「・・・・・・オメガ・・・

 G・ライフル・・・壊れちまったな・・・・・・」

『そうですね・・・・・・

 計算よりも強度がなかったようです』

「・・・・・・提督・・・今回も助かるといいな・・・・・・」

 

 そんなことをDとオメガが会話していると、プロスペクターが現れ、Dにあることを依頼した。

 Dはそれを断ろうとしたが、結局出来なかったため、その「あること」をやらなければならなくなった。




 

機動戦艦ナデシコ 

TWIN DE アキト

 

第七話 いつかお前が『歌う詩』





「3」

「2」

「1」

「0」

「ドッカ〜ン」

「こんにちわ、良い子の皆さん・・・・・・」

 なぜなにナデシコ、やっぱりやるんですね、今回も。

 内容は完全に前と同じだったし。

 ただ、相転移エンジンの説明の時に、

「つまりは、水力発電を、水ではなく、真空で行う、ということだ」

 と、Dがよりわかりやすく説明したが。

 ・・・・・・Dは「なぜなにナデシコ」に出演させられたのだ。

 なお、今回の「なぜなにナデシコ」は、プロスペクターの許可を得ている。

 Dはこの後、「何でオレがあんな格好せにゃならんのだぁ〜〜〜」とか言って嘆いていた。

 果たしてDにそんなことを言わせた格好とは・・・・・・?

 それは、学ランだった。 

 なんか、イネス先生の生徒、ということらしいが。

 しかも、それで、黒いバイザーを付けているのだ。 

 嗚呼、なんて変な格好だろう。

 だったらバイザーを外せばいいじゃないか、という意見もあるが、やっぱりバイザーが無けりゃ〈黒い王子さま〉じゃないしね。

 まあ、ナデシコは概ねこんな感じで今日も元気だった。(一部を除く。←Dとか、G・ライフルを修理中のウリバタケたちとかの事)





「私たちがナデシコに乗る気になったのはDクンの存在があったからこそよ。

 はっきり言うけど、ナデシコの性能は全く当てにしていないし、信頼、信用もしていないわ」

「ナデシコのことは信頼していないと!?」

「ええ、その通りよ。

 先程の戦闘に勝ったのはDクンがいたから。

 もしいなければ、一体どうなってたかしらね・・・

 おそらく負けていたでしょうね。

 木星蜥蜴もディストーションフィールドを装備している。

 そして、研究によれば、ディストーションフィールドは、多重化による強化が可能だから・・・そうすれば、少なくとも設計と同程度の威力のグラビティブラストじゃ貫けないから」

 イネスは一度ため息を付いた。

「でも・・・そのDクンの使った武器・・・Dクンに聞いたんだけど、壊れたらしいし・・・・・・

 その状況で新たなチューリップから続々と増援が現れている・・・・・・でも、どうしてあんなモノからあんなにたくさん出てくるのかしらね。

 さて、一体どうなる事やら」





 いんたーみっしょん その1

「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ(以下千行分削除)ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ(もっかい千行分削除)ふふふふふふ・・・・・・ふふふぅふぅふぅ・・・」

 不気味な笑いをして息を切らす謎の人物が、某所にある地下数百メートルの地下にある地下室にいた。

「分か・・・・・・らない。分からない分からない分からない分からないわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 謎の人物は絶叫した。

 とりあえず「いんたーみっしょん その1」 終





「不思議ね。 アキト君を見ていると何故か落ち着くのよ」

「そうですか?」

 いんたーみっしょんの間に食堂に移動していたイネスは、アキトにオムレツを作ってもらっていた。

 ジュワァァァァァ

 卵の焼けるいい匂いと、何処か耳に心地よい音が食堂を満たす。

「(焦げ目を付けて・・・・・・)完成っと」

 お皿にオムレツを盛って、イネスに渡す。

「はい、どうぞ」

「やっぱり筋がいいね、テンカワ!」

 横で見ていたホウメイに褒められるアキト。

「ホウメイさんに褒められる程じゃないっすよ」

 言葉とは裏腹に嬉しそうなアキト。

「そうでも・・・ないんじゃないの?」

 ホウメイに頼んで自分の食事を作っているDがアキトに声を掛けた。

「・・・? テンカ・・・ワ? もしかして、貴方テンカワ夫妻のお子さん!?」

「・・・ええ、そうですよ。 オレの両親を知ってるんですか?」

 イネスに問うアキト。

「それでよくこの艦に乗る気になったわね」

 何処か面白そうに、目を冷たく輝かせて言うイネス。

「・・・何が・・・言いたいんすか?

