Dはさっさとサレナに乗って戦闘をしていた。

 ドドドドドドドドドド

 ・・・・・・などという音は宇宙空間だから聞こえないが、Dはサレナ(修復完了)の肩部(肩たたきのときの『肩』)に装備されているマシンキャノンをバッタとジョロを目がけ撃ちまくった。

 それを食らったバッタとジョロは火を噴き(考えてみれば、空気がないのにどうして燃えるんだ?)、爆発した。

 バッタもジョロもディストーションフィールドを展開しているが、サレナのマシンキャノンの前では紙のごとし、だ。

 はっきり言って、グラビティ・ライフル(長いから今度からG・ライフルと略す)を使えばほんの三,四分で片が付くが、それではみんなが自分に頼り切りになってしまうことが考えられるので、作ってもらったはいいが、出来るだけ使いたくなかった。

 今Dがしているのは、はっきり言えば暇つぶしと同じである。

 Dは、艦隊に一つのメッセージを送った。

『撤退せよ』と。 正確には乗員に対して、だが。

 尤も、ナデシコクルー(サレナのスペックを知っている一部を除く)はいくらDが強いからとはいえ、この数相手では分が悪いと考えていた。

 もちろん、パイロットたちもだ。

 いくら威力のある武器を装備していても、それを放てなければ(たとえば、グラビティウェイブが発射まで僅かなブランクがあるから撃てない、など)意味がないからである。

 だからパイロットたちは自己記録を上回る速度でDの援軍に向かった。

「待たせたな! D!」

「お〜い、援軍だよ〜」

「・・・・ふっ・・・・・・」

「お待たせしました、Dさん」

「だ、大丈夫ですか!?Dさん!」

 と、このように。

 因みにヤマダは医療室で爆睡している。




 

機動戦艦ナデシコ 

TWIN DE アキト

 


第六話 『運命の選択』みたいな





 ヒカル、リョーコがディストーションフィールドを纏ったエステでバッタの群(十匹(機?)程)に突っ込む。

 次々と爆発し、ただの屑鉄と化する鋼鉄の虫たち。

 その爆発はあたかも・・・・・・

『ほ〜ら、お花畑〜〜』

 というヒカルの言葉の通り、まるで花畑(っていうか花火)。

 リョーコはと言うと、

【おーら、おらおらおらおらおらおらおらおら!!】

 とかいう訳の分からない掛け声と共に命無き虫を屠る。

[あそんでるとやられるよっ]

 シリアスモード、イズミ。

 ただ、その後ワケの分からん寒いことを言うのが、やっぱりイズミだな〜。

【ああ〜〜、変なヤツ変なヤツ変なヤツ〜〜!!】 

 イズミのセリフを聞いて、その言葉に感想を言いつつ(叫びつつ)バッタの群に突っ込むリョーコ。

 また十匹ほどのバッタが火の玉に変わる。

 その全てを聞いていたアキトは

「なんだよ! みんな楽しそうじゃないか!

 どうしてだよ!!」

〔どうしたんですか? テンカワさん〕

「どうして生きるか死ぬかって時にあんなに楽しそうにしてられるんだ?」

{慣れだな。 オレも昔はお前と同じだった。

 だけど、いつの間にかそうじゃなくなってた}

「そういうもんなのか?」

{人によるな。

 さて、お喋りはこの辺にして、行くぞ! アキト}



 暫く経って、

「くそ〜〜、堅て〜」

 戦艦に攻撃を仕掛けて弾かれる三人娘。

『うおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 続いて、それ(三人娘が弾かれるとこ)を見ていたはずのアキトもその戦艦に突撃する。

