・・・夢を、見ているようだ。
静かな、夢を、懐かしいと思える夢を。
でも、決して、コレは己の夢ではない、「彼」の夢だ。
風が頬を撫でる、草の匂いがする、草原?
そこを走る、自転車、一人の少年と、一人の少女。
光景が変わる。
火星、そこで少女と少年は別れた。
火星、少年の住む場は戦場と化し、少年は光になって消えた。
地球、少年と少女は再会する。
宇宙、火星、地球、月、彼は色んな所を巡り、戦い、そして、少女と結ばれた。
しかし、その幸せは長く続くことなく、終わりを告げる。
少女は外道達の道具へ、少年は体を弄られ、大切な物を失う。
全てを奪われた少年は生まれ変わる、ただの復讐者へと。
殺して、殺して、殺し尽くして、後に残った物は屍。
復讐者は、たとえ復讐の道に墜ちようとも、少年であった。
少年は死に絶えた、ただ、己の罪に責任を感じて、孤独なる死を遂げる。
これで、終わり。
どうして?どうしてこんな終わりなんだろう。
どうしてなんだろう?
彼が、もしくは彼女が何かしたと言うのか?
こうなるしか、道は無かったのだろうか・・・?
輝きは漆黒に染まり 第二話「行き着く果ては」
「う・・・・ん・・・・」
ゆっくりと目を開く、開かれた瞳に入ったのは、漆黒の夜空。頭がぼやけるが、ゆっくりと体を起こ
し、辺りを見渡す。目の前に広がるのは街、灯りが灯され、夜の風景を彩っている。かさ・・・、手
に草が触れる感覚がある、横に視線をやれば木がある、どうやら森のようだ、それも少々小高い丘に
ある。
「・・・・・・私は・・・・?」
頭がまだ混乱している。落ち着いて現状を整理していこう。私はホシノルリ、ユーチャリスでナデシ
コCと遭遇、それから・・・・。
「そうだ・・・・ランダムジャンプしたんだった・・・」
体を起こす、辺りを見渡してみる。すると、ユーチャリスが無いことに気がついた。
「・・・・?ネイビス?ネイビス?」
通信機に呼びかけてみる、がノイズが走り、ネイビスとの通信が繋げない。
「・・・・くっ、困りましたね・・・・」
軽く舌打ちをして、とにかく何処に飛んだか調べなければならない。情報を集めるにはやはり街に行
くしかないか。そう思い、私は街の方へと脚を向けた。
「・・・・・・一体どこへジャンプしたのでしょうか・・・・」
街の中に入り、ゆっくりと歩いていく。街を歩く人達は少ない、その中を、黒マントを揺らしながら
歩いていく。すると、大きな時計があるのが見えた。何気なく、その時計へと視線を移した。
「・・・・・なっ!?」
それを見た私は、凍り付いた。驚きで、声が出ない。金色の瞳をこれでもか、と言うぐらい見開く。
静かに、時を刻むその時計に記されていた年号は・・・・・・。
「2195・・・年・・・・・?」
喉がからからに乾き出す、瞳は開かれ、瞬きが出来ない。口が開きっぱなしになり、それが更に喉の
渇きを早める。声に鳴らない声が、小さく漏れ、ただただ、その時計を眺めていた。時が止まったよ
うに、私はただ、その時計を見つめ、固まっていた。
「・・・・・ま・・・さか・・・・?」
ナデシコAが発進する、一年前。つまり、ここは、過去?確かにボソンジャンプは時空間移動と聞い
ている。未来に飛んだこともある、それならば、過去に飛ぶことも・・・?突きつけられた現実、鼓
動の音が酷く、高くなる。ゆっくりと拳を握る。今、私が思うことは。
「・・・・・やり・・・・直せる・・・・・?」
掠れた声が漏れた。あの未来を回避出来る?アキトさんが復讐に走らない、ユリカさんが遺跡に取り