 オレがナデシコに乗ってることが、どうしてそんなに可笑しいんすか?」

「知りたい?」

 向かい側に座っているアキトにどんどん顔を近づけるイネス。

 ピッ

『二人とも近づきすぎ!! ぷんぷん!』

 突然ユリカからの通信が繋がった。

 ・・・・・・そう言えば・・・・・・どうして「アキトとイネスが(物理的に)急せっき〜ん!」と言うことを知っていたのであろうか。・・・ナデシコ百の謎(本当に百あるかは知らん)の一つである。

 そんなユリカの開いたウインドウを後目にDは出来上がったラーメンを器によそい、食べ始める。

「・・・で、何のようだ?ユリカ」

『そうそう、アキトとイネスさんは至急ブリッジに来てください。

 それと、Dさんが何処にいるか知らない?

 Dさんも至急ブリッジに来てほしいんだけど、コミュニケを外してるみたいで、連絡が届かないの』

「Dだったらここにいるけど?

 今、自分で作ったラーメン食べてる」

「ん? 何か呼んだか?」

「あ、D、ユリカがブリッジに来い、だって」

「ああ。 分かった。
  ラーメン
 こいつ食ったら行くから先に行ってろ」 

「分かったよ。

 それじゃあ行きましょうか、イネスさん」

「ええ」

 アキトとイネスは連れだって食堂を出ていった。





 いんたーみっしょん その2

「この・・・・・・私に分からないことがあるだなんて・・・・・・・・・・・・」

 絶望的な声が、彼女のいる完全防音の部屋に木霊した。

 その時だった。

 ズガアァァァァァァァァン!!

 といった、雷の音が彼女には聞こえた。

 実際に外で雷が落ちたのだが・・・・・・彼女の耳は、一体どんな聴力なのだろうか?

 それはさておき、彼女の目は「マサ○さん」っぽく、怪しく輝いた。

 (彼女には聞こえた)雷の音が原因なのは考えるまでもない。

 「いんたーみっしょん その2」 終





「あれは・・・・・・クロッカス・・・・・・」

「地球でチューリップに呑み込まれたはずだぞ!?

 何でそんなモノが火星にある!」

 ゴートよ・・・そんなに叫んでばかりで、脳の血管は大丈夫か?

「そこで私の仮説が成り立つのよ!」

 現れるなりブリッジクルーの会話に参加するイネス。

「私の推測では、チューリップは一種のワームホール・・・つまりワープ装置のようなものだから・・・

 地球でチューリップに吸い込まれたモノが火星にあってもおかしくはないわ」

 クロッカスの側にはチューリップがある。

 状況証拠はバッチリだ。

「でも、ナデシコが地球から火星に来る時間ぐらいで、あそこまで氷に埋もれるでしょうか?」

「それに、一緒に吸い込まれた・・・・・・・「パンジーです」・・・そうそう、それ。

 パンジーはないでしょ?

 出口がいろいろじゃ使えないわよ」

「そこの所はまだ何とも言えないわ。

 どっちにしろ、チューリップのことはまだ研究段階だから」

 少し悔しそうなイネス。

 ふと思い出したかのようにプロスペクターがフクベ(おお、何か久しぶりだぞ!おじいちゃん!)に話しかけた。

「そういえば、第一次火星会戦撤退時に提督はあの艦に乗ってらしたのですよね」

「なにっ!?」

 プロスペクターの言葉にアキトが噛み付いた。

「提督が・・・あんたがあの時の指揮をしていたのか!?」

「・・・・・・・・・」

 フクベは無言で佇んでいる。

 アキトの言葉に否定も肯定もしない。

 そのフクベの代わりにユリカが答えた。

「何言ってるの? アキト。

 提督が第一次火星会戦の時にチューリップを落とした英雄だっていうことは、子どもだって知ってるよ?」

「地球ではだ」

 アキトがユリカの言葉に強い口調で訂正を入れる。

「あの時、俺たちが・・・火星に取り残された人たちがどれだけ怖い目を見たか分かっているのか!?