『くそ〜、フィールドかぁ』

{・・・お前はリョーコちゃんたちの攻撃を見ていなかったのか?}

『え? 何のこと?』

{(オレもああだったのかな・・・・・・ってゆーかそうだったんだろうな。 同一人物だし)}

『あ、そうだ!』

 再びアキトが戦艦に突撃を敢行する。

 ただ、先ほどと違うところが二つある。

 一つは距離を取ったこと。

 もう一つはナイフ(なんて名前だっけ?「イミディエッドナイフ」でいいんだっけ?それとも、それは他の作品の武器だっけ?)を装備したこと。

『行けええぇぇぇぇぇぇぇ!』

「お、おい何スンだ!?」

【まさか特攻ぉ!?】

『うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ』

 アキト機に殺到するバッタたち。

 考えてみれば、一直線に飛んでいるだけなのだから、普通はいともあっさり撃墜されてしまう。

 そのことに気づいたDは、ちょっと背筋が冷たくなった。

{(よく死ななかったな・・・・・・俺)}

 バッタたちが突如爆発した。

 アキトの行動に驚いて動きを止めている(何で落とされなかったんだろう、そういえば)リョーコたちを後目(「しりめ」と読む)に、Dとイツキが撃ち落としたのだ。

{リョーコちゃん、ヒカルちゃん、イズミさん、何をボケッとしている!}

〔戦場での隙は即刻命に関わります〕

「お、おう・・・」

 アキト機が戦艦に突っ込んだ。

 ディストーションフィールドがその攻撃を押し戻そうとする。

 しかし、加速の付いた攻撃はそう簡単に弾かれることはなかった。

 そしてついに、

『ゲキガン・シュウウウウウウウットオォォォ!!』

 突き出したナイフがディストーションフィールド越しに戦艦の装甲を切り裂いた。

 一瞬間を空けて、切り裂かれた部分から炎が吹き出す。

 ナデシコクルーもパイロットたちも全員がその光景に目を奪われた。

{全機離脱しろ! 爆発するぞ!}

 Dに言葉に弾かれたように離脱を開始するエステバリス。

 前回は爆発後にほとんど反射的に離脱したので、また、「よく生きてられたな」と思うDだった。

 戦艦が爆発した。

 密集隊形だったのが災いし、戦艦の爆発で艦隊の数十%が失われた。

 そこにだめ押しのグラビティブラスト。



------ブリッジにて------

「エステバリス隊回収後グラビティブラスト再チャージ」

「どうして?」

 ユリカの言葉に当然の質問をするミナト。

「火星大気圏内に敵第二陣がいると考えられます」

 と、ミナトに答えるユリカ。



 エステバリス全機回収後、ナデシコから火星に向けて一筋の光が奔った。

 光が貫いたところで、大きな爆発が多数確認された。



 そして暫くしてナデシコは火星大気圏に突入した。

 その時、例によってユリカは重力制御を忘れてアキトが大変(嬉しい・・・周りから見れば非常に羨ましい)な目にあった。

 ブッリッジにいた人間はDの警告によって事なきを得たが、その他の人間は壁を床にして倒れたりしていた。





------火星某所にて、ナデシコ艦内------

「ダイゴウジ ガイ、だああぁぁぁぁぁぁぁい、ふっかぁぁぁぁぁぁぁつ!!」 

「うるせぇっ」

 ボカっ

 火星に入って暫くすると、月で(イツキにぼこられて)負った全治四ヶ月と診断された怪我が、一瞬にして治ったヤマダの声がナデシコ艦内に響いた。

 その後すぐ医療室に詰めている人に殴られたが。 五月蠅いから。

 しかし、またすぐに復活した。

「なにしやがんだっ! このやろう!!」

「うるさいんだよ! ってゆーか、お前後2ヶ月は立てないはずだぞ?」

「ふっ! 火星、つまり木星蜥蜴という敵のまっただ中に取り残された人々が俺の助けを待っているんだぞ!!

 それなのに、一○ばりのデンプシーロールやガゼルパンチ、フリッカーやラピッドパンチ(ごっつう簡単に説明すれば、後頭部を殴ることです。ついでにこれは○歩にはでてきていません。たしか)、どこぞの金髪娘みたいに消化器で殴打などしてきたが、

たった合計三千回ぐらい殴られたぐらいで寝てなんかいられるかっ!!!!」

 っつーかよく生きてんな、お前。

「理由になってねぇ!」 

 どぐしゃっ!!

