時を紡ぐ者達 第2話

 アキトが統和機構と接触してから、はや二ヶ月がたった。

この二ヶ月の間には様々な事があった。その象徴が

アキトのベットで寝ている麗香である!!(爆)(ちなみにアキトは気付いていない)

アキトは来るべき日に備え、訓練を怠らなかった。

しかしながら、その姿を見て、クラッとしてしまう女性が多かった。

おまけにあの天河スマイルと、手料理でおちてしまう女性がかなり居た。

その一人が麗香である。おまけに、真澄もおちかけている。(フェロモンでも出ているのだろうか?)

この手の早さには、アトラスを始めとする統和機構幹部達もあきれてしまった。

しかし、誰も文句を言おうとはしなかった。

逆に、アキトに同情のまなざしを向ける者がほとんどだった(男性9割、女性1割)。

彼らはこうコメントした。

「アキト君、ここの職員をおとすとどうなっても知らないよ」

「やれやれ、天然は大変だな」

「色恋沙汰の面倒は、もうこりごりよ」

「水原に手をだすとは、命知らずな奴だ」

まあ、色んな問題をはらみつつ、遂に過去に行く日がやって来たのだった。

「とうとうこの日が来たか」

「ええ」

アキトは格納庫で、香織と共に自分の新しい専用機『ブラックサレナU』を見上げていた。

これは『メタトロン』に追加装甲を装着させ、防御力を高めた物だった。

外見としては『ブラックサレナ』より大分細くなっており、苦手だった挌闘戦を克服することが出来るようになった。

武装もそれなりに強化されており、12枚の翼は慣性と重力を制御する。アキトの世界においては最強の存在となりうる物だ。

「『ユーチャリスU』の建造は、ほぼ終了。後は試験航海をするのみよ」

この戦艦は、全長260メートルと初代より大型化している。

武装も、全方位型グラビティーブラストを左右に一門ずつ、従来型グラビティーブラストを艦首に二門。

そして相転移砲を搭載している。他にも多数の両用砲や火器、強力なECSやハッキングシステムも搭載している。

勿論、ワンマンオペレートシステムは健在で、麗香がオペレーターを担当している。ちなみに、ボソンジャンプの他に、ワープ航法も可能になった。

搭載機はアキトのブラックサレナUをはじめ、10機搭載可能になっている。

「補給基地の設営はどうなっている?」

「冥王星、火星に地下基地を建設したそうです。でも、規模は冥王星基地の方が大きいらしいです」

戦艦を運用する以上、その補給基地がどうしても必要になる。そこで、遺跡のある火星に補給基地を。

冥王星には、新型戦艦の建造や機動兵器の製造も可能なドックを持った基地を建造した。

無人の冥王星はともかく、開拓の進んでいる火星には大規模な基地を作れなかった。

よって、前線基地(規模的には軍の大規模な基地に匹敵する)としての機能だけを持たせることとなったのだ。勿論、ワープ航法で二つの基地は結ばれている。

「三郎と蘭が先に行って色々と準備していますから、早めに行ってあげたらどうですか?」

「そうだな」

同じ頃、アトラスは演算ユニットのAIと秘匿回線で話をしていた。

「ついに、歴史へ介入する時が来たようね」

「楽しそうだな」

「まあね。私としては、史実を完全に無視した展開を希望してるけどね」

「しかし、そうなると未来予想が不可能になる。大局を変えるのは最終段階だ」

「・・・そうそう上手くいくかしら?」

やや、からかうような声できく演算ユニット。

「・・・・・・・」

「ふふ、楽しみね」

一方的に回線が切られた。

「根底から歴史を変えたとしたら、事態が収拾しにくい。いや、殆ど不可能に近いよ」

アトラスは虚空を見つめながら呟いた。(前科があるのだろうか)

そんなアトラスの周りには、『SOUND ONLY』の文字が映し出されたウインドウが複数存在した。

『彼女の性癖にも困った物だ』

一つのウインドウが苦々しく言った。

この発言を皮切りに、意見の応酬が始まった。

『しかし、そのおかげで我々が救われたのも事実です。それを考えると』

『確かに。その上、彼女が提供してくれる技術で我々は大きな利益をあげている。

 その利益から見れば、彼女の暇つぶしに付き合うのも悪くはない。ただで支援していても、運営資金には事欠かんからな』

『だが、大幅に歴史を改変することには賛成できないな』

『まったくです。我々の存在に気付く者が出る危険性があります』

これらを黙って聞いているアトラスは一人、考えに耽っていた。

(新しい世界の開拓が行える事に不満はないが、歴史を大幅に変えるリスクを考えると微妙な所だ。

 まあ、自分達の同類を救うことには道義的な意味が有るが。

 ・・・・挑戦するべきか? 問題は彼がそれを望むか、だが) 

