「君がアキト君だね。ボクはコリュール、ビボース・アロン=フェイク・公子(ヤルルーク)・コリュールだよ。

 一応ここの研究所の代表と言うことになっているけど、どういうわけか部下がすぐに異動を希望しちゃってね。

 それにしても、今まで研究者をやっていてこれほど嬉しいことはないよ。

 なんていったって別の進化を遂げた文明の研究が出来るんだからね。」


コリュール、身長180cmぐらいの細身で髪の色は薄い青紫。目の色は家徴の水色をしている。

ご多分に漏れず、他のアーヴと同じく美形である。

服装は星界軍(ラブール)軍衣(セリーヌ)に白衣を纏っている。

白衣の下の軍衣(セリーヌ)(セリーヌ)の左胸には技術科千翔長(シュワス・ファゼール)の証の紋章を付けている。

相当偉いはずなのに、部下がほとんどいない。

能力が高いが性格が変わっているのである。

まさに、ナデシコにうってつけの人材である・・・・のか?


「とりあえずそこに座ってよ。いろいろ聞きたいことがあるからさ。」


人なつっこい性格のようである。

アキトが答える間もなく次々にしゃべり出す。

科学者とはこのような物かとイネスを思い出しつつコリュールの話を聞くアキトであった。


「君に関しての事は全部任されたからね。とりあえず、えーと、ぼそんじゃんぷだっけ?

 う〜ん、なんか響きが美しくない言葉だね。まぁ、その現象に比べれば些細なことだけどね。

 それで、君の遺伝子をいろいろ調べさせて欲しいかな。後は相転移機関のこととか。

 燃料の補給を無しに稼働し続ける機関。これは帝国を勝利に導く技術だよ。

 これさえあれば人類統合体なんて目じゃないね。隣の銀河に行くにも困らないしね。」

「それで何から始めるのだ。」


そのまま放置して置いたらいつまでもしゃべり続けそうなのでアキトは途中で割り込んで

話の先を進めることにしたようだ。


「あ、そうだね。とりあえず、君の遺伝子を調べてみよう。体に異常も起きているって話だし、

 何とかしてみよう。その後にえーと・・・・『ゆーちゃりす』だっけ?君の乗ってきた船。

 アレを調べてみよう。ふふふ、興味に耐えない。今日ほど嬉しい日はないよ。」


そう言っている間に遺伝子を調べる器具を持ってアキトの傍らに立っていた。

そして、無針注射に似た器具をアキトの腕に押しつけ血液を採取した。


「よし、後は測定器にかけて置けば明日には結果が分かるよ。

 治療とかは明日以降になるからね。覚えておいてね。」






1時間後ユーチャリス艦橋


ユーチャリスの艦橋ではラピスがアキトの帰りを待っていた。

ラマージュとの謁見の後、一旦ラピスの所に戻ってきたがすぐに研究室に行ってしまって

一人寂しくアメノオシホと遊んでいた。


『マスター、艦長が帰還です。客人も一緒です』


オモイカネに比べると無愛想とも取れるAI。

アメノオシホのマスターたるラピスの性格のためである。


「アキト、帰ってきたんだ。迎えに行く。」


アメノオシホにそういうととてとてと艦橋を出ようとするが、ラピスの特技その1

”何もないところで転ぶ”

