時を紡ぐ者達 第1話

「ここは?」

アキトがジャンプした場所は

どこぞの国連直属の非公開機関司令『妖怪髭眼鏡』の執務室のような部屋であった。

「ようこそ、統和機構本部へ。天河アキト君」

声のする方向へ振りかえってみると、黒いスーツを着た二十歳前後の青年がいた。

ゲルマン的な美形の持ち主でありながら、東洋的な雰囲気を持っている。

「お前は誰だ?」

「おっと、失礼しました。

 私は、統和機構長官を務めている『アトラス』と言う者です」

「『アトラス』? それは本名か?」

「いえ、ペンネームみたいな物です」

(プロスと同じような物か)

 名前のことで時間を費やすつもりにないアキトは話題を切り替えることにした。

「統和機構とは具体的にどんな組織なんだ?」

「彼女から聞いていませんか?」

アトラスは少し驚いたように聞き返した。

「色々な世界のはみ出し者を、支援する組織だということしか聞いていないな」

「辛辣ですね」

その後二人は笑った。そして、笑い終えた後。

「端的に言えば、君がいう所の『はみ出し者たち』の所業の清算。つまり歴史の改変をおこなっています」

「清算?」

「はい。この組織のメンバーは、様々な世界で強すぎる、優秀過ぎるがゆえに自分の世界に居られなくなったのです」

「そうか・・・(という事は、能力は一流ということか。しかし、そんな組織が無償で動くのか?)」

アキトはため息をついて押し黙った。

(それだけじゃないですけどね)

