時を紡ぐ者達 第7話

 10月下旬のある日。某所。

「気持ち良いですね〜」

「・・・・・・」

「あれ? 蘭さん、どうしたんですか?」

「・・・・・・」

「お腹でもへったんですか?」

「・・・俺達は、任務でここに来ているんだぞ? もう少し自覚を」

「まあまあ、せっかく欧州まで来てるんだから楽しまなきゃ損ですよ」

そう言って何故か、いなり寿司を食べる香織。

「・・・はぁ」

香織の言動と行動にげんなりしつつ、蘭は昨日の会話を思いだしていた。

「ネルガルの研究所に?」

「そうだ」

蘭と香織は、10月中旬のある日、アルビオン本社に召集された。

そこで二人はカイトから思いもよらぬ要請を受けた。

「周知の通りアカツキが失脚後、ネルガルは社長派が実権を握った。

 だが、このせいでアカツキが凍結していた人体実験が再開されたとの情報を入手した」

「「・・・・・・」」

「・・・本来は俺自ら出向いて、皆殺しにしてやりたいがそうもいかん」

そう言うカイトの机の上には、山のような書類の束があった。

「・・・はぁ」

ちらり、と書類をみてため息をつくカイト。

この書類の山が、カイトが自ら行けない理由を物語っていた。

「で、だ。作戦部でも特殊作戦のエキスパートと名高い二人に、この施設の破壊と被験者の救出を頼みたい」

「・・・・・・」

『二人に』と言う台詞に、さも嫌そうな表情を見せる蘭。

これに対し、

「ニヤリ」

と言わんばかりの表情を見せる香織。(笑)