 守ってくれる軍のヤツらがいなくなってどれだけ心細かったか分かってるのか!?」

 フクベは無言のままだった。

「何とか言ったらどうなんだ!?

 え!?

 何とか言ったらどうなんだ!?」

 なおも沈黙を貫くフクベにアキトが手を挙げた。

「何とか言えって言ってんだろ!

 うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 殴りかかるアキト、殴られもんどり打って倒れるフクベ。

「お前がぁっ!お前がぁっ!!」

 倒れたフクベに馬乗りになって、なおも殴り続けるアキト。

「やめないか!テンカワ!」

 ゴートの声

 無視するアキト

 それを殴るD

 吹き飛ぶアキト。

「そんなことをして死んだ人間が戻ってくるのか?

 一番惨めな思いをしたのはフクベ提督自身だと知れ!

 提督は守るべく民を犠牲にして、しかし地球では戦意高揚のために偽りの英雄とされたんだぞ!!!」

 Dはアキトの顎を掠めるように殴ったので、アキトは軽い脳震盪を引き起こしていた。

「分からないよ!そんなこと!!」

 かすれる意識を必死につなぎ止めながらアキトはそう言った。

「ならば・・・お前はナデシコを守りたいな・・・?」

「当たり・・・前だろ!」

「そのお前がナデシコを犠牲にして生き延びたとする・・・それが提督と同じ立場だ」

「くっ・・・!」

 意識がかすれていく・・・・・・そしてアキトは気絶した。



「軍なら軍事法廷行きだぞ!」

 ゴートのアキトの行動に対する言葉だ。

「でもナデシコは軍じゃないぞ。

 ・・・ところで提督、一つ質問があります」

「何かね?」

「提督、何故あなたはアキトの突きを避けなかったのですか?罪滅ぼしのつもりだったのですか?」

「そう思ってくれてもかまわない。

 私を殴ることで彼が満足するのだったら、それでいい」

 プロスペクターはため息を付くとユリカにアキトをどうするか、判断を仰いだ。

「とりあえず営倉に入れてください」






 いんたーみっしょん その3

 怪しく目を輝かせながらマッドなサイエンティストは呟いた。

 どうしてこんな簡単なことに気づかなかったのだろうか、という口調で・・・

「そう・・・・・・か・・・

 そうよ、そうよ、その手があったじゃない・・・彼女を使えば・・・そう、彼女を使えばいいんじゃない」

 そして哄笑する。

「ふふふふふ・・・・・・ふふふふふふふふふふふ。

 あははは・・・あーーはっはっはっはははははははははははははははははははは(以下一万行削除)はははははははははは」

 「いんたーみっしょん その3」 終





 リョウコとヒカルとイズミは視界の限り何処までも続く真っ白な氷原をエステで疾走していた。

 ヒカルとイズミは軽くて、機動性のある陸戦フレームだが、リョウコは鈍重な砲戦フレームだった。

