――この度は取材に応じてくださって、ありがとうございます。

 

別にいいわ、時間は幾らでも有る事だしね……

 

――それでは、まず自己紹介からお願いできますか?

 

名前はモリガン・アースランド、仕事は、う〜〜ん、一応モデル業ってことになるのかしら?

 

 

漆黒の戦神アナザー「モリガン・アースランドの場合」

 

 

――というと?

 

気が向いたときにだけってこと、普段は、そうね……街をぶらついたり、気ままに旅行をしたり……

 

――はぁ〜〜優雅ですねぇ。でも、このご時世女性のひとり旅って物騒じゃないですか?

 

そうでもないわよ、人間の男なんて束になっても相手にならないし……

 

――は?

 

あ!い、いやこっちの話よ、ホホホホホ(汗)

 

――……………

 

……………

 

――……………あの〜〜大変、不躾なことを伺いますが、お友達にエジプトのミイラ男カマクラが好きなヨロイ武者、はたまたハリウッドスターを目指してる踊るネコ娘なんかはいたりしませんでしょうか?

 

さあ〜〜?何のことかしらぁ、ちょっと身に覚えがないわねぇ(笑)

 

――………話を戻しましょう、それでは彼と出遭った時の事なんかから話して頂けますか?

 

ええ、そうね…「坊や」と逢ったのは月の綺麗な満月の晩、欧州の深くて静かな森の中にある小さな泉のほとりでだったわ。

彼は蒼い月の光の下、まるでに闇に溶けこむような例の黒装束で、静かに佇んで月を見上げていた…興味を引かれた私は「坊や」に声を掛けてたわ「こんばんは、良い月夜ね……」ってね……

 

――ロマンチックですねぇ……ところで…「坊や」とは若しかして彼のことでしょうか……?

 

おかしい?

 

――いや、その…彼…「漆黒の戦神」のことをそう呼ぶ人って聞いた事がありませんでしたし…

 

そうなんだぁ…ウフフフフ……

 

――え〜〜(赤面)、それではひとつ続きの方を……

 

ハイハイ、せっかちねえ。

それで私が声を掛けた時、「坊や」は少し驚いてたみたいだった。

まあ当然よね、夜中にそれも深夜にイキナリ声を掛けられるなんて思いも寄らないでしょうし。

「坊や」は暫く不思議そうな顔をしてたんだけど、少し考えると静かに「ええ、本当に……」って言いながら笑ったの、その後ふたりで取りとめない話をしたわ…その日にあった出来事や、こっちに来てから出遭った人のこと、料理について取り分け楽しそうにしゃべっていたのが印象に残ってるわ、その夜はただそれだけ…そして次の日、私は昨日「坊や」がいた場所に行ってみたの……

 

――いましたか?

 

ええ、昨日とを同じ格好で昨日と同じように月を見てた。

それで、そんな日が何日か続いて、「坊や」と初めて会ったような満月の夜にね……誘ってみたの………

 

――ええ?!か、彼をですか?それってやっぱりコレをアレしたりなんかしちゃったりするヤツですよね!!!
……………………………………………………………それで結果は?

 

振られちゃったわ。残念ながらね。

「坊や」ったら、耳まで真っ赤にして、しどろもどろになってたわよ。

 

――そ、そうですか

 

何でそんなにホッしてるのかしら?(怒)

 

――えっ!それはうちの編集長の耳に入るとまことに厄介なことになりそうなので……ま、まあ、それは置いておいてですね、そう!!彼の何処にそんなに惹かれたと思いますか?

 

まあ、いいけどね……

それで理由だったわね……それはね、綺麗だったから。

 

――へ?

 

魂がね、スッゴク綺麗だったの…今にも砕け散ってしまいそうなくらいズタズタに傷ついているクセに誰よりも激しく輝いている…高貴な黒の魂…始めて「坊や」に逢った時もそうだった、誰よりも強い大きな力に惹かれてあの森に下りて行ったら「坊や」がそこに立っていたわ。

 

――いや?あのぉ?

 

おいしそうだったわ…誇り高く孤独で純粋…あれほどの闇を抱えながら、あんなに強く激しく輝いている…あんな極上な魂にであったのは、何十年何百年ぶり…いえ、初めてかもしれないわね……

まったく、それにしてもこの私を振るなんて良い度胸してるわ……

 

――何十年何百年?あ、あのぉ、それは一体……?

 

フフフ、それはヒ・ミ・ツ…女は秘密が多い方が美しくなれるのよ。

 

――そ、そうですか?ならそれは別として、ライバルは多いですよ。

 

フフフフフ…関係ないわ、私が与えられるものは一生かかっても使いきれないほどの富に、魂が蕩けるほどの天上の快楽、それにこの私…断る男はなんていやしない、いるはずがないもの……

 

――でも、彼は断ったんですよね?