 鈍い音が医療室・・・いや、ナデシコ中に響き渡った(どんな強さで殴ったんだよ、オイ)。



「では、今からナデシコはオリンポス山に向かいます」

「そこに何があるんですか?」

 プロスペクターの話を聞いて、オリンポス山に行く理由を聞くユリカ。

「そこにはネルガルの研究施設があるもので、はい。

 それに我が社の研究施設はシェルターになっているものでして・・・・・・

 一番生存確率が高いのです」

「では今から研究所への突入メンバーを発表する」

 ゴートがメンバーを発表しようとしたときに、アキトが言った。

「あ、あの、俺にエステを貸して貰えますか?

 故郷を・・・・・・ユートピアコロニーを見に行きたいんです」

 かすかに眉を動かすフクベ。

「しかしあそこは・・・・・・」

 チューリップが落ちた、と言おうとしたとき、

「行きたまえ」

 威厳に満ちた声。

 フクベの声だった。

「て、提督! 何をおっしゃるのですか!?」

「あ、ありがとうございます!」

 何も知らないアキトは素直に喜ぶ。

「俺も・・・・・・いいですか?」

「出来れば私も行きたいです。

 ユートピアコロニーに・・・・・・」

「何を言うんだ! D、カザマ!」

 ゴートが激昂する。

「君らも行きたまえ」

「て、提督!?」

「故郷を見る権利は誰にでもある。

 特に若い者には」

「それじゃあ私も行っていいよね。

 あそこは私にとってもアキトにとっても思いでの所だもんね」

 ユリカが口を挟む。

 それにぽつりと言うD。

「艦長が艦を離れていいのか?」

「う゛っ・・・・・・それは・・・」

 あまりにも正論すぎて何も言えないユリカ。

 情に訴えようと(意識してかそうでないかは不明)目をうるうるさせる。

「Dさんの言うとおりです。

 パイロットはまだ見過ごせますが、艦長が行くのを認めるわけにはいきません」

 プロスペクターがピシャリと言う。

「えぇぇぇ〜〜ん、そんなぁぁ〜!!」 

 ヤマダが再び沈黙してから数十分後、またナデシコ艦内に魂の叫びが響き渡った。

「黙れ。 うるさいぞ」

 スパコン☆

 Dがどこから取り出したのか、長さ1m程のハリセンでユリカをどついた。
                     ...
 気が付くと、ブリッジ内にアキトとメグミの姿が消えていた。





 アキトは増曹を付けた陸戦フレームのエステバリスでユートピアコロニーを目指していた。

 何故かメグミも一緒にいる。

 なんか確認したら書くのを忘れていたことが分かったが、四話でDが危うかったとき、メグミは「死」とはほど遠い世界で生きていたので、ショックだった。

 しかし誰もがメグミほどのショックを受けていなかった。

 が、アキトだけがメグミの受けたショックを理解し、慰めた。

 それでアキトに惚れ、付いてきてしまったのだ。

 エステの中でたわいのない話をするアキトとメグミ。

 ふと思ったことをアキトは口に出した。

「そういえばさ、Dやイツキさんも同じコロニーの出身だったなんて、ほんと、驚いたなぁ」

「そうですよね。

 パイロット仲間っていう繋がりの他は、繋がりなんかなさそうだったのに、意外なところで繋がりが分かったんですもんね」




------ナデシコブリッジにて------

「問題・・・・・・ありますよね・・・」

「通信士ぐらいいいんじゃない?

 戦闘中じゃないんだし」

「問題大ありですっ!!!」 





 暫くして、ユートピアコロニー跡に到着した。

「着いたよ」

「うわぁー、ここがアキトさんの故郷なんですね」

「うん、そうだよ」

 エステから下りるアキトとメグミ。

 そして話しながら歩みを進める。

 突如、

 ぼこっ!! 

 どうしてコックを目指していたかを話していたアキトと、それを聞いていたメグミの立っていた辺りの地面が崩れた。

 ドサっ!