を遺憾なく発揮した。

運動神経が皆無に等しいラピスはビタンと転んだ。


「イタイ・・・・」


ぼそっとそう言うと艦橋の扉が開いた。

アキトがコリュールを連れて帰ってきたようだ。


「ラピス、どうした?」


ラピスは転んでまだ立ち上がっていない。

そのままの状態で目に涙を溜めながらアキトを見上げる。

アキトがラピスを立ち上がらせるとラピスはアキトに抱きついた。

身長差のため、お腹の辺りにしがみつく感じだ。


「ただいまラピス。」


そういうと頭をくしゃくしゃと撫でた。

微妙に顔の表情を嬉しそうにしている。


「お帰りなさい、アキト。」


挨拶をするとコリュールの方をじーーーっと見た。


「こんにちは。ボクはコリュール、ビボース・アロン=フェイク・公子(ヤルルーク)・コリュールだよ。

 ちょっとこの船を調べさせてもらいに来たんだよ。よろしくね、ラピスちゃん。」


コリュールがそう挨拶するがラピスはじーーーっとコリュールを見ているだけである。



3分経過



「ラピス、挨拶は。」

「アキト、この人何喋っているの?」


そう、アキトは翻訳機を装備していたがラピスは装備していなかった。

そのためラピスはどう反応すればいいか迷っていただけだった。


「あ、すまない。すっかり忘れていた。オシホ、いるか。」

『何でしょう、艦長』

「通訳を頼む。」

『了解・・・・艦内ではどこでも通訳するように設定。』

「ありがと。」

「さて、もう大丈夫みたいだね。それではあらためて自己紹介を。

 ボクはコリュール、ビボース・アロン=フェイク・公子(ヤルルーク)・コリュール。

 この船を調べさせてもらいに来たんだよ。よろしくね、ラピスちゃん。」


コリュールは一字一句間違えずに前と同じ事を言った。

それに対しラピスはアキトの方を見た。

それに対してアキトはコクンとうなずいた。


「私はラピス、ラピス=ラズリ。私はアキトの目、アキトの鼻、アキトの手、アキトの足・・・・・」


アキトは焦りながら途中で遮るようにして


「ラピスはこの艦のオペレーターをやっている。この艦に関しては俺よりも詳しい。そして、

 オシホ、挨拶しなさい。ついでに乗員登録もしてくれ。」

「了解・・・・・完了。

 こんにちは。私はこの船の人工知能のアメノオシホです。船の制御などをしております。」

「これはこれはご丁寧に。よろしく。それにしてもいいねぇ。実に優雅だ。ボクらの船も

 こういう人工知能にしたいね。ボクらのは素っ気なくていけない。時間が出来たら、

 こういう研究もしたいね。」

『お褒めにあずかり光栄です。』

「うん、ますますを持っていいね〜。」


コリュールはえらくアメノオシホを気に入ったようだ。

そして、この船についてラピスとアキトを交えていろいろ調査をしだした。

相転移エンジン、重力制御機関、グラビティーブラスト、そしてブラックサレナ。

とりあえず、面通しとでも言うか一通り見て回った。

そして、アメノオシホから船の設計図などを取り出そうとしたときに問題が起きた。


「弱ったね〜。ボクらの思考結晶と君らの思考結晶じゃ互換性が無くて情報を落とせないや。

 さて、どうしたものか。」


困っているように見えないが困っているようなので助け船とアメノオシホが提案した。


『紙に印刷をしましょうか?』

「えっ!紙に!」


そう、アーヴは紙とはほとんど無縁なのである。紙を使う機会と言えば新たな星系を

占領したときにそこの星系政府と契約-降伏調印-の時にしか使われない。

戦時中とはいえそうそうにあることではない。


数分後には数百枚の紙の束が用意された。

船の設計図などが印刷された物だ。

コリュールはまじまじとその束を見ている


「そんなに珍しいのか?」

「うん。だって生まれてこの方、紙を手に取ったのは初めてだよ。」

「俺から見ればそっちの方が驚きだ。」

「そうなんだ。んじゃ、今日はこのぐらいにしてボクは研究所に戻るね。

 聞きたいことが出来たら呼ぶから。あ、そうそう、君たちの端末腕輪(クリューノ)は明日渡すから。」

「ああ、分かった。」

「それじゃね。ラピスちゃん、またね。」

「うん。」


そういうとコリュールはユーチャリスから去っていった。





そして翌日・・・・・帝国標準時0800時


「ふぁ〜〜〜〜、眠いね。」

「寝てないのか?」

「うん、ずーっと調べてたよ。だいたいは分かったんだけど、相転移機関と重力波砲と跳躍機関、

 この3つのことがさっぱり分からないね。分かる?」

「すまんが、俺は技術者じゃないんでわからん。」

「う〜ん、困ったな〜。」


例によって例の如く困ったように見えないで困っている。


「誰か詳しい人いない?」

あっちに帰ればいるにはいるが、出来れば巻き込みたくない。」

「う〜ん、一から研究するとなると・・・・どのぐらいかかるか見当も付かないよ。

 その間君たちも不自由かけることになるし。呼んでもらえないかな。」

「・・・・・・・わかった。頼んでみよう。ただ、あちらが拒否したら連れてこれないことは承知してくれ。」

「善処を頼むよ。あ、そうそう君たちの端末腕輪(クリューノ)を持ってきたよ。」


そういうとふたつの端末腕輪(クリューノ)をアキトに渡した。