込まれない、あの2人が笑っている、幸せな世界。それを、作ることが、出来るかも知れない?呼吸
が荒くなる、緊張と、歓喜と。フラフラと、歩き出す。そして人気のない場所に来て。
「・・・・・アキト、さん・・・・ユリカさん・・・・」
空を見上げる。静かに、空に浮かぶ月を見上げる。
「・・・・私は貴方達を救えなかった・・・・・」
ぽつりぽつりと、言葉を紡ぐ。
「でも・・・・今度こそ、救ってみせる」
あんな未来にさせない為に。
「あなたたちの幸せを踏みにじる者は、私が消してあげますから・・・・・・・・」
たとえ、この身が血に濡れ、赤に染まることになって。決意は、固まった。最初にやるべき事は、現
在の状況の確認。脚を向けたのは図書館。インターネットが備え付けられており、そこから情報を仕
入れる事にした。図書館に入り、受付に声をかける。
「すいません、ネットを使用したいのですが」「わかりました・・・・おや?お客様はIFSをお持ち
で?」「え、えぇ」「地球では珍しいですね、どうしますか?IFSが使用できるIFS対応コンピュータ
ーをご使用になりますか」「あ、お願いします」「かしこまりました、この通路をまっすぐに行って
、右の一番奥の部屋でございます」「ありがとうございます」
受付に聞いたとおりに進み、個室のドアを開ける。確かにIFSが対応されているコンピューターだ。
スイッチを入れて起動させる。席を引いて座り、画面を見る、まず調べるのは世界情勢だ。木製蜥蜴
、やはり大きく変わった事件は無い、ほぼ過去通り世界は進んでいると考えて良いだろう。
「さて・・・・・やっぱりナデシコに乗る方が良いでしょうね、じゃないとアキトさんとユリカさん
が再会できませんから、ナデシコを介さず、あの2人を再会させてあの関係まで持っていくのは難し
いですし・・・・・」
あの2人がナデシコで出会い、ナデシコの経験があったこそ、あの彼等があるのだ。まずナデシコ乗
船の事に関してはまず乗らなせない、という選択肢は無いだろう。ともかく過去通りに進むならアキ
トさんは必ずナデシコに乗り込むはずだ。ユリカさんを追いかけて。
「・・・・・問題は、私がどうやってナデシコに乗り込むか、ですね」
問題はそれだけでは無いが、ともかく当初の目的はそれだ。
「・・・・・・この世界の私はどうなっているのだろう?」
ポツリと呟き、ホシノルリについて調べていく。調べた結果、やはり前回とは変わりは無いようだ。
「これなら私がオペレーターとして乗り込むのは無理、第一私がオペレーターをしたら万が一アキト
さんを守れない・・・・・」
オペレーターとして乗り込む、これはまず却下だ。やっぱり乗り込むとしたらパイロットとして乗り
込むのが一番良いと思う。
「・・・・ここはアカツキさんに売り込んでいた方がいいかもしれませんね」
アカツキの助力が無ければやはり未来を変えるのは不可能だろう。第一、今の私にはブラックサレナ
が無い、今のエステバリスでは機体が着いてこないだろう。
「・・・・しょうがない、ですね」
ふぅ、と静かに息を吐いて。
「まずは戸籍をどうにかしなければなりませんね、ホシノルリと名乗るわけにはいきませんし・・・
・・、そうですね・・・・・・・・ノワール・ドールで良いかな?」
漆黒の人形、その自分で付けた名前に苦笑する。戸籍を登録し終われば、次にやることは仕込み。そして。
「これで良いですね・・・・・、さて、次の事をしなければなりませんね」
そう思い、コンピューターの電源を落とし、図書館を後にする。そして、近くの公衆電話に近づき、