「訓練で忙しい君達には悪いが、頼む」

そう言って、カイトは頭を下げた。

「・・・別に構わん」

「そうですよ、仲間じゃないですか。そんな水臭いことはしないでください」

「ありがとう」

だがこの時、蘭の表情はお世辞にも明るいとは言えない物だった。

 いなり寿司を食べ終えると、今度はマシュマロを食べ始める。

「何故マシュマロ?」

「気にしないでください」

マシュマロを食べながら、うめ昆布茶を飲んだ。

何気に、デンジャーな組み合わせだ。

「食べ終わったら、買い物です」

「おい」

「息抜きは重要です」

「・・・そう言うことは仕事の後にしろ」

「ぶーぶー!!」

「・・・分った、分ったから」

「ありがとうございます」

その後、彼は二時間以上に及ぶ買い物に付き合わされた。

「で、どうするんだ?」

買い物が終った後、蘭は真面目な声で尋ねた。やや疲れが見えるが。

「決まってるじゃありませんか。蘭さんがジャンプで管制室を制圧。

 その隙に私が直率する別働隊が警備部隊と研究者を殲滅すれば問題ありません」

「ジャミングは?」

「すでに手配済みです。襲撃と同時にこの地域一帯の通信システムはダウンします。

 監視衛星には偽のデータを送ります。証拠は何も残りません」

「そうか」

「・・・。本当にあれを使わなければならんのか?」

「勿論です」

蘭の懇願じみた問いに、にべも無く否定する香織。

何故か、顔が笑っているが・・・。

「はぁ」

「さぁ、行きましょう」

  ネルガル研究所、管制室。

「退屈だな」

「まったくだ」

室内では、警備部の職員が監視モニターを見ながら、談笑していた。

「全く、お偉方も神経質だね」

彼らがそう言うことには根拠がある。

この研究所の警備には、正規軍一個大隊に匹敵する兵力が当てられていた。

「ここを襲撃するようなバカはいないだろう」

「まぁ、襲ってきたとしても返り討ちだがな」

警備部隊はネルガルSSの精鋭も多分に含まれており、過去三度にわたって侵入者を撃退してきた。

そして、この事実が油断を生んでいた。

「おい、もうそろそろ交代の時間だな」

「ああ」

だが、その男は次の言葉を発することは無かった。

不信に思った同僚が、その方向を向くとそこにあったのは

首の無い、かつての同僚の姿だった。

「なっ!!?」

だが、彼も次の瞬間、絶命した。自分に何が起こったのかを認識する前に。

鮮血の池ができた管制室に、白いマントとバイザーをかぶった蘭の姿があった。

「・・・こちら、W0。パープル、応答せよ」

『こちら、P1。首尾は?』

「姫君は眠りについた」

『・・・了解。パーティーを始める』

その通信の直後、研究所の各所で爆発が起こる。

ECSを使って、研究所内に潜入した部隊が一斉に攻撃を開始した。

警備にあっていた部隊は、奇襲攻撃開始から僅か数分で壊滅。

攻撃に驚き、急いで戦闘準備を整え様としていた警備員たちは、屋内に侵入した部隊の手で次々に射殺された。

あちこちで、爆音や銃声。さらには悲鳴と怒号が挙がった。

「管制室応答せよ!! 管制室!!!」

施設のあちこちから救援を求める通信が管制室に殺到した。

彼らは知らなかった。すでに管制室が制圧されたことを。

そして、自分達が相手にしている敵が世界最強とも言われるアルビオンSSだと言う事も。

「くそ!! 撃ちまくれ!!」

警備員達は、決死の思いで反撃したが、それは無駄な努力だった。

そして降伏しようとした部隊も次々と殲滅され、攻撃開始僅か10分足らずで一個大隊の兵力は全滅した。

 攻撃部隊が身につけていたこの強化服。

外見は、色こそ違えど、黒の王子のマント姿にそっくりだった。

ただ、やたらと色の種類が多かったが・・・。

まず、蘭のきていたのは白(W)。香織は紫(P)。他に緑(G)や青(B)など・・・。

・・・何を考えて作ったのだろうか?

やっぱり戦隊物か?

 このカラフルな侵入者達の一隊が、実験センターに押し入った。

慌てふためく研究者達。

「お、お前ら、ここがどこの施設か知っているのか!!?」

研究者の一人が虚勢を張って、詰問する。

この問いに対する答えは銃弾だった。

侵入者達は、次々に実験センターにいた人間を射殺した。

飛び交う悲鳴。

背を向け、この惨劇から逃れようとした者は後から頭部を次々に打ち抜かれ

自分の脳漿を床にぶちまけた。

命乞いした者もいた。

「た、助けてくれ!! 私には妻と娘が」

「我々がいないと研究が」

だが、彼らの懇願がかなえられることは無く、

「死ね」

こうして、センターの中には、死体の山が築かれた。

香織は殺戮の後が生々しい室内を見渡した後、B班に連絡を取った。 

「こちら、P1。妖精は?」

『こちらB2。妖精を発見。直ちに回収する』

「了解。各人、速やかに撤収せよ」

『了解』

『こちらG3。複数の人間がここへ侵入した模様』

「・・・特徴は?」

『マントに編み笠を被っている。人数は7名』

「(北辰!?)・・・了解。各人は遭遇戦に備えろ」

そう言って、香織は蘭に通信を繋げる。

「W0、聞こえた?」

『聞こえている。管制室から確認した』

「どうする?」

『・・・六連はそちらで始末してくれ。北辰は俺が引きうける』

「勝機は?」

『無論ある。それでは六連は頼むぞ』

「・・・了解」

「・・・どうやら先客がいたようだな」

編み笠に、マントを羽織った爬虫類を彷彿させる男が忌々しげに呟いた。 

「いかがしますか?」

「先客の正体を探れ。我は、妖精の探索にあたる」

「御意」

そう言って、彼らはは研究所に潜入した。

爬虫類を彷彿させる男、北辰は情報部からもたらされた地図どおりに実験センターに向った。

そこには、

「おぬし、何者だ?」

「お前に名乗る名前は無い」

蘭の姿があった。

「ここを襲ったのはお前か?」

「さあな」

「・・・・・・」

この時、北辰は蘭の恐るべき実力に気付いた。

「妖精」

「!!」

北辰は、蘭の言葉に少し驚いた。

そして、同時に悟った。自分の目的を果たすためにはこの男を倒さねばならないことを。

「どうやら、おぬしを倒す必要があるようだな」

この言葉に不敵な笑みを零す蘭。

死闘が始まろうとしたいた。

後書き

お久しぶり、earthです。

駄文ですがまたまた送らせていただきました。

未熟者ですから、まだまだ不都合な点があるでしょうが、これからも送るつもりなので

よろしくお願いします。

・・・それにしても何故、大学で中間試験がある?

それでは第8話でお会いしましょう。

 

 

代理人の感想

い〜じゃないですか、社会人なんて毎日が試験みたいなものですよ?

まぁ、生業にもよりますが。

 

それはさておき・・・・ナニゆえヨーロッパでスシ!? ナニゆえ梅昆布茶!? しかもマシュマロ!?(爆)

戦隊スーツと言い、なかなか素敵な趣味をお持ちの様で(笑)