 リョウコが自分自身大っきらいな砲戦フレームに乗ることになったのはジャンケンに負けたかららしい。

 リョウコたちが目指すのはクロッカス。

 クロッカスがどうなっているのか、その先行偵察のためだ。

 本来Dも一緒なのだが、「用があるから、それが終わったら行く」と言い、まだ来ていない。

 そして、三人は雑談をしながらクロッカスへと向かう。

「気を付けて! 何かいるよ!」

 突如イズミがリョウコとヒカルにそう警告した。

『またまたぁ〜、イズミどうしたの〜?』

【レーダーにゃ何の反応もないぜ?】

 リョウコの言葉通り、レーダーには何の反応もなかった。

 ただ・・・分厚い氷の下というのはレーダーの死角になりやすい。

【うわぁ!】

 リョウコはその死角たる氷の下から襲われた。

 リョウコを襲ったのは新型なのか、それともこういった地形に特化したモノなのかは分からないが、
今まで見たことのない虫形兵器だった。

 それでも、あるいは陸戦フレームならばその攻撃を避けられたかもしれないが、いかんせん、今リョウコが乗っているのは鈍重な砲戦フレーム。

 とてもではないが、回避は出来なかった。

 まぁ、重厚な装甲故に大事には至らなかったが。

 敵はリョウコに一撃を加えた直後に再び氷の下へ潜ってしまった。

 そしてまた氷を突き破り、リョウコ機へ殺到する。

 まずいことにリョウコの砲戦フレームは転倒してしまった。

 敵機はリョウコ機に取り付き、その口に当たる位置にあるシャッターの下からドリルを顕すと、それを回転させ始めた。

【やだ・・・嫌だ・・・】

 どんどんドリルが近づいてくる。

 ねらいはコックピット。

 リョウコは恐怖に包まれた。

【ヒカル・・・イズミ・・・助けてくれ!

 テンカワ! D!】

 リョウコは叫んだ。

〔待たせたな〕

 そんな声と共に“虫”の頭部が爆発した。

 何かの用を済ませたDが駆け付け、左腕に取り付けられている高周波ブレードを投げつけたのだ。

 “虫”は、ドリルは使用不可能となっていたが、まだ動いていた。

 “虫”はリョウコ機から離れると同時に、再び氷の下に退避しようとした。

 しかし、それをイズミが狙い撃ちにし、ヒカルが肉薄してエステの拳をたたき込んだ。

 だが、“虫”はしぶとく、まだ健在だった。

 けれども、恐慌から脱却したリョウコが、砲戦フレームのカノンの一撃を入れた。

 さすがの“虫”もこの攻撃には耐えられなく、爆発し、しばし本当の虫のように痙攣し、動きを止めた。

【ふう、助かったぜ、D、ヒカル、イズミ】

「何奢ってくれる?」

【は?】

『聞〜ちゃったもんね〜』

【何のことだよ、オイ】

「二股は良くないよ、リョーコ」

【だから何が】

「『テンカワ〜、D〜』」

【うっ!