電話を手に取る。当然、この電話のかける先は・・・・・・。
プルルル、プルルル、プルルル、ガチャ
『もしもし、こちら愛の伝道師、アカツキ・ナガレですが?』
ネルガル会長、アカツキ・ナガレ。その声を聞いてフッ、と笑みを浮かべてしまう。彼も最初はいが
み合っていたけど後にはアキトさんと仲良くなっていた。親友、と呼べる程まで。
「初めまして、私はノワール、と申します」『おぉ、これはこれは、美しい声に、美しい名だ、それ
で?君は僕に何のようで電話をかけてきたのかな?』「ネルガル、それに利益をもたらす為、ですか
ね?」『・・・・ほぉ・・・・?』
ネルガルの利益、そこまで言えばアカツキは食い付いてきた、声に鋭さが帯びる。
「今からそっちに行きます、少々お待ちください」『へ?今から、それってどういう「失礼します」
がちゃん、問いただそうとしたアカツキさんの声を無視して、電話を戻す。そして手をマントの中に
入れる、手に、青い石が握られる、それは非常用に持っていたCC。
「・・・・・・さて、行きますか・・・・イメージ・・・ジャンプ」
光に包まれて、私はその場から掻き消えるように居なくなった。
「・・・・一体何だったんだ?」「どうしたの?」「いやぁ、今電話が来てさ、なんでもネルガルに
利益をもたらす、って言ってきた少女がいてさ」「へぇ・・・?それで?」「今からこっちに来る、
だとさ」「なにそれ?」「さぁ?」
ネルガル会長室、そこに2人の人物がいる。1人はネルガル会長アカツキ・ナガレ、そしてもう1人は
その秘書のエリナ・キョウ・ウォンジュン。アカツキは肩をすくめ、やれやれ、と呟いている。
「イタズラ電話だったんじゃないの?」
エリナがそう言った瞬間だった。
『会長』「ん?プロス君かぃ?どうしたんだい?」
通信機からプロスと呼ばれた男の声が聞こえてきた。
『いま私の目の前にノワール、と名乗る少女が現れて・・・・会長に会いに来たと言っているのです
が・・・・・』「・・・・ノワール・・・?・・・・・・プロス君、その子をここまで連れてきてく
れるかぃ?」『わかりました、会長』
そう言ってプロスは通信機を切った。
「・・・・・・本当に来たみたいね」「・・・・・しかし・・・・一体どこから電話をかけてきたん
だ?まさか最初から本社内に入り込んでいたのか?」
そんな事を話しているとかちゃっ、と音と共に眼鏡をかけた男、プロスペクターと、流れる茶髪、月
夜に浮かぶ月のように輝く黄金の瞳、白い肌と、黒のマント。その容姿はまさに美少女、と呼ばれて
も不思議ではなかった。
「夜分の来訪、申し訳ありませんでした、アカツキさん、ノワール・ドールと申します、以後宜しく
」
軽く頭を下げてアカツキに挨拶する少女。アカツキは少女を見てぽかん、と口を開けていた。
「・・・・・参ったな、こりゃ本物だ、美人なお嬢さんだ」
はは、と笑ってアカツキが笑みをこぼす、エリナが軽く冷たい視線を向けているが全く動じない。
「で?電話の通りだと君はネルガルに利益をもたらすために、と言っていたが?」
「えぇ、損はさせませんよ、そちらにいくつか情報を売り渡しますから、その代わりにといっては何ですが」
「ん?何だい?」
「私の要求を呑んでください、出来うる限りでよろしいので」
「・・・・・・良いだろう、で?君が提供してくれる情報という物は?」
「貴方達の知らないボソンジャンプの情報について、と、そちらが開発しているエステバリスの強化プラン、です」
「!!?」
ノワールから放たれた言葉に、アカツキ、エリナ、プロスの顔に緊張が走る。
