投稿第94段
「蒸気王国の王女」
「Shape up,Shape up
愛のーちからー
愛が力にーなるー♪」
ひなた荘で、昨夜カラオケ大会が行われていた。
そこで、キツネは随分と古い歌を歌っていた(とはいえ、最近はあらゆるものが、二百年ほど昔のものがブームだが)。
ちなみに、彼女が唱っていたのは『Shape
up Love』という、『Shape
upガールズ』なるグループが歌っていた歌だ。
ついでに、今のはそのサビ部分。
「アキト、アンタは歌わないの?」
となるに聴かれ、
「知ってる歌、あんまりないんだよ」
苦笑しながら答えた。
「俺の友だちが好きだったアニメの歌は、なんか気が付いたら覚えちゃったけどね」
「ちなみに、その歌って?」
「ゲキ・ガンガー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
その後、結局、
『捜し物は何ですか〜♪ 見付けにくいものですか〜♪
鞄の中も、机の中も、探したけれど見つからないのに♪』
それから、
『サーバイバルダンス♪
サーバイバルダーンス♪
イェーイェイェー♪
ケンカばかりだよー、あの頃もー、今だーぁって♪』
とか歌ったりした。
その歌は上手く(キツネ曰く、『プロになれるんやないか?!』)、大好評だったことをここに記す。
・・・・・・なお、その歌はフィーリアとデュエットだった。
なぜ彼女が知っていたのかは不明である。
蒸気王国の王女
Presented By E.T
Tenth Story:彼らの名前は
〜Name Is ”jacketedbullet”〜
・・・・・・あれから、2日が過ぎた。
その間、フィーリアはアキトの側を片時も離れることはなかった。
そして今、フィーリアとアキトを引き離すことを諦めたなる共々佐ゼミに向かっていた。
なお、今アキトの左手はフィーリアの右手と繋がれている。
・・・・・・♪・・・・・・♪
♪・・・♪〜〜〜・・・・・・♪
ふと、どこからか音楽が聞こえてきた。
路上演奏らしいそのギターとキーボードの音は、路上演奏のレベルをかなり上回っていた。
だが、悲しいかな、少々『歌唱力』というものが欠けているのが欠点か。
暫く歩いていくと、車の通りが少な目の大通の一角。
某大型デパート前の植え込み前で、二人の男女がそれぞれ男性はギター、女声がキーボードを演奏していた。
男性が歌を歌い、時々女性がバックコーラス、それからハモリを入れる。
2人の前に置いてある開いたギターケースの中には、百円玉と十円玉がかなりあった。
三、四枚お札(多分全部千円札)もある。
その2人を見るとは無しに見ていたアキトに、
「あの二人、路上演奏にしては上手いわね」
となるが声を掛けた。
「ねえ、お兄ちゃん」
「ん? なに、フィーリアちゃん」
フィーリアが立ち止まり、アキトの手を握ったまま胸の前で左手とを組む。
「あのね、この歌、もう少し聴いてたいの。
・・・・・・だめ?」
顔を、下から覗き込むようにする。
その上目遣いが、アキトのハートにクリーンヒット!
「ね、ねぇなるちゃん。
授業始まるまで、どれくらい有ったっけ?」
「ーーー え?」
英単語集を見ながら歩いていた彼女は、突然話を振られて、目をパチクリとさせた。
それで質問の意味を理解し、腕時計を見る。
「え・・・・・・と、そうね、このペースで行くと大体15分掛かるから・・・・・・。
20分ぐらいかしら?
今日、少し早めに出たし」
「・・・・・・だって」
20分ほど、その二人組の曲を聴くことになった。
曲は、基本的にいわゆる『バンドもの』。
ドラムをひたすら叩き続けるような曲を、ギターとキーボードだけで表現してしまう。
完全に表現しきれるわけはもちろん無いが、それでも本来の曲に、そう劣ってはいない。
それは、二人の技術もさることながら2つの楽器だけで表現できるようにされた、アレンジのレベルの高さもあった。
強く、優しく。
荒々しく、それでいて繊細に。
そう言った相反するものを織り込んだ曲。
その歌はラストのサビに入っていたらしく、三人が立ち止まってから一分もせずに終わった。
それから、また新しい曲を歌い出す。
およそ15分後。
曲が終わった。
周りの何人かが拍手をし、百円玉や五百円玉を放り投げる。
フィーリアは地面に座り込み、手を両頬に当てていた。
男の方が熱心に二人を見ていたフィーリアに声を掛けた。
「さっきっから熱心に見てくれてるね」
「うん。 だって、すっごい上手なんだもん」
フィーリアが思ったことを、そのまま口にする。
その短く簡単な言葉に込められた想いを感じ、青年は
「ありがとう」 と微笑みながら言った。
だが、後ろの女性は、溜息を付きながら
「でも、ちょっと私らじゃ歌唱力が無いのよねー。
どっかに良いヴォーカルいないかしら?」
などと呟いていた。
「アキト、ヴォーカルやれば?