 ぐ・・・・・・ぐぬぬぬぬぬぬぬ】

 顔を赤らめて唸るリョウコ。

「『テンカワ〜、D〜』」

 リョウコの前にいくつもウインドウを展開するヒカルとイズミ。

【わあったよっ!奢るよ!奢りゃぁいいんだろ!】

『私、プリン・アラモード』

「玄米茶フレークセットよろしく」

『Dクンは何にするの?』

「話の焦点の人も?」

〔? 何の話だ?〕

 “虫”に突き刺さった高周波ブレードを回収しに行ってたDは、突然話を振られていぶかしんだ。

『Dクンってさぁ、「鈍い」ってよく言われない?』

〔ああ。よく言われていたよ〕

『はぁ〜、やっぱりねぇ〜』

〔それがどうかしたか?〕

『ううん。別に〜』

〔そうか。それじゃあナデシコに戻るか〕





 いんたーみっしょん その4

「彼女を使う・・・本当に何で今まで気づかなかったのかしら?謎だわ」

 そして一回不気味に「くすくす」と笑う。

「・・・そうとなれば・・・・・・早速彼女を呼び出さないとね・・・・・・・・・」

 どす黒い(地獄の)炎が彼女の周りで揺らめいていた。

 炎に照らされる髪は赤黒く、しかし、金の光沢を放って、(地獄の)炎に生み出された風に舞っていた。

 (地獄の)炎と相まって、その光景はとても幻想的な美しさを持っていた。

 「いんたーみっしょん その4」 終





「研究所の周りには五つのチューリップ・・・ですか・・・・・・」

「D、お前の機体で破壊できないのか?」

「残念ながら無理ですね。

 G・ライフルが壊れちまってるから」

「あれ?D。

 あの機体、グラビティブラスト、搭載してたでしょ?」

「イツキちゃん、あれじゃあ二機は破壊できるけど、五機は無理だよ。

 G・ライフルとは威力も連射性も違いすぎるし」

「ふ〜ん、そうなんだ」

「ナデシコのグラビティブラストじゃ一機破壊できるかどうかですし・・・どうしましょうかねぇ・・・・・・」

「それならあれを使おう」

「あれ?」 by ナデシコメインクルー全員





「どうしてオレが付いてかなきゃならないんですか」

「そうだね・・・罰とでも思っておいてもらおう」

 アキトはフクベの言葉に顔を背けた。

 アキト、フクベ、イネスはクロッカス艦内を探索している最中だ。

「!危ない!!」

 会話をしながら歩いていた一行を対人バッタが襲ってきたのだ。

 アキトはとっさにフクベを押し倒し、持っていた銃を乱射する。

 銃弾はバッタの装甲と装甲の継ぎ目、カメラに当たる。

 そしてバッタはその機能を停止した。

「何故助けたんだ・・・?」

「体が勝手に動いただけだ」

 フクベにぶっきらぼうに答えるアキト。



 暫くしてクロッカスのメインブリッジに着く。

 クロッカスを起動させるフクベ。

「噴射口に氷が詰まっている。取ってきてくれ」

 アキトにそう言うフクベ。

 だが考えてみればおかしな話である。

 そんな氷など稼働したエンジンの熱や噴射炎で溶けてしまうのだから。

「ドクター、彼一人では分からんだろう。君も行ってくれ」

 フクベが何をするつもりか分かっているからだろう。

 目に暗い光を宿して「分かった」と返事をする。



「これ・・・か・・・」

 アキトはイネスの指示で(全く意味のない)氷取りをする。

 それが終わった瞬間、

『どけ!浮上するぞ!!』

 と、フクベから通信が入るなり凄まじい轟音を立ててクロッカスが浮上する。



 その様子はナデシコからも(当然だが)確認できた。

「クロッカス浮上。

 ・・・クロッカスより通信」

『艦長、前方のチューリップに入れ』

「提督!そんな、どうしてですか!?」

「俺たちを逃がすため・・・だ」

「え?」

「どういうことなの?D」

「簡単だよ。

 チューリップを使えば無人艦隊を撃破する必要なく、火星から脱出できるからさ」

 プシュー

 タタタタ

「やい、お前!どういうつもりなんだよ!」

 着艦してすぐに(コミュニケを使えばいいのに)ブリッジまで走ってきたアキトがフクベに言う。

 しかし返答はなかった。

 いや、返答代わりかのように砲撃をしてきた。

『もう一度言う。ナデシコは前方のチューリップに入れ。

 従わない場合は撃沈する』

「馬鹿な。提督だってクロッカスの艦内を見たでしょう!」

 イネスから報告を受けていたジュンがフクベに抗議する。

 今回は(いつの間にか乗り込んでいた)ネズミと、「オレはこの艦で死ぬんだぁー!」とか言っていた(一人二人の)人間がモノと融合していたのだ。

 ドドーーンッ!! 

