ナノマシンの紋様

   

 

第2話   「ゲキガンガーとナノマシンと中華鍋」

                             

 

                             ドドンパQ

 

 

 こうしてナデシコに乗船したアキトとイツキだが戦艦内ということもあり、1年にも及んだ同棲生活にピリオドを打った。

 そしてアキトは今自分の住むべき部屋の前に来たわけだが今更ながらイツキと一緒にもう一度暮らしたいと思った、なぜならばその部屋の表札にはこれから共に暮らす者の名前が書いてあるわけだが、本名の上に×印がついていて魂の名前が書かれていた。

 だが、火星での戦いに比べればたいしたことはない、アキトは勇気を振り絞ってカードキーでドアを開けた。

 しかし、予想とは違いその部屋は静かであった。そう同居者になるべき男ダイゴウジガイは先日折れた足にさらに蹴りを食らったために医務室で入院していた。

「俺は幸せだ」

 アキトは少しセンチメンタルになった。

「さてと」

 彼はイツキと食事の約束をしていたので荷物を置くと部屋から去って行こうとした、が、ドアを開けた時、目の前に女性がいた。

「アキト!」

 その女性は言った。

「あの、ミスマルユリカさんでしたっけ?」

「もう昔みたいに、ユリカって呼んでよ」

「いや、そういうわけにはいきません。名簿見ましたよ、艦長だそうですね」

「だからって」

「士気を損ないますよ、じゃあ私は約束がありますので、失礼」

「ぶーー」

 ユリかはそう言いながらも彼に着いて行った。 

 

 

「遅い」

 イツキはナデシコ食堂の前に立って待っていた。

 そして、イツキとユリカによる火花が散った。

 アキトとイツキは食券を買った、アキトは1年間食いつづけたくせにラーメンを、イツキはなつかしさのためか火星丼を。

「ねえ、アキトいつ地球に来たの?」

 ユリカがたずねる。

「1年前、火星大戦が始まる寸前に旅行に出ていたものでしてね、なりゆきで地球に来るしかなかった」

「その1年間私と同棲していたんですけどね」

 イツキがけんかをを振る。

「ぶちっ、ぶち」

(馬鹿野郎―)

 アキトはそう思ったがもう遅いようだ。

 だが、その時、

「あの艦長、ブリッジに来てもらえますか、重大な発表があるそうです」

 通信士のメグミ・レイナードがコミュニケを通して言ってきた。

「えー」

 ユリカがぶーたれた。

「艦長、行った方がいいですよ」

「バイバイ」

 イツキはこの上ない笑みで言い放った。

「エー――ン」

 ユリカは走りながら去って行った。

「いじめすぎだぞ、イツキ」

 

 ブリッジにはナデシコのメインクルーが集まっていた。

 骨折のために入院していたダイゴウジガイも根性と熱血でこの会に参加していた。

「今までナデシコの目的地を秘密にしていたわけは妨害者の目を欺くためであります」

 プロスペクターが説明を始める。

「我々の目的地は火星だ!」

 フクベ提督がカッコヨク言い放った。

 

 

 アキトたちは食堂のスクリーンでブリッジの様子を見ていた。

 なぜかカメラがじじいをアップにした。

「我々の目的地は火星だ」

 アキトは食べていたラーメンのスープを吹き出した、それはもちろん向かいに座っているイツキの顔にかかる、キレたイツキはアキトにカウンターでパンチを食らわせる、

なにー!!

 アキトは二つの意味で叫びながら後方に倒れて行った。

「うるさいよ!」

 叫び声に気が立ったナデシコ食堂の料理長ホウメイによって投げられた中華鍋がアキトの頭に刺さり、彼は気絶した。

 

 

「では地球の侵略を見過ごすと言うのですか!?」

 目立たなく、台詞のなかった副長のアオイジュンが言った。

「はい、連合軍はたくさん入植者がいた火星や月を見捨て地球だけに防衛線を張りました、火星には生き残りもいるかもしれません、ですから…」

「その必要はないわ」

 キノコがブリッジに入ってきた、武装した兵士を連れながら。

 

 

 食堂内にも兵士が入ってくる、アキトはまだ気絶したままだった。

 格納庫も占拠された。

 

 