結構、ううん、かなり上手かったじゃない、歌」
なるに囁きかけられ、「目立ちたくないんだよ」と答えた。
「ところで、お兄さん達デビューはしないの?
私、あんまり音楽詳しくないけど、十分いけそうだと思うけど・・・・・・?」
苦笑して、青年はフィーリアに答えた。
「僕たちもそう思ったんだけど、いざそれでレコード会社に持ち込んだりしてもね。
『良いヴォーカルを連れてこい』って追い返されちゃうんだよね」
女性が、それに同意するように頭をブンブンと前後に振った。
「あ、でも、逆に言えばいいヴォーカルさえ見つかればデビューできそうだからさ、その時はぜひ聞いてね。
バンド名は『jacketed
bullet』って言うから」
女性が、付け足すように言う。
「あ、それと私の名前は紅葉。
仲嶋 紅葉(なかじま もみじ)。
それと、こっちは楢 三千年(なら
みちとし)。
普段はあんまり喋らないんだけど、今日はどうしたかね〜、この男は」
「・・・別に良いだろ。
俺が喋ったって、喋らなくたって」
憮然として三千年青年が紅葉嬢に言葉を返す。
「・・・・・・・あ!」
ふと、時計を見たなるが声をあげた。
「どうしたの?」
「後十分で授業始まっちゃう!
急がなくちゃ!!」
「え! それは大変だ!!
・・・・・・と言うわけで、オレたちはここで。
また明日にでも、曲聴かせてくださいね」
「うん、じゃあ、明日もこれぐらいの時間にここで演奏してるから。
・・・いいよね?」
「ああ、構わないよ」
「それじゃあ、さようなら。
また、明日です」
と、フィーリアがちょこんと頭を下げる。
それから三人は、『急げ急げ、遅刻だ〜〜っ!!』などと言いながら、佐ゼミに向かって駆け出した。
その三人の背中を見ながら、三千年が呟いた。
「なあ、紅葉。
何となく、だけどさ。
あの男と関わり合いになりそうな気がするんだ」
「なに?あの大きい方の女の子が言ってたみたいに、ウチのヴォーカルになるとか?」
三千年はその紅葉の言葉を否定しなかった。
その日、佐ゼミでは取り立てて書くことがないほど平穏な時間が過ぎた。
同日 午後12時34分
お昼のニュース。
それが流れているとき、ひなた荘に今いる唯一の人物、紺野みつねはぐっすりと眠っていた。
昼食の、アキトの作り置きの卵焼きや炒め物を暖め、後は食パンを食べ、そして午睡。
・・・・・・牛になっても知らないぞ!
そして、肝心なのがこのニュース。
『・・・・・・先日より、大がかりなテロの渦中にあったブリタニア王国について、新しい情報が入りました。
“蒸気王国”との異名を取るこの王国に、先日、219×年○月▽日、王宮がテロリストによって破壊されました。
その際行方不明となっていた国王と王妃が発見されました。
国王と王妃は脱出用の地下通路を通り抜け、ブリタニア王国の辺境地域へと脱出に成功したとのことです。
ですが、王女は護衛の者達と共に地下通路へ国王と王妃に遅れ入った後、その行方は未だ掴めていません』
ニュースキャスターがそう言ったとき、画面には少女のバストアップの写真が現れた。
セミロングの、薄桃色の髪。
黄色のヘアバンド。
15、6歳の、肌の白い、人形のように可愛い少女だった。
それは・・・・・・・・・
『フィーリア王女の安否が気遣われます。
政府は、自衛隊を派遣し、王女の捜索を支援する方向で話し合いを進めており・・・・・・』
・・・・・・・・・フィーリア、その人だった。
後書き
以降への伏線は張り終えた。
・・・・・・・・・筈だ。
問題は、その伏線が見え見えすぎること。
その一点に尽きる。
・・・・・・・・・と言うわけで問題。
楢 三千年青年と、仲嶋 紅葉嬢。
とあるパソげーの登場キャラなのですが・・・・・・
第1問!
そのゲームの題名は?!
第2問!
アキトぶらり旅で彼らが(一応)登場する予定です。
では、その時のアキトぶらり旅の題名は!?(『浦島アキトぶらり旅 in○○』という形で答えてください)
書くことがないので、とりあえずこの辺で。
代理人の感想
短すぎて書けません。
もう少し、話としてまとめて投稿してもらえるといいんですが。
新聞連載だって短いなりにその回の中でちゃんと起承転結をつけているんですよ?