復讐の彼方へ
CHAPTER 5
「そうこなくちゃ」
ドドンパQ
食堂に放り込まれたアキトは趣味であり仕事であるコックに専念していた。船は軍に占拠されているし、なにより艦長は敵艦にいる、それに関してはプロスが近くに入るはずなので問題はないが、ネルガル本社のコンタクトが何もない限り下手に行動しない方がいい。
だからアキトは今食堂でジャガイモの皮を剥いていた。隣には食堂メンバーの中では一番大人びているサユリがいる。
(ネルガルは軍にこの船をやるつもりか?)
アキトはジャガイモを剥きながら自問した。
この船は火星のネルガル研究データを奪取するためにある、そしてアカツキの考えとすればとしてはその実力を軍に評価させ二番艦からを売りつける。真の目的を達成させるためにはまだ早すぎる。
その時、アキトのコミュニケが着信したことを知らせた。
(やはりな)
アキトはそれに満足した。
「サユリちゃん、俺ちょっとはずすから」
「あっ、はい。分かりました」
彼女の返答を確認すると料理長ホウメイに見つからないようにロッカー室に移動した。
食堂ロッカー室、食堂のメンバーに男はアキトしかいないのでここはアキトの部屋に等しい。
アキトはコミュニケを通信可能にした。それと共に長髪の男がウィンドウに現れた、アカツキである。
「いやあ、久しぶりだねえ。テンカワ君」
「ごたくはいい、そっちの結論を聞かせてもらおうか?」
「わかったわかった。軍人さんたちこっちが思っていたよりかも行動が早くてね、困った困った。こちらとしてはスキャパレリプロジェクトに変更無し。君にやって欲しいことは……分かってるな?」
アカツキは軽く、そして簡潔に言った。
「了解」
アキトはそう言うと通信を切った。
(そうこなくちゃ)
そして笑う。
(元軍最強の男対復讐代理人テンカワアキト、どっちが強いのかなあ?)
アカツキは少し考えた。ちなみに復讐代理人とはまた後の話である。
「ねえ、テンカワ君まだ?」
会長室にエリナが入ってきた。
(いけね、通信切っちまった)
アカツキは背中に冷たいものを感じた。
アキトはエプロンを脱ぎ捨てるとロッカーの中に入れておいた特製のスーツを取り出した、防弾繊維の硬さに難儀しながらそれを着る。彼の体重を最も重くするのはこれである。
腕や体を軽く動かしスーツが体に馴染んだのを確認するとロッカーの中にある銃などを装着していく、その際に遊底を引いて安全装置をかけるという動作も忘れない。
そして最後にバイザーをかけると鏡を見た。そこにいるのは自分、だが自分でない自分。
「さあ、狩の時間だ」
アキトはニヤリと笑うとロッカー室を後にした。
サユリには厨房の横を通って行く男が誰だか分からなかった。
「ごめんね」
男は手を合わせながら謝った。
(アキトさん?)
彼女はその男がアキトだと言うことがはっきりわかった。だがそれが本当にアキトなのかということは分からなかったのであった。
アキトは食堂内を見回してゴートを探した。
いた。
彼はスクリーンでゲキガンガーを見ていたのだ。
「ゴート、いいか?」
アキトは後ろから声をかけると彼を入り口近くのテーブルにつれて行くのであった。
「なんだ、テンカワ」
その声は邪魔をされたのに怒っていたのか少し強かった。だが、アキトにそんなことは関係ない。
「ネルガル本社からだ。ナデシコはスキャパレリプロジェクトを決行する」
それだけでゴートは真意がわかった。
「で、どうするつもりだ?ドアは外側からロックされてるんだぞ」
ゴートの問いにアキトは答える代りにポケットから粘土のようなものを取り出した。
「プラスチック爆弾…」
ゴートは目の前の男が当たり前という顔をしているのに驚くしかなかった。
「俺はブリッジ、お前は格納庫だ」
アキトはウィンドウに艦内地図を出すとゴートに簡単な説明をした。
アキトはクルーに気づかれないようにドアにプラスチック爆弾を取り付けていった。
そして二人の男は両手に銃を握った。
「いくぞ…」
アキトは短く言うと雷管のスイッチを押した。
爆発音と共に体重の多いゴートがドアに突っ込む。ドアが廊下に倒れ。それと同時にアキトが出る。煙幕がたっていたが暗視モードのバイザーには関係ない歩哨に立っていた兵士の足を撃つ。それに合わせてゴートが兵士の首筋を拳で打つ。
そして二人は目配せするとそれぞれの戦場に向かっていった。
食堂の中のクルーたちはゲキガンガーに夢中で戦場を無視していた。
筆者の感想
最近死ぬほど忙しい。200万越えたのにいまだに記念SSが完成しない、がんばります。
代理人の感想
横で爆発が起きてるのにゲキガンガー見てるとは・・・・
どれだけの大音量で聞いてたんだか(汗)。
復讐代理人・・・・「必殺仕○人」(核爆)?