―始まりは何だったんだろう―


―どこで、狂ってしまったんだろうー


ー別に 良いか―←斜体


―そんな些細なこと忘れてしまおう―


―もうそんな事どうでも良いのだから―


―私はもう どうでも良い なにも いらない 希望も 何もいらない―



輝きは漆黒に染まり 第一話「旅立ち」

「・・・・・・・・・はぁ」

宇宙、その中を駆ける一隻の戦艦、ユーチャリス。
その戦艦の中、一人の少女がため息を吐いた。
さらっ、と伸びた茶髪、月のように輝く金色の瞳、雪のように白い肌、そして纏いし物は漆黒のマント。

「ネイビス、ここは何処辺りの宙域ですか?」
『だいたい火星あたりです、ルリ』
「・・・・・・・そうですか」

艦長席に座っている少女、ホシノ ルリはAI「ネイビス」に言った。
ゆっくりと目の前に広がる光景を見据える、広がる漆黒の宇宙、そして、火星。

「・・・・・・・火星・・・・」

艦長席にもたれながらその星を見る。
そして、ゆっくりとため息を吐いた。
あの星は、あの人の故郷、あの星は・・・・たくさんの想いがある場所・・・・・。

「・・・・・・ははっ・・・・」

そこまで思い出して笑う、顔を手のひらで多い、笑った。
今更、ですね、私は「ホシノルリ」であることを捨てたというのに。
未練がましいですね、まったく。

「・・・くくっ・・・・・・ははは・・・・」

ゆっくりと手を滑らせる、笑ったまま、ただ笑う。
かつて、電子の妖精と呼ばれた者は死んだ、ここにいるのは、その「残骸」。
想いも、何もかも全て、捨ててきたと言うのに・・・・・。

「・・・・・まったく、馬鹿」

呟き一つ、言い残し、彼女は艦長席を立った。

「ネイビス、少し休んできます、何かあったら連絡してください」
『了解しました、ルリ』

ネイビスの返答が帰ってくる、ネイビスは元々ユーチャリスに積んでいたAIダッシュの代わりに搭載させた女性型AIである。
その声を聞き、頷いて、私はブリッジを後にし、寝室へと向かった。
寝室に入り、マントを脱ぎ捨て、腰につるしていた銃を放り投げる、そして体をベッドへと倒す。
そしてそのまま、静かに、瞳を閉じた・・・・・・。














「アキトさん!!戻ってきてください!!ユリカさんも帰ってきました!!あとはアキトさんが戻ってきてくれれば全部元通りになるんです!!」


ナデシコCのブリッジ、私はそこで必死に叫んでいた。
ただ、あの人に、帰ってきて欲しくて。
愛しい、あの人に。

『・・・・・・もう、駄目なんだよ、ルリちゃん・・・・・俺たちはもう、元には戻れないんだよ・・・・』
「どうしてですか!!なんで、なんでもう戻れないんですか!?」
『君の知ってるテンカワアキトは死んだ、もういないんだよ・・・・ルリちゃん・・・・』
「アキトさん!!」

どうしても、こちらの願いに答えてくれない彼。
どうして?何故?何故帰ってきてくれないのか、こんなに、こんなに、貴方に帰ってきて欲しいのに!!