「・・・・・君は・・・どこでその情報を仕入れたんだい?そしてどうやってエステバリスの事を調べたのかな?」
「企業秘密です、エステバリスの事は、そうですね、この瞳で気づかないんですか?私にかかればネルガルの情報なんてすぐに観覧できますよ」
「・・・!?マシンチャイルドか!」
「その通りです」
ちょこっと嘘ついちゃいましたね、確かにすぐに見ることは出来ますが、まぁ今回は覗いてはいませんよ。三人の瞳が鋭くなり、私を睨む。判断しかねているのだろう、私が有益か、もしくは不利益か。
「疑わしいならどうぞ、このディスクにボソンジャンプについての説明、そして私が提案するエステバリスの強化プランの設計図が載っています」
「・・・・・・・」
マントの下から出したディスクをアカツキに手渡し、アカツキがコンピューターにそのディスクをセ
ットする、エリナとプロスも画面を覗き込んでいる。そして、彼等の顔が驚愕に歪む。
「ボソンジャンプは時空間移動だと・・・・!?なら時を超えることも出来るのか!?」
「えぇ、確かに超えることは可能ですよ、だが限定条件がありますがね」
「・・・・・その限定条件は書いていないな」
「あなた方をまだ信用するとは決めていませんからね、そんな相手に手の内を全てさらすと思いますか?」
「・・・・」
アカツキ、エリナ、プロスの三人が黙り、再び画面に目を通す。次に見たのはエステバリスの改造プラン。
「・・・なんだこれは・・・!現在のエステバリスの2倍近くの性能を誇るぞ!?」
「なるほど、こんな改造でここまで性能があがるとは・・・・」
「・・・・・貴方、何者なの?」
アカツキが叫び、プロスが関心したように頷き、エリナがノワールを睨み付ける。
「私はノワールです、それ以上でも、それ以下でもない、で?アカツキさん、その情報だけでは不足でしたか?」
「・・・・・確かに有益だったよ、では今度はそちらの要求を呑む番だね、君は何を望むんだい?」
「簡単ですよ、私をネルガルの社員にしていただければ良いんですよ」
「「「はぁ?」」」
三人の間抜けた声が会長室に響き渡る、それにクスッ、と笑うノワール。
「私をネルガルの社員にしていただき「スキャパレリプロジェクト」に参加させてくれれば良いんですよ」
「!君はそこまで知っているのかい?」
「えぇ、で?どうするんですか?」
「・・・・・・良いだろう、君をネルガルに引き込めば更なる利益をもたらしてくれそうだしね、君を歓迎するよ、ノワール君」
「ありがとうございます、アカツキさん、話が早くて助かります、では次の要求ですが・・・・・」
「えっ?まだあるのかい?」
「えぇ、これを見てください、これを作って欲しいんです」
アカツキさんが軽く呆れたような口調でディスクを受け取り、それをコンピューターにセットする、
そして。
「・・・・・なんなんだい!!このスペックは!!化け物としか言いようが無いじゃないか!?今のエステバリスなんてこいつに比べたら足下にも及ばないじゃないか!!君がこれに乗るって言うのか!?」
それは半分悲鳴だった、それはそうだろう、それは未来に作られた、その当時でも恐れられた「ブラックサレナ」の設計図なのだから。
「えぇ、そうですが?」
「・・・・・・・これを作るにはかなり時間がかかるぞ、こりゃ2、3年以上進んでいる技術だ・・・・・」
アカツキさんが椅子にもたれ掛かってぐったりしている、さすがに驚いたのだろう。他の2人も同じ様子のようだ。
「わかりました、でもなるべく急いでくださいね」
「・・・・・まったく、本当に君には驚かされるね」