キノ…いやムネタケ血迷ったか!」

 キノ…いやムネタケは少々切れながら、

「提督この艦をいただくわ」

 と、言った。

「わかったぞ、てめえら木星の手先のキノコ星人だな!」

 と、ガイは熱血しながら言ったが銃を構えた兵士によって遮られた。

「貴様たちだけで何ができる」

 ゴートが冷静なせりふを言う。

「もちろん私たちだけじゃないわ、ほら、来たようよ」

 彼の言葉と共にナデシコの目の前に連合軍の戦艦が浮上してきた。

「私は連合軍第三艦隊提督ミスマルである」

 スクリーンにはサリーちゃんのパパのコスプレをしたような男がいた。

「お父様」

 艦長のユリカが言う。

「えっ」

 ブリッジはざわついた。

「おお、ユリカ、だいぶやつれたんじゃないか?」

「そんなお父様、お別れしてまだ2日ですわ、それよりこれはどういうことなんですか?」

「ユリカー、お父さんもつらいんだ、戦艦ナデシコは連合軍が拿捕する」

「どういうことですかミスマル提督、連合軍との話し合いは決着したはずですが」

 プロスが横から入ってきた。

「この非常時に民間が戦艦を持つことなどおかしい」

「いやあ、なるほどミスマル提督わかり易い、そうなれば交渉ですね、すぐさまそちらに向かいます」

「いいだろう、だが!」

 なぜかカメラがアップになる、

「作動キーと艦長は当艦が預かる」

「えっ、えーと」

 艦長ミスマルユリカはキーを抜こうとした。

「艦長これはキノコ星人の罠だ!!」

 ガイが叫ぶ。

「艦長、我々は軍人ではない、よって命令に従う必要はない!」

 フクベが言った。

「フクベさん、これ以上生き恥をさらすつもりですか」

 ミスマル提督は涙ぐみながら、

「ユリィカー、私が間違ったこと言った事があるか?」

「うーーん」

 彼女は悩んだ。

「艦長、やめろ」

「艦長」

 艦長はキーを抜いた、

「抜いちゃいました―」

 兵士の中から歓声が上がる。

「正義がー」

「あーあ、エンジンが止まっちゃう」

「これでナデシコは無防備ね」

 ルリが冷静に呟いた。

 

 

「ここでおとなしくしててよね」

 ムネタケはブリッジにいたクルーを食堂に閉じ込めた。

「ちくしょう、キノコ星人め、覚えてろ!」

 ガイは悪役の台詞を言った。

「こうして正義は一日で散るか」

 ウリバタケが言った。

「こらー、そういうこと言うな―」

 テーブルの一つではブリッジの女性クルーたちが話し合っていた。

「私、戦艦に乗ればかっこいい人がいっぱいいると思っていたのに、この艦変な人ばっかり

 メグミ・レイナードが言った。

「えー、でもパイロットのテンカワくんとかかっこいいと思うけど、この前の戦闘なんてエースって感じじゃない」

 フェロモンを発散させているハルカミナトが言った。

 そして二人はテンカワアキトを探してみた、だが、彼は血だまりの上に膝枕をされて気絶していた。

「アキト―、死なないでー」

 イツキが介抱していたが、彼はまだ目覚めていなかった。

「みんなー元気出せよ―。ようし俺が元気の出るビデオを見せてやる」

 そしてガイは懐からビデオ出した。

「ったく、こんなに古いやつは今のテレビにくっつけるの難しいんだよな―」

 と、言いながらも機械をいじれるウリバタケはうれしいそうだった。

「よーし、スタート」

 ガイは再生ボタンを押した。

「ゲキガンガー3」

 映像が流れる。

 少し空間が止まった。

「なんだこれは?」

 ゴートが突っ込む。

「幻のアニメ、ゲキガンガー3、全三十九話燃え燃えっスー」

 ガイが顔を少し赤くしながら言った。

この音はゲキガンガー3!!

 アキトは目覚めた、が、思いきり顔を上げたためにイツキの顔に直撃した。イツキは顔を押さえたが、アキトにそんなことはお構いなく、血だまりから立ちあがった。

「わかるかー、この良さが」

 ガイが近づいて来る。

「無敵ゲキガンガー発進!」

 映像が流れる。

「うおーー」

 二人は熱血し始めた。

 

 