 

……………そうよ、貴方も突っ込みが厳しいわねぇ。

 

――ハイ、まあ、これが仕事なもので(汗)、え〜〜それでは最後に彼に伝えたい事は何かありますか?あったら、どうぞ。

 

そうねぇ……

別にいいわ、「坊や」には何時でも会えるしね……そうね、早速、今夜にでも覗いてみようかしら……

 

――え!それはどう言う……

 

じゃね、今度は夢の中ででも会いましょうね。

 

――あっ!!ち、ちょっと待ってください!!絶滅危惧種に指定されている巨大両生類とかキューピーヘアの吸血鬼とかに心当たりはありませんかぁ〜〜?!ねえ!!待ってくださいようぅぅぅぅ!!!

 

民明書房刊「漆黒の戦神その軌跡」第9巻より抜粋

 

 

―――今回、我々の取材に快く応じてくださいました、モリガン・アースランドさんについてですが、写真の殆どがピンボケの為、全く使い物にならないというミスから、今回に限り顔写真は掲載することが出来ませんでした、よってこれを深くお詫びいたします

 

 

 

 

 

十六の席が連なる円卓に、最後の人物が静かに腰を下ろす。

それを見て瑠璃色の髪の少女が鈴を転がすような声で宣言した。

 

「さて、それではTA同盟緊急特別集会を行いたいと思います」

 

席に着いていた少女を除いた全員の視線が吸い寄せられるように集まった。

 

私の名前はハルカ・ミナト、この機動戦艦ナデシコで操舵士を勤めている、仕事はもちろんナデシコの進路やなんかを設定し船を安全に運行すること、でも今、私は何故だかナデシコの一室である集会に出席していたりする。

 

「ね〜〜ぇ、ルリルリ。何で私がここにいるのかなあ?」

 

私の疑問にルリルリが律儀にぺこりと頭を下げた。

因みにここでの私の役割はアドバイザーってことになっている。

 

「すみません、私たちだけだと暴走した時にストッパーになる人がいないので……」

 

……自覚…あったのね…でも、ハッキリ言って完全に暴走しちゃったら、みんなを止めることなんて絶対に不可能だと思うわ、私。

 

「それじゃ、早速今回の召集の目的を聞かせてくれるかしら」

 

口火を切ったのはナデシコが誇る「説明お姉さん」ことイネス・フレサンジュ博士、彼女はテーブルに両肘をついて組んだ両手で口元を隠すような姿勢でまるで品定めでもしてるかのようにルリルリに鋭い視線を向けている。

 

問題となっているものはおそらくアレのことなんでしょうね、ついこの間、新しいのが発売されたみたいだし、アキト君も何時になく挙動不審だったみたいだしね。

 

「それはこれです」

 

私がそんなことを漠然と考えていると、ルリルリは何処からともなく一冊のハードカバーの本を取り出して机の上にポンと乗せた。

その装丁された表紙には私の予想通り『漆黒の戦神その軌跡第9巻』の文字が箔押しされているのがハッキリ見て取れる。

 

「今回は目に余る部分があまりにも多すぎました……」

 

ピキューーンとばかりにルリルリの目が怪しく光る。

 

「それはどういう意味なのかなぁ」

 

艦長が無邪気に小首を傾げる。

 

「話すよりも見てもらったほうが早いと思ったのでコピーを用意しました」

 

ルリルリから紙の束が全員に回され、暫くは紙をめくる音だけが室内を支配する。

私も渡された紙面の文字に黙って視線を走らせる。

 

うっわぁ〜〜スッゴイ自信家ね、この人。

それにあのアキト君がルリルリたちに内緒でこっそり他の女性と逢ってる?!

正直な感想、ちょ〜っと、意外だったわ。

 

そうこうしてる内に読み終わったらしくエリナさんがゆっくりと紙の束から顔を上げた。

 

「これは、尋問が必要ね……(怒)」

 

いつもの冷静なキャリアウーマンの仮面は剥がれ落ちて、その瞳には嫉妬の炎がメラメラと燃えさかってる。

 

「異議なしだな(怒)」

 

その物騒な台詞にスバルさんも同意とばかりに大きく頷いた。他の皆も同意見らしく揃って首を縦に振っている。

彼女達の背中で黒い炎が見えるようだわ。

 

「そう来ると思っていましたので…首尾の方はどうでしたか?ラピス?」

 

ルリルリの言葉にラピスちゃんが

ニヤリ…

とでも表現するしかない笑いを浮かべる。

 

ダメよ、ラピスちゃん。アキト君の前でその笑い方しちゃ、彼、絶対に引いちゃうから。

 