「ではあともう一つお願いがあるのですが・・・・・」
「「「まだあるの(かい)(ですか)!?!?」」」
アカツキ、エリナ、プロスの叫びがうまい具合に重なる。
「えぇ、あぁ、でも今度は何も見せる物はありませんよ?」
「「「ほっ・・・・」」」
三人の安堵したため息が漏れた、それを見て苦笑が浮かぶが、すぐにまっすぐと相手を見据えて。
「・・・・ホシノルリと、会わせてくれませんか?」
「・・・・君はルリ君を知っているのかい?」
アカツキが問い掛けてくる。この世界の自分に会う、ともかく彼女の協力も無ければアキトさんやユ
リカさんを守れないかもしれない、使える物は何でも利用しなければならない、たとえ、鬼と言われ
ようが、外道と言われようが、私はあの人達を守ると決めたのだから・・・・・。
「・・・・・・良いだろう、だが今日はもう遅い、明日面会の時間を与える、それで構わないかな?」
「構いません、ありがとうございます」
「いや、良いさ、こんなに素晴らしい贈り物をして貰ったんだ、それくらい叶えて上げるさ、プロス君、彼女を部屋へ案内してくれるかぃ?」
「わかりました、こちらです、ノワールさん」
プロスに連れられて、私は部屋を退室していった、最後に、小さくアカツキさんへ頭を下げて・・・・。
「・・・・・本当に良いの?彼女を引き入れて」
「良いさ、彼女の目を見ただろう?優しいが悲しい瞳をしていた、どうやって生きてくればああいう瞳になるか僕は知っているつもりだよ、大丈夫、彼女は僕らを裏切らないよ、きっとね・・・・」
「こちらです」「ありがとうございます、プロスさん」
「いえいえ、それでは明日、面会のお時間が取れればお呼びいたしますのでこの部屋に居てくださいね、それでは」
案内された部屋、プロスが去っていくのを確認すればマントを近くの椅子に放り投げて窓の外に映る空を見上げる。
「・・・・・・・ふぅ・・・・」
まず、契約は成功した、ブラックサレナの製造の頼んだ、改造型のエステバリスのデータも渡した、これからだ、これから、全てが始まる・・・・。
「・・・・・ここから・・・全て始める」
今度こそ
「・・・・守る・・・・・たとえ・・・・何を犠牲にしようとも・・・・」
その為に、心を鬼にしなければならない。ただ冷徹に徹しろ、目的の為に私情などはさむ必要など無
い。汚れ役でも良い、あの2人が幸せになるなら私は死んでも構わない。
「・・・・・・・・はぁ・・・・」
とにかく、今日は疲れた、もう、休んでしまう。銃を近くにベッドの近くにおいて、衣服を脱ぎ捨て
てベッドに倒れ込む。そしてそのまま・・・意識を手放した・・・・。
「・・・・さ・・・ノワ・・・ル・・・・・ノワー・・・ん!ノワールさん!!」
ドンドン、とドアを叩く音が聞こえる。
「ん・・・・ぅ・・・?」
ゆっくりと体を起こして辺りを見渡す、ドアは未だにドンドンと鳴っている。
「ノワールさん、起きてください、ルリさんと面会の時間が取れたましたよ」
「・・・・・・あ・・・・プロスさんか・・・・」
プロスさんだと確認すれば、まずは脱ぎ捨てた衣服を身に纏う。腰に銃を、そしてマントを羽織りドアを開ける。
「おはようございます、プロスさん」
「おはようございます、ノワールさん、昨日の貴方の要望通り、ルリさんとの面会の時間を取りましたので・・・・・さ、行きましょうか」
先に歩き出すプロスを追って自分も歩いていく。過去の自分との邂逅、なんだが不思議な気分になり
つつ歩いていく。イネスさんも、アイちゃん、昔の自分に会ったときこんな感じだったのだろうか?