「ジュン君たち遅いなあ」

 ユリカは連合第三艦隊トビウメの来賓室で呟いた。

「いやあ、ユリカ久しぶりだな、おまえの好きなケーキもたくさん用意してあるぞ、たーんとお食べ」

 ミスマルコウイチロウ、親ばかぶり発揮である。

「ねーお父様テンカワアキト君覚えてらっしゃいますか?」

「テンカワ?はて、誰だったかなぁ」

「火星でお隣だった人ですわ」

「オー思い出したぞ、火星で死んでしまった」

「アキト、生きていましたわ」

「なにっ!テンカワの家族は死んだ筈じゃなかったのか」

「いま、ナデシコに乗っていますわ、彼」

(どういうことなんだ?天河君)

 コウイチロウは死んでしまった男を思い出した。

 その時、扉が開き、プロスとジュンが入ってきた。

「結論は出たかね」

 コウイチロウはたずねた。

「ええ、ナデシコはあくまでもネルガルの所有、よって制限受けることなし」

 プロスは眼鏡をなおしながら言った。

 

 

 その頃食堂内ではゲキガンガー3の上映会が行われていた。

「ゲキガンパーンチ!」

「ゲキガンビーム!」

「ゲキガンカッター!」

 映像内でゲキガンガーがアクションを行う。

「アキト熱いよ」

 イツキは頭部への攻撃を回復した後、アキトの横でテレビを見ていたが熱さに耐えきれなくなってきた。

「それにしても暑苦しいな、こいつら」

 ウリバタケがビールを飲みながら言った。

「技の名前を叫ぶのは音声入力だからか?」

 ゴートが鋭い突っ込みを入れる。

「だー違う」

 様々なコメントについに切れたガイが立ちあがった。

「これが魂のほとばしり、熱血なんだよ!」

 ガイが叫ぶ。 

「はっ!」

 彼は何かを悟ったようだ。 

「みんなこのシュチュエーションに燃えるものを感じないか?奪われた秘密基地、軍部の陰謀、残された子供たちだけでも事態を打開しようと思わないか?」

「誰だよ、子供たちって」

「でもさー、この艦、艦長いないと動かないよ」

 ルリが相変わらず鋭い突っ込みを入れる。

「根性で何とかなる」

 全体からため息が漏れた。

「正義は勝つんだ!なっ、アキト」

 ガイはアキトに話を振った。

「正義か」

 アキトは呟いた、冷静な台詞に視線が集まる。

「だがな、正義でも助けられないものはいっぱいあるのさ」

 アキトは立ちあがった、そして顔に映るはナノマシンの紋様

「アキト?」

 イツキは思い出した、1年前のあの時を。

 アキトはドアに向かって歩き出した。

「テンカワどこに行くつもりだ」

 ゴートが銃を構えながら問いただした。

「正義の味方ごっこ

 そう言うとアキトは一瞬で懐から銃を取りだし、後ろを向きながらゴートの銃を弾き飛ばした。

「なにっ」 

 ゴートは信じられなかった、こんなことは始めてだからだ。

「人員を二人に分けてブリッジと格納庫を占拠しろ」

 アキトはそう言うとサングラスをかけ、ドアに思いきりパンチした。

 吹き飛ぶドア、そして歩哨に立っていた兵士をアキトは少し手加減して殴り飛ばした。

「さーて行こうか」

 その時艦が揺れた。 

「どうしたのオモイカネ?」

 ルリはコミュニケでナデシコのAIオモイカネを呼び出した。

「近くで眠っていたチューリップが再起動(>。<)」

 事務的なメッセージなわりには、愛嬌があった。

「だってさ」

 ルリが言った。

「ちっ、打開策は?」

 アキトがたずねる。

「艦長奪還が必要ね、グラフティーブラストでしかチューリップ倒せないし」

 ルリが言う。

「わかった」

 アキトは走り出した、ナノマシンの紋様を浮かべながら。

 

 

「チューリップが生きていただと?」

 コウイチロウが言った。

「ええ、すでに護衛艦のクロッカスとパンジーは吸いこまれました」

 下士官が情報報告をする。

 コウイチロウたちはブリッジ内に入った。

「チューリップ進路をナデシコへ」

 オペレーターが報告する。

「よし、ナデシコを動かすぞ、ユリカ、作動キーを渡しなさい」

 だが、彼女はその場にいなかった。

「どこに行ったんだ、ユリカは?」

 彼はジュンにたずねた。

「ええっ」

 そう、簿幸の男ジュンは置いてきぼりを食らっていることにきづいていなかった。

 

 

 鳴り響く銃声、アキトは降り注ぐマシンガンの雨をよけ、兵士を倒しながら格納庫に向かっていた、ナノマシンの紋様を浮かべながら。

 そうそれはあの頃の感覚だった。

「フー終わりだ」

 ナノマシンの紋様は消えた。

 格納庫内にはアキトの声しか響かなかった。

 