 今まで立っていたところが消失したために、二人は落ちた。

 そしてアキトは無様にもメグミの下敷きになった。

「あれ? アキトさん?」

 メグミは辺りを見まわした。

 コツ・・・・・・

 小さな足音がした。

 一人の人間(だろう)が現れた。

「こんなところに一体何のようなの?」

「あなた誰?」

「そんなことよりもどいたほうがいいわよ。

 彼、苦しそうだから。

 まあ、何はともあれコーヒー一杯ぐらいは御馳走しよう」



 漆黒のノーマルエステバリスとはかなり形状の違うエステバリスと、紫色のノーマルエステバリス(陸戦フレーム)が火星の荒野を疾走していた。

「(しっかし・・・・・・イツキちゃんが火星出身だとは思わなかったな・・・)」

 そんなことをボケーッと考えているDにイツキから通信が来た。

『あの、Dさん。

 Dさんは何処の辺りの出身なんですか?

 私は“セント・レイア養護施設”という養護施設の出身だったんですけれど』

「(セント・レイアの出身!?

 それじゃあ・・・俺と同じ施設の出だったのか)

 俺も養護施設の出だったけだ、忘れちまったな、なんてとこだか。

 それよりも、イツキちゃんは何で施設に? 俺は両親が十年前のテロの時に死んじまったんだが」

『私は・・・・・・交通事故で』

「・・・・・・ごめんな、無神経だったな。

 嫌なこと思い出させちまって・・・・・・」

『いえ、いいんです。

 もう・・・・・・過ぎたことですから・・・』

 無言のまましばし経つ。

「見えてきたな」

『そうですね・・・』

 ユートピアコロニー跡が見えてきた。

 第一回火星会戦の折り、火星に落ちたチューリップがクレーターの中から覗く、ユートピアコロニー跡が。



 二人は自分の機体から下りた。

 Dにとっては二回目となる故郷との対面。

 イツキにとっては初めてとなる故郷との対面。

「分かってはいました・・・・・・

 分かってはいましたが・・・・・・・・・・・・・

 けど・・・・・・悲しいものですね。

 こんなになった故郷を見るのは・・・・・・」

 普段の気丈な彼女はなりを潜め、今は一人のか弱い女性としてのイツキがいた。

 傍目にも涙を堪えているのが分かる。

「今は泣け・・・・・・
       こと 
 堪える必要などない・・・・・・」

 イツキは泣き始めた。

 Dがイツキの顔をマントの内に抱く。

 涙がDの服を濡らす。



 静寂の中、イツキの泣き声だけがした。



 しばらくの間泣くと、イツキはDから離れた。

 多少目元が腫れぼったい。

「すいませんでした」

「いや、いいさ」

「でも、本当に・・・・・・

 それにしてもDさんは強いですね。

 あんなになった故郷を見ても動じないんですから・・・」

「別に・・・・・・強い訳じゃないさ。

 ただ・・・・・・二回目だったからな・・・・・・」 

「え? ただ、何ですか?」

 ぼこっ!