「うん。バッチリだよ」

 

そう言いながらラピスちゃんがパチンと指を鳴らした。

 

それを合図に――もしかしてオモイカネの演出かしら?――ピンクのスポットライトが灯り、真っ白なスモークが溢れる。

 

そして、ゆっくりと開けていく視界、スモークが晴れたそこには。

 

何処から調達してきたのか大人数人が寝転がっても大丈夫そうな特大サイズの特注ベット、それも羽布団から枕に至るまでピンク尽くしのレースごしらえ、そしてその上にはよ〜く知っているボサボサ頭の男の子がひとり。

 

「な〜にやってるのかな?アキト君?」

 

「あれ、ミナトさん……?俺、一体どうしたんでしょうか……?」

 

自分の置かれた状況がまだ把握しきれてないのかどこかポヤ〜ンとしているアキト君。

それは私の方が聞きたいわ。

 

「いや〜〜ラピスの悲鳴を聞いたんで、急いで駆けつけたんですけど、イキナリ首筋がチクッとしてそれからはちょっと……」

 

極太のロープでグルグル巻きにされた状態で実に情けなさそうな顔をする。

発案メグミちゃん&サラちゃん、実行ラピスちゃん&イネス博士ってとこかしら(笑)。

それにしてもラピスちゃん色んな意味で成長してるのね………

 

「出来の方はどうなの?」

 

私とアキト君がそんな会話をしていると、エリナさんとレイナちゃんのやり取りが聞こえてきた。

 

「もちろん!!スムーズでリズミカルな動き鮮明かつリアルな映像、全てパーフェクト、さすがはウリバタケさんね♪」

 

……こった作りのようね、でも、動きって何?映像って何のことかしら?私にはちょおっとわかんないわね(笑)

 

「さて…アキトさん?」

 

ルリルリの声にアキト君の顔色が見る見るうちに悪くなる、それはもう見事なぐらいに真っ青になってる。

 

さっきまでのポヤ〜ンとした雰囲気がどこにもない所を見ると、防衛本能かなにかで自分の置かれた状況を察知したみたいね。

 

「単刀直入に聞きます、モリガン・アースランドこの名前に覚えがありますね」

 

ルリルリ、目がマジね。

 

その名前を聞いて真っ青だったアキト君の顔が今度は耳まで真っ赤に変わる。

あらっ?意外な反応ね、まさかその女性と?!

 

「アキトさん、その反応はなんです?」

 

その変化を見逃さず恋する乙女モードで瞳を潤ませながらアキト君に詰め寄る、アリサちゃん。

 

「アキト!!そんなことないわよね!!!」

 

サラちゃんも加勢とばかりに追求に加わる、流石は姉妹ね、ここら辺のコンビネーションは見事だわ。

 

「いや、あの…その…え〜なんていうのか」

 

真っ赤になってモジモジしているアキト君。

 

「まさか、本当にヤッちゃたんじゃないでしょうね(怒)」

 

イ、イネス博士、その表現はストレート過ぎるわ。

 

「ち、ちがいます!!!!!」

 

アキト君も流石に真っ赤になって否定する。

 

「そうです!!アキトさんの初物は私が貰うんですから!!!」

 

……色んな意味で立派だわ。メグちゃん。

 

「アキト君、報告は義務よ!!詳細かつ簡潔に説明するのよ!!!」

 

「そうです!!きりきり白状してください!!!」

「白状すれば、楽になれますよ!!?」

「アキトさん!!私は信じてますからね!!!」

「ずっる〜い、ミカコばっかり〜〜!!」

「そうよ!!私も信じてますからね〜〜!!」

 

エリナさんそんなに振りまわしたら流石のアキト君でも答えられないと思うわよ、ホウメイガールズもそんなに詰め寄らないの。

 

ふう〜〜やれやれ、このままでは何時までたっても埒があかないわね……

 

そう考えた私は彼に助け舟を出してあげることにした。

 

「アキト君、本当の事をしゃベらない限りその状態から何時までたっても抜け出せないわよ?」

 

私の言葉に首筋まで真っ赤にして小さな声でボソボソ話すアキト君。

 

「そ、それは…その彼…中で……か…セっ………」

 

え、何?聞き取れないわ。

 

「だ、だから……彼女と……スする……夢を見たんです」

 

夢?何の夢なの?もっと大きな声で言ってくれない?

