復讐の彼方へ

 

CHAPTER 8

「再会・2」

 

ドドンパQ

 

 

「何だと」

 コウイチロウはプロスの発言に驚愕の表情を浮かべた。

「貴様、今何と言った!」

 彼は問いただす。

「言ったとおりです、テンカワ夫妻は私が殺しました」

 プロスは淡々と答える。

「貴様ぁ!!」

 コウイチロウはプロスの胸倉をつかむと殴ろうとした、だがその腕は止まるしかなかった。

 コウイチロウは首筋にひんやりとした物を感じていた、それはナイフ。コウイチロウは手を離し、腕も下ろした。プロスのナイフもともに下がる。

「お分かりいただけましたか?私はテンカワ夫妻を殺しました」

 そう言うとプロスはナイフをポケットにしまった。

「少しお話をしましょう……」 

 そう言うとプロスはメガネを直しながら腕を組んだ。

「私とテンカワさんは親友でした。あのころの私は火星の副指令という仕事の傍ら、ネルガルのシークレットサービスもやっていました。最初は、そう最初は良い友人同士でした。しかし、テンカワさんがボゾンジャンプのネルガル独占支配を防ごうとした時点から、運命はこじれていったのです」

 コウイチロウはプロスの話しを静かに聞いていた。プロスはさらに続ける。

「ネルガル本社から連絡が来ました、テンカワ博士を殺せ、と。私はもちろん躊躇しました、テンカワ博士を説得しました。しかし、彼は拒みました、すべてを私に任せると言い残して」

「だが、だからと言って、一人の少年の運命もおまえに語る資格があると言うのか!」

「一人の少年?」

「息子だよ、テンカワくんの息子、アキトくんだよ」

 プロスは考えた、このことを話すべきかと。だが、相手はすべてを知る資格がある。

「アキトは、私が育てました」

「なんだと!」

 コウイチロウはまたもや驚愕の顔を浮かべた。

「私は罪人です、とんでもない男です……」

 プロスの懺悔とともに部屋に沈黙が流れた。

 

 

「いいか、テンカワァ!!ナデシコが起動していない以上空戦フレームは3分ぐらいしか飛べねえからな!!」

 格納庫でウリバタケが相変わらず大きな声で叫んだ。

 アキトはコックピットでバイザーの調整をしていた、ウリバタケの言葉なら別に聞かなくてもかまわない、パイロットなら常識の話だ。結局のところ彼には3分という時間で十分だった、奇襲というものは短時間で済ましてこそ意味がある。

 ナデシコの補助電力でハッチが開く。

「よし!行けるぞ!!テンカワァ!!!」

「わかってますよ」

 エステバリスのブースターを全開にする、奇襲の開始だった。

 

 

「続きを聞かせてくれないか?」

 静まり返った来賓室でコウイチロウはプロスにたずねた。

「そうですね、私はアキトに……」

 その瞬間、艦全体に衝撃が走った。

「どうした!」

 コウイチロウは部屋に備え付けのモニターでブリッジにたずね。

「ナデシコです、ナデシコのエステバリスが奇襲を。ハッチをぶち破ってパイロットが侵入した模様です」

「くそッ!」

 コウイチロウは叫んだ。

「多分これは……」 

 プロスはなにかを言いかけた。

「なんだね?」

 コウイチロウが聞く。

「いえ、すぐにおわかりになるでしょう」

 プロスの言おうとしたことがなんだかわからなかったコウイチロウは指揮をとるために部屋を出ていった。

 

 

 テンカワアキトは走りつづけた、目標に向かって。障害はすべて叩きのめす、右手に握った愛するリボルバーで。

 そして、頭の中の地図で来賓室を探す。

「アキト!」

 ユリカだった、後ろには副長、ジュンもいる。

「逃げるぞ」

 アキトは簡潔に言ったが、もう一人目的の男がいない。

「プロスは?」

「お父様と一緒にどっかいっちゃった」

「くそ、それより早く逃げろ」

 奇襲による混乱はあくまでも一時的なものだ、アキトは早くケリをつけたかった。

「アキトくん!!」

 後ろからの呼び声に反射的に銃を向けたアキトだったが、その腕が止まる。(誰だ?)

 アキトは考えた、誰だこの懐かしい男は?

 そこにはコウイチロウが立っていた。

「ユリカ、おまえらは早く行け」

「えっ、でも…」

「いいから早くしろ、副長さっさとつれてけ!」

 アキトの怒気を含んだ声はジュンを動かした。彼はユリカの手を持つと一気に走っていった。

「久しぶりだね、アキトくん」

 コウイチロウは昔ながらの声を出した。

「ミスマル…おじさん……?」

 アキトは思い出した。銃を下ろす。

「ああ、そうだ君も変わったな」

「変わりますよ、特に子供は」

「君はいったい何を見てきたのだね?」

 コウイチロウがたずねた瞬間再び艦に衝撃が走った。

(相変わらず派手だな)

 アキトは相棒の動きを観察した。

 コウイチロウのコミュニケが反応する。

「どうした?」

「今の衝撃は内部からの内部からの爆発です、機関室がやられました」

「なんだと!」

「もうひとつ悪いことにチューリップが再起動しました」

「!まだ生きていたか」

 コウイチロウは叫んだ。

「忙しくなってきましたね」

 アキトは涼しい声でしゃべった。

「どうです?ナデシコが助けましょうか?」

「君も父親に似てきたな、頼まなくてもやるつもりだろう?」

「また、話しましょう」

 アキトは後ろを向くと走り出した。

 

 アキトが外に出たとき、プロスがヘリに乗ろうとしていた。

「相変わらず派手だな」

「私にとっては普通だよ」 

 プロスは小悪魔的な笑みを浮かべた。

 アキトはコックピットに搭乗した。

(残り20秒か)

 エネルギーが少ない、来るときはレーダーに映らないよう慎重に飛んできたためだ。ここまで少ないと時間稼ぎにもならない。

「お困りのようだな、坊や」

 コミュニケにガイが映る。

「なんだよ」

「なんだとはなんだ、いいか、俺のとおまえのエステバリスを空中合体させるんだ。そうすればナデシコ起動までなんとか時間が稼げる」

「わかった!」

 アキトは飛び立った。

「いいか合言葉はクロスクラッシュだ」

「やだよ」

「何でだ!?」

「二十歳にもなってそんなこと言ってられるか!」

「いいかチャンスは一回だ、俺の足はもうもたん」

「いいから黙ってろ」

 アキトはドッキングプログラムを強制始動させた。

「あっ、てめえ」

 アキトのエステとガイのが合体する。

 だが、

「ぬおお」

 アキトのエステバリスは海中に落ちた。ガイの前置きが長かったためにエネルギーが切れていたからだ。

「ちくしょう」

 アキトはそれから一時間後酸欠寸前のところを回収された。

 

 

 作者の叫び

 次回はなんと真のヒロイン登場!!お楽しみに。

 

 

代理人の感想

・・・・・・・・・・・・・・ま、現実にアレだけくっちゃべってれば時間もなくなりますわな(苦笑)。