そんな事を考えながら、私は歩いていった。そして歩くこと数分。
「ここです、ルリさん、入りますよ」
一つのドアの前で立ち止まり、インターホンを押す。そこは、かつて自分が過ごしていた部屋とまっ
たく変わりの無い部屋だった。がちゃ、少し立てばドアが開く。現れたのは、無表情の銀髪をツイン
テールにした過去の自分だった。
「おはようございます、プロスさん・・・・・、この方が、ノワールさんですか?」
「そうですよ、ルリさん、この方がノワール・ドールさんです」
「・・・・・初めまして、ホシノルリです」
無表情のまま、挨拶する過去の自分、かわいげがない、我ながらそう思ってしまった。
「初めまして、ルリさん、ノワール・ドールと言います、以後よろしくお願いします」
そう言って手を差し出し、握手を求める。軽くとまどいの表情を浮かべながら私の手を取る過去の自分。
「・・・・あの・・・・貴方はどうして私に会いに来たんですが・・・・?」
ふとルリは躊躇しながら私に問い掛けてきた。それに軽く苦笑しながら
「・・・・・ちょっとした血縁、だからかな?」
そう言ってみた。ルリは金色の瞳を軽く見開いて驚いている、プロスも少々目が鋭くなっている。
「血、縁・・・・?」
「そうですよ」
「・・・・そう・・・・なんですか・・・・?」
そう、呟くような声で言うルリ。さて・・・・コミュニケーションをとりましょうか、ここにいた頃
の私は確かハンバーガーなどに栄養ドリンクだけとか、あまり良くない食生活をしていましたしね、
ここは一つおいしい料理でも食べさせてあげますか。
「・・・・とろころでルリ、で良いですか?」
「え?え、えぇ」
「では私もノワールで良いです、朝食は食べましたか?」
「まだ、ですけど・・・・・」
「そうですか、私もまだ食べていないんですよ、一緒にどうですか?」
「え?」
「プロスさん、ルリ、借りていっても良いですか?」
「別に構いませんよ、食堂までの道わかりますか?」
「ルリに聞きます、それでは」
「え?え?」
戸惑うルリを横目に、ルリの手を掴んで歩いていく私。そしてそれを見送っているプロスさん。私は
ルリを連れて廊下の角へと消えていった。
「・・・・ノワールさんがルリさんの血縁、ですか・・・・・・・調べてみる必要がありますな・・・・・」
「あ、あのノワールさん!」
「ノワールで良いと言いましたよ?」
「え、えっと、でも・・・」
「まぁ、呼び名は何でも良いですが・・・なんですか?」
「そ、その、私、その・・・・」
「・・・・私と食事するのがいやですか?」
「そ、そうじゃありませんけど・・・・・」
「なら、良いじゃないですか」
「・・・ぅぅ〜・・・・」
ちょっと強引だったかな?と思いつつ隣で戸惑いの表情をするルリを見る。この子にも・・・・私と
同じ道は歩ませたくない。心の贅肉だとしても。そんな事を考えているウチに食堂へとたどり着いた
。食堂の中に入っていき、ルリと一緒に座る。
「ルリは何を食べますか?」
「え・・・・えっと・・・・ハンバーガーで良いです」
「体に悪いですよ?」
「・・・・良いんです、後で栄養剤を飲めば栄養は取れますから」
無表情で言われる、ここまで無表情だったのか自分・・・・。もしナデシコに乗ってなかったら・・
・・と思うとぞっとする。
「・・・・それじゃ駄目だと思いますよ」
「・・・・どうしてですか?」
「えっと・・・食事は栄養を取るだけじゃなくて、味を楽しむ為でもあるんですよ」
「・・・・・そういう物なんですか?」
「そういう物ですよ、ルリ、これから、知っていけば良いですから・・・・」
そう言って彼女の頭を撫でてやる。一瞬ビクッ、と体を震わせて、驚いたような視線を私に向けるル
リ。
「や・・・止めてください・・・・・・」
頬をほんのり赤く染め顔を背けて言う。それに軽く笑ってしまって、手で口元を隠すようにする。
「ごめんなさい・・・、じゃ、何を食べましょう?」
「・・・・・」