 もうしばらくして、アトラス達の秘密会議が終了した時、すでにアキト達はユーチャリスを使って、過去に着いていた。

「これは・・・」

アキトは、火星基地の施設の充実ぶりを半ば、呆れたような表情で眺めていた。

巨大な地下運河、整備工廠、そして防御施設と、軍施設でも滅多にお目にかかれない物ばかりだった。

「何をほうけているのかね?」

春日井の声にはっと気付いたアキトは、疑問に思ったことを尋ねた。

「春日井さん、少し聞きたいんだが、この基地は本当に一年余りで作ったのか?」

「そうだ、我々が介入し始めたのは西暦2194年2月。

 そして、ここが完成したのは2195年5月。でも、最初に会社作るのに一ヶ月かかったから、大体1年2ヶ月で完成した事になる」

「凄い」

「言っとくが、ここより冥王星基地のほうがもっとでかいぞ」

「・・・」

もはや驚きの余り、声も出ないアキト。

「何、ぼんやりしてるのよ」

後ろから、麗香が話し掛けてきた。

「ああ、麗香ちゃんか。ちょっと余りのスケールに驚いちゃってね」

「ふーん。まあ、いいか。春日井さん、HFR(ヒューマン・フォーム・ロボット)の調整終わったわ」

「そうか、ご苦労さん」

「HFR?」

「ヒューマン・フォーム・ロボットの略よ。うちは慢性的な人手不足だから、基地の維持はロボットで補ってるの」

「へー」

「それに最近のタイプはより、人間に近くなってきてるわ。下手な人間に任せるより、よっぽどましね」

アキトは段々SF映画の世界に自分が迷い込んでしまったような気がした。

「それはともかく。アキト君、今日あいてる?」

「空いてますが、どうかしましたか?」

「ちょっと、ショッピングに付き合ってもらいたいの。どう?」

「別に構いませんが」

「じゃあ、二時間後に、基地のゲートに待ってるから、遅れずに来てね」

「分りました」

麗香は、アキトが『OK』の返事をするなリ、上機嫌そうに去っていった。

「あーあ。どうなっても知らんぞ」

ポツリと呟く春日井。アキトに思いを寄せる真澄がどんな行動をとるか心配しているのだろう。

そして、その心配は当ることとなる。

 二時間後の基地ゲートには、三人の人影があった。

「何で、あなたがここに居るの?」

「別にいいじゃない。それとも私と一緒に行くと何か不味いの?」

「そんなことはないけど」

だが、顔を引きつらせながら喋っているので説得力皆無である。

「じゃあ、問題ないよね」

勝ち誇るように言う真澄。

この二人の周りにはブリザードが吹き荒れている。

原因を作った人物は、ただ涙目で見ている。

氷の笑顔を浮かべる美女二人と、涙目の青年が町に向ったのは、その五分後のことだった。

ちなみに、その三人後ろには二人の追跡者がいた(笑)。

「うーん、雰囲気がよろしくないですね」

「・・・なんで、俺が付き合わなくてはならないんだ?」

神無月香織と如月蘭の二人だった。

「だって、私一人だと言い訳しにくいじゃありませんか。

如月さんと一緒だったら、比較的簡単に言い逃れできそうですから」

「・・・・・・」

「おっと、三人が動き始めましたよ。行きましょう」

「馬鹿馬鹿しい、何で俺が行く必要がある。俺は失礼させてもらうぞ」

蘭が去ろうとする。その時、香織の目が光った(笑)。

「甘いですよ」

目にもとまらぬ早さで、香織の手刀が蘭の首筋にヒットした。

「く、貴様・・・」

蘭は気を失った。

「ふふふ、私から逃れようとしてもそうはいきませんよ」

含み笑いをしつつ、崩れ落ちた蘭に首輪型の小型重力制御装置を着けちょっと体を浮かした後、鞄から、ピアノ線を取り出した。

そして、蘭の首や、腕などに巻きつける。そして、ピアノ線を使い蘭に様々な動きをさせた。まるで自分の意思で動いてるかのように。

「ふふ、大分人形使いが上手くなりました」

不気味に微笑む少女。はっきり言って近寄りがたい。と言うか、近づきたくない。

「さて、行きましょうか」

しかもこの時、蘭の顔が真っ青になっていることに気付いていない(笑)。

 自分達の後ろで、このようなことが起こっていることも露知らず、アキト達はデパートに入っていった。

そして三人が向った先は、婦人服の店舗だった。

アキトはこの後、延々三時間、買い物につき合わせられる羽目になった。

「アキト君、どっちが良いと思う?」

そう言って、服を選ばせようとするのは序の口で

「アキトさん。後ろのチャックあげてくれませんか?」

等と、更衣室の中に入れようとさえした。おかげでアキトは周りから大分、厳しい目で見られることとなり精神的に疲れ果てた。

買い物の後は、レストランで食事をしたりもしたが、本人は曰く。

「味なんて、まったく感じられなかった」

ちなみにこの奇妙な三人組みの背後には、真っ青な顔をした銀髪の男と、怪しげな変装をした少女がいたらしい(笑)。

 この日、アキトは過労、蘭は打撲と呼吸困難で倒れ入院することとなった。

後書き

こんにちわ、earthです。

統和機構は、演算ユニットと取引を行い、様々な技術と情報を引き換えに歴史を改変しています。

ですが本編では、そんな彼らでも歴史を大幅に変えることを反対します。

その理由は今後、きちんと出すつもりなのでこの場はご了承ください。

ちなみに、統和機構には彼らなりの目的が存在します。それもいずれ登場させようと思うのでご安心ください。

さて、次回はついに蜥蜴戦争勃発です。

できるだけ早めに書き終えたいと思っています。

拙作ですがよろしくお願いします。

 

 

代理人の感想

う〜む、なにをする気なんだか。

どう考えても一隻で木連を急襲して支配しちゃった方が手っ取り早いと思うんだけど(笑)。

まぁ、お手並み拝見と行きましょうかね。

 

 

一寸ツッコミ。

冥王星には地面がないので「地下」基地は作れません(笑)。

(冥王星は液体化したガスの固まりなのです)