へろ〜う♪えぶりわん♪皆は元気にしとるかの?(ハムハム)
良い子のみんなは忘れてしまったかもしれんの、わしぢゃ『ちょっとキツめの会長秘書様に萌々な創造主』ぢゃヨ♪(モグモグ)
……うむ!どうやら元気なようぢゃの、わしも元気ぢゃ、元気ぢゃと食べ物もうまいのぢゃ♪(パクパク)
ん?何を食べてるかぢゃと?食べたことないかの?こりゃ蒲鉾と言う食べ物ぢゃ♪
『創造神』様はこいつがお気に入りでの、しゃべる人型蒲鉾即ち大蒲鉾として下界に御降臨されたほどなのぢゃ。
『ふわふわしてにゃ〜となく猛獣』との一進一退の攻防、ブチ切れた『大創造主』様との息詰まる逃亡劇、他の『創造主』との宴と詳しいことは省かせてもらうがまさに人外たちの凶宴だったようぢゃな。
こらこら、誰ぢゃ、怪しいなんて言っておるのは(笑)?
それでの、今回こそは彼のお方に会わせてやろうかと思っておったんぢゃが……
タイミングの悪いことに、最近、この世界に悪い風邪がはやっておってな、色々と忙しいらしいのぢゃ、すまんのう。
そこでぢゃ、埋め合わせと言ってはなんぢゃが、覚えとるか?あの愉快なキノコのことを?
……そうぢゃそうぢゃ♪わしのナイスな話術…もとい説得に快く応じて新たな人生の第一歩を踏み出した、あのキノコぢゃ♪
あのキノコ、あの後どうなったか気にはならないかのぉ(ニヤリ)?
……ぬふふふふふ、気になっておったようぢゃの?でわ、早速覗いてみることにしようかのぉ……
機動戦艦ナデシコ
まっしゅる〜むふぉ〜えば〜
encyclopedia
何であたしってば、こんなとこにいるのかしら……
この晴天快晴のあるよき日、キノコは悩みに悩んでいた。
冗談でも比喩でも皮肉でもない、その姿はぶっちゃけて言えば手足が生えたキノコ、人間大のキノコが岩陰で頭を抱えて苦悩に身をよじっている、その光景は普通の感性の人間にとってはシュールすぎる光景である。
このキノコ男、嘗て人間であったときの名をムネタケ・サダアキと言ったりする。
因みに、このキノコが何故悩んでいるかというと――
「それ〜〜(はぁと)」
「「「キキィィーーッッ(哀)」」」
今、全身を黒タイツでピッチリと包んだ――所謂、悪の下っ端戦闘員スタイル――怪しげな男たちがふたりの少女と激しいバトルを繰り広げている。
猛烈な風が、吹き抜ける度に、砂埃を巻き上げる、乾ききった大地を、ふたつの旋風が髪と同じ真紅のスカーフを靡かせ駆けめぐる。
戦況は素人目にも明らかに少女たちが優勢、驚いたことにこのふたりの少女は、たったふたりで三十人はいる全身タイツ男たちを完全に翻弄してのけている。
「くらえ!!」
「「「キピャアーーッッ(痛)」」」
また、ひとり蹴り飛ばされ、後方でふたりほどを巻き込んでスッとんでいく。
ふたりの顔のつくり自体は驚くほど似ている。
燃えるような真紅の髪に鳶色の瞳、身長体格もほぼ同じ、髪型を除けばふたりに大きな差異は全くない、しかしそれでもふたりを見分けることは容易い、何故ならその纏っている雰囲気が決定的に違う、真っ赤な長髪をうなじ辺りで無造作に束ねた少女が研ぎ澄まされた名刀のような厳しさとも呼べるものを人に絶えず与えているのに対して、ストレートの少女はどこかのほほんとした無邪気さを伺うことができるのである。
戦況はそろそろ後半戦、頭数は揃っているのだが、彼女たちが強すぎるのか、はたまた彼らが弱すぎるのか、如何せん相手にすらなっていない、そのやられっぷりは見ていていっそ気持ちが良い。
ふたりの前に戦闘員たちは総崩れ、文字通り千切っては投げ千切っては投げられ、まさに鎧袖一触の有り様。
そして、そうこうしている間に立っている者はひとりのみ。
「ホクちゃん!コンビネーションだよ!」
「……なあ、枝織…やっぱり声に出さないとダメか?(赤面)」
「ダメだよぉ〜キメ台詞は基本なんだよ〜〜(ニヤリ)」
「………(赤面)」
「いくよ!技の枝織とっ!」
「力の北斗の!(赤面)」
「キ、キキィィ………(怯)」(フルフルと首を左右に振っている)
「「ツインライダーキィィィック!!!!!」」
バキイッ!!!