まだ顔を赤くしているルリ。とにかく食事、どれにしようか・・・・。メニューをザッと見て、目に
付いた物、チキンライス。
「チキンライス、これ美味しいですよ?ルリ」
「・・・・食べたこと無いからわかりません・・・」
「なら食べてみましょう、あ、すいませーん、チキンライス二つ、お願いします」
厨房にメニューを注文する。注文が終わればルリに視線を向ける、またルリも視線をこちらに向けて
いる、視線が重なる。
「・・・・あの・・・」
「何ですか?」
「・・・・さっきの、血縁、って・・・・」
「・・・・あー・・・・」
興味を惹いて貰う為にとっさに言ったは良いが、どうする。彼女はの血縁、まぁ自分の血縁でもある
のですが、色々とありますからね、「姉」です、というのは後々に面倒な事になるだろうし・・・・
ここは。
「遠い、ですけどね、ほら、髪の色が全然違うでしょう?」
「えぇ・・・」
「それでも、血は繋がってるんです、貴方と、私は」
「・・・・・そう、なんですか・・・」
ルリと話をしていたら、注文したチキンライスが運ばれてきた、良い香りだ、そういえばここ最近ご
飯を食べていなかったなぁ・・・。
「・・・食べましょうか、ルリ」
「・・・・はい」
そう言ってスプーンを手に取り、ひとすくい、口に運ぶ。おいしい、なかなかの腕前ですね、さすが
ネルガル。
「・・・・・おいしい・・・・」
ルリも同様の様だ、一言呟いてひとすくい、またひとすくいとチキンライスを口に運んでいく。どう
やら好評の様だ、と言いつつ自分も。数分後、二つのチキンライスは空となっていた。
「・・・・・おいしかったです・・・・・」
「そうでしょう?あ、ルリ、口に付いてますよ?」
「え?あ、わ・・・」
ルリの口元に着いていたご飯粒をすくい取り食べる。ルリは顔を赤くしている。
「女の子なんですから、少しは身だしなみに気を使わないと駄目ですよ、ルリ」
「・・・・そういう、物ですか?」
「そういう物です」
軽く微笑を浮かべてルリに言う。これで、ルリも少しは笑みとか見せてくれれば良いんですがね・・
・・。まぁ・・・ナデシコに乗れば、私と同じように、きっと、彼女も変わるでしょうね。
「エステのテストパイロット?」
「そうだよ、ノワール君」
ルリと食事を終えて、部屋に戻ればアカツキさんに呼び出された。どうやら新型エステの開発に一歩
を踏み出したようですね。
「今のエステのデータを取りたいんだが、やっぱり君に乗って貰うのが一番かな?と思ってさ、どうだい?引き受けて暮れるかい?」
「当然です、すぐに始めましょう」
「・・・・ずいぶんとあっさりしてるね」
「断る理由がありませんから」
「あそう・・・」
私の返答に軽く呆れたように返すアカツキさん。
「・・・・・ところでノワール君、君はあの改造型エステバリスや「アレ」の設計図は君が造ったのか・・・・・・?」
アカツキさんが真剣な目で睨んでくる。その視線を真っ向から見据える私。
「・・・・・・・・秘密です」
「秘密、かぃ」
「えぇ、でもアカツキさん」
「ん?」
「・・・・・秘密はいつか、ばらされる日が来るんですよ」
「・・・・・その日まで待ってくれ、ということかぃ?」
「そう言うことです」
「・・・・・わかったよ、まったく、君には敵わないな」
肩をすくめながらノワールに言うアカツキ。その様子にノワールは苦笑を見せる。
「まぁ良いか、では行こうか、案内するよ」
「はい、わかりました」
そして私はアカツキさんの後を追うようにして、その後ろをついて行った。秘密がばらされる日、か
、それは、本当に来るのでしょうか。・・・・今は、別にどうでも良いですがね。
「・・・・・・・・・いやー・・・・これは参ったね」
「申し訳ありません・・・・」
数時間後、私がテストしたエステは見事にオシャカとなった。駆動系が焼き切れ、関節部がいかれている。整備士の人達がその外傷が無いのにボロボロのエステに泣きついていた。そのテストの様子を見ていたアカツキさんが引きつった笑みを浮かべながらこっちを見ていた。それに申し訳なさそうに謝る私。