『・・・・・俺はユリカにはもう、会えないんだ』
「・・・・なん・・・でですか・・・・!?」
『・・・・・俺はたくさんの人を殺したテロリスト、ただ復讐のために、この手を真っ赤に染めてきた、そんな手で、俺はユリカを抱けない、それに、俺はユリカを助けられなかった、俺は・・・・・アイツの望む王子様じゃなくなったんだよ、だから、否定されるのが恐い・・・・・・』
「そ、そんな・・・・!ユリカさんが貴方を否定するわけないじゃないですか!!だって、だってユリカさんは・・・・・!!!」
『・・・・・・・そうかも、しれないな・・・・結局・・・・俺が・・・・・臆病な・・・・・だけだった・・・・か・・・・・ゴホッ・・・ゴホゴホッ!』
「アキトさん!?」
『・・・・でも・・・・もう遅いんだよ・・・・ゴホッ・・・・俺は・・・・もう長くない・・・・みたいだね・・・・・もうすぐ・・・・死ぬだろう』
「そ・・・そんな・・・・!!」
『ルリ・・・ちゃん、俺が死んだら・・・・ラピスを・・・・頼む、今まで俺の復讐に付き合わせたが・・・・・彼女には、幸せになって・・・欲しい・・・・・』
「・・・・アキト・・・さん・・・・・」
『・・・・・ごめんね・・・・ルリちゃん・・・・俺・・・・君に会えて・・・・良かったと思う・・・・・ルリちゃんの事、好きだった・・・・よ、・・・・・・・ごめん・・・・・・・あり・・・がとう・・・・』
「・・・・・アキト・・・さん?アキトさん、返事してくださいよ・・・・こんな冗談笑えませんよ・・・・ねぇ、アキトさん、やめてくださいよ・・・・・聞こえてるんでしょう?ねぇ・・・・アキトさん・・・・嘘だ・・・・・こんなの嘘だ・・・・・・嘘だぁぁあぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!」

目の前で消えていく、命の灯火。
暗くなる、目の前、ただ闇が広がっていた、私の肩を揺さぶる誰かの声すら遠い。
ユーチャリスから彼の遺体が運ばれてきた。
その近くで桃色の少女が、その金色の瞳から大粒の涙をこぼしながら、彼の衣服を掴んで声を押し殺して泣いていた。
そっと、彼に手を伸ばす、手が、彼に触れる、冷たい。
涙が、止まらない、彼の顔を見たいのに、涙が滲む。
どうして、こんな事になってしまったのだろう。
どうして、だろう?なんでだろう?
もう・・・・どうでも・・・良くなった。
自然に、体が動く。
そっと、己の唇を彼に重ねようと、ゆっくりと、近づけていく。
ふれあった感触、冷たい、ただ、冷たかった。
その、時だった。
頭に、痛みが走る、その痛みは段々、全身へと広がっていく。
目の前に、まるでビデオが再生されるように映像が映し出される、それは「彼の記憶」
その体に走る痛みに、私は、ゆっくりと、その意識を手放した。
誰かの、悲鳴と、私を呼ぶ声を、聞きながら・・・・・・。











「・・・・・・・・・ゆ・・・め」

ゆっくりと意識が覚醒してくる、ここはベッドの上。
体を起こし辺りを見渡す、自分の部屋だ。

「・・・・・・・あのときの、夢か」

ふぅ・・・とため息を吐いて、目に溜まっていた涙をぬぐい、髪をかき上げる。
軽く汗をかいている、暑い・・・・。
重たい体、ゆっくりと起こしてシャワールームへと向かう。
脱衣所で身に纏っていた服を全て脱ぎ捨てて、冷たい水をその身に浴びる。
体に溜まっていた熱は、ゆっくりと冷めていき、水音がその場に響き渡る。
ゆっくりと、ぼーっとし、止まっていた思考を動かしていく、手をのばし、シャワーを止める。
備え付けられている鏡に己の顔が映る、ゆっくりと、手を伸ばす、そして触れたのは、己の髪。
あの人と、同じ色になった、髪。

「・・・・・・・・・・・」

しばらく鏡を見つめていたが、瞳を閉じ、歩き出し、シャワー室を後にした。
替えの服を取りだし、身に纏う、銃を腰にくくりつけ、マントを羽織る。
そして部屋を出てブリッジへと向かう。

『おはようございます、ルリ』
「おはよう、ネイビス、私が寝ている間に何か変化は?」
『いえ、特にありません』
「そうですか」

ブリッジに入るとネイビスが声をかけてきた、一応状況を確認して艦長席へと座る。

「火星の後継者の残党は?」
『いまだ所在はつかめません』
「そうですか・・・・・」

私の目的の一つ、それが火星の後継者の残党狩り。
アキトさんやユリカさんを傷つけたあいつ等を許すことは出来ない、必ず殺してやる。
それが終わったら、私は・・・・彷徨いながら、死ぬことを選ぶ。

『ルリ、ナノマシンの方に問題は?』
「特に問題ありません」
『それなら良いのですが・・・・・』
「・・・・髪の色と身体能力が変わっただけです、心配する必要はないでしょう」
『・・・・しかし、テンカワアキトはそのナノマシンを取り入れて・・・・』
「あれは過剰に投与されたからです、私は少量しか取り込んでませんよ」

