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         デシジョン ・ メイキング
MENU.2[DECISION MAKING]





 ミナトのおかげで、白鳥家は大変なことになっていた。

 被害が白鳥家だけだったのが不思議なほどなのだが・・・・・・

 

「まあ、白鳥さん宅どうしたんですの?」

「何でも突然、家が爆発したみたいですよ」

「ガスかしらねェ。

 他の家まで巻き込まれなかったから良かったけど・・・・・・こまるわァ・・・・・・」

「白鳥さん、これからどうするのかしらね」

「何でも両親は別居中で父親は海外へ出張中でしょ」

「兄弟二人だけですものねぇ・・・・・・」

「大変ねェ・・・・・・」

 ・・・・・・近所の奥様方の会話である・・・・・・・・・

 

 

 そして九十九とアキトの兄弟&ミナト、ルリはというと・・・・・・

「兄さん ! !」

「ん・・・・・・明人か・・・・・・」

 呆然と家(だったもの)を見ている九十九に明人が荒々しく声をかける。

「どーしてあのときすぐトランクを返さなかったのさ!

 見てよ、家がメチャメチャじゃないかぁ ! !」

「お前・・・・・・あの状況でトランク返せたと思うか・・・・・・・・・?」

 明人はその九十九の言葉を聞いてなどおらず、

「父さんが帰ってきたらなんて言えばいいんだよ ! !」

「・・・・・・んー。

 まぁいいじゃないか、これはこれで楽しそうじゃないか」

「・・・・・・・・・兄さん、性格変わってない?」

「はっはっはっはっは。

 この状況じゃ、無理やりにでも明るく振る舞うしかないじゃないか、明人。
 
 ポジティブポジティブ、ポジティブね ! !」
 
「・・・・・・・・・・・・」

 明人は思った。

「(兄さんが壊れた・・・!)」
 
 嗚呼 ! 九十九は元に戻るのか ! ?
 
「とりあえず今日は仕事休んで仮のアパートとか探すか」

「兄さんはそれでもいいかもしれないけど、オレは学校に行かなくちゃならないし・・・・・・」

「もう昼だ。学校なんか休め休め。そしてお前もアパート探しを手伝え」

「で、でも・・・・・・じゃあ、もし仮のアパートが見つからなかったらどーするんだ?」
 
「その時はキャンプだ!
 
 仕事で慣れてるからな!
 
 楽しいぞぉ ! !」 ←この作品では那智役の九十九は軍人だ。一応。
 
「・・・・・・・・・(本当に壊れたな、兄さん。まるで父さんみたいだ)

 とにかく、オレは学校に行くからね」

 ジャリ・・・

 明人が学校に行こうとしたとき、服を着たルリとミナトが現れた。

「あ・・・・・・オレの服で大丈夫だった?」

「裸のままじゃまずいですし」

「別に私はあのままでも良かったけどね」

「私は嫌です!裸のままなんて」

「冗談よ、ルリルリ」

 そんな会話をするミナトとルリを見て、九十九が言った。

「おい明人、あのミナトさんという女性の着ているのは・・・・・・」

「うん。母さんのさ・・・・・・

 メチャメチャになってるクローゼットの中に一着だけ有ったんだ・・・・・・

 俺の服じゃ小さいし、兄さんの服だとおっきすぎるから、仕方がないよ」

「いいのか?明人」

 そんな会話をしている二人を後ろに、ルリは何かの写真を見付けた。

「? これは何でしょう」

 写真には太陽の塔をバックに、九十九、明人、そしてその両親が写っていた。

 まだ赤ん坊だった明人は母の胸に抱かれ、九十九は、九十九そっくりな父親の前でVサインをしている。

「これは・・・・・・

 あの人達の昔のビジョンみたいね」

「・・・・・・・・・」

 ミナトの言葉に、ルリはじっとその写真を見つめた。



「そっ・・・・・・そういえば兄さん!お金は?

 アパート探すって言ってたけど、お金やカードは大丈夫なの?」

「え」

「ひょっとして、あの中じゃ・・・・・・!」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 しばしの沈黙。

「飯ゴウで炊く飯はうまいんだぞ、明人 ! !
 