「キキィィーーッッ!!!!!(涙)」(キラン☆〉
哀れ、お星様と化す黒タイツ。
「オホン……さあ、残っているのはお前だけ……ウッ?!」
キノコ男ことムネタケに視線を向けた北斗が凍りついた。
「どうしたのホクちゃ……キャ?!」
突然、固まった北斗にいぶかしみ駆け寄ってきた枝織が声を掛ける、だがムネタケを見た途端北斗と同様に凍りついてしまう。
ああ、それもまたしょうがないことである。
老若男女の皆々様よ、その偉大なる想像力を働かせるのだ!!
そのシルエットからして発禁処分になりそうな巨大なキノコが蠢き、人間の言葉をしゃべっているのだ。
驚いて当然、否、驚かない方がおかしい!!
「だあっ!!何勝手なナレーションいれてんのよ!!」
ああ、早く人間になりたぁい(笑)
「あたしは初めっから人間よぉ!!!」
こめかみらしき部分に青筋を浮かべてキノコが説得力のないことを喚いている。
ああはなりたくないものである、うむ。
「……あんた、覚えてなさいよ(怒)」
さて、なんのことやら?
そんなことよりも、この間ムネタケを見て凍り付いていたふたりの少女がどんな会話をしていたかと言うと――
「ねえ!!ねえねえ!!ホクちゃん、松茸だよ!!」
「コラッ!!
枝織、見るんじゃない!!汚染されてしまったらどうする?」
「ええ?!そうなのっ?!」
「うむ、よくは分からないんだが『不潔』なんだそうだ、零夜がそう言ってた」
「へぇ〜〜そうなんだあ」
ああ、哀れなりムネタケ・サダアキ……
せめてシイタケかエノキならば視覚的にもセーフであったであろうに……
「なんのことよぉぉぉぉぉ!!!!!」
大人の理由です(笑)
「ぐぐぐ……
ホンとに覚えておきなさいよ(怒)」
などと喚き散らしながらムネタケは少女たちに改めて向き直った。
当然のことながら少女たちは警戒する、枝織を背に庇いながら北斗が鋭い視線を目の前のキノコへと飛ばしている。
「ちょ、ちょっと待ってよ、あたしは味方よ、み・か・た」
そんな少女たちの態度にムネタケは慌てて両手を振り、その顔に作り笑いを浮かべる。
「……味方だと?」
心底訝しげな北斗。そして、その北斗の言葉に、ムネタケは芝居がかった調子で頷き言葉を重ねた。
「そう、み・か・た、あなたたちに教えてあげたいことがあるのよ」
そう言いながらムネタケは、武器を持ってないことをアピールするように両腕を大きく広げて見せる。
「ねえねえ、どうするの?ホクちゃん?」
「油断するな枝織、これがヤツの手口かもしれん」
「手口って?」
「ああ、友好的な振りをしておいて、油断したところで胞子を植えつけるんだ」
「胞子?!!」
「そうだ!胞子を植えつけられた者は身体のあちこちから茸が生えてきて最後にはああなってしまうんだゾ!!!」
「ええ?!ああなっちゃうの?!!」
「あんたらヒトを指差してんじゃないわよ(怒)」
それにしても……
「あん?何よ?」
何を考えてるんです?何か企んでるでしょ?
「フッフッフッ……
あの小娘どもにあの魔女どもの存在を教えてやろうと思ってねぇ」
ま、魔女?
「あのエグレ胸とキチガイマッドのことに決まってるでしょうが?」
何をいまさらと言わんばかりの顔でサラリと言い放つムネタケ。
ああ、恐ろしい!!神をも恐れぬ暴言とはこのようなことに違いない!!
「あの小娘どもと魔女どもを噛み合わせて…フッフッフ……」
何を想像しているのか、ひたすら怪しい笑いを浮かべるムネタケ。
知りませんよ、私……
「ふん、あたしがあの女たちに尽くしてやる義理はないわ!!
