこんなで、かなり後ろ髪を引かれたものの、先立つものが無くては話にならない。
仕方なく、泡盛館を後にしハンドルを握ったミサトだったが、

「ちょ…一寸待って下さい、ミサトさん」

漸くその運転に慣れ、復調の兆しの見え始めたヒカリが、それを制止。

「ん? 何かしら」

「あの。確か、先程の泡盛館の試飲コーナーで、飲みましたよね、お酒?」

何かの間違いであって欲しい。
胸中でそう祈りながら、一節一節区切る様な口調で確認するヒカリ。
だが、現実は常に非情だった。

「ああ。大丈夫、大丈夫、チョビっと舐めただけだから」

「そ…そうなんですか。やだな私ったら。何故かミサトさんが、御猪口で7〜8杯位飲んでいた様に見えたもので、つい」

「うん。だから舐めただけよ」

「………………………」

暫しの沈黙。そして、

「嫌ああっ! 降ろしてええっ!!」

そんなヒカリの魂の慟哭も虚しく、マイクロバスは急発進。
彼女の心に消しえぬトラウマを刻み込みつつ、一路、本日の宿泊場へと向かった。


その頃、2199年の地球では、

「近代」

「ドンジャラ」

   ガチャリ

合言葉を告げ、とある高級マンションの一室へ。

「よお、アンタかい」

「…………」

「相変わらず愛想が無いねえ」

既に顔見知りとなった、プロレスラー風にマッチョな外見の案内人が出迎えるが、そんなものは黙殺する。
だが、何時もなら、苦笑しつつも速やかに勝負の場へと誘う彼が、声を顰めて苦言を。

「それはそうと。アンタ、チョとヤバイ連中に目を付けられちまったぜ」

そう言いつつ、いかにもな雰囲気を纏った者達が座る卓の方へ顎をしゃくる。
だが、その程度の事には小揺るぎもせず、得意のポーズを決めつつ、

「問題ない。相手が誰でも同じ事だ。
 寧ろ、風速(掛け金のこと)の上限を取払う理由になる」

「理由? アンタが欲しいのは口実だろうが」

ニヤリと笑いつつ、その強気の発言に応じる案内人。
そう。未来の地球へと降り立ったゲンドウは、昼間は、居合わせた作業員の一人として、
あれが避け得なかった不幸な事故である事を釈明すべく、カントクに付いて関係各所の事務所を回り、
夜は、街のチンピラを何人かノシて手に入れた情報を元に見付けたアンダーな賭場、マンション麻雀で荒稼ぎと、多忙な日々を送っていた。




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