 という音がした。

「何でしょう、今の音は」

 目元を擦りながらDに聞くイツキ。

「さあな。

 行ってみる?」

「そうですね」



 Dとイツキが音のしたところに行くと、地面に穴が開いていた。

「これは・・・一体なんでしょう?」

「さあ?(やっぱり落ちたか・・・・・・無事にイネスに会えたかな?)行ってみる?」

「行って・・・・・・みましょうか」

 穴のそこまではほんの4、5m。

 バサッ

 Dがマントを翻しながら飛び降りた。



 スタッ

 Dは綺麗に着地した。

 そしてイツキを受け止めるために手を伸ばす。

 イツキがDの腕の中に飛び降りる。

 それをしっかり受け止めるD。

「ここは・・・シェルターの連絡路でしょうか・・・」

「そうだな。 シェルターの連絡路がこのぐらいだったら、シェルターはもっとましだろうな。

 もしかしたら、ここは最初に破壊されたから、盲点だと思った人々がいるかもしれないな」

「そうですね。

 でも・・・どっちかしら」

 地下にある道は二つの方向に延びていた。

 一つは少し先に金属製の扉がある。

 もう一方は暗くてどうなっているのかよく分からない。

「(前の時はすぐそこだったよな。確か)とりあえずこっちに行こう」

 二人は扉の方へ向かった。



 プシュウ

 Dがハックして扉を開けた。

「何者!?」

 扉の内側から女性(イネス)の声がした。

「一応、助けに来ました・・・ってことのなってます。

 研究施設のデータが本当の目的でしょうが。 確実に」

「ふぅ、あなた達もナデシコのクルーね・・・」

 完全に扉が開き、Dとイツキがシェルター跡(と思われる場所)に入った。

 金髪の白衣を着た女性がDに変質者を見る目で聞いた。

「・・・・・・何なのあなた、その格好は」

「別に気にしないで下さい」

「あれ?Dさんとイツキさん?」

「あ、本当だ。 どうしたの? D、イツキさん」

「何か音がしたので来てみたんです。

 そうしたら大きな穴が開いていたので、入ってみたんです。

 もしかしたら、生き残りの人がいるかもしれない、とも思いましたし」

「悪いけど・・・・・・そこの二人にも言ったけど私たちはナデシコには乗らないわ」

「何故です?」

「ナデシコじゃ、火星を脱出出来ないと考えているからさ」

「よく分かったわね。

 その通りよ。

 ナデシコでは火星を脱出できない、そう思うから私たちはナデシコに乗らないわ」

「ところであなたの名前は?(知ってるけど)」

「私はイネス。 イネス=フレサンジュよ。

 そういう、怪しい格好のあなたと、そっちの子の名前は?」

「私はイツキ=カザマといいます。

 フレサンジュさんは、考えを変える気はないんですか?」

「俺は本名は言えない。 とりあえずDと呼んでくれ」

「そう。 イツキさん? どんなに言われようとも考えを変える気はないわ」

 キッパリと言い切るイネス。

「イネスさん、これを見て貰えませんか?」

 イネスにディスクを渡すD。

「なーに? これは」

「まあとりあえず見てください。

 ただ・・・・・・『お〜〜〜い!あきと〜〜、来ちゃった〜〜〜』・・・・・・・・・オメガ・・・止められなかったのか・・・

 まぁ無理ないか・・・相手がユリカじゃ(ぼそっ)・・・」 



 上空にはナデシコが来ていた。

 ユリカがアキトを追ってユートピアコロニー跡までナデシコで乗り付けたのだ。

 一体何を考えているのだろうか、ユリカは。

 イネスは退社する際には業務報告をしなくてはならない(とプロスペクターに言われた)ので、一時的にナデシコに乗ることになった。



「つまり、どうあってもナデシコに乗る気はない、と」

「ええ、そうよ。

 ナデシコでは木星蜥蜴に勝てない。

 だから私たちはナデシコに乗らないわ」

 プロスペクターはため息を付いた。



 そのころDとイツキは何故かまだナデシコの外にいた。

「そういえばまだイツキちゃんに本名とマントを付けている理由、教えてなかったね」

「そうですね。 今、教えて貰えますか?」

 イツキとDはハッチを開けたままにしたエステのコクピットに座りながらそんなことを話していた。

「マントは、昔必要だったからだし、こういう風に・・・(マントからいろいろなもの・・・銃だとか対戦車ライフルだとかロケットランチャー、ハリセンなど・・・を取り出す)・・・いろいろなものを入れられて便利だから着ているのさ。