「・・・・・私もまさか、今のエステがこれまで追いついてこないとは・・・・」
「・・・・・僕も驚きだよ、エステバリスが悪いのか、君が凄すぎるのか・・・、まったく、これではカスタム機の完成は遠いな・・・・・」
「・・・・・・すいません」
「いや、良いさ、これはこれで良いデータが取れたよ、今日はもう休んでくれても良いよ」
「・・・・すいません、わかりました」
最後に住まなそうに謝って私はコソコソ逃げるようにして格納庫を後にした。移動中の廊下。
「・・・・・・ふぅ・・・・この調子だと、「サレナ」が完成するのはいつごろになるんでしょうか・・・・?」
行く先が不安でしょうがない。
「・・・・・・ふぅ・・・・・」
こればっかりはどうしようもない、か、そう言って自分を納得させて、私は廊下を歩いていった。未来に、限りない不安を持ちながら・・・・・・。
NEXT・・・・
アトガキ
道化(以下道):どうも〜!道化ですハーリー(以下ハ):ハーリーです。道:輝きは漆黒に染まり
第二話お届けです!ハ:駄作ですね。道:Σそういうこと言わないの!ハ:はいはい、今回の話しは
ルリさん、いえ今回からノワールさんでしたか、ネルガルに行きましたね。道:そうですね。ハ:ユ
ーチャリスが無かったんですが、どこに行ったんですか?道:ん?さぁ?ハ:さぁ?じゃないでしょ
う、真面目にやりなさい、真面目に。道:別に良いじゃん、今頃因果地平の彼方にでも浮いてるんじ
ゃない?ハ:・・・・・(ガチャ)道:いや、無言で銃を構えるのは止めようよ(汗ハ:はぁ・・・
・まったく貴方という人は。道:まぁまぁ、これから読んでいけばわかるって。ハ:そうだと良いん
ですけどね、てかその前に!!僕の出番は!?道:しばらく先だね。ハ:いっぱいあるんですよね!
?道:・・・・(設定資料を捲る・・・・)・・・・・・微妙だな。ハ:Σ嘘つき!前はたくさんあ
ると言ったのに!!裏切ったな!父さんと同じように僕を裏切ったんだな!!道:ちょ、ちょっと待
て!!それはロン○ヌスの槍!!ってGYAAAAAAAAッッッ!!!ハ:どうせ、どうせ僕なん?,
$F!&!&!&!&IT9,$NBeL>;l$@$h$)$)$*$*$*$*$*$C$C!*!*!J%O!<%j!<%@%C%7%e!KF;!'$4$U$"$!$"$"$"$"$C$C$C!*!*!JF'$^$l$?%O!'$&$o$!$!$"$"$"$"$"$s!*!*!*F;!'!&!&!&!&!&!&!J$A!<$s!J9g>8%k%j!'!&!&!&!&!&!&GO</$P$C$+!#%N%o!<%k!'!&!&!&!&!&$G$O3'$5$s!"<!2s$G$*2q$$$7$^$7$g$&!"$=$l$G$O!#
アトガキ
道化(以下、道)「どうも〜、道化です・・・・第二話、修正し?,
$?6r$+
ハーリー(以下、ハ)「ハーリーです、いや、見事
$K<:GT$7$^$7$?$M!"F;2=!W
道「本当だよ・・・・」
ハ「まぁ、本人も反省しているのでもうこんな事無いようにしますので」
道「本当にすいませんでした(土下座」
ハ「まぁ、ともかくちゃっちゃと三話つくってくださいよ?」
道「了解です・・・・今回は本当に迷惑をかけてしまい、申し訳ありませんでした」
代理人の感想
うーん、読みにくいですね(爆)。
セリフ位は改行してもいいと思うのですが・・・。
後、今はまだ余裕がないかもしれませんが、慣れてきたら細かい描写も考えて見ましょう。
例えば、ルリがあの黒マントで町を歩いたら間違いなくちょっとした騒ぎになりますよ、とか(笑)。
感想追記・060924
会話部分の改行を修正したものを頂いたのですが、盛大に文字化けしていたので最初に頂いたものの会話部分をこちらで改行する事で対応させていただきました。あしからず。