「どういうこと、どういうことよ」

 ムネタケはブリッジでパニクッテいたが、中華鍋が飛んできたことによって中断された。

「ははは、ちょろいもんさね」

 食堂の主ホウメイ彼女は中華なべを使用すると最強だった。

「ぶい」

 中華鍋をヘルメットにしたハルカ・ミナトもブリッジの下部の兵士をすべて倒していた。

 

 

 ゴートとイツキは元軍属だけあってほかのメンバーよりもはやく格納庫にちかづいていた。

「イツキ、テンカワとは何者なんだ?」

「わからないわ、彼あまりプライベートなこと話したがらないから」

「そんなことではすまないだろう、鉄製のドアを拳で破壊、立った一人で重火器を持った兵士に向かって行く」

「一つだけ答えてあげるわ、彼は最強なだけよ」

 ゴートは黙っていた。

 

 

「エステバリスの準備を頼む」

 アキトはウリバタケに指示した。

 デッキにイツキ、ルリ、メグミは移動していた。

「みなさん、どうなるかわからないので退避して下さい」

 メグミは格納庫内の整備班に指示した。

「フッ」

「あれえ、ルリちゃん今笑った?」

「私も結構馬鹿よねえ」

 ルリは言った。

「あら、馬鹿の方が人生楽よ」

 イツキのその台詞はなぜか説得力があった

「いくぞ」

 アキトの声が響き、エステバリスサレナの目の前のゲートが開く。

「マニュアル発進、ようい、ドン」

 ルリが指示した。

「マニュアル発進て、ただ走るだけなの?」

「うん」

「思い出すなあ、マニュアル発進、1年前のエステは飛べなかったからねえ」

 この時代を知っているイツキはけっこう貴重だったりする。

「マニュアル発進?サレナ?…・ルリちゃんデータベースからサレナのデータ出して」 

 イツキはルリに指示した。

「ほい」

 ルリはすぐにイツキのコミュニケにサレナのデータを出す。

 イツキはそれを見て、冷や汗が出た。

「アキト、戻りなさい。それ1年前といっしょでサレナパーツがないと陸戦と同じなのよ」

 もう遅かった、アキトはすでに外に出ていた。

 ついでに言えばアキトが出て行った射出口のもう片方からユリカの乗ったヘリが戻ってきていた

「みんな、V」

「テンカワさんてばか?」

「ルリちゃんそれ以上言うと殺すよ」

「私、少女ですから」

 ルリは恐怖のためか少し支離滅裂だった。

「ウリバタケさん、わたしが空戦で出るわ」

 イツキはウリバタケにコミュニケで指示した。

「俺もそうしたいんだが、そうになりそうにない」

 ウリバタケが顔に汗を浮かべながら言った。

「へっ?」

 その答えは暑苦しい男の言葉によって明らかになった。

行くぜー、ゲキガンガー!!

 

 

 その頃アキトは、

「ちくしょう、開発者、しっかり造っとけ―」

 彼は海水の中と空中をさまよっていた、その周りをチューリップの触手が狙う。まあ、おとりにはなっていた。

 だが、この時コミュニケにある男が映った。

「ふっ、待たせたな坊や」

 ガイはエステで触手をよけながら、

「ゲキガンウィング」

 と、叫んでいた。

「良いとこに来たぞ、山田次郎。ゲキガンガーのように合体だ」

「ダイゴウジガイだ。俺の足はもうもたん、掛け声はクロスクラッシュだ」

「いくぞー」

「「クロスクラッシュ――――!!」」

 アキトのコックピットがガイの空戦フレームにドッキングした。

 アキトの空戦フレームが飛んで行く。

「行け―、あきとー、ゲキガンフレア―だ―」

「ゲキガンフレア―」

 アキトはゲキガンガーになりきっていた。そし、チューリップの触手を一つ一つ破壊していく。

 

 

 五分後、再起動したナデシコによってチューリップは破壊された。

 

 

 筆者の戯言

 アキトはゲキガンガー好き。

 

 

代理人の感想

 

・・・・・・いかにクールでもゲキガンマニアなのは変わらないのか・・・・・。

しかも躊躇なくガイとハモるあたり、TV版より重症になってる(苦笑)。

「正義でも助けられないものは〜〜」なんて言ってる割にノリノリだし。

・・・・美味しいヤツ。