 それで・・・名前だけど・・・・・・」

 Dはバイザーを外した。

「俺の名前はテンカワ アキト」

「え?」

「もう一度いう。 俺の名前はテンカワ アキト。

 これは冗談でもなんでもない」

「一体どういうことですか? 同姓同名? それには似すぎている・・・・・・」

「俺が言った理由はそれなんだ。

 ただ似ているだけ、同姓同名、それならいるだろうけど、その両方。

 これは人為的でなければあり得ないと言ってもいい。

 天文学的な確率だからな」

「それではどういうことなんですか?」

「・・・イツキちゃんはさ、平行世界だとか、そういうの信じる?」

「平行世界・・・ですか?」

「そう」

「でもそれがどうかしたんですか?」

「俺はここじゃない・・・こことは別の世界のテンカワ アキトなんだ」

「・・・・・・つまらない冗談ですね」

「ははは。 確かに冗談みたいだよね。

 まるで昔の漫画だよ。

 でも、事実だ。 間違いなく」

「・・・Dさん、すいませんが、熱とかありませんか?」

「いんや。 全然。

 だけどね、ここより六年ぐらい先の未来から来たことは確かなんだよ。

 ブラックサレナMk−Uというオーバーテクノロジーの塊がその証拠だよ。

 尤も、俺という存在が過去に来た時点でその過去は俺にとっての直系の過去ではなく、平行世界と言うことになるんだがな」

「ですから、つまらないですってば、その冗談は。

 本当に熱はないんですか?」

 イツキはコクピットから身を乗り出してDの額に自分の額を押し当てた。

「・・・・・・熱・・・ある?」

「・・・・・・ありませんね・・・・・・」

「だろ?

 さて、もう一つ証拠を見せようか。

 オメガ?」

『イエス、マスター。 お呼びでしょうか』

「ナデシコの方は?」

『予定通りに。

 それにしても、申し訳ありませんでした。

 結局ユリカさんを止められなくて』

「いや、いいよ。

 それじゃあウリバタケさんにG・ライフルを射出して貰って」

『了解』

「・・・一体何なんですか?Dさん」

「もうすぐ木星の艦隊が来るからね。

 それの迎撃準備だよ。

 それともうそろそろかな? イネスさんから連絡が入るのは」

 見計らったかのようなタイミングでイネスから通信が入る。

【ちょっと、Dくん! 何なのよ、この機体は!】

「ブラックサレナMk−Uの事ですか?」

【そうよ。 一体何なの?このパイロットを無視した機体は!】

「気にしないで下さい。

 俺にとってはとても扱いやすい機体ですから」

【それにしてもよ、本当になんなわけ!?