 ナデシコが大きく揺れた。

「何っ!?今の!?」

「木星蜥蜴の攻撃です!」

「フィールドは!?」

「地表ではこれが限界です!」

「ユリカ、ナデシコを上昇させよう。このままじゃ相転移エンジンのパワーを生かしきれない」

「しかし、それでは全方位から攻撃を受けることになる」


 ・・・・・・


 議論は続く


 ユリカが・・・


 決断する時まで


 そして・・・


 ユリカは決断する


 それを・・・


「ミナトさん。チューリップの進入角を大急ぎで」

「艦長、それは認められませんなぁ」

 そのユリカの決断にプロスペクターが真っ先に異を唱えた。

 そして口上を述べる。

「ご自分で選んだ提督が信じられないのですか!」

「その通りだな。

 俺たちがチューリップに入れば“死ぬ”だなんて、言い切れるのか?」

「答えはNOよ。

 ナデシコにはクロッカスにないモノがある。

 “ディストーションフィールド”・・・・・・これを展開していれば、あるいは・・・助かるかもしれない」


 ユリカの決断・・・


 Dの言葉・・・


 イネスの言葉・・・


 そしてナデシコは・・・・・・


 チューリップへと向かう。


「クロッカス反転、敵に攻撃を仕掛けています」


「自爆してチューリップを破壊してしまえば、敵はナデシコを追ってこれない」

 フクベの思惑に気づく少女。

 一人かたくなにフクベは自分たちをおとりにして逃げるつもりだ、と言うアキト。

 そして、アキトがフクベに「答えろ」と言って一言言う(叫ぶ)。

 そのタイミングを見計らったかのようにフクベから通信が入る。

『ナデシコの諸君』

 大画面に現れたフクベの顔は何時もと何ら変わることなく・・・

 しかし、時折揺れる画面が‘クロッカスは木星蜥蜴の艦隊と戦闘中である’ということを否応無しに,ナデシコクルーに伝える。

「提督、おやめください」

 半ば涙声のユリカ。

「ナデシコには、いえ、私にはまだ提督が必要なんです!」

『私には君に教えることなど何もない。私はただ、大切なモノのためにこうするのだ』
 
「なんだよ、それは!」

 アキトが叫ぶ。

『それが何かは言えない。だが、諸君にも、きっとそれはある。いや、いつかみつかる』

 アキトの声に動じた様子もなく淡々と話すフクベ。

『私はいい提督ではなかった。いや、いい大人ですらなかっただろう。最後の最後に、自分のワガママを通すだけなのだからな』

 映像が乱れがちになり、所々音声が不明瞭になる。

『ただ・・・・だけは言っておきたい。ナデ・・コは君たちの艦だ。怒りも憎しみも・・・・・・愛も、全て君たちだけ・・モノだ。言葉・・・・何の意味もない。それは・・・・・・』


 通信が・・・・・・


 途切れた


 もう何も・・・


 メインスクリーンには


 映っていない。


 レーダーからもまた


 一つの光が・・・


 味方の識別信号が消えた。


 それは・・・・・・


 クロッカス撃沈という


 非情な現実を


 指し示す。


 提督はもう・・・


 戻っては来ない。


「バカヤロォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」 


 その現実に


 アキトは吼えた。


 それに答える声はなく


 ・・・・・・


 ブリッジと言わず・・・


 ナデシコ中が


 沈黙に・・・


 包まれた。


 やがて・・・


 ナデシコは


 呑み込まれる。


 赤き大地を


 焦土へ変えたモノを


 導きし


 花の名を冠されし


 鋼鉄の・・・


 悪魔の門へ・・・


 ・・・・・・





 第七話・・・fin





  次回予告

 コスモスから来た二人組(+キノコ)

 ナデシコのサブオペレーターとは・・・?

 次回 温めの『冷たい方程式』
              をみんなで読もう!





 本星への報告書7

 途中から大幅に書き方が変わる第七話。

 執筆時間は一応八時間以上。

 大幅って言っても・・・これはいくら何でも変わりすぎ・・・・・・いや、変えすぎかとも思うが、まあ良い。

 ところで、Dが簡単に木星蜥蜴の正体ばらしてたけど良いのか?

 と言う質問が来たのですが・・・・・・五話・六話で書くのを忘れ、「漆黒の戦神アナザー」と、(これと同時upかも知れないが)「ナデひな第Xわ ナデひな一発劇場〜なるのパンチ力〜」は、シリーズが違うから書かなかったんですが、その理由を説明します。


 ウリバタケのセリフの通り、Dは未来のことを話しました。

 そして、木星蜥蜴が人間だ、という話が本当だったら、今まで当たってたのは、ただの偶然だろ、ですませられなくなりますし、「相転移砲」などという非人道的兵器を作る気も起きないでしょうし、作っても、使おうとは思わなくなるでしょう。

 それに、ウリバタケの信用はとぉ〜っても欲しいので、Dの語った未来が本当となれば、ウリバタケからの信用を(強引ですが)得られる、と考えたのです。

 まあそういうわけで・・・

 因みに、今回もクロッカスが火星にあったのは、Dがパンジーとクロッカスの自爆装置を作動させたとき(本当は作動はさせてなかったんですが・・・)にあすこへジャンプするようにプログラムした(というかオメガにさせた)からです。

 それではみなさん、あでゅー

本星への報告書7 終

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

E.Tさんからの連続投稿第七話です!!

あの・・・作中で高笑いしてる人って?(汗)

いや、まあ、なかなかキてる人っぽいですけどね(苦笑)

イネスさんも合流し、チューリップへと侵入をしたナデシコ

さてさて、この先はどうなるのでしょうか?

 

ではE.Tさん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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