 食ったことないだろォ ! !」
 
 開き直んなよ。

「勘弁してくれ・・・・・・・・・(号泣)」

 

 

「なぁに?捜し物?」

「ふーん」

「ようするに、このガレキの下からそのカードとかを探せばいいんですね」

「簡単に言ってくれますね。

 出来るんですか?」

「できるわよ」

 九十九の言葉に、ミナトはそう断言した。


 
 バクン
 
 例のチェンバーケースを開け、ディスクを取り出すミナト。

「スキャニスタと・・・・・・・・・ブースターね」
 
「あのディスクだ・・・・・・」
 
「ああ」
 
「アレはコームといいます。

 あのディスクがある限り、私たちに(基本的に)不可能はありません」

「不可能はないだと ! ?」

                                              カシュッ
 
                  カシュッ
 
「コネクト ! !」

                         キュウウウウウウウウウウ

 ミナトが頭のスリットにディスクを入れ、「コネクト」と言うと、何やら音がし、ミナトを中心とし、光が生まれ始めた。

「デシジョンメイキング ! !」

 なぜか目を閉じてそう言うミナトの髪が、栗色から白へと変わりはじめる。

「髪の色が・・・白く変わった ! ?」

「何か・・・・・・こう、体つきも変わったような気がするんだが・・・・・・・・・」

 髪の毛が真っ白白になったミナトが目を開く。

 少しばかり、辺りを見まわすミナト。

「あった・・・・・・」

 彼女は、ガレキの下を透視したのだ。

「この下ね」

 カードのある場所の真上に立つと、彼女はそこを殴った。グーで。
 
 ドゴン
 
 ズヴアアァァァァァ 
 
 ガレキが舞い上がった。

 高さ二十メートル以上。

 それは、白鳥家のある練馬区のほぼ全域から確認できたという。

「ごほっごほっ、な、なんという煙だっ!」

 九十九が悪態を付く。

 そしてだんだんと煙が収まって・・・・・・

「ありゃ」

「!」

 煙の中心地にいたミナトが、何故かほんの少しの汚れもなく・・・・・・

 悠然と、カードを右手人差し指と中指の間に挟んで立っていた。

「あったわよ、カード」

「あ!」

「やるじゃないか!」

 だが、次の瞬間。

 ぱきゃ

 澄んだ音を立てて・・・・・・

 カードが破砕した。

 それを見た九十九と明人が止まった。

 さらに、その心臓も。

 その九十九と明人を見たルリが微笑む。

「兄さんのバカ ! ! だから父さんに通帳と印鑑まで預けることないって言ったのに ! !

 俺はもう学校へ行く ! ! あとは兄さん勝手にやってくれ ! !」

 いち早く復活した明人が九十九にそう怒鳴り散らし、何故か無事だった鞄を持って学校へと走って行ってしまった。

「・・・・・・今更行ったって、もう学校終わってるんじゃないのか?」

 明人がその九十九の言葉に気が付くことはなかった。

「なあ、そこのお二方 ! !」

 明後日の方向を向いていたミナトとルリの二人が九十九の方を向く。

「一体この有様をどうしてくれるんですか!

 不可能はない? だったら今すぐこの家を元に戻して見せてください!」

「なんですって ! ?

 もういっぺん言ってみなさい ! !」

「いいでしょう。

 家も直せないのに不可能は無いなどと言わないで頂きたい!」

「このオォォ」

 ミナトはだいぶ苛ついたようだ。

 スパークを纏っている。

「(行けるか ! ?)」 

 ミナトは新たなコームをスリットに入れた。

「ちょ・・・・・・ちょっとミナトさん!それは ! !」

「(さあ、どうする ! ?)」

「ウリバタケさん ! ! ジュン君 ! ! 来なさい ! !」

「待って下さい!ミナトさん ! !」

「邪魔しないで、ルリルリ ! !」

「私がやりますから!