 設計図が本当ならブラックサレナMk−Uはオーバーテクノロジーの塊よ!】

「ボソンジャンプ」

【! あ、あなた何処でそのことを・・・・・?】

「とりあえずは秘密です。

 でも、ボソンジャンプの事が分かれば、数年分進んだ技術が使われている理由が分かりますよ。

 さて、イネスさん。 今木星の艦隊が近づいてきています。

 それを迎撃できたら・・・あなたも、したにいる人たちもナデシコに乗ってください。

 それに・・・・・・チューリップを使えば月軌道上まで戻ることも出来ます」

【どういうことなの?】

『木星艦隊G・ライフル最大射程距離まで後700』

「話をする暇はもうないですね」

『G・ライフル射出確認』

【分かったわ。 でも、必ず貴方の正体を教えて貰うわよ】

「そのうちね」

『G・ライフル、来ます』

 Dはサレナを立ち上げ、G・ライフルをキャッチした。

 G・ライフルの形状はWガン○ム0のバスターライフルにそっくり(二門ではなく、一門だが)だった。

『木星艦隊、G・ライフル最大射程距離内に入りました』

「G・ライフル発射準備」

『了解。 ブラックサレナMk−U第一および第二相転移エンジン起動。

 出力共に87%で安定。 G・ライフル充電開始』

 十数秒して

『発射準備完了。

 出力80%で十発まで連射可能です』

 DはG・ライフルをまだ肉眼で確認できない位置にいる木星艦隊に向けると、また、「有人機は離脱せよ」や、「撤退、もしくは乗員は脱出せよ」などという通信を入れた。

 一分が経ち、後三分で肉眼でも確認できる位置に到達した木星の艦隊にG・ライフルを撃ち込んだ。

 G・ライフルから放たれた一条の光が木星艦隊の一部を呑み込んだ。

 まだディストーションフィールドを張っていなかった艦隊は、薄く、広く展開していたが、かなりの被害を受けた。

 数万の艦のうちの数百、そしてチューリップ二機がその一撃で沈んだ。



「何なの!? 今の光は!?」

 光が消えていった先で爆発が起こった。

「何だ!? 何があったんだ!?」

「木星蜥蜴の艦隊です!」

「オモイカネ経由でオメガ・・・Dさんの機体のサポートA・Iからデータが来ました。

 木星蜥蜴の艦隊は薄く広く展開しています。

 おそらく本艦のグラビティブラストを警戒したものと思われますが・・・・・・

 今の爆発は本艦の射程距離外でD機のグラビティブラストを受けたものと推測されます」

「ナデシコ以上の射程のグラビティブラストですと!?」

「そんな馬鹿な!」

「第二波感知」

 再び木星蜥蜴の艦隊に光が突き刺さる。

 そしてまた爆発。

「ルリちゃん、あの艦隊はディストーションフィールドを展開していると思いますか?」

「おそらく先制の一撃を受けたので、張っていたと考えられます」

「Dくんはさっきの通信から考えると、80%ほどの出力でグラビティブラストを撃っているわ。

 まったく・・・恐ろしい威力よね・・・・・・」

「あれで80%だと・・・・・・」

「第三波感知」

 もう、誰も言葉を発することが出来なくなっていた。





 結局、ナデシコの損害はグラビティブレードに、数発の被弾(Dがほとんどわざと・・・ってゆーか完全に故意に被弾させた)・・・自力で大気圏脱出がぎりぎりで出来なくなるぐらいのもの・・・だけだった。

 ナデシコクルーは改めてDの強さを知った。

 地下にいた人々は全員無事だった。

 イネスもその人たちも、ナデシコに乗ることを了承した。

 そして今、ナデシコは律儀に極冠にある研究所に向かっている。





  次回予告

 自力で火星大気圏からの脱出が不可能となったナデシコ!

 DはG・ライフルは故障だとかぬかしてまたクロッカスを使うことに・・・・・・

 次回 いつかお前が『歌う詩』
             をみんなで読もう!





 本星への報告書6

 執筆時間8時間の大作(オマケも併せてです)。 いや、まあ、修正もたくさんしたしねぇ。

 さて、ここで「D」の名前の由来です。

 黒い王子様------プリンス オブ ダークネス(prince of darkness)の「darkness」の「D」です。

 安易ですか? 安易ですね。

 ネーミングセンス最悪ですか?

 「イエス」といわれても文句は言えませんし、言いませんが。

本星への報告書6 終





 オ・マ・ケ

「3」

「2」

「1」

「どっか〜ん!」

イネス先生「みなさんこんにちわ。

        なぜなにナデシコ特別編です」

ウサギさん「今日は、みんなにブラックサレナMk−Uのことについて教えちゃうよ〜!」

お姉さん「はぁ、なんでまたこんなことやらなくちゃならないんだか」

イネス先生「ホシノ ルリ、そんなこと言ってると、アキト君の行き先が分かっても、教えてあげないわよ」

お姉さん「ふぅ、分かりましたよ。

      それでは、まずブラックサレナMk−Uは・・・」

ウサギさん「アキトが私を助けてくれたときの戦いで損壊したブラックサレナを強化改造したものなんだよ」

お姉さん「その通りです。

      そしてブラックサレナMk−Uはブラックサレナにはなかったいろいろな無茶苦茶な武器があります

      形はブラックサレナとあまり変わりません」

イネス先生「じゃあ、ブラックサレナMk−Uのデータを見てみましょうか」



 名称:ブラックサレナMk−U

 タイプ:変形機構付き強化装甲

 パイロット:テンカワ アキト

 全高:10.2m

 全装備重量:2.7t

 装備:グラビティ・ライフル ×1

     テールバインダー ×2

     グラビティブラスト ×1

     グラビティウェイブ ×1

     グラビティ・ブレード ×2

     高周波ブレード ×1

     レーザーブレード ×2

     マシンキャノン ×2

     頭部17ミリチェーンガン ×2

     高速飛行形体用オプション ×1

 特記事項:小型相転移エンジン2機装備

        ジャンプフィールド発生器装備



イネス先生「どう? 何か質問はあるかしら」

ウサギさん「グラビティ・ライフルって何?」

お姉さん「グラビティ・ライフル、通称G・ライフルは出力100%の時、ナデシコBに匹敵するグラビティブラストを発射で          
      きる武器です」