遺跡の、ナノマシン。
アキトさんに投与されたナノマシン、それが今は私の体の中に入っている。
原因は、アキトさんとキスをしたときに、どんどんと死滅していたナノマシンが、新たな「宿主」を見つけて移った。
それが私の遺伝子を改変させ、A級ジャンパーとなった。
ナノマシンにはアキトの遺伝子も付着しており、それが混じり合った為、アキトの記憶が彼女にも植え付けられた。
他にも身体能力が向上し、今ではあのブラックサレナを操る程までに身体能力が上がっている。
まぁ、その影響で髪の色がアキトさんと同じになったんですけどね。
イネスさんにはおとなしくしてるように、と言われましたが、そんなの聞けません。
だって、私の「家族」を苦しめた奴らを放っておくことは出来ないから。
アキトさんは死んだ、ユリカさんはもう長くはないらしい。
彼等が死んだら、私はもう生きることに疲れて、後を追う。
そう、決めている。
アキトさんに頼まれたラピスラズリはハーリー君とミナトさんに任せたし、大丈夫でしょう、あの人達なら、きっと。

「・・・・ふぅ・・・・・」

静かにため息を吐いた。
疲れて、居るんだと思う。
肉体的にではなく、精神的に。
もう一回、寝てこようかな、と思った瞬間だった。

『ルリ、この宙域に接近してくる戦艦を確認、これは・・・・・ナデシコCと特定』
「・・・・・ナデシコC・・・?」

ネイビスの言葉を聞いてポツリと呟く。
まさか、ハーリー君が追ってきた?

「・・・・・はぁ・・・・」

気だるそうにため息を吐いた。
どうして追ってくるんですか、私には構わないで欲しいというのに・・・・・。

「通信が来ていますが、繋ぎますか?」
「・・・・お願い」

ネイビスにそう答えて、私はゆっくりと、目の前のモニターを見た。
映像が繋がれば、そこにはハーリー君の他にも、ラピスラズリとサブロウタさんが見えた。

『ルリさん!!ようやく見つけましたよ!!』
「・・・・・・ハーリー君、どうして貴方がここにいるんですか?」
『ルリさん!!帰りましょうよ!!こんな事をしても誰も喜ばないんですよ!?帰ってきてくださいよ!!』
「・・・・・・言ったでしょう、ハーリー君、私は・・・・あいつ等を殺し尽くすまで止まれないし、止まるつもりもない、それにもう、生きる気力なんて無いんです、これが終われば、私は死ぬんですから・・・・・」
『そんなの駄目です!!ルリさん!!』
「言ったでしょう?貴方の知ってるホシノルリは死んだと、ならもう良いでしょう、追いかけてこな
いでください、目障りです』
『ルリさん!!』
「帰ってください、ハーリー君、本当に目障りです、私に関わらないでください」
『いやです!貴方を連れて帰ると皆に約束したんですから!引きずってでも帰ってきて貰いますよ!!』
「・・・・・・帰りませんよ、私は、もう、二度と」
『予想は付いてましたよ!!ラピス!ハッキング!!サブロウタさん!出撃してください!!ユーチャリスを拿捕します!!」
『うん!」
『あいよ!任せとけ!!』
『僕は諦めが悪いんですよ!覚悟してください!ルリさん!!』

ハーリー君、逞しくなりましたね・・・・これなら、私がいなくなっても大丈夫だ。
皆が、いるから。

「・・・・・ネイビス、ジャンプフィールド準備」
『了解、ジャンプフィールドを展開します、ルリ、ハッキングを受けています、このままでは掌握されますよ?』
「わかっています、私が阻止します」