コリュールは左手をひらひらとして装着する旨を伝えた。


「どうやって使うんだ?」

「ほとんど音声認識だからやりたい操作を端末腕輪(クリューノ)に問いかけるだけだよ。

 どういう機能があるかも問いかければ答えるよ。」

「わかった。ラクファカールの地図を。」


アキトはとりあえず、地図を出してみようとしたが何の反応もしない。


「あ、そうか。君たちの言語を認識できないんだ。ん〜〜〜どうしよっか。」

「登録すれば済むんじゃないのか?」

「そんな簡単な事じゃないんだよ。設計しなおさなくちゃならないからね。

 もうこっちで暮らすことに決めたんだよね?じゃ、アーヴ語を覚えちゃいなよ。

 貴族なんだしアーヴ語ぐらい出来ないと困ると思うよ。」

「それもそうか。まずはアーヴ語を覚えることにしよう。」

「それがいいよ。

 さてと、それじゃ許可取ってくるね。」

「許可?何の?」

「君たちが帰る為のだよ。勝手にいなくなるといろいろうるさいんだよ。」


そういって、来て早々に帰っていった。

そして、許可が下りて準備などをして帰ったのはその日から3日後だった。

その間、アキトとラピスはラクファカールの町を見物しようとして迷子になったのは秘密だ。




つづく





後書き

むむむむ、大変申し訳ない。
ひじょ〜〜〜に遅くなりました。
言い訳はありません。
サボっていただけです。
「ふっ!2話で終わりか。完結させられないなら書くんじゃね〜」
って、思った方、思惑を裏切ってしまって申し訳ありません。
しっかり最後まで書く所存であります。

さてさて、この物語は星界の紋章及び星界の戦旗を読んでない方は全く分からないと思います。
申し訳ないですが、そういう方は星界シリーズを読んでからもう一度私の拙作をお読みくださるように。
アニメだけを見た方は・・・・まぁ何とかなるでしょうと言うことで。


コリュールは私が今まで書いたSSの中で記念すべき初のオリキャラです。
基本的にオリキャラは使いたくないんですけど、出さざるを得ませんでした。
出さないといろいろ矛盾が生じてしまうし、いきなりイネスを星界軍に放り込むわけにも行かないしで
作りました。
モデルはあまりマッドでないヤマサキかな?

分かる人は分かるのですが一応説明を。
ビボース・アロン=フェイク・公子(ヤルルーク)・コリュール
ビボースは名字兼一族名、アロン=フェイクは家族名、公子(ヤルルーク)は身分、コリュールが名前です。
ビボース一族は華麗なる狂気を持っているということで有名なのです。さらに、天才的な科学者を
排出することでも有名なので、ちょうどいいかなとビボース一族にしてみました。
アロン=フェイクは適当に、公子(ヤルルーク)は受け継ぐべき領地のない貴族で一代限りの物になります。
まぁ、貴族の次男坊と思ってくだされば結構です。
勿論、女だったら公女(ヤルリューム)になります。
名前はま、適当です。
このキャラは千翔長(一般的な軍隊風に言えば大佐)なので、部下がいっぱいいても良いはずなのですが、
”ビボース”なので部下に逃げられてしまうと言う設定です。



さてさて、今回の星界シリーズ豆知識は星界軍の兵科と階級について書きましょう。


奏任翔士 勅任翔士



























一般的な
軍隊での
呼称













飛翔科
主計科  
空挺科  
軍医科  
技術科  
警衛科    
法務科    
看護科    
軍匠科    
造兵科    
造船科    
造機科    
光子科    
航路科    

軍匠科、造兵科、造船科、造機科、光子科、航路科は、提督
より上位は技術科に統合。

飛翔科:戦艦の操作に関わること全般(操舵士、通信士、航法士、砲術士など)
    実際に艦隊の運営をする偉い人もこれ。空識覚がないと困るため地上人形質ではなれない
主計科:艦内の食料や備品の管理
空挺科:地上部隊
軍医科:医者
技術科:総合的な技術を扱う
警衛科:憲兵、警察
法務科:検事?
看護科:看護士
軍匠科:整備士
造兵科:兵器の開発
造船科:艦の開発
造機科:対消滅機関や時空泡発生機関の開発
光子科:コンピューターの開発(光コンピューターなので光子科)
航路科:航路図の管理?航法士は飛翔科なはずだし・・・

准提督は分艦隊、提督は艦隊、大提督以上は複数の艦隊を指揮する階級(飛翔科は)

軍曹など下士官となる”従士”もあるが、細かい呼称は分からず・・・
全てまとめて従士なのかも。


 

代理人の感想

さて、アーブ帝国と言うのは軍事国家でして。その頂点たる皇帝は当然に軍事的能力を求められます。

故に皇帝となるものは必ず帝国元帥の階級及び帝国艦隊司令長官の地位を経ます・・というより、

同世代の皇族の中で最初に帝国元帥に昇進した者が皇太子となり、皇帝になると言ったほうが適切でしょう。

帝国元帥になる為のレースがそのまま皇位継承レースでもあるわけです。

したがって、この帝国では帝国艦隊司令長官と皇太子はイコールです。

(ちなみに皇族以外でも帝国元帥は存在します)

 

後、法務科は軍事裁判のほか、軍関係の交渉やトラブルにおいても法律関係の活動に携わります。

航路科はおそらく航路図の作成・点検が主でしょうね。