イネス先生「2個の相転移エンジンを出力MAXにして、G・ライフルの充電もMAXにすれば、そのグラビティブラストを最       
       大11発まで連射が可能です」

ウサギさん「何ですか!? その武器は!」

イネス先生&お姉さん「「G・ライフルよ(です)」」

ウサギさん「いや、それはそうでしょうが・・・・・・

       あれ? そういえば、なんでG・ライフルがあるのに、グラビティブラストが装備されてるの?」

イネス先生「それはね、G・ライフルが、ブラックサレナMk−Uができた後に作られたからなのよ」

ウサギさん「ふぅ〜ん、そうなんだ〜」

お姉さん「他に聞きたいことはありますか? ユリカさん」

ウサギさん「いまは私はウサギさんだよ、ルリちゃ・・・じゃなくてお姉さん。

       え〜とねぇ、それじゃあグラビティウェイブってゆーのは?」

お姉さん「グラビティウェイブは対全方位型の武器で、敵に囲まれることが多々あるアキトさんの発案の武器です」

イネス先生「簡単に言えば、グラビティブラストの弱化版をブラックサレナMk−Uの周り全体に向けて放つのよ」

お姉さん「でも、最大出力でも巡洋艦クラスのディストーションフィールドも破れません」

イネス先生「それともう一つ欠点があるわ。

       放つまでに少しだけ時間が掛かるの」

ウサギさん「時間ってどれくらいなの?」

お姉さん「だいたい0.2秒くらいです」

ウサギさん「そんな少しの時間なのに欠点になるの?」

イネス先生「機動兵器戦では0.2秒の隙は決定的なものになるわ。

       ましてや囲まれたときなら、致命的ね」

ウサギさん「そうなんだ〜〜。

       じゃあねぇ、じゃあねぇ、グラビティ・ブレードは?」

お姉さん「グラビティブラストを剣の形に収束・固定したものです」

イネス先生「戦艦クラスのディストーションフィールドでもスパスパと切り裂けるわよ」

ウサギさん「ほぇぇ〜〜、すごいんだぁ・・・・・・

        でも、そんな武器があったら、高周波ブレードとかレーザーブレードはいらないんじゃないの?」

お姉さん「グラビティ・ブレード・・・通称G・Bはエネルギー消費が大きいんです。

      それに、用途によってはG・Bよりもレーザーブレードや高周波ブレードの方が使い勝手がいいですから」

ウサギさん「そうなんだぁ〜。

       よ〜く分かったよ、お姉さん、イネス先生」

お姉さん「分かって貰えてよかったです」

イネス先生「本当ね。 変なところで分かりが悪いからね・・・ウサギさんは。

       さて、それじゃあなぜなにナデシコ特別編はこの辺で終わります。

       それじゃあみなさん」

三人そろって「「「さようなら〜!」」」

オ・マ・ケ 完

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

E.Tさんからの連続投稿第六話です!!

問答無用ですね(汗)

時の流れでさえ、この時点ではまだアキト君は弱かったのに(苦笑)

まあ、最終話時点のアキトを連れてくれば、これと同程度の事をするかな?

それにしても新装備の数々ですね〜

・・・今後はどうなるでしょうか?

 

ではE.Tさん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

感想のメールを出す時には、この E.Tさん の名前をクリックして下さいね!!

後、もしメールが事情により出せ無い方は、掲示板にでも感想をお願いします!!

出来れば、この掲示板に感想を書き込んで下さいね!!