 “ベーシック”を使ってウリバタケさん達を呼ぶなんて、どういうつもりですか!」

「無に帰してあげようと思ったに決まってるでしょ、ルリルリ」

 ミナトの言葉に溜息を付くルリ。

「アーキティクチャー」

 ルリが新しいコームを取り出し、スリットに入れた。

「とにかく、ここは私がやりますから。

 デシジョンメイキング」

 

 

 ピタッ

 明人は、学校へと進む足を止めた。

 何か、とてつもなく嫌な予感がしたのだ。

「やっぱり・・・・・・

 (家に戻ろう! 暴走した兄さんは何をするか分からない!)」

 人間、嫌な予感というモノはとにもかくにもよくあたるもので・・・・・・・・・

 

 

 コームをセットしたルリの銀色の髪は、そのルリの身長よりも遥かに長くなっていた。

「か、髪があんなに・・・・・・」

 ルリを中心に光の柱が生まれる。

 そして、それに呼応するかのように、ガレキが浮かび、だんだん建物を形作り始める。

「おーっ、どんどん形になっていく!」

 そして、建物が完成に近付いていく。

「何・・・・・・ ? ?」

 最後のひとかけらが建物に吸収され・・・・・・

 そこに残されたモノは。

「な・・・・・・

 なんだこれは? 一体これはどういうことなんですか ! !」

「?」

 ルリは不思議そうな顔をし、ミナトはその九十九を見てくすくすと笑った。

「何言ってるんですか?

 あなたの望み通り、家を直してあげたのに・・・・・・ ! !」

「しっ・・・・・・しかしですねェ ! !」

 と、言いかけて、しばし黙考。

「・・・・・・・・・」

 ルリは、次の九十九のセリフを聞いてこける。

「まあ、これはこれでいいか!

 考えるのもめんどくさいし。

 (でも、明人が見たらなんて言うだろうか?

 「なんだよこれェ ! !」とか言いそうだなぁ・・・・・・)」

「どお?これで私たちの力が分かったでしょ?」

 髪を掻き上げながら言うミナト。

「それは、まあ・・・・・・

 しかし、その力を一体何に使うんですか?」

「ふふ・・・・・・」

 妖艶に笑うミナト。

「それをあなたが知ってどうするの?九十九さん」

「やることの如何によっては、協力しますよ。

 最近、単調な生活の繰り返しで退屈してましたし。
 
 さあ、教えてください!あなた方の目的を ! !」
 
「ふふ・・・

 破壊と・・・・・・」

「創造です」

「はあ?」
 
 帰ってきたアキト。

 その予感は的中していた。
 
「あーっ!何だよこれぇ ! !兄さん ! ! !」
 
 ギックゥ

「何言ってるんだ、明人!

 なかなかいいじゃないか!」

「冗談じゃないよ!」
 
「住めば都と言うではないか。なぁ、明人 ! ! !」
 
「・・・・・・・・・!」

「・・・・・・・・・!」

 不毛な言い合いが続く・・・・・・・・・

 

 

「まあ、白鳥さん宅どうしたんですの?」

「何でも両親は別居中で、父親は海外に出張中でしょ」

「兄弟二人だけですものねェ」

「大変ねェ」





 白鳥家宅、別名「練馬の太陽の塔」が夕日に赤く染まる・・・・・・・・・





 本星への報告書 M−2

 ふっ、壊れ九十九って楽しいや♪

 執筆時間3時間ぐらいの割にはしっかりと書けてるし、壊れ九十九は楽しいし、壊れかけミナトも結構いいし(といっても、某スピード狂の壊れミナトさんほどではないが)言うこと無しだネ!

 ところで皆さん、太陽の塔って分かります?

 分かりますよね。当然。

 万が一知らない場合は、コンパイラの一巻や、適当な資料で調べてください。

 それではさようなら。
本星への報告書 M−2 終

 

 

 

代理人の感想

 

いや、「分かりますよね、当然」ってほどメジャーかどうかは微妙だと思いますねぇ(苦笑)。

三十年前や今でも立ってるそれの近辺の方々ならともかく。

まあ「大阪万博のシンボル」とか「岡本太郎の一番有名な作品」と言えば何となくわかるでしょうし、

写真なり絵なりを見れば恐らく一発だとは思いますが。

 

牙のような湾曲した円錐形の塔を胴体に、丸く、半分に塗り分けられた奇妙な顔(のような物)、

左右に更に同型の牙状のものが両手のごとく張り出す、前衛芸術のシンボル。

あれが、「太陽の塔」です。