一方、そんなアキトの心配をよそにアトラスは自分を含む組織幹部の共通した秘密を思い出し、心中ため息をついた。

「一つ、聞きたいのだが」

アキトはアトラスに自分が懸念していることを聞こうときりだした。。

「大丈夫です、支援は基本的に無償でやりますよ」

アトラスはアキトの質問の出先を挫いた。

「どうして分った?」

「この組織を訪れた人は必ず、同じ事を尋ねますから。

 それに先も言った通り、この組織の支援を受けている人物はそれぞれの分野でも、一流の方ばかりです。

 そんな方々が無償で支援してくれると言う話を、真には受けてくれないんですよ。

 昔の格言にもあるでしょう、『ただより高い物は無い』と言うのが」

「確かに。じゃあ、どうやって信頼させたんだ?」

「勿論、話し合いですよ。

 我々がきちんと説明すれば、納得してくれました」

「俺にも説明してもらえるのか?」

「勿論です。我々は、彼女、演算ユニットと取引しているんです。あなたのような人を支援する見返りに

 技術情報を提供してもらうようになっているんです」

「・・・」

「納得していただけましたか?」

「お前個人としてはどうなんだ? 長官としての立場でなく、アトラス個人としては?」

「私個人ですか? ・・・・・・少なくとも私と同じような目に有った人を救いたい。それが本音ですね」

アキトは、アトラスの碧眼の瞳を見詰めた。そして、そこには嘘をついている気配は無かった。

アキトは「頼む」と言うなり、頭を下げた。

「勿論です」

アトラスはこの時、安堵の笑みを零した。

「さて、あなたはどんな支援を望むのですか?」

少しして、アトラスは尋ねた。

「どんな物でもいいのか?」

「まあ、極端な物でなければ」

「まあ、専用の機動兵器が欲しい。出来れば、ナデシコ級の戦艦とそのドックも」

「分りました。後、何人かをサポートのために派遣しましょう」

「本当か?!」

要求が全部通るどころか、それ以上の援助もすると言うことにアキトは驚きを隠し得なかった。

「本当です。我々の力を持ってすれば簡単なことです」

「・・・・・・」

さすがのアキトも驚きの余り、絶句してしまう。

「サポートの要員は既に決まっています。後、機動兵器と戦艦はここのドックで建造しますが、よろしいですか?」

「やけに手回しがいいな」

「彼女から君の事を聞いた後、用意はしていましたから」

一体なんと言ったのか気になるアキトだった。

「向こうの世界には、予備のドックを空間転移で送りこむつもりです。

 それと、専用の機動兵器のことで少し聞きたいことがあるのですが」

「何だ?」

「専用機動兵器はやはり、ブラックサレナと同じ物が良いですか?」

「出来ればそれがいいが、何か不味いのか?」

「我々の使っている機動兵器、勿論、人型ですが。

そちらの方が断然、性能がよいのでそちらをカスタム化したほうが都合が良いのですが」

「どの位の物なんだ?」

「今から、説明しましょうか?」

「頼む」

アトラスは返事を聞くなり、立体映像を出した。

そこには、12枚の白き翼を持ち、彫刻のような雰囲気を持った純白の人型兵器があった。

「これが」

「はい、統和機構作戦部の主力機動兵器『メタトロン』です」

「『メタトロン』・・・」

「はい。この機体の最大の売りどころは、機動性です」

「機動性?」

「はい。この機体には慣性制御装置や重力制御装置が装備されており、アクロバットな機動が可能になっています。

それに、二つの制御装置を利用した攻撃、防御方法もあります。

また動力には超小型の反物質エンジンを採用し、百年以上無補給で活動できます」

「・・・・・・」

驚きの余り、声がでないアキト。それに気付かず、アトラスは説明し続ける。

「装甲は最新鋭の特殊合金を使用しており、あらゆる面において他の金属を遥かに凌駕しています。

 基本武装はグラビティーカノンだけですが、追加武装として、反物質砲やブラックホールキャノン等があります」

「・・・世界を一つ滅ぼせるな」

アキトは嘆息した。まさかここまでの品物だとは思わなかっただろう。

「我々としては、これを君の専用機にカスタマイズするつもりだけど良いですか?」

「・・・頼む」

「戦艦の方はこちらに適当なのが無いから、ユーチャリスをベースに建造するつもりですが」

「それで頼む。後、そんな丁寧な言い方をしなくて良い。俺のことはアキトでいい」

「わかった。ではアキト君と呼ぶよ」

「ああ」

「それと今から、サポート要員を紹介したいんだけど良いかい?」

「別に構わん」

「じゃあ、少し待ってくれ」

アトラスは何処かに通信を入れた。そして10分後。

「失礼します」

アキトの後ろの扉から女性の声がした。

後ろを向くと、そこには二人の男性と三人の女性が居た。

「はじめまして、私は水原麗香。統和機構情報部に所属しているわ。よろしく」

腰のあたりまで伸びている黒髪と、化粧が不要なほど優れた目鼻立ちを持つ美女が挨拶した。

「それと、私のことは麗香でいいから」

「次は私ね。

はじめまして、天河さん。私は新城真澄。統和機構情報部に所属しています。よろしく」

ショートカットの黒髪と、麗香に負けず劣らずの美貌の持ち主だった。少し、気が強そうだが。

「やっと、出番か」

彼女らの後ろにいた、どこか冴えない容姿を持った30代前後の男性が自己紹介を始めた。

「私の名前は春日井三郎。統和機構作戦部に所属している。よろしく」

容姿は前の二人に比べるべくもないが、どこか侮れない物を感じさせる人物であった。

「それと、後ろにいるのは私の部下である如月蘭だ。無愛想な奴だがよろしくしてやってくれ」

春日井の後ろにいた銀髪に赤き瞳を持った青年が会釈した。

彼もかなりの美貌の持ち主だが、女性二人と違うのは、感情があまり感じられないことだろう。

「あのー、私は?」

蘭の近くにいた、どこぞの鋼鉄少女を思わせる少女がおずおずと尋ねてきた。

「あ!すまん、忘れてた」

「ひどいですよ」

「すまん、すまん」

「あの、彼女は?」

「彼女は、作戦部所属の神無月香織。腕利きのパイロットだ」

「その割に、よく忘れられますが」

「ははは、気にするな」

しかしながら、冷や汗を浮かべつつ否定してもまったく説得力がない。

「します!!」

二人の漫才は続く。周りはいつものことだと静観している。

アキトはこの時、自分の直感に疑問を持ってしまった。

また、アキトは気付いてしまった。

この組織のノリがナデシコにそっくりだということに!!

後書き

お久しぶり(?)earthです。

第一話をお送りします。今回は組織とオリキャラ、メカについてがメインでしたがどうでしたか?

自分なりに頑張ったのですが、初心者なので上手く表現できていないところがあるかもしれません。

と言うか、多分あるでしょう。

まあ、頑張って続けるつもりなので感想等を送ってくださったら嬉しいです。

次回は、遂に過去へ飛ぶ話にしようと思います。

それでは、また次回お会いしましょう。

  

 

 

代理人の感想

ん〜、無償で動く理由が説明されていませんね?

「話し合いで納得してもらう」と言っておきながらそこを素っ飛ばしてしまうのは如何なものかと。

アキト君だけじゃなくて読者だってそこは疑問な訳ですから。

 

アトラスの「目を見て納得」するのはアキト君であって、読者ではないんですね。

読者はアトラス君の目を見れませんから。

 

後、「髭指令の司令室のような」とか「どこぞの鋼鉄少女のような」と言う表現は

元ネタを知らない人には通じませんし、文章が貧弱になる元でもありますので

余り使わないほうがベターかと思います。