 

「だから!!!彼女と〈放送禁止用語〉する夢を見たんです!!!(泣)」

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬の絶句。

 

 

 

 

 

 

 

 

あ〜〜アキト君も健康な男の子だったってことかしらね……

恥ずかしかったのね〜アキト君たら泣きそうな顔しちゃって。

 

それにしても…あ…何だかアキト君、苛められた子犬みたい……これは可愛いわ……

 

私の中で理性と思わずお持ち帰りしたくなる衝動とが無制限一本勝負のゴングを打ち鳴らす。

 

ごきゅり……!!

 

なんだか生唾を飲み込んだような音がしたわね……

 

「アキトさん溜まってたんですね

 

へ?!ル、ルリルリ?

 

「そうです、それならそうと言ってくれれば何時でもスッキリさせてあげるのに

 

あ、あの〜〜メグちゃん?

 

「んふふふ……気持ち良くしてあげるからね、アキト君」

 

エリナさんも?

 

「アキト…カワイイ……(ポッ)

 

ラピスちゃん、まで〜〜ぇ?

あっちゃ〜〜これは、仕方ないわね。

 

「え、あ!ど、どうしたの?みんな、目がなんか危ないし、あ、ちょっと、ミナトさん、何処に行こうとしてるんです?!早く止めてくださいよ!!!」

 

ふうぅぅぅ〜〜ゴメンネ、アキト君。

さっきも言ったんだけど、完全に暴走を始めたら、みんなを止めるなんて絶対無理なの。

だから後はヨロシクね♪

 

「え?!そ、それってどういう…うわっちょっと…ういやあああぁぁあああぁぁぁぁ!!!!!」

 

きっと満足すれば正気に返ると思うからそれまで堪えるのよアキトクン。

 

 

 

 

 

オマケ

 

どうも、久しぶりのencyclopediaです。

今回、ひとりではちょっと寂しいのでゲストを用意しております。

それでは、ナデシコの人柱、ナデシコの避雷針ことハーリー君です!!

 

(ドンドン!!パフパフ!!)

 

「ちょっと、何ですか?!今の紹介は!!」

 

真実だと思うが……

 

「ううっ…いいんだ何時の日か必ずビックになってやる」

 

まあ、部屋の隅でいじけてしまったハーリー君は脇に除けておいて……

 

「脇に除けないで下さい!!!」

 

まあまあ…さて今回ですが、私encyclopediaはいったい誰が好きなんだとのメールが来ましたのでお答えしたいと思います。

 

「毎回毎回、違う人で書いてますからねぇ……」

 

ううっ…別にいいじゃないですかぁ……

取り敢えず、私が好きなキャラということなんですが……

 

「なんですが?」

 

みんな好きです!!!!!

 

「……節操無しですねぇ………」

 

うるさいですよ!!別にいいじゃないですか節操無しでも…ブツブツブツブツ

 

「じゃあ、嫌いなキャラは何なんです?」

 

う〜〜ん、嫌いなキャラですか……

 

「はい」

 

まあ、劇場版に出てきたヤマザキですかね、まあ、他のキャラに比べても別格ですからねえ、あのキャラは……

 

「ああ、何となく分かりますよ、では他には?」

 

他にはですか?うう〜〜ん、貴方には悪いんですが……

 

「え?!」

 

「貴方です、ハーリー君」

 

「ええ!!な、なんでです?!!」

 

理由は特にありません。

 

「はあ?!理由もないのに何で嫌われなくちゃならないんですかぁ!!!」

 

この私正直言って、劇場版どころかTVの本編すらまともに見てなかったりします、だから私のナデシコにおける印象の全ては角川から出版された小説とBenさんを始めとする作家さん達の作品から来てたりする。

だが、ハーリー君……如何してだが知らないが、君の存在は気に障るんです!!!!!

 

「ぬわぁぁぁ!!!何て我が侭な人だ!!!!!」

 

そんな訳で私が書くナデシコものの中では絶対ハーリー君が幸せになる事はありません!!(断言)

 

「うわああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんん!!!」

 

行ってしまいましたか…でも扱いやすいんですよねぇ、彼って………

それでは、蛇足とも言える部分のため、ダラダラ長くなってしまいましたが、最後まで読んで下さり本当にありがとうございました。

そして、マキビ・ハリfanの方、どうも申し訳ありませんでした。

では。

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

encyclopediaさんからの投稿です!!

とうとう、人外の者まで呼び出したか・・・

人間(?)としては快挙だな〜、アキトよ(笑)

その調子で今度はキョンシー娘とか、赤頭巾を被った武器マニアとか・・・

 

ま、頑張れや(ニヤニヤ)

 

それでは、encyclopediaさん投稿有難うございました!!

 

さて、感想のメールを出す時には、この encyclopediaさん の名前をクリックして下さいね!!

後、もしメールが事情により出せ無い方は、掲示板にでも感想をお願いします!!

出来れば、この掲示板に感想を書き込んで下さいね!!