金色の目を輝かせて、ハッキングを阻止するためにIFSを輝かせる。

『くっ、駄目だよハーリー私だけじゃ・・・・!!』
『くそっ・・・・ここまで来たのに・・・・!!諦められるか!!』

『ルリ、ジャンプフィールド展開完了』
「了解しました」

ネイビスの知らせを聞き、ジャンプ体勢に入る。
どこに行こうか、いっそのこと太陽系外まで行ってしまおうか、誰も来ないような遠い世界へ。

「ネイビス、ジャンプ先は・・・・・」

ネイビスにジャンプ先を言おうと口を開いた瞬間。

ドッッガンッッ!!←太字、一回り大きめに

衝撃がユーチャリスを揺らした。

「きゃっ!?うっ・・・・くっ、ネイビス!どうしたんですか!?」
『大変です!ナデシコCよりアンカーが射出され、ジャンプフィールドに直撃しました!!』
「なんですって!?」
『まずいです!!このままではランダムジャンプします!!』
「!!!」

最悪の事態だ。
頭のその言葉が浮かんだ。
このまま彼等を巻き込むのか?

冗談、じゃない!!!

「ハーリー君!!アンカーを切り離してください!!このままではナデシコCもランダムジャンプに巻き込まれますよ!?」
『なっ!?で、でもルリさんが!!』
「私なら平気です!!それより早くアンカーを、クルーの中にジャンパー措置を受けてない人だっているはずです!!貴方はその人達を殺すつもりですか!!マキビハリ!!」
『!!ラピス、アンカーを切り離して!!サブロウタさん!サブロウタさん!!アンカーを断ち切ってください!!早く!!』

ちょうど出撃していたサブロウタはエステバリスを走らせてアンカーに向かって行く。
そしてナイフを構えて、そのアンカーを断ち切った。

「これで大丈夫か!?」
『まだ!ルリ、距離が近い!!』
「くっ!ユーチャリス全速前進!!ナデシコCから離れて!!」

『ルリさん!!』
「ハリ君・・・・どうやらお別れのようですね、本当に、さようならです」
『そんな!!ルリさん!!待って下さいよ!それじゃあんまりだ!!僕は、僕は・・・・!!!』
『ルリ!!もう限界です!!ジャンプします!!』
「くぅっ!!」

光がとどろく。
光がユーチャリスを包み込み、そして、光の中に消えていった。

『ルリ・・・さん、ルリさぁぁぁあああああああああああああああん!!!!』

残されたナデシコ、そこに、少年の叫びが響いた・・・・・。
これより、全てが幕を開ける。
それは、喜劇となるか、または悲劇となるか、それは、まだ、誰にもわからない・・・・・・。


NEXT・・・・・



アトガキ

道化(以下道):初めまして!道化です!ついにやってしまった愚か者です!
ハーリー(以下ハ):どうも、ハーリーです、愚か者が迷惑をおかけします。
道:Σ酷い!気にしてるのに!くそ、ハーリーの分際で、この不幸の代名詞が!
ハ:廃棄汚染物の代名詞にけなされる筋合いはありませんね。
道:ΣわぁーーーーーんΣ(;ロ;)
ハ:とにかく、っと、ここまで読んでくれた読者のみなさま、真に感謝します。
道:しますです〜(エグエグ
ハ:いつまでいじけてるんですか、ともかくほら、シャキッとして。
道:う、うむ
ハ:ともかく・・・・主人公ルリさんですか、微妙に設定がやばいと思いますが(ジトー。
道:・・・・・・・(遠い目
ハ:まったく・・・・、はぁぁ・・・・どうやら逆行もののようだし、僕の出番は終わりか・・・・

道:いや?君にはこれからたくさん出番が用意されてるよ?
ハ:本当ですか!?
道:うん。
ハ:・・・・・一つ聞きますが、まともな役でしょうね?
道:おそらく。
ハ:・・・・・・・なんですか、そのおそらくって。
道:それは続きを見れば多分わかる。
ハ:・・・・かけるんですか?
道:・・・・善処します、かき始めたのだから、責任を持ってちゃんと終わりまでかきます、命削っ
て。
ハ:貴方の場合本当に命削らないとかけなさそうですしね・・・・・。
道;言うな(涙 それでは第二話でお会いできることを祈ってます。
ハ:それではー

 

 

感想代理人プロフィール

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代理人の感想

はじめまして、道化さん。コンゴトモヨロシク。(ぉ

ところでこのルリ、行動パターンがまんまアキトですな。

ナノマシン移されたついでに思考ルーチンの一部まで転写されたとかそう言うことはありませんか?(爆)