精々相討ちにでもなってもらうわ、あたしは自由を手に入れてやるわぁ!!!」
私は何も聞いていない、私は何も見なかった。
「オーッホッホッホッホッホ!!!」
「……随分、好き勝手なこと言ってるみたいですね」
騒ぎの舞台から少々離れた岩山の上、そこではボンテージルックに身を包んだみつ編みの女性が、腹這いで双眼鏡を覗き込んでいる。
「ご名答。
流石、メグメグ参謀ね。あのキノコ随分と好き勝手なこといってるわ」
その傍らで、耳にイヤホーンをあてモニターを覗いていた金髪の白衣を引っかけた美人がメグメグの呟きに答えた。
その声は微妙に震え、こめかみには見事な青筋が浮かんでいる。
「……もしかして怒ってます?ドクトルイネス?」
横目でこっそり伺いながら小さく尋ねるメグメグ。
「……私が怒ってるですって?この理性的なこの私が?」
握り締められた手がプルプルと小刻みに震えている。
絶対、怒ってるわねあれわ、内心でそう呟きながら意識を双眼鏡を通しての光景へと集中することにする。
「でも、どうするんです?このままじゃ、わたしたちのことがばれちゃいますよ?」
「フフフフフ……
心配は無用よ、こんなこともあろうかと、そう!!こんなこともあろうかと!!!
ああ!!一度言ってみたかったのよねえ!!この台詞!!」
さっきまでとはうって変わってご機嫌なイネス、すっかりウリャウリャである。
「……あ、あのぉ…イネスさん?」
メグメグ参謀が引き気味ながらも声を掛けた。
「はっ?!……そう言えば話の途中だったわね、これを見てちょうだい」
我に返るイネス。白衣のポケットから掌サイズの長方形のものを取り出す。
「そ、それは?!」
赤と金色のプラスチィックの本体に、十字型のボタンがひとつと丸いボタンがふたつ、更にそれよりもかなり小さな楕円のボタンがふたつ。
「ふ、ふぁ○こん?!!」
「……やぁ〜〜ねぇ、偶々よ偶々(はぁと)」
右手をパタパタと振りながらイネス。
「……そ、それでどうするんですか?これ?」
イネスから受け取ったそれを物珍しげに弄り回しながらメグメグが質問する。
「じゃあ、マイクのスイッチを入れてくれる?」
「マイク?……あっ!これですね」
横にしたり斜めにしたりしていたメグメグだが、イネスの言葉にスピーカー部分の直ぐ下にあるスライド式のスイッチを発見する。
「じゃあ、スイッチを入れますよ」
カチリ。
小さな音とともにマイクが入る。
「……あの、入ったみたいですけど?」
「じゃあ、ちょっといい」
「あ、はい、どうぞ」
メグメグ参謀がその手のコントローラーをイネスに差し出す。
「ありがと、いくわね…
『あ〜あ〜本日は晴天なり!本日は晴天なり!ただいまマイクのテスト中!!』」
マイクに向かって叫ぶイネス。
すると……
「だから、どうするの?聞くの聞かないの?早くハッキリしなさ……
『あ〜あ〜本日は晴天なり!本日は晴天なり!ただいまマイクのテスト中!!』」
唐突にムネタケの口から先ほどのイネスの台詞がそっくりそのまま繰り返される。
「い、今のは?もしかして……」
「フフフフフ……
これぞドクトルイネス製作外部コントロール端末『あやつるくん』よ!!!」
左手を腰に、その名を叫ぶイネス。
「他にも機能があるんですか?」
「勿論」
「「面白いことになりそうです」」
何が起こったのか理解できずに混乱するムネタケを尻目に、顔を見合わせニヤリと笑いあうふたりであった。
い、今のは何なの?ま、まさか何かが仕掛けられてるっていうの?!
自分の身体を見回すムネタケ、だが、怪しいものは何も見つからない。
「フフフフフ……
受信端末は食事に混ぜられたナノマシンを媒介にしてるのよ。
そんなとこ探してもムダムダ」
気のせい!!そうよ、気のせいに決まってるわ!!
……そうよ!兎に角、このふたりを巻き込むのが肝心なのよ!!
どうやら、取り敢えず棚上げすることに成功したらしい。
「どうするの聞くの?聞かないの?ハッキリしなさいよ!!」
ムネタケが八つ当たり気味に怒鳴った。
「……良し、聞くだけは聞こう」
しばし瞑目した北斗だが、ゆっくりと目を開きキッパリと答える。
勿論、緊張は解いていない。
「……生意気ねぇ、ま、いいわ。そもそも、あんたたちが本当に戦うべき相手は別にいるのよ」
もったいぶった口調で語りだすキノコ。
「頃合かしら?メグメグ参謀、準備はいい?(ニヤリ)」
「OKです。いつでもいいですよ(ニヤリ)」
「あたしたちが戦ってるのを見て、手を打って喜んでるのは『ハーハッハッハッハァ、引っかかったわね!!ふたりとも!!』」
「「!!!」」
突然の台詞に後方へ大きく跳ぶ北斗と枝織。
「ナイスよ!!メグメグ参謀!!」
「任せといてください!!こういうの得意なんです!!」
「むうっ!!やはり油断させて胞子を植えつけるハラだったか!!!」
「ええ〜〜枝織、キノコ人間はヤダよぉ!!!」
「こっちだってゴメンだ!!だからさっさと片付けるぞ!!!」
「りょ〜〜かい!!!」
戦闘態勢を取る北斗と枝織。
「『フッフッフッフッフ……
植え付けてやる!!植え付けてやるのよぉ!!!
私のアキトさんに手を出すお邪魔ムシはみぃんな胞子を植え付けてキノコにしてあげるわぁぁぁぁぁ!!!!!』」
「参謀!!メグメグ参謀!!!」
「あっ……
演技に熱が入りすぎちゃいましたね、てへっ」
「……今更、取り繕っても遅いわよ、メグメグ参謀」
「……キノコであっただけでなく変態だったか」
「……アーくんは変態なんかに渡さないよ!!」
ヒートアップするふたりに対して、ムネタケは両手を突き出しその手を大きく振り回している。
……言いたいことは何となく察しがつく、少なくとも『来るなら来なさい!!あんたなんか怖くないわよ、カモォーーン!!』と言ってることではないことは確かだ。
「今よ!←ため→A!!」
「わかりました!!」
ムネタケが腰だめから両手を突き出すような動きをとった。
すると驚いたことに突き出された両の掌から青く輝く茸が勢い良く打ち出される。
「な、なにぃ?!」
驚愕の声をあげる北斗。
ドゥンッ!!!
打ち出されたキノコはタイミングを窺っていた北斗の足元に着弾し小規模な爆発を巻き起こす。
「ワッ?!何か出ましたよ!イネスさん!!」
「フフフフフ……
流石に驚いたようね!!今のが、我が傑作怪人キノコ改が必殺技のひとつ
『エクスプロージョンキノコ』よ!!」
「エ、エクスプロージョンですか?」
「そう!!キノコ男の生命力を強制的に削ってエネルギーに変換、衝撃波として放つの
ま、三回も打てば、壱週間は地獄の激痛に身動きひとつできなくなるのがネックだけどね」
「……微妙につかえませんね」
「ま、ね、所詮はキノコだし」
「そうですね、所詮はキノコですしね」
「くっ!!油断はできんという訳か!!!」
「ホクちゃん!!大丈夫なの?!」
「ああ!!大丈夫だ!!それよりいくぞ!!枝織!!」
「うん!!あれだね!!」
アイコンタクトを交わすふたりの手に不思議な光の剣が生まれる。
すると、何処からともなく白衣の女性が一陣の風を巻き起こして現れた。
「説明するわね!!
あの光の剣はD・F・S、その威力はこの世におけるありとあらゆるものを両断するほどの切れ味を誇るマジックウェポンなの!!
噂ではこの世界を創造した萌えを司る存在『大魔王』の煩悩と祝福を受けてるとも言われてるわ!!
そのエネルギー源については全くの不明、良い子の皆は『愛と勇気と友情』の力ってことで納得してしょうだいね♪
じゃ!!」
謎の女性は話すだけ話すと影も形もなく去っていった。
「「「………」」」
「ホクちゃん…今の……」
「言うな……」
「あれっ?何処行ってたんです?」
「ふっ……血が騒いでいけないわ」
「……気を取り直して…いくぞ!!」
「う、うん!!」
「「羅刹招来!!!!!」」
ふたりの言葉にまるで本来の力を解放するかのようにD・F・Sの刀身が伸び、その輝きが一段と増す。
「あ、なんだかヤバそうですよイネスさん」
「あら、ホント」
「守備系の技は何かないんですか?」
「う〜〜ん、十字キーを逆に入れとけば……」
「まぢですか……」
「おおマジ……」
「「必殺蛇王牙斬!!!!!」」
ヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァ!!!!!
北斗と枝織が放った二本の強力な光の奔流が怪人キノコ男改を一瞬で呑みこむ。
「私の名前はムネタケよぉぉぉぉぉぉぉ………!!!!!」
チュドーーォォォォォォォン!!!!!
大爆発。
「あ〜〜あ、やられちゃいましたよ、イネスさん」
「残念ねぇ、他にも対空技の『マッシュルームタイフーン』や超必殺の『茸乱舞』とか色々あったのに」
「じゃあ、撤収しますか?」
「ええ、でもその前に、メグメグ参謀、最終プログラムよ」
「最終プログラムですか?」
「そうよ、↑↑↓↓←→←→BAセレクト、お願い」
「は〜〜い」
「な、なんだ?」
「み、見てホクちゃん!!」
枝織が指差した先、今だ煙の立ち上るそこに散らばっていたキノコの破片、もとい嘗てキノコ男だったものから放たれている緑の光。
そして――
「うわぁ……」
「非常識な……」
光がおさまった其処に立っていたのは全長十数メートルにもなる巨大キノコ男。
「何故?何?ホワァイ?」
頭を抱えてツイストするキノコ、恐らく自分の身に何が起こったのか頭が追いついていかないのだろう。
「ふ、ふふふ……
こ、こうなったら、あなたたちも道連れよぉ」
そう叫びながら、その右腕を振り下ろす。
ドオォン!!!
物凄い衝撃に地面が波打つ。
「チッ!舞歌!舞歌!」
振り下ろされた拳を、後ろに飛んで避けた北斗が、右手首に装着されたブレスレットに口を近づけて叫ぶ。
『なぁ〜〜にぃ?』
ブレスレットから明るい声が返ってくる。
「『なぁ〜〜にぃ?』じゃない!!キノコが巨大化したぞ!!」
『分かってるわ、大丈夫、今向かってる最中よ』
「どれくらいでこれる?」
『大丈夫、もう到着するから』
「本当だな?」
『本当よ、じゃ、通信を一端切るわね』
「あ!おい、コラ!舞歌!」
しかし、もう声は返ってこない。
「どう?ホクちゃん?」
身軽な動きでムネタケを引きつけていた枝織が北斗の下に駆け戻ってくる。
「……直ぐ来るらしい」
「直ぐ?」
「直ぐだ」
ふたりが何気なく空を仰ぐ。
その時だった。
ゴウンゴウンゴウンゴウンゴウン
雲を突き破って、白い船が轟音を辺りに響かせながら現れる。
「ふたりとも待たせたわね!!
機動戦艦シャクヤク、ただ今到着よ!!!」
外部スピーカーから先ほどの女性の声が流れる。
「……舞歌おね〜ちゃん狙ってたよね」
「……たぶんな」
機動戦艦シャクヤクキャプテン東舞歌、己の趣味に仕事を挟み込む女性である。
「千沙!!シャクヤクファイターモード!!」
シャクヤクのブリッジで気合のこもった女性の声が響き渡った。
聞くもの全員を鼓舞する凛とした気迫のこもった声。
「……了解」
だが、その声に応えた声は、いささかお疲れのようである。
「どうしたの?千沙?そんな疲れたような声出しちゃって?」
「……いいえ、何でもありません、舞歌様」
そう言いながらも実に恨めしげな視線を彼女に向ける千沙。
「千沙?言いたいことがあったハッキリ言って頂戴?」
「……なら言わせてもらいますけど、ファイターモードって何のことです?」
「あ、あれ?言ってなかったっけ?(汗)」
「わたしは何も聞いてません!!」
「え、え〜〜と……(大汗)
説明するよりもその目で実際に見た方が早いわよね
飛厘、お願い」
「わかりました、ファイターモードスタート」
「ちょ、ちょっと!飛厘!舞歌様、お話はまだ……」
ゴゴゴゴゴ……
千沙の言葉を最後まで言わせることなくシャクヤク全体を振動が包む。
シャクヤクの船体が直立、そして後部と両サイド各パーツがスライドし巨大な人型に変形を遂げていく。
「嘘でしょ……?」
ムネタケが呆れたような声を出した。
そこに浮かんでいるのは、巨大化したムネタケにも勝るとも劣らない純白の巨神の雄姿。
「あ、ああ……
何時の間にこんな仕掛けを……」
千沙が嘆きの声をあげる。
「いくわよぉターゲットは前方の巨大キノコ!!!」
舞歌が吼える。
「了解!!ターゲット確認!!」
「ターゲット確認!!ロックしました!!!」
「エネルギー充填開始!!!」
「60…80…100……
充填率120%を突破しました!!!」
「システムオールグリーン!!いつでもいけます!!!」
巨神の右腕に備え付けられた砲身がゆっくりとムネタケを捉える。
「うわあぁぁぁぁぁ」
ヤケになったかムネタケが突っ込んでくる。
「波動ほ……もとい、グラビティブラスト発射ァァァ!!!!!」
舞歌の右手が勢い良く振り下ろされる。
漆黒の光は突進するムネタケの姿を飲み込み、その存在を無に返したのであった。
悪は滅びた、しかし、いつ次なるキノコが生えてくる、もとい表れるやも知れない。
その日の為に、ガンバレホクちゃん、ファイトだしおりん!!!
明日のアキトの貞操はふたりの双肩にかかっている!!!
某所。
ここは日本の何処かの、地下深くに密かに造られた秘密基地である。
その所謂、謁見の間では審問会の真最中なのである。
「しくじったようですね……」
薄暗い室内、逆光になってる為に顔は分からないが、段上の上に設置された玉座で小柄な人影がその前でひざまづく人物に声を投げかけた。
誰かなぁ?金色の瞳とかツインテールとか言ってるのは?
ダメだぞぉ根拠のない噂を口にしちゃあ、そんなことを言ってると夜道を歩けなくなっちゃうぞぉ(笑)
その鈴を転がすような声は絶対零度の厳しさを持って室内の温度を確実に下げる。
「すみませんでしたっ!!!」
コメツキバッタのごとく額を地面にこすりつけているのは前線司令官の暗黒大帝ハーリーその人。
「で、でも、今回のはどっちかって言ったらイネスさんとメグミさんの独断専行で、僕に責任は……」
「ハーリー君には責任は全くないと?」
冷たいその言葉にハーリーが凍りつく。
「配下の失態は上司の責任です」
そう言うと、謎の人影は横の紐に手をかける。
「おしおきです」
そして、無造作に引っ張った。
ハーリーが逃げるよりも早くガコンという音がして落とし穴がその口を開ける。
「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
吸い込まれるように飲み込まれるハーリー。
「うわあああ!!!な、何だ?!このぬるぬるした生き物は、こんなの見たことが…
うわ!やめろ!触手が身体に…ひぃぃ!どうか!どうかお許しぉぉぉ!!!こいつら僕に何か植えつけようと……
きゃああああああああああ……」
そこで床の穴が塞がった。
「イネスさん」
「はい」
傍らに控えていたドクトルイネスが返事をする。
「卵生なんですか?」
何のことでしょう?
「いいえ、胎生なんで、授かるんなら恐らく赤ちゃんかと……」
そ、それではもしかして……
「後でお赤飯ですね」
ああ…ハーリー哀れ…おもわず涙が……
「なら、代わってみますか?」
いいえ、遠慮します(キッパリ)。
「懸命な判断です、賢いヒトは好きですよ」
お褒めに預かり光栄にございます。
「ドクトルイネス」
「はい」
「準備の方はどうなっていますか?」
「ご安心を、今回のデータを参考に更なる改良を加えた量産キノコ男改を続々と生産しています」
「流石はイネスさんですね。
世界征服など片手仕事にチョチョイのチョイ、肝心なことはあのアキトさんを我々の手に入れることなのです!!」
謎の女性の静かだが力の入った宣言にイネスがウンウンと頷いている。
ナポレオンやヒトラーが聞いたら涙を流すに違いない。
「そのためには、キノコにはまだまだ役に立ってもらいます(ニヤリ)」
「その通りですとも(ニヤリ)」
怪人キノコ男改ことムネタケ・サダアキ、彼が再び光の下にででくる日は近いのかもしれない。
どうも皆さん、久々のencyclopediaです。
新年早々から電波ネタと言うのもあれとは思いましたが、以前掲示板で書くようなことを言ってしまったこともあり、相成った次第であります。
取り敢えず、この作品は「まっしゅる〜むぐろ〜り〜」の続編になります、まだ読んでないと言う方がおりましたら、是非一読していただけたら恩の字です。
それでは拙い文ですが今年もヨロシクお願いします!!
では!!
それと少し前に猛威をふるったウィルスの影響かメールの受信ができません、もし感想を送ったのに返事がこない、と言う方がおりましたら、掲示板の方にお願いします、確認次第すぐ返事を書き込ませてもらいますのでご勘弁ください、それでは改めて。
では!!!
代理人の感想
・・・・つまり、永遠にコキ使われる
と言う意味だったんでしょうかあのタイトル(爆)。
哀れなりムネタケ。
他の創造主様の所じゃ大活躍したり真人間になったりと
いい目を見させてもらってる(こともある